返報性の原理とは? 4つのパターンとマーケティング・恋愛への活用法

返報性の原理とは?

心理学とは、人間の心理や行動を科学的に解明する学問のことです。人と人とが関わるケースが多いビジネスシーンにおいても、相手の気持ちを考える必要があり、心理学の知識を応用するケースは少なくありません。

「返報性の原理」もマーケティングの際に用いられることもある心理作用です。

また、返報性の原理はビジネスシーンだけでなく、恋愛等にも応用できるため、返報性の原理の知識があれば、日常生活のさまざまなシーンで役立てることができるでしょう。

今回は、返報性の原理の基礎知識や活用法についてご説明します。

返報性の原理とは

返報性の原理とは、どのような心理効果を指す言葉なのでしょうか。

「返報性の原理」の意味・定義

「返報性の原理(へんぽうせいのげんり)」とは、相手から何かをしてもらったとき、何かを受け取ったときに、自分も相手に対して「お返しをしたい」と感じる心理効果を指します。

英語では「norm of reciprocity」と表現され「norm」は規範、「reciprocity」は相互関係や相互利益などを意味します。

例えば、店頭でのワインの試飲会を例に考えてみましょう。

先に勧められたワインが好みでなかった場合でも、店員から違う種類のワインを次々に勧められると「こんなによくしてもらったのだから、何か1つは買わなければ申しわけない」と感じることがあります。このように好意を受け取った際に、相手にお返しをしたいという気持ちを抱く心理状態が、「返報性の原理」です。

お返しをしたいという「返報性の原理」は、好意に対してだけ該当する効果ではありません。

誰かから嫌がらせ行為を受けた場合、相手にも報復したいという気持ちが生じることがあります。このように敵意に対し敵意で返したいと思う心理も、返報性の原理に基づいたものです。

なぜ人はお返しをしたくなるのか

「reciprocity」は相互関係や相互利益を表す言葉です。

そのため、相手から何かをもらったらお返しをしたくなり、反対に相手に何かを与えた場合にはお返しを期待する心理効果も含まれます。

「返報性の原理」は、あらゆる文化を超えた社会通念の1つであり、人間の社会的行動の根本動機の1つであると考えられています。

重要なのは、この心理作用が意識的ではなく、無意識のうちに心に刻み込まれているという点です。

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返報性の原理の4つの基本パターン

返報性の原理は「好意の返報性」「敵意の返報性」「譲歩の返報性」「自己開示の返報性」の4つのパターンに分けられるとされています。

好意の返報性

好意の返報性とは、相手から何らかの好意を受け取った際に、お返しをしたくなる心理のことです。

旅行のお土産をもらった相手には、自分が旅行に行ったときにお土産を買い、お返しをしたくなるでしょう。また、親切にしてくれた相手には自分も親切にしてあげたいと思うのではないでしょうか。

反対に、相手に好意を抱いてほしい場合は、自分から好意を示すことで、好意のお返しをもらえる可能性が高くなるといえます。

SNSには「いいね」機能が付いています。

自分の投稿に「いいね」を押してくれた相手には、お返しとして「いいね」を付けることが多いでしょう。

この行為も相手の「いいね」を押すという好意に対し、好意で返す好意の返報性に該当します。

敵意の返報性

敵意の返報性とは、好意の返報性とは反対に、相手が敵意を示した際に敵意で返したくなる心理状態を指します。

ネガティブな感情を受けたり、嫌な行為を受けたりしたときに抱く、自分も同じように仕返しをしたいと感じる心理効果が敵意の返報性です。

例えば、誰かとケンカになり、相手から嫌な言葉をぶつけられると、自分も相手をけなすような言葉で言い返したくなるでしょう。また、相手が挨拶をしないときや、失礼な態度をとる場合には、自分も同じような態度で返したいと思うことがあるはずです。

敵意の返報性は、直接相手に返すものばかりを指すわけではありません。接客態度の悪い飲食店を訪れた場合などは、インターネット上の口コミに悪い評価を付けるケースもあるでしょう。このような敵意のお返しも、敵意の返報性から行われる行為です。

譲歩の返報性

譲歩の返報性とは、自分のために譲ってくれたことに対して、自分も相手の譲歩に応えなければならないと感じる心理効果です。

譲歩の返報性は、ビジネスシーンでもよく用いられるテクニックでもあります。

例えば、購入を迷っている商品があった場合に店員が特別に値引きをしてくれると、値引き後の額が想定した以上の金額であっても「値引きをしてくれたのだから買った方がよいのでは」と考えるケースが多くなります。

また、何らかの交渉をするシーンでも相手が先に条件の譲歩をしてくれたら、自分も何かを譲歩しなければと思うケースもあるでしょう。

譲歩をしてくれた相手の好意にお返しをするという点においては、譲歩の返報性は好意の返報性に近い心理効果だと考えられます。

自己開示の返報性

自己開示とは、相手に自分をさらけ出すことです。

相手が心を開き、自分に本心を見せた場合は、自分も相手に心を開いて対応したいと思うようになります。

この心理効果を自己開示の返報性といいます。

相手がオープンな性格で、自分のことを話してくれると、相手に合わせて自分のことも話したくなる経験がある方も多いのではないでしょうか。

ビジネスシーンにおいても自分の気持ちをオープンにすると、相手も安心して自分の情報を開示するようになります。

例えば、初対面の人に自分の出身地を伝えると、相手も自分の出身地について話し、場が和むケースがあるでしょう。相手に開示してほしい情報があれば、自分から先に情報を開示すると、相手から同等の情報を引き出しやすくなります。

返報性の原理の具体的な活用法

返報性の原理を活用すれば、さまざまなシーンにおいて相手との良好な関係性を築きやすくなります。返報性の原理の具体的な活用法を3つのシーンに分けてご紹介します。

恋愛

恋愛の対象となる相手のよいところを褒めると、相手も受け取った好意に対して好意を返したくなるため、自分によい印象を抱いてもらいやすくなります。

また、親切にされると相手にも親切にしたくなるため、気になる相手がいれば、笑顔で親切な言動を心掛けると相手からもよい反応を得られるでしょう。

さらに、小さなものでも贈り物をすると、相手もお返しをしなければという意識が働くため、贈り物をきっかけに関係性が発展する可能性もあります。

そのほか、相手のことをよく知りたいときには、自己開示の返報性を使い、まずは自分からプライベートな話をしてみましょう。相手も心を開きやすくなり、聞きたい情報を得られるようになって、会話が弾む可能性があります。

マーケティング

マーケティングでは、返報性の原理を活用したテクニックが頻繁に用いられています。

例えば、無料体験の提供は、好意の返報性を活用したものです。学習塾やエステティックサロン、スポーツジムなどで、初回の体験を無料に設定しているケースも多いでしょう。

この無料体験は「無料で体験できたのだから、お返しとして入会しなくてはならないのでは」という利用者の心理に期待した取り組みだといえます。

また、商談の際に手土産を持参するケースもあるでしょう。

これも、お土産を渡すという好意的な行動に対して相手が好意を抱くことを利用した交渉テクニックです。

そのほか、SNSなどを活用した情報提供も、無料でよい情報を提供することで相手に好意を抱かせ、中・長期的に商品やサービスの売上につなげようとするマーケティング手法の一つです。

人事領域

返報性の原理は、人事領域でも活用できるものです。

好意の返報性により、人は自分に好意を抱く相手に対し、自分も好意を抱くようになります。したがって、チームをまとめるリーダーや上司は、メンバーや部下に対する期待を伝えたり、努力をしていること、よくできていることなどを褒めたりすると、相手も好意を持ってリーダーや上司を受け入れるようになるでしょう。

また、面談の際には、自己開示の返報性が役立ちます。

相手の本音を引き出したい場合は、先に自分の情報を開示すると、相手も心を開き、自分のことを話しやすくなります。

特に、新入社員や若手社員などと向き合うときには、上司から自分が入社したばかりの頃のエピソードなどを話すと、部下も自分の悩みや考えについてスムーズに打ち明けやすくなるでしょう。

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返報性の原理を活用する際の注意点

返報性の原理は、さまざまなシーンで活用できるものですが、活用にあたっては次のような点に注意しなければなりません。

過度な期待や強制を避ける

返報性の原理は、相手の好意に対して好意でお返しをしたいといった心理効果です。

しかし、相手に過度な期待をしたり、強制的なお返しを求めたりする場合、嫌悪感を抱かせ、関係性を悪化させる恐れがあります。

例えば、無料体験に申し込んだ客にしつこく勧誘をしたり、自己開示の返報性を期待して自分の情報を開示したのに、心を開かない部下から無理やり情報を引き出したりといった行為は控えなければなりません。

返報性の原理を活用する際には、「相手に喜んでもらう」という気持ちを第一に考えることが大切です。

ネガティブな返報性を防ぐ

返報性の原理は、ポジティブな事象だけが対象になるわけではありません。

敵意の返報性があるように、相手にネガティブな印象を与えてしまった場合は、敵意が返ってくる場合があります。

また、自分は好意のつもりで行った行為でも、相手にとっては迷惑になってしまうケースがあります。

例えば、出張の際に、よかれと思って高価なお土産を買ってきた場合、受け取った人は自分も相応のお返しをしなければならないと思う可能性があります。

また、ビジネスシーンにおいても、高価な手土産などを持参すると、見返りを求めているのではと不信感を抱かせる恐れもあるでしょう。

相手との関係性や相手に与える負担を考慮しない場合、好意が好意として受け止められない恐れがある点にも注意が必要です。

相手の反応を考慮する

恋愛に返報性の原理を活用し、相手に好意を示す場合でも、相手から好意が返ってこない場合があります。

そのような場合、一方的に好意を示し続けると、かえって相手に負担をかけ、悪い印象を与えてしまう恐れがあります。

また、ビジネスにおいても相手の反応を確認することが重要です。

例えば、何度も無料体験を呼びかけても相手からよい返答がない場合などは、相手は自社が提供しているサービスに関心がないと考えられます。

前向きな反応がないにもかかわらず、相手にオファーを出し続けても悪い印象を与えてしまうだけです。

返報性の原理を活用する際には、相手の反応を見極め、一方的に好意を与えるのではなく、相手との温度差を考え、バランスを意識することが重要です。

ビジネスで活用されるその他の心理効果

返報性の原理以外にもビジネスシーンでは、さまざまな心理効果が活用されています。主な心理効果を3つご紹介します。

類似性の法則

「類似性の法則」もビジネスシーンでよく用いられる心理効果です。

類似性の法則とは、自分との共通点を見出したときに、相手に対して親近感を覚えるという心理的な作用を指します。

例えば、共通の知り合いがいる場合や同じ大学の出身であったことが発覚した場合などは、相手に対して親近感を抱くようになるでしょう。

商品やサービスを紹介する場合にも、導入事例や利用者の事例を掲載するケースが見られます。それは、同じ悩みを抱えている企業や、自分に似た年齢や状況の事例が記載されていると、類似性の法則が働き共感を招くため、顧客が商品やサービスを好意的に検討するようになると期待できるからです。

また、プロモーションに一般の人を起用すると、有名タレントなどを起用する場合に比べ、類似性の法則が働き、自分にも合っている商品やサービスなのではないかと思わせる効果を期待できます。

ハロー効果

「ハロー効果」とは、対象となるものを評価する際に、目立つ特徴が印象に大きな影響を与え、全体の評価が歪んでしまう傾向を指す言葉です。

「halo」とは、後光や円光などを意味する言葉で、後ろから光が差すことで対象が本来の価値以上に輝き、優れているように錯覚してしまう効果をハロー効果といいます。

例えば、洗練された雰囲気のお店に置かれている商品は、実物の価値以上に上質なものに見えることでしょう。

また、商品やサービスのイメージに近い、著名なタレントやスポーツ選手を広告に採用すると、ハロー効果によって実際の商品やサービス以上によい印象を与えられる可能性があります。

しかし、ハロー効果には注意点もあります。「高学歴の人材はそれだけで仕事ができる人材であるに違いない」といった評価や「高いスキルがあるから業務の成果も高いはずだ」といった、歪んだ評価につながる恐れがあるのです。

人事評価の場合などは、ハロー効果を避け、的確かつ公正に評価をしなければなりません。

<関連記事>ハロー効果とは?類似した現象との違いや例を含めてわかりやすく解説

ウィンザー効果

「ウィンザー効果」とは、当事者が発信する情報よりも、第三者が発信した情報の方が信頼できるものだと感じる心理的な作用です。

例えば、美味しいレストランを探しているときに、お店側が美味しい料理を提供していると情報発信をしても、口コミやレビューに記載された情報の方を信頼する人が多くなるでしょう。

口コミやレビューは当事者ではなく、お店を利用した第三者の意見であり、日常生活においても無意識のうちにウィンザー効果が働いているのです。

ウィンザー効果は、マーケティング戦略によく用いられています。利用者や購入者のアンケートを実施し、その結果を宣伝に利用しているケースを見かけることも多いでしょう。これはウィンザー効果を活用し、第三者の意見を公表することで商品やサービスの信頼性を高める効果を期待したものです。

<関連記事>ウィンザー効果とは?職場や恋愛で活用するポイントをわかりやすく解説

まとめ

「返報性の原理」とは、人は好意に対しては好意で、敵意に関しては敵意でお返しをしたくなるという心理効果を指す言葉です。

返報性の原理は、恋愛やビジネスにも活用できるものであり、相手に適切な形で好意を示すと相手にも好意を抱いてもらいやすくなります。

返報性の原理は、マーケティングや人事領域において活用しやすいものですが、お返しを過度に期待したり、相手の負担になるような形で好意を示したりすると、かえって逆効果を招く恐れがあります。

返報性の原理を活用する際には、相手との関係性も見極めながら、相手の反応にも配慮して活用することが大切です。

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働きやすい職場環境を整備するためには、定期的に1on1ミーティングなどを実施し、部下の悩みに寄り添いながら、成長をサポートすることが大切です。

面談時には情報開示の返報性を活用すると相手の本音も引き出しやすくなりますが、継続したサポートを実施するためには、面談の実施状況や目標変更の履歴などの蓄積も必要でしょう。

HRMOSタレントマネジメントは、1on1の実施状況も記録できる従業員情報の一元管理システムです。返報性の原理を活用した人材育成をお考えの際には、HRMOSのタレントマネジメントをご検討ください。

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