遠方の求職者にアプローチができ、対面よりも多くの求職者と接点がもてるWeb面接。近年、採用のオンライン化が浸透し、Web面接を導入している企業が増えています。便利なWeb面接ですが、対面に比べて面接官の人柄が伝わりにくいなどのデメリットもあるため、いかに事前の準備を行うかがカギとなります。本記事では、これからはじめてWeb面接を行う採用担当者の方に向けて、Web面接を行う際の注意点や円滑にWeb面接を進めるためのポイントをお伝えします。
Web面接とは
最近耳にする事が多い「Web面接」とは、オンラインで行うビデオ通話面接のことです。オンライン面接とも呼ばれており、面接の内容自体は対面で行うものと変わりません。対面の面接と大きく違う部分は、「機器やシステムを使う」ことや「画面越しでコミュニケーションを行う」という部分です。Web面接には遠方の求職者にアプローチができ、対面よりも多くの求職者と接点が持てるというメリットがある一方で、通信の影響により音声や映像にタイムラグが生じたり、お互いの表情の変化が伝わりにくいなど、対面の面接にはない留意点もあります。また、通信状況によって面接が中断されたりなどのトラブルの発生も予測されるため、候補者対応などの体制を事前に整えておくことが大切です。
・入社手続きの効率化
・1on1 の質の向上
・従業員情報の一元管理
・組織課題の可視化
Web面接のメリット・デメリット
企業と候補者にとって有益なWeb面接ですが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
企業側のメリット・デメリット
企業側のメリットとしては、下記のようなものがあります。
- 遠方や海外に在住している候補者や多忙な候補者との面接の日程調整がしやすい
- 会議室確保の工数が削減できる
- 面接の様子を録画して振り返りや面接官のトレーニングに活かせる
- 在宅勤務中でも採用活動ができる
遠方や多忙な候補者との日程調整がしやすく、会議室確保の工数も削減できるので、パソコンと通信環境、静かな場所があれば採用活動が可能になります。また、場所を選ばず採用活動ができるので、採用担当者の在宅勤務も実現が可能です。
一方、企業側のデメリットとしては、次の通りです。
- Web面接のためのツールが必要
- 会社の雰囲気を伝えるためのツールやコンテンツが必要
- 候補者への自社の魅力付けや見極めの難易度が上がる
Web面接を実施するためには、パソコンやマイクなどの備品やオンライン会議ツール、通信環境などを整える必要があります。また、候補者は選考の際にオフィスの様子を見ることができないので、会社の雰囲気を伝えるためのツールやコンテンツなども事前に準備しておく方が望ましいです。
候補者側のメリット・デメリット
続いて、候補者側のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
候補者側のメリットとしては、下記の通りです。
- 企業のオフィスに足を運ばず面接が受けられる
- 移動時間や交通費、宿泊費を削減できる
- 日程調整がしやすくなる
企業のオフィスに移動する時間や交通費なども削減できるため、気軽に面接を受けることができます。また、自宅などの慣れた場所で面接できるため、緊張感を軽減できるなどもメリットでしょう。
一方、候補者側のデメリットとして、このような点もあります。
- 安定したインターネット環境が必要
- 対面に比べて面接官の人柄が掴みにくい
- 会社の雰囲気を知る事が難しい
Web面接を受けるためには安定したインターネット環境が必要です。また、会社に出向くわけではないため、実際の会社の雰囲気を知ることが難しく、入社を決める判断材料が少なくなってしまうこともデメリットと言えます。
Web面接を始める際の3つのポイント
すでにWeb面接を導入している企業も増えておりますが、Web面接のフローなどがマニュアル化されておらず、採用担当者の感覚や裁量に任されているところも多いでしょう。ここでは、Web面接を導入して採用活動を進めるための3つのポイントをご紹介します。
①環境整備編
1つ目の環境整備編では、オンライン会議ツールやナレッジの整理がポイントです。
- 自社の採用フローやセキュリティを満たしたオンライン会議ツールを導入する
- オンライン会議ツールの利用マニュアル(面接官用、候補者用)を用意する
- 会社紹介資料に会社内の雰囲気が伝わる写真や社員紹介記事を用意する
- 採用管理システムに候補者ごとの申し送りや連絡履歴を残すルールを整備する
②候補者対応編
2つ目は候補者とのコミュニケーション方法の設計です。
- 事前にオンライン会議ツールの利用マニュアルを整備して候補者に伝えられるようにしておく
- 接続不備などのトラブル時の連絡先や代替手段を伝える
- 資料な内定通知書の提示方法を決めておく。画面共有できない場合は事前にファイル送付を行う
- Web面接開始時に候補者の本人確認やネットワークの接続に問題ないかの確認を行う
③社内対応編
3つ目は、面接官への周知やトレーニングの実施についてです。
- 面接官に事前に面接における見極め、入社意欲向上のための目線合わせやトレーニングを行う
- 面接官のWeb面接をスムーズに行うための機器(イヤホンやマイク)などの所有状況やツールの接続環境の確認を行う
Web面接のはじめ方(ビズリーチの事例)
ここからは、Web面接をはじめて導入する企業に向けて、株式会社ビズリーチでのWeb面接について、Q&A形式でご紹介します。
Q.いつからWeb面接を実施していた?
株式会社ビズリーチでは、新型コロナウイルス感染症拡大前からWeb面接に取り組んでいました。海外の候補者や遠方にお住まいの候補者には、こちらからWeb面接を提案していました。
Q.割合としては、もともとWeb面接が多かったのか?
もともとWeb面接の割合は、10%前後で件数自体はそれほど多くありませんでした。候補者の方が必ずしも弊社の拠点やオフィス近郊にお住まいというわけではないため、来社が難しい場合はWeb面接を実施し、最終面接だけはご来社いただくというフローにしていました。現在は、候補者の方と面接官の安全を第一に考え、最終面接まで全ての選考フローをすべてオンラインで行っています。
Q.面接をすべてWeb面接にするうえで取り組んだことは?
最初に取り組んだことは、Web面接で利用するオンライン会議ツールの選定とナレッジの収集です。もともとWeb面接自体は実施していましが、どのツールを使うか、どのように候補者にご案内するかのナレッジを各採用担当者がそれぞれ持っている状態でした。そのナレッジを収集して人財採用部で統一のマニュアルにしました。
Q.Web面接で使用しているツールは?
現在は「Google Meets(グーグルミーツ)」を使用しています。ただし、どのオンライン会議ツールを使うのかだけではなく、Web面接を円滑に進めるための補助ツールまで広げて考え、会社説明資料はどのようなものを使うのか、といったことも検討が必要です。選考フローが100%オンラインになることで一番困ることは、会社の雰囲気を知ってもらいにくくなること。Web面接では、面接官がどのような環境で働いているかが伝わりにくいため会社紹介資料の見直しも行いました。具体的には、会社の雰囲気を知る事ができるような、オフィスや普段の社員の様子を収めた写真を会社紹介資料に追加しました。
Q.面接をすべてWeb面接で行うにあたり苦労したことは?
面接をすべてWeb面接にするにあたり、苦労したことは次の2点です。
- Web面接を行うツールのトラブル
- これまでの面接の経験やノウハウが生かせない
1つ目のWeb面接を行うツールに関するトラブルに関しては、候補者の方からツールの利用方法についての問い合わせや、面接官から対面での面接よりもコミュニケーションの仕方に工夫が必要になるという意見をもらいました。この課題に対しては、ツールの利用マニュアルを作成して、候補者の方との日程調整の際にお送りするというオペレーションを徹底したり、面接官向けにもトラブルが起きた際の対処法を周知したりと社内で改善のための施策を打つことで解決できました。
2つ目に関しては、面接官から「候補者の反応が対面よりも読み取りづらく、これまで頼りにしていた自分の感覚に頼れなくなった」「本当にこの候補者が自社にマッチする方なのか、見極めの難度が上がった」という声が寄せられました。この課題は、面接官に向けたトレーニングを実施することで解決できると考えています。面接の場では、自社に合う・合わないを雰囲気で判断するのではなく、なぜ自社に合うのかを具体的な事実にもとづいて判断できなければならないし、それは対面でもWeb面接でも変わりはありません。対面の面接でも実はできていなかったことが、Web面接になったことにより顕在化したにすぎないので、面接官全員が具体的な事実にもとづき、自社に合う・合わないを判断する訓練をする機会だと前向きにとらえてトレーニングを実施しました。
Q.Web面接を導入したことによる候補者の反応は?
候補者の反応は一番懸念していたのですが、実際は「Web面接にしていただきありがとうございます」と言っていただくことが多いです。遠方にお住まいの方や在職中でご来社いただく日程調整が難しい方、育児や介護の都合で面接の日時調整が難しい方にも、Web面接であればご自宅から面接にご参加いただく事ができます。実際に候補者の方の中には「オンラインであれば都合がつきます」と言っていただくケースも多いです。
逆に言うと、今まででは対面での面接を前提としていたがゆえに、そういった方々との出会いのチャンスを逸し、機会損失をしていたのかもしれません。「来社」という制約がなくなった分、さまざまな候補者の方にお会いできるようになりました。
Q.選考をすべてWeb面接にしたことによる内定承諾率などへの変化は?
現在のところ、Web面接にしたことによって内定承諾率が下がったといったことは起きていません。ただ、入社を決めるまでに一度もオフィスを訪れないことに対して、不安に思われる方もいらっしゃるのではないかと思っています。今は、希望される方に対しては、採用担当者がカメラを起動させたパソコンを持ってオフィス内を歩き、候補者の方に向けたバーチャルオフィスツアーを実施しています。今後は、それらをコンテンツとして提供するなど、さまざまな施策を考えていかなければと思っています。
コンテンツを増やすとともに、候補者一人ひとりに対して今まで以上にきめ細かなフォローを意識していく必要があります。次の選考ステップの面接官への申し送りや連絡の履歴などは採用管理システムにきちんと残すなど、対面で実施していたとき以上に徹底するようにしてます。
まとめ:これからWeb面接へ取り組まれる方へ
対面での面接が主体であるところから、Web面接に切り替えるには「慣れ」が必要なことは確かです。しかしながら、Web面接にも対面では会うことが難しかった候補者とのご縁がつくれるなどのメリットがあります。いずれの手法も一長一短で、どちらが良い悪いという話ではなく、時代に合わせた新しい採用手法が1つ増えたということではないでしょうか。今は、対面での面接が難しい状況ですが、今後は場面に合わせてWeb面接、対面の面接をうまく活用するといったケースも増えていくことでしょう。
採用活動には一定の制約はつきもの。それを乗り越えてより良い採用ができるか、人事の手腕が問われていると思っています。一緒にこの難しい局面を乗り越えていきましょう。
事例で分かる「はじめてのWeb面接」
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