ウィルゲート社が実践する エントリーマネジメントの重要性-後編-

2020年8月24日(月)に第8回のHRSUCCESSOnline「ウィルゲート社が実践するエントリーマネジメントと変化に強い組織づくり」が開催されました。HRSUCCESSOnlineは、HR領域において先進的な取り組みをされている企業の経営者や人事担当者をゲストにお迎えし、「人材開発」「組織開発」における課題解決に役立つ情報をお届けしています。

第8回は「エントリーマネジメント」をテーマに株式会社ウィルゲートの吉岡諒氏をお招きし、経営理念浸透や組織コンディションの維持・活性化等の具体的な取り組みについてお話しいただきました。今回は後編として、リファラル採用における人事の役割やリファラル採用を始めるべきタイミング、バリューフィットの見極めについてまとめたものをお送りします。

前編はこちら
ウィルゲート社が実践する エントリーマネジメントの重要性-前編-

吉岡諒氏

株式会社ウィルゲート
専務取締役COO
共同創業者

1986年岡山生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代表取締役小島梨揮と共に2006年に株式会社ウィルゲートを設立。個人として累計で2,000社のWebマーケティングの課題解決提案を実施。2012年に記事作成「サグーワークス」、2014年にメディア「暮らしニスタ」、2018年にはSEOのAIツール「TACTSEO」、2019年にはオンラインで編集チームが作れる「エディトル」、2020年にはM&A仲介支援サービス「WillgateM&A」をリリース。COOとして全サービスの管掌役員を務める。

茂野明彦

株式会社ビズリーチ
HRMOS事業部
インサイドセールス部 部長

大手インテリア商社を経て、2012年、外資系IT企業に入社。グローバルで初のインサイドセールス(IS)企画トレーニング部門の立ち上げに携わる。2016年、ビズリーチ入社。インサイドセールス部門の立ち上げ、ビジネスマーケティング部部長を経て、現在はHRMOS事業部インサイドセールス部部長を務める。

リファラル採用における人事の役割

茂野:リファラル採用において、人事の役割はどのようにおいていましたか?

吉岡:人事は運営サポートに徹する、ということを心がけています。仲間集めをするのは社員全員の仕事であって、人事だけの仕事ではありません。その認識のうえで、求人情報の発信や、リファラル採用プロジェクトの定例ミーティングの運営や成功事例の共有といった取り組みを行っています。また、会社全体でリファラル採用を進めていくために、社員が友人や知人を紹介しやすい環境づくりを行う運営サポートのような役割も人事が担っています。

リファラル採用は「採用に本気になったタイミング」ではじめる

茂野:ありがとうございました。リファラル採用はいつ取り組みはじめるのがいいのでしょうか?

吉岡:「経営者や人事の方が採用に本気になったとき」が、リファラル採用を始めるタイミングなのではないかと思っています。実は、ウィルゲートがリファラル採用に注力しはじめたのは2014年に弊社の記念パーティーにビズリーチ(現:ビジョナル株式会社)の代表取締役社長の南(壮一郎)さんに登壇していただいたことがきっかけです。その際に、南さんに中途採用に対する考え方を聞いたところ、経営者が本気で時間を割かないと、採用への熱量が高い社風の会社にならない、と言われたんですね。その日から率先して取り組むようになり、月に30~40時間は採用活動に時間を割くようになりました。経営者が本気になることで、人事や社員が巻き込まれていって全社で採用をするんだ、という機運が高まっていくことを実感しました。

茂野:むしろ創業期はリファラル採用がメインになると思います。まずは自分の知っている優秀な方にお声がけすることが多いかと思いますがいかがでしょうか。

吉岡:そうですね。なので、会社の規模や社員数は関係なく、創業期から経営者や人事が中心となってリファラル採用に取り組むべきだと思います。

茂野:特に優秀な方はご入社いただくまで何年もかかるケースも多いので、採用活動は途切れさせず、創業期からずっと継続していくものだということですね。先ほどエージェントマネジメントにも力を入れているとのお話がありましたが、人材紹介会社との契約の際に必ず確認するポイントなどはありますか?

吉岡:人材紹介会社はかなり幅広くお取引をさせていただいています。ただし、結局分析してみると実際に候補者をご紹介いただける会社も、そこから採用決定が出る会社も一部です。お付き合いする人材紹介会社を最初の段階で見極めるというより、多くの人材紹介会社と関係を持ち、それぞれどのような特徴があるかをデータをもとに判断することに注力しています。

候補者のバリューフィットを確かめるには?

茂野:今回、エントリーマネジメントについて、採用の段階だけではなく、その後の会社のカルチャーをつくっていくうえでも重要ということでお話しいただいたのですが、そのなかでもバリューフィットの確認は、非常に難度が高いように思います。吉岡さんが確認しているポイントや、具体的にどのような質問をしているのかという点について伺いたいです。

吉岡:新卒採用と中途採用で少し違うと思います。新卒採用の際は「人生で一番うれしかった瞬間はどんな瞬間ですか?」という質問をしたときに、自分の成功体験を話す人と、誰かがよろこんでくれてうれしかった、みんなでこれをやってうれしかったといったというエピソードを話す人できれいにわかれます。自分の成功体験を話す方が良くないというわけではないのですが、誰かによろこんでもらえてうれしかったというエピソードをお話しいただく方は、深掘りすればそういったエピソードが次々と出てくるので、そのエピソードの数と深さによってどれくらい弊社のバリューにフィットしているかがわかるように思います。

中途採用に関しては、会社でさまざまな困難があった際のエピソードをお伺いして、他責で捉えているか、自責で捉えているかというところで、人柄がわかってくるのかなと思っています。そのため、これらの項目は先ほどご紹介した構造化面接の評価シートの中にも入れています。

茂野:多様な人材がいる会社は、化学反応が起こりやすいという点で良い会社のように思えます。お話しいただいたように、エントリーの段階で属性をあまりに絞りすぎてしまうと、多様性が失われてしまうことはありませんか?多様性を重視してあえてとがった人材を採用することもあるのでしょうか?

吉岡:弊社の場合バリューという一本の軸はあるのですが、代表の小島と私はまったくタイプの違う人材で、人によって性格やスキル・能力はまったく違うという認識でいます。バリューという一本の軸を通したとしても、同質な人材が集まるわけではないのかなと思っています。新卒採用でも、一定のポートフォリオは組んでいて、ゼロイチで事業を立ち上げられるような企業家人材のようなタイプの方もいれば、タフで対人コミュニケーション能力の高い営業やコンサルタントに向いている方もいたり、誰か困っている人がいれば助けてあげたいというサポーティブな方もいたりします。事業フェーズによってどういう要素を持った人材が何人必要かということはポートフォリオという形で管理をしています。弊社の場合は事業も多角化していて、職種もバラバラなので、バリューという共通の軸にもとづいて採用したとしても自然と多様性が生まれるようになっていると思います。

従業員のエンゲージメントは入社時に8割決まっている

茂野:バリューフィットと、人材のポートフォリオマネジメントの両方を実現することで、会社として良い採用ができるということですね。ご入社いただいてからエンゲージメントを維持する、もしくは向上させるために取り組まれていることがあれば教えてください。

吉岡:エンゲージメントについては入社時で80%決まるのではないかと思っています。入社時のバリューフィットの確認さえしっかりできていれば、入社後にエンゲージメントがそこまで下がることはないというイメージです。もちろん、弊社はコミュニケーションを大切にしている会社なので、マネジメント層に対してしっかりメンバーとコミュニケーションをとってほしい、ということは伝えています。その結果なのか、強制しているわけではないのですが、週に1回30分の1on1をメンバーと行うことが文化になっていて、メンバーのキャリアや仕事のパフォーマンスに向き合う風土が根づいています。そこでキャリアや日々の悩みに対する課題解決やフォローはできているかなと思います。あとは、社内表彰でそういった文化を体現している人にスポットライトを当てるということは意識的に行っています。

茂野:理想を掲げるだけではなく、評価で報いるとか、会社のなかでコミュニケーションを重要なものとして位置づけることで自然とエンゲージメントが維持されていくということですね。

工数をかけてでも、リファラル採用に取り組むべき理由

茂野:もう1点ご質問させていただきたいのですが、先ほどリファラル採用の数字をみせていただいた際に、選考から入社までの通過率が50%とおっしゃっていたのですが、吉岡さんはこの数字をどのように捉えていますか?

吉岡:リファラル採用の場合は、そもそも選考を受けていただく前の段階で、私か人事で面談をさせていただいて、この人すごくいいな、うちにあうなと思った方に選考に進んでいただいています。 また、友人の働いている会社ということもあり、候補者の方も生半可な気持ちで選考を受けるわけにはいかないので、入社をしっかりと検討していただいてる方が選考に進んでくださっています。この2点が重なって、このような数値になっていると捉えています。

茂野:ある意味それがリファラル採用の健全な姿だと思います。採用をしたいと思っている会社と、受けたいと思っている方で、選考を進めていった結果、通過率が高いということは、非常に生産性が高いのではないかなと思います。

吉岡:HRMOS採用を使っていると、この人材紹介会社は今まで200名紹介してくださったけど、1名しか採用決定していないといったことが数字でわかります。それは200名分の書類選考をして、面接を実施したということになりますよね。「リファラル採用って工数がかかりますよね」とおっしゃる方が多いのですが、そうおっしゃる方に限って、リファラル採用以外の採用チャネルにかかっている工数をわかっていないのかなという印象です。採用決定までの生産性でいえばリファラル採用の方が、結果的に効率がいいように感じています。

茂野:ありがとうございます。リファラル採用では面接以外に面談を行うことも多いと思いますが、面談の際に気をつけているポイントはありますか?

吉岡:実は普通の中途採用の面接・面談では能力やスキルの見極めを重視しているのですが、リファラル採用の面談では候補者の方の性格や能力についてある程度把握している状態からスタートするので、その方の描いているキャリアが弊社で実現できるかという点に注目しています。将来何をやりたいのか、どのようなスキルを身につけたいのかをヒアリングし、それに対してウィルゲートではどのような機会が提供できるのかをすり合わせることに注力している点が、通常の採用との違いだと思います。

これからエントリーマネジメントに取り組む方へのメッセージ

茂野:ウィルゲート様は一貫して、会社が提供できるものと、候補者が求めているものが本質的にマッチングするかどうかをしっかりと見極めながら採用を進めているのですね。その結果、入社後の離職率低下につながり、活躍する人材が増え、変化に強い組織ができることにつながっているのかなと思います。最後に、まだエントリーマネジメントに取り組まれていない企業にメッセージをいただけますでしょうか?

吉岡:今日お話ししたことを、本当にやった方がいいと思っているのですが、それは冒頭にお話ししたウィルゲートショックを経験したからこその、心の叫びなんですね。だからこそ、まだエントリーマネジメントの重要性を感じていない方も、ぜひ取り組んでいただきたいと思っています。

また、「経営者が本気で取り組まないと、全社で採用をするという文化はできない」というお話をさせていただきましたが、今日お越しいただいているのは、人事担当者・採用担当者の方が多いと思います。私は採用に燃えているタイプの経営者なのですが、もしかしたら、「自分の会社の経営者ももっと採用に燃えてほしいな」と思っている方がいらっしゃるかもしれません。でも、だからこそ、ぜひみなさんが率先して、経営者が採用に取り組むような環境づくりをしていただきたいなと思っています。