新時代の採用×SNS 活用!ビジョンドリブン経営がもたらす出会いとは―第2回HR Growth Engineレポート
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「人事が、事業成長のエンジンになる」をコンセプトに、組織全体を成長させるべく採用に取り組む人事担当者を支援する株式会社ビズリーチ(以下、ビズリーチ)主催のイベントシリーズ「HR Growth Engine」。
2026年1月20日に開催された第2回のイベントでは、中古車販売を手掛ける株式会社BUDDICA(以下、BUDDICA社)の代表取締役社長 中野優作氏をお招きし、SNSを活用した優秀人材の獲得や採用のミスマッチを防ぐ仕組みづくりについて語っていただきました。モデレーターはビズリーチ、HRMOS事業部エンタープライズセールス部 部長 今村 慎太郎が担当しました。
採用コスト「ほぼゼロ」で150名の精鋭組織へ。採用率5%に絞り込むBUDDICAのSNS戦略
―BUDDICA社では、創業から事業拡大に伴い、積極的に採用を行ってこられたと伺っています。創業期からどのような採用をしてきたか教えていただけますか。
中野氏:
当社は、創業時点では私1人から始まった中古車販売の会社ですが、現在(2026年1月20日時点)正社員数は150名を突破し、リアル店舗を全国15店舗まで拡大してきました。また、2024年にはBUDDICA・DIRECT株式会社を新たに立ち上げ、webやLINEのやり取りだけで中古車販売を行う日本最大級の非対面販売プラットフォームの展開に取り組んでいます。

そういった当社の事業拡大を支えているのが、ビジョン共感型のSNS発信と質の高い採用です。SNS発信に取り組んだのは創業5期目からですが、結果としてYouTube登録者数は約50万人にまで伸び、覚悟を持った優秀な人材が集まるようになりました。
私は創業前に、業界最大手の会社で中古車販売を10年経験していました。その会社では、応募してきた人の約 5人に4人 は採用するという、来るもの拒まずの状態でした。ですが、BUDDICAの場合はミスマッチを防ぐべく、20人に1人だけという、厳選した人材採用を行っています。採用にかけている費用は、HRMOS採用の月額利用料金だけなので、「ほぼゼロ」です。
―組織規模が拡大するにつれて、採用の権限を経営者から現場へどのように移譲するかが課題になってきます。BUDDICA社では、どのように権限移譲を進めたのでしょうか。
中野氏:
社員数120名に至るまでは、私が最終面接を担当していたのですが、現在は担当者を設けて権限を移譲しています。担当者に面接を任せる際、私が伝えたのは「お互いの相性確認」の重要性です。
1時間程度の面接で、スキルや人間性を見抜くことはできません。だからこそ、後で『思っていたのと違った』ということがないように、面接ではお互いが隠し事をせず、気になることは全て話し合おうということを、もともと候補者の方々にもお伝えしていました。
良いことばかり言って入社させても後で困るのはお互い様なので、権限を移譲した後も、面接の場でお互いが腹を割って話せるよう心がけています。

現場のリアルを発信することで、入口を絞り、応募者の質を高める
―SNSでの発信力に定評があるBUDDICA社ですが、採用への応募が増えすぎて対応に悩むような事態もあるのではないかと思われます。実際にそういった事例はあったのでしょうか。
中野氏:
私が元々在籍していた会社のニュースが報じられていた頃、中古車業界に不満を抱えていた経験者の方々から次々に当社へと転職の意向が寄せられたことがありました。もともと中古車業界の中でもパーパスにこだわった経営をしていた上、当時メディアで「ゼロから這い上がった経営者」という取り上げられ方をしたことで、「人生を変えたい」「一発逆転したい」といった層が殺到したのです。
そういった方々は、面接での熱量も高く、勢いもあるため、当時は対応に苦慮しました。採用した後、1年経ってミスマッチに悩んだこともあったため、基準を厳しくして採用を絞って質を高めていく方向にシフトしていきました。
採用の質を上げるには、入口となる発信で「入社してほしい人」へのメッセージを的確に打ち出す必要があります。なぜなら、メッセージの打ち出し方によっても、反応が大きく変わるからです。

実例として、私の友人の例を挙げたいと思います。その方は、私とほぼ同規模のフォロワーを有する経営者なのですが、SNSで『付き人募集』をした際、600名以上の応募が来たものの、結局採用したいと思える人には出会えなかったそうです。
一方、私がSNSのショート動画で『付き人募集』をした際は、60名強の応募があり、その中から3名も優秀な人材を採用することができました。いずれも当社には欠かせない人材ばかりです。
同じ「付き人募集」の投稿で、なぜそれだけの違いが生まれたのか。私の友人は、募集の際に「人生変えようぜ」という前向きなメッセージを発信していました。それに対し、私はあえて疲れ切った顔でカメラを回し、「助けてほしい、僕の時間を捻出してくれ。仕事はきついが、成長だけは約束する」と訴えかけたのです。あえて大風呂敷を広げなかったことで、現場のリアルが伝わり、質の高い人材が集まってくれたように思います。
採用は1人当たりの「生産性」を重視。安易な採用を防ぐための仕組みづくり
―人事の傾向として、優秀な経歴の人が候補者に数多くいると、つい採用数を増やしたくなるように思います。自社に合う人材を絞り込むために、BUDDICA社ではどのような工夫をしているのでしょうか。
中野氏:
実は前職時代に採用率や採用数をKPIに置いて、失敗したことがあります。たくさん採用しても、たくさん離職していくようでは意味がありません。だからこそBUDDICAでは、採用において、全体の事業としても大切な「1人当たりの生産性」を重視しています。採用の仕組みも、その観点から整えました。

具体的には、1人当たりの粗利を店舗ごとにランキング形式で競う仕組みを導入しています。当社の給与体系にはインセンティブが含まれているため、1人当たりの生産性が下がれば、インセンティブが下がり、報酬も減ります。
当社では採用の決定権を各店舗の支店長に任せていますが、当社の利益に繋がる生産性が高い人材を厳選して採用すれば、彼ら自身の報酬にも繋がります。そのため、各自がモチベーションを持って採用に向き合えていると思います。
―BUDDICAの求人は、募集要項も細部までリッチに練り込まれていて、「成長はできるが覚悟が必要」というカルチャーが文面からも伝わってきます。カルチャーフィットした人材を採用するために、SNSの発信で心がけていることがあれば教えてください。
中野氏:
BUDDICAではYouTubeで現場のリアルをフルオープンで公開しています。そのため、動画を見れば、当社のカルチャーや現場の厳しさがすぐわかるようにしています。また、自著の「クラクションを鳴らせ!」や「成長以外、全て死」も、採用でのカルチャーフィットに役立っています。

「本を読んでこない人は採用しない」と至るところで伝えているので、その時点でYouTubeの動画と合わせて、当社の考え方をある程度インストールした段階で応募してきてくれるので、ズレが生じにくいのです。
また、事前に顧客としてBUDDICAのサービスを利用してもらったり、体験入社したりすることを推奨しています。こういった働きかけによって、採用のミスマッチはほぼ起きなくなったと思います。現在、内定後の辞退はありませんし、入社後に辞めていく人も非常に少なくなりました。
SNSのトレンドではなく、本業と顧客に向き合う発信で採用と社内教育を両立
―採用活動にSNSを活用していくと、炎上やバッシング等のリスクも生じます。企業が発信力を伸ばしていこうとするなら、何をどう発信していくべきだとお考えですか。
中野氏:
SNSの発信の前に、本業ファーストであるべきだというのが私の考えです。SNSのために何かをするのではなく、本業である中古車販売と徹底的に向き合い、成長させていく。その過程の一部を切り取って、発信していくのが本筋だと思うのです。だからこそ、当社のYouTubeでは洗車やリセールの解説など本業に紐づく内容を配信していますし、逆に本業と関連しない内容はSNSで出していません。
当社のSNSは、実際に顧客から受けた相談や、多くの方が気になっているであろう内容をもとに情報発信をしています。SNSで受けそうなバズワードやトレンドを追いかけたことは一度もありません。
SNSを通じて、顧客の声に正直に答える。これを貫いてきたことで、当社のSNSは採用だけではなく、社員への教育材料としても機能するようになりました。
たとえば、「車屋さんが新車で買うなら、何の装備をつけるのか」といった質問に対し、YouTubeでは自社の目先の利益を一切考えず、リセールを意識した装備購入の仕方や、逆に大手ECで買えば安くすむアイテム等を率直に回答しています。こういったお客様のことを真摯に考える姿勢を社長が率先して示すことで、現場も自然と「こうあるべき」を学び、規範として取り入れてくれるようになりました。

もし私がSNS等で日頃から言っていることと現場との間で齟齬が生じている場合は、必ずDMで報告するように社員には徹底していますし、実際に、そういったクレームがX等の投稿で上がっていれば、全てリプライで拾い上げ、現場確認をしています。
YouTubeの撮影時には『よそ行きの理想の自分』を演じている部分はありますが、決して無理はせず、思ったことを正直に話しています。間違っていたら、お叱りの声と素直に向き合って、改善すればいいだけです。その姿勢を全て見せることで、温度のない機械的な語りではなく、人間としての『体温』が伝わる発信になるのだと考えています。
優秀なキャリアよりも、顧客と誠実に向き合う姿勢を評価し、長期で活躍する社員を採用する
―採用活動の中でも特に、いたるところから声がかかる優秀な幹部候補をどのように惹きつけるのかは、多くの企業の課題です。BUDDICAではどのように幹部人材を採用したのか、意識された点を教えてください。
中野氏:
私は自分の弱みを認めつつも、強みを活かして『この人に付いていったら面白そう』と思ってもらえるように、夢を語り、周りを引っ張っていく、というやり方を目指しています。それが創業者である自分の役割だと思うのです。
だからこそ、ミスマッチを防ぐためにも、当社に来て欲しい人に嘘は言いません。「やりたいことがあるから手伝ってほしい」と素直に伝えて、後は長期戦覚悟です。私はしつこいですからね(笑)。数年がかりでも継続的に熱量を伝え「あなたが来たくなるような会社に成長するから見ていてほしい」と、過程も含めて相手に示すようにしています。
― BUDDICAでは今後、どのような人を仲間にしていきたいとお考えでしょうか。
中野氏:
優秀なキャリアがあって、即戦力の人を採用したいという思いはありますが、そういった人が意外と長続きしないケースも過去に経験してきました。だからこそ昨今は、お客様としっかり向き合い、ゆっくりでも着実に成長していくカメのような人を採用したいという思いが強くなっています。

たとえば、以前汚れている展示場の車に対して「自分の家族をこの車に乗せたいと思うのか」と社員に問いかけたことがありました。150台の中の1台だとしても、お客様にとっては唯一の車であり、誰かにとっての「大切な人」を乗せるわけです。もし私が投げかけた問いに心が動かないなら、BUDDICAを辞めてほしい、と当時の社員に伝えました。「自分がこうなりたい」というように矢印を自分に向けるのではなく、きちんとお客様に気持ちを向けられる人を、仲間にしていきたいですね。
採用の裁量を『いいヤツ”』に任せ、好き嫌いに判断軸に置くことで、人材の質を上げる
―採用に携わる担当者や社員の方々が同じ価値観のもとで採用を進めていくために、社内で意識されていることがあれば、お聞かせください。
中野氏:
「君のような人に入ってほしいから、君が一緒に働きたいと思う人を採用してくれ」と言えるような人に、採用の裁量を任せることですね。人は、自分に似た人を好きになります。だからこそ、採用を任せる相手が『いいヤツ』なら、その人の好き嫌いを判断軸に置くことで、同じような『いいヤツ』が集まってきます。その方が結果的に、採用が上手くいくと感じています。
―最後に会場からの質問を取り上げたいと思います。「社長がSNSをしない場合はどうしたらよいのか」という質問が来ているのですが、中野様のご意見を伺えますか。
中野氏:
SNSに露出するかどうかよりも、いかに大きなミッションやビジョンを掲げつつ、本業の質を挙げていくかの方が重要だと思います。もちろん会社のPRは重要ですが、やり方はさまざまです。たとえばBUDDICAでは、社員が表に出やすいように、プロのスタイリストをつけて宣材写真を撮影してもらうといった施策をしていますし、他にも社員の密着動画を作ったり、現場のドキュメンタリー動画を作ったりと、選択肢は多数あるように思います。
社員の顔を見せるというのは、採用において大切です。実は、過去にエントリーが減っていた時期があったのですが、その原因を分析してみると、YouTubeで私が話している動画ばかりを連続で出してしまっていたことが分かりました。
そこで、社員の密着動画や創業メンバーとのバーベキュー会といった動画を3、4本アップしてみたところ、エントリーが3倍に増えました。視聴者がエントリーを決める最後の決め手として、社員の姿を見せることの有用性を実感しました。
また、私が主宰している月額制の実践型経営者コミュニティで、「The Neutral」というクラウド型顧問サービスがあるのですが、その中でも様々な実践ノウハウを紹介しています。私が実際に取り組んできたリアルを包み隠さず発信しているので、そちらも参考になるかもしれません。コミュニティ内ではBUDDICAの採用や組織づくりについてもノンフィクションの情報を公開しているので、これから採用に注力する方々のお役に立てれば嬉しいです。

普段SNSでは語られないような生の情報が盛り沢山のセッションで、あっという間に終了時間を迎えた第2回「HR Growth Engine」。SNSで顧客の声と向き合い、泥臭い部分も包み隠さず伝える情報配信のリアルさと誠実さが、BUDDICA社の採用を支えていることが伺えました。