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組織課題とは、目指す組織のあり方と現実の差、組織として成果を出せない要因などを指します。より良い組織を実現し、組織として求められる成果を出すためには、組織課題を発見して解決しなければなりません。なぜ目指す姿になれないのか、なぜ目指す目標を達成できないのかという組織課題を発見し、発見した課題を解決するためのマネジメントが必要となります。
どうやって組織課題を発見するのか
顕在課題と潜在課題
組織課題の中には、メンバーの誰かがすでに課題の存在を認識しているものがあります。そのメンバーにとって、これはすでに顕在化している課題です。したがって、メンバーの中にはこの課題を解決する取り組みが必要だと考えている人もいるでしょう。一方、組織課題の中には個々のメンバーには認識されておらず、組織の中に潜在している状態のものもあります。たとえば、日々の業務において、個々のメンバーの行動、メンバー同士の関係性、多くのメンバーに共通しているマインドなどの中に潜んでいるものの、メンバーにはいまだ認識されていないものです。したがって、メンバーの主観においては、組織に課題があるとは見えていません。
しかし、実際には課題があり、その結果、組織が目標を達成できないなど、具体的なマイナスが現れます。これらの組織課題のうち、特に問題なのは組織の中に潜在している課題です。これは、メンバーが無意識に行う行動によってはじめて表面化するので、課題を発見しようとする積極的な活動によらなければ見つけることができません。
顕在課題を洗い出す
顕在課題は、既に発見されている課題です。課題に気づいているのは一部のメンバーである場合もありますし、ほぼ全員が課題に気づいているような場合もあります。したがって、発見するというよりもメンバーそれぞれが認識している課題の内容を提出し合い、共通認識にしていく作業が重要となります。共通認識を獲得するためには、メンバー全員で話し合う方法、リーダーとメンバーの面談、人事によるヒアリングなどさまざまな方法があります。既に多くのメンバーが認識している課題であるため、その整理は難しいことではないでしょう。
ただし、一見すると同じように見える課題でも、メンバーによって異なる内容を指していることがあります。本当に同じ課題を指しているのかどうかは、先入観を持たずに客観的に判断していかなければなりません。顕在課題については、既に認識されていた課題を整理するだけですが、正式に課題として位置付けるということが大切です。組織として解決に取り組むべき課題であると宣言されることに大きな意味があります。
潜在課題発見の方法
組織の中に潜在している課題は、それを発見しようという積極的な活動がなければ発見できません。リーダーや人事が、組織課題を発見するための資料やデータを確認したり、一定期間直接現場を確認したりすることによって、隠された課題を見つけることになります。これは、課題を発見するよりも前に問題意識をもって組織と向き合い、改善していこうという積極的な意志がないとできないことです。したがって、経営層から組織課題を発見し、解決していくべきだという明確なメッセージが出されなければ、潜在課題を発見することはほとんどできません。潜在課題の発見にはトップの強いイニシアティブが必要なのです。
潜在課題を発見する具体的な方法は、メンバーからの業務報告書を突き合わせる、数値データを確認する、ITツールなどを使用して業務プロセスを可視化するなどがあります。できるだけ客観的なデータを集め、定量的な分析を行うことが有効です。しかし、それだけではまだ足りない場合があります。たとえば、一定期間現場で業務プロセスを観察しながら適宜メンバーと会話をし、コミュニケーションを積み重ねることによって課題が見えてくることもあります。同じ事象でも、それを見るメンバーによって見え方は異なるため、複数のメンバーとコミュニケーションを行い、得られた情報を比較してみることも有効です。ただし、これらによって発見した課題があった場合においても、後にデータ等で裏付ける作業は必要になります。
・入社手続きの効率化
・1on1 の質の向上
・従業員情報の一元管理
・組織課題の可視化
組織課題の具体例
企業理念や経営戦略が共有されていない
企業理念や経営戦略が経営幹部から発表されても、現場社員にはそれらが遠い存在のように感じられる場合が少なくありません。現場の社員にとって、自分たちには無関係な題目のように見えてしまうのです。しかし、現場での業務推進や個々の判断において依拠すべき価値観がなければ、メンバーの行動は統一感を失ってしまいます。組織としての一貫性に欠け、顧客や市場、取引先等からの信用を得られず、ブランドも向上しません。経営戦略が共有されていなければ、多くの非効率を生む可能性もあり、実績も向上しない結果になってしまいます。
会社という組織として活動する以上、一定の価値観や行動原則がなければ、実績も上がらず、社会から認められることもないのです。したがって、企業理念や経営戦略の共有は非常に重要な組織課題であるといえます。多くの管理職は、このような会社の上位方針を自分の部下に浸透させることに腐心していることでしょう。しかし、企業理念や経営戦略などの文書を噛み砕いて説明するだけでは現場の社員に共有されることには繋がりません。大切なことは、各社員の置かれている立場において企業理念や経営戦略を理解することです。その理解を獲得するためには、管理職が個々の社員の日常的な職務を十分に理解し、会社の上位方針との結びつきをしっかりと説明することが必要となります。
人材が育たない
何度も研修を実施しているものの、目立った人材育成効果を実感できないということは比較的多いものです。対象の選定から研修の内容、その後のフォローアップ方法などから、どこに問題があるのかを精査しなければなりません。ただし、人材育成は研修だけで行われるものではありません。現場における日々の実践と結果からのフィードバックを繰り返すサイクルによって人が育っているというのも現実です。したがって、このような現場での日々の業務と研修内容をどのように結び付けるのかが課題であるという場合もあります。
また、明確な人材戦略がない場合や人材戦略があってもそれがチームの中に浸透していないという場合もあります。組織としてどのような人材を育てたいのか、育成した人材にはどのようなキャリアパスが用意されているのかなど、育成の考え方やそれを支える制度が社員に共有されていなければ人材が育つことはありません。
さらに、リーダーとなる人材がなかなか出てこないという課題もあります。個々のメンバーがプレイヤーとして一定水準以上の実力を持っていたとしても、メンバーをまとめて率いるような次のリーダーがなかなか育たないという場合です。これ多くの場合、経営層や管理職が次のリーダー候補を見つけていないことや、リーダー候補であることを本人や周囲に明示していないことなどが原因となっています。組織はあくまでも人が動かすものですから、人材育成がうまくいかなければ組織はうまく機能しません。メンバーの能力をいかに伸ばすか、どうやってリーダーを輩出していくのかは大きな組織課題であると言えるでしょう。
メンバー間の能力差が大きい
メンバーの能力が個々異なることは当然ですが、その差が開き過ぎていることは問題です。例えば、優秀なメンバーにばかり重要な仕事が割り振られ、その他のメンバーは目立たず、やる気を維持しにくい状況に追い込まれることがあります。あるいは、優秀なメンバーにばかり業務負担が偏ることで、不公平感が生じる場合やメンタルの不調に繋がる場合もあります。
もちろん、全メンバーが優秀なメンバーに並ぶほど成長すれば良いのですが、それはなかなか難しく現実的ではありません。大切なことは差が開き過ぎないことであり、そのためには、適切な教育体制やフォロー体制、研修システムなどが必要です。メンバー間の能力差が縮まると、組織全体の効率性は向上し、成果も上がります。また、組織としての一体感も高まり、人材育成に好循環をもたらすようになります。
メンバー間のコミュニケーションが停滞している
何か問題が起こった時、原因を突き詰めていくと、実はメンバー間のコミュニケーションに齟齬がある場合があります。場合によっては、コミュニケーション自体が存在しない、あるいは極めて少ないということもあるでしょう。このようなコミュニケーションの停滞は、メンバーの性格など偶然の要素に影響される場合もありますが、多くの場合は先輩と後輩、上司と部下といった異なる役割を期待されている人同士の間で起こりがちです。これは、チームの中に脈々と引き継がれている組織風土によって生じていることもあります。
部下が上司に相談をすることを遠慮してしまう、後輩が先輩になかなか指導を求められないなど、メンバー間の結びつきを弱め、人材育成にもマイナスになるような課題です。個々のメンバーの能力が高かったとしても、チーム内のコミュニケーション不足は業務の非効率を招きます。また、大きなミスを生じさせてしまう原因にもなり得るものです。組織が目標通りの成果を上げるために、コミュニケーションに関する課題には正面から取り組まなければなりません。
業務が非効率である
業務を効率的に進めることが大切であることは多くのメンバーが理解しています。しかし、実際の業務には多くの非効率が潜んでいることが少なくありません。たとえば、定期的に定型的な作業を行うことが決まっているにも関わらず、効率化できる部分を探ろうとせず、同じ作業を繰り返しているような場合です。あるいは、メンバー間で同じ作業を重複して行っているような場合もあります。他の担当者の成果物を待っている時間が無駄である場合もあるでしょう。これは、同じチームの中で起こっていることもあれば、複数のチームをまたいで起こっていることもあります。
このような非効率を解消していくためには、業務の棚卸しをして、無駄を発見したり、効率化できる箇所を探したりすることが必要です。また、複数のチームにまたがって非効率が生じているような場合には、リーダー間で調整をして解決する必要もあります。
業務の属人化が生じている
業務が特定の人にしかわからないものになっている状態を属人化といいます。特定の人以外が一切できない場合だけでなく、特定の人以外はあまりうまくできない状態にある場合も指します。業務の属人化が生じていても、その特定の人が極めてうまく業務を進めているうちは、問題が顕在化しにくいのが属人化のやっかいなところです。属人化という課題が表面化するのは、その特定の人が異動したり、退職してしまったりした時です。しかし、その時点で属人化の課題に気づいても対処は間に合わず、他のメンバーでは対応できない可能性もあります。したがって、組織に属人化の課題が生じていないかどうかは、平時においても意識しておかなければなりません。
属人化が生じるのは、業務の標準化が行われていないためです。そして、標準化が行われにくいのは、業務が専門的であると同時に、その業務を学ぶ人員が不足しているような場合です。したがって、直ちに属人化を解消することは難しいものの、マニュアルを整備するなどして対応していく必要があります。
目標達成スキルとマインドの不足
例えば、営業部門がわずかな売上目標未達を繰り返しているような場合、その原因をきちんと探っていくと、目標達成スキルや達成マインドが不足している場合があります。たとえば、目標未達を許容するようなムードがはびこっているなら、それは改めなければなりません。また、目標達成のための技術や工夫が不足しているような場合もあります。どのような組織にも目標はあり、組織の存在価値は目標を達成することにあります。もちろん、目標未達となる要因は組織の中にだけ求められるものではありません。市場の変化や競合の状況など、外部環境にも大きく影響されます。
したがって、目標未達が組織課題に直結するものなのかどうかは、複数の要素を確認しながら特定する必要があります。しかし、それが組織課題に起因するものであるなら、非常に深刻な課題として解決に向かわなければなりません。
組織課題の解決方法とは
取り組むべき課題を選び出す
同時に複数の課題を発見した場合でも、優先的に取り組むべき課題を決めて、1つずつ確実に対応していくことが大切です。一度に多くの課題を解決しようとすると、メンバーが対応しきれない可能性があります。同時並行して課題解決に取り組むと、どれも中途半端に終わってしまう可能性があるのです。通常は、組織目標達成の最も大きな障壁になる課題を選びます。しかし、それもケースバイケースであり、メンバーの意識向上が足りないような場合は、小さな課題から少しずつ解決していくという方法もあります。小さな課題を解決する成功体験を積み重ねることによって、メンバーの意識が変化し、大きな課題解決にも取り組めるように成長していくのです。
課題がなぜ生じているのか原因を特定する
次に、組織課題が生じている原因を特定することが大切です。表面的な現象にだけ目を奪われて、組織に潜む根本的・本質的問題を見逃したら、課題の解決には至りません。一時的に解決したように見えても、必ず同じことが起こります。組織課題が生じている原因の特定には、多角的な視点で課題を見ることが必要です。立場が異なれば原因の考え方が異なることも多く、解決案も異なるものになります。そこで、さまざまな立場、役割の人間が原因について考察し、意見を交わしながら、原因を特定していく作業が必要です。
解決方法を1つずつ試行する
組織課題の解決方法について、いくつものアイディアが出てくる場合があります。しかし、その場合でも、解決方法は1つずつ試してみるようにしましょう。同時に2つ以上の解決方法を試すと、良い結果が出た場合でもどちらの方法の効果なのか特定しにくくなります。メンバーの負担を考えれば、本当に効果があるものだけを残し、効果のないものは取りやめなければなりません。ですから、1つずつ方法を試し、効果を確かめることが大切です。
成果を確認し、方法を見直し、再試行する
組織課題の解決は課題の発見からはじまり、課題の発生原因の特定、解決方法の立案、実行、効果検証を1つのサイクルとして、このサイクルを何度も繰り返すことになります。仮説を立て、実践し、結果のフィードバックを得て再度仮説を立てるというプロセスによってのみ、組織は成長していきます。また、組織は個々の人間によって構成されている以上、固定的なものではなく、常に少しずつ変化しています。したがって、過去に正しいと思われたことが現在も正しいとは限りません。したがって、トライしては検証をするという繰り返しによって、より良い解決方法を実践していくことが重要です。
組織課題を解決するマネジメントとは
組織課題を解決するためには、管理職が組織を変えていく強い意思を持つことが必要です。その上で、組織変革に向けてメンバーに行動してもらうためのマネジメントスキルが必要となります。
メンバーによる課題の共有
まず、メンバーに対して明確に課題を提示することが必要です。何が課題なのか、なぜそれが課題なのか、この課題を解決するとどうなるのかを理解させなければなりません。また、上から押し付けられたものとしてではなく、メンバー自らも課題であると実感することが大切です。そのためには、課題そのものをしっかり腰を据えて議論することも大切です。本当に課題が存在するのか、課題がなぜ生じているのか、この課題によってどのようなマイナスが生じているのかなど、率直に意見を交換することによって、課題のアウトラインもはっきりしていきます。
そして、リーダーとメンバー、またメンバー同士が課題を共有することができれば、チーム内の信頼感が高まります。うまくいかない要因について共通認識を持ち、その課題を乗り越える意志を共有しているという信頼感が、率直な意見交換を支えます。互いに厳しい言葉を交わしても、それは組織課題克服という共通の目的のためなのだと納得することができ、より深い信頼関係を育むこと繋がっていくのです。
メンバーの主体性を引き出す
組織課題解決のための方法について、リーダーはメンバーの意見を積極的に取り入れるべきです。課題を共有しているという信頼関係に基づき、メンバーの声に耳を傾け、その意見を採用することによって、メンバーの主体性は向上していきます。自分自身にもチームを変える力があり、他のメンバーの役に立てるのだという意識は、大きく意欲を向上させていくでしょう。もちろん、すべての意見をそのまま取り入れることができるわけではありません。メンバー同士で話し合いをさせ、お互いに納得した上で採用した解決方法については全員で取り組みます。これによって、主体的なメンバーが結束するチームが築かれていきます。
メンバーが何をするべきかを明確にする
リーダーは、組織課題解決に向けてメンバーが何をするべきなのか、具体的に行動を指示さなければなりません。どんなに課題解決の必要性を強く訴え、それを理解してもらえたとしても、解決のための具体的な手段が明確でなければメンバーはうまく動けません。たとえば、チーム内のコミュニケーションが不足していることが課題である場合、「活発にコミュニケーションを取ってください」と指示しても、ほとんど意味はありません。この指示は「求める結果」を伝えているだけであり、その結果に至るためのプロセスを明示していないからです。
この場合、メンバーに指示すべきことは、ブレインストーミングをどれくらいの頻度で誰と行うべきなのか、先輩は後輩の業務進捗についてどのタイミングで確認し、具体的に何をチェックし、どのようなアドバイスを与えるべきなのかなどです。何を、いつ、どれくらい行うべきなのか、明確に指示することによって、メンバーは疑義なく行動することができます。リーダーの役割は、単に考え方を浸透させるだけでなく、メンバーの具体的な行動を促すことです。組織課題は、個々のメンバーの具体的な行動の積み重ねによってのみ解決されます。
少しずつ前進する
組織の中にある課題は、その時々の人間関係やそれまで歴史、個々のメンバーの能力差やモチベーションの違いなど、さまざまな要因が絡み合っています。したがって、組織課題を発見し、解決方法を思いついたとしても、すぐに課題解決に至ることは稀です。組織課題の解決は一朝一夕にはいかないのだということを理解した上で何度も試みながら、少しずつ前進していくという考え方で取り組む必要があります。いきなり大きく前進することをメンバーに求めても、負担感が強くなるだけです。小さな全身を繰り返すことによって結果的に遠くまで進むことができます。うまくいくまで何度もやるという共通した意志の下で、継続した取り組みを行うことが、組織課題解決に繋がるのです。
まとめ
組織課題を乗り越え続けることが会社成長の鍵
組織課題の発見や解決は難しいものです。また、組織課題の解決には、リーダーのマネジメントスキルによってメンバーを巻き込み、主体的な行動を促すことも重要です。大変な取り組みですが、組織課題の解決なくして会社の成長はありません。まずは組織課題の発見に努め、原因を特定し、メンバーを巻き込みながら、解決方法の実践を繰り返してきましょう。