人材活用を考える上で、理想的なのはやはり「適材適所」に人員配置を行うこと。しかしそう一言で片付けられるほど、実際は簡単なことではありませんよね。
この記事では、そもそも適材適所に人員が配置されているとはどういう状態か、実現のために考慮すべきポイントは何か、配置後のフォローアップはどうすればよいかなどを解説します。
自社に合った人員配置とは何か、適材を見極めるにはどのようにすればよいか、そしてその人材を適所に配置するためにはどのようにすればよいのかを検討する際の参考にしてみてください。
1.「適材適所」に人員配置を行うとは
適材適所な人員配置は、人材活用において当然重要なポイントのひとつ。ではそもそもそれは、どのような状態のことをいうのでしょうか?
「適材適所」とは、辞書的な意味でいうと「その人の能力や性質に対して、相応しい職種や地位につけること」を指します。
この意味だけで考えると、「その職種に向いている人を配置する」ことができれば良いと思ってしまいそうですよね。
ただ人材活用の文脈における適材適所は、もう少し丁寧に噛み砕く必要があります。つまり「その人が持っている能力を最大限に、かつストレスなく発揮できる場所に配置する」こと。これが適材適所のあるべき形と言えるでしょう。
それは例えば「体育会系出身の男性を営業職に就ける」「偏差値の高い大学の社員を花形部署に配属する」「女性なので総務や経理にする」といった、ステレオタイプによる人員配置とは真逆のものです。
2.「適材適所」を実現する4つのポイント
では適材適所な人員配置を実現するためには、どのようなことを考慮すれば良いのでしょうか。適切な判断をするためには、少なくとも以下の4つの観点で考えてみましょう。
2-1.事業戦略
一人ひとりの特性に合わせた人員配置はもちろん重要ですが、企業として、事業戦略に基づき必要な場所に必要な人数を配置することは当然です。
とはいえ、すでに人材を採用してしまってから、決められた部署に決められた人数を絶対に配置するとなると、やはり適材適所とはいきませんよね。
つまり事業戦略を踏まえて適材適所な人員配置をするためには、採用時の人材要件をしっかりと定めておくことが非常に重要。
中期経営計画などを基にしながら、強化したい部門や現在人員が足りていない部門、そこに必要な人数を洗い出し、どのような人材が何名必要なのかを綿密に固めてから採用活動を実施しましょう。
2-2.客観的データ
向き不向きを判断するためには、感覚値ではなく客観的な数値データが不可欠。入社前後の能力検査や取得している資格、MBTIのような性格検査のデータ、過去の経験やプロジェクト履歴を基に、どのような職種や部署、誰がリーダーのチームが良いかを考えましょう。
新入社員の配属だけではなく、現在所属している場所でうまくパフォーマンスを発揮できていない人材においても、データの収集は重要です。周囲の評価や本人の評価、実績を継続的にデータ化しておくことで、より力を発揮できるのはどこなのかを判断する助けになります。
2-3.本人の意向
企業側の需要と客観的なデータで向いている職種や部署を判断しても、実際に働くのは意志を持った個人。本人の意向を決して無視できません。
仕事のパフォーマンスをあげるには、向き不向き、得意不得意もさることながら、本人のモチベーションが何よりも重要。向いているであろう仕事より、どうしてもやりたい仕事のほうが、成果を発揮できる場合もあります。
採用前や配属の最終決定をする前に、本人の意向は必ず確認するようにしてください。
2-4.現場の意向
入社や異動につきものなのは、配属後の教育。しかし配属先の部署やチームに、どのような人員が何名必要か、その教育をする余裕はあるのか、確認しないケースも実はよくあります。
人手が足りない部署に人員を増やしたら、「現場で求める人材要件とは異なる」「教育担当がいない」「オンボーディングにかかりきりで通常業務に手が回らなくなった」と、さらなる混乱を生むケースは多いのです。
その結果、せっかく採用した従業員の離職につながることも。人員配置を決める際には、現場の状況や意向も充分に確認しましょう。
3.日常的なコミュニケーションを人員配置に活かし、適材適所を実現する
先述したポイントを踏まえて決定した人員配置。たとえそれが従業員にとって適切な配属先だったとしても、異動が突然であったり、最も希望していた部署ではなかったりする場合もあります。
充分に納得いかないまま配属されてしまえば、モチベーションが上がらなかったり、最悪の場合離職につながることも。
このような事態を防ぐために必要なのは、日常的なコミュニケーションと、配属に関する丁寧な説明です。
すでに働いている従業員に対しては、普段から上司との1on1で対話をし、どのような仕事をしてみたいか、いまの仕事に不満はないかなどを確認することで、それぞれの今後のキャリアへの意向を知ることができます。
また定期的なコミュニケーションをとることで、データだけでは見えてこない、本人の経験や知識があることを知り、それを配属に活かすこともできます。
新入社員の場合は、人事面談などでしっかりと話を聞きましょう。そして配属が決定したら、なぜその配属先になったのか、そこで何を期待しているのか、配属の根拠を丁寧に説明しましょう。
普段からコミュニケーションをとり、その上でしっかりと説明をされることで、従業員は自分のことをちゃんと理解して決定された配属だと納得しやすくなります。
4.配置後のフォロー
ここまでの内容を踏まえて、配属先・異動先の部署へ従業員を送り出したら終わり……とはいきません。
どんなにその人にとって適した配属であっても、すぐに新しい環境で最大限の能力を発揮できるわけではありません。
また、適していると思われた場所であっても、配属・異動してみると実はあまりマッチしていなかったり、働いているうちに本人の望むものが変わってきたりすることもあります。
配属後も、継続的に従業員をケアしていく体制をつくることも必要です。
4-1.入社・異動後のオンボーディング
企業におけるオンボーディングとは、従業員の受け入れから定着をフォローし、いち早く戦力になることと早期の離職を防ぐ目的で行うものです。配属されてからしばらくは、従業員が馴染むために必要な期間と考えて、しっかりとオンボーディングに取り組みましょう。
オンボーディングの期間は企業によってさまざまで正解はありませんが、例えばビズリーチでは1年かけて以下のようなファロー体制を敷いています。
ここでポイントとなるのは、配属された先の現場任せにせず、多面的に接点を持ちフォローする仕組み。
同じチームのメンバーや上司には言いづらいことや、配属後のギャップ、不満などを溜め込まずに相談することができます。そのため不満を抱えて身動きが取れなくなったり、早期の退職を意識することなく、いち早く戦力になってもらうことができるのです。
配属先のメンターやマネージャーだけが新しいメンバーに責任を負わず、多方面からサポートすることで、関わる全員と企業全体にとってのメリットにつながります。
4-2.定期的なサーベイによるコンディションチェック
配属の直後に限ったことではなく、全ての従業員に対して定期的にエンゲージメントを確認するのは、人材活用の重要なポイント。
継続的なサーベイを実施して、いまの仕事内容やチームに満足しているか、現状に不満はないかを把握しましょう。
サーベイの実施スパンや調査項目はさまざまですが、できれば調査する項目は常に同じものを用いて、短期・長期で比較できるようにデータ化しておくことをおすすめします。
エンゲージメントについてやサーベイの実施方法については、以下の記事で詳しくご説明しているので、ぜひご覧ください。
離職の根本的な解決は、エンゲージメントの可視化から
5.まとめ
適材適所とは、ステレオタイプや表面上の向き不向きにとらわれず、「その人が持っている能力を最大限に、かつストレスなく発揮できる場所に配置する」こと。
そのために考慮すべき主なポイントは「事業戦略」「客観的データ」「本人の意向」「現場の意向」の4つです。
また日常的に1on1などでコミュニケーションをとったり、人事面談を行うことで、表面上は見えない従業員の特性や意欲を発見し、それを人員配置に活かすことも重要です。
配属後は丁寧なオンボーディングと、継続的なエンゲージメントの調査で、従業員をケアすることも大切です。
適材適所と一言にいっても、実現するには地道で戦略的な積み重ねが重要。これらのポイントを踏まえて、ぜひ実践に活かしてください。