人材育成のポイントとは?考え方や指導のコツを紹介

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なかなか従業員が育たない、離職者が多く慢性的な人手不足に悩んでいるなど、企業では人材に関する悩みが尽きないものです。このような課題をどうしたら解決できるのか、頭を抱える人事担当者も多いのではないでしょうか。効果的な人材育成をするためには、いくつかポイントがあります。そこで、この記事では人材育成における課題や代表的な施策、実施する際のポイントについて解説します。

そもそも人材育成とは?

そもそも、企業における人材育成とはどのようなものなのでしょうか。意味や似ている言葉との違いを確認していきましょう。

人材育成とは

人材育成とは、主に企業が掲げるミッション・目標の達成、業績アップなど、経営に貢献する社員を育成することをいいます。基本的に短期間ではなく中長期的に社員を在籍させ、ゆくゆくは企業の中核を担う戦力として育成することが理想的です。

人材開発や能力開発との違い

人材育成と似ている言葉に「人材開発」「能力開発」などがあります。これらは意味を混同されがちですが、それぞれ異なる意味があります。それぞれの意味を知り、適切に言葉を使い分けられるようにしましょう。人材開発や能力開発とは、社員のもともと持つ能力やパフォーマンスを引き出して向上させることを主な目的としています。人的資源を成長させるという意味合いでは、人材育成と大きな違いはありません。しかし、人材育成は階層や部門など「組織」を対象とすることが多い一方、人材開発はポテンシャルや資質など「個人」を対象とすることが多い傾向です。したがって、それぞれフォーカスする対象が異なります。

人材育成でよくある課題とは

人材育成の必要性や重要性はよく理解しているはずなのに「なぜかうまくいかない」と悩む企業も少なくありません。そこで、ここでは企業の人材育成でよくある課題を紹介します。

人材育成をするための時間を確保できない

よくある課題の一つとして、まず挙げられるのは「人材育成に充てる時間が足りない」ことです。多くの企業において、担当者は人材育成だけをしているわけではありません。通常の業務に加えて、人材育成を行っているケースが一般的でしょう。このような状態で業務を両立させようとしても、目先の仕事で手一杯になってしまい、結果として人材育成にまで手が回らないケースも多いのです。人材育成は長期的に見れば、後回しにしていい業務とはいえません。担当者は人材育成の重要性をしっかりと理解し、時間が足りない場合は業務量を調整してもらうなどの工夫が必要といえます。

育成側のスキルや自覚が不足している

なかには担当者そのもののスキルや自覚が不足しており、人材育成が進まないケースもみられます。人材育成の重要性をそもそも理解していなかったり、正しい育成方法を把握していなかったりすると、当然人材は育っていきません。新入社員など、どんなに育成される側にやる気があったとしても、指導者にふさわしいスキルや自覚が備わっていなければ、成果は期待できないでしょう。この場合は、まず人材育成担当者の考え方やマインドを変える必要があります。研修を実施する、マニュアルを読み込ませるなど、育成に必要なスキルや自覚を身につけさせることが肝要です。

人材育成に注力しても評価につながらない

意外と多いケースが「人材育成が評価されない」という課題です。人材育成は営業などのように数字に反映されにくく、評価が難しいという側面があります。しかし、どれだけ熱心に人材育成をしても、その行為が評価されなければ担当者もやる気がなくなってしまいます。「どうせ頑張っても会社は評価してくれない」など不信感が募り、結果として仕事のパフォーマンスが下がってしまう原因につながるのです。人材育成担当者の頑張りや成果をきちんと評価できる環境が整っているか、企業は評価制度の見直しや改善を行いましょう。

人材育成をする主な目的とは

そもそも人材育成はどのような目的で行われるのでしょうか。ここでは、人材育成を実施する主な目的を紹介します。

組織をさらに成長させる

人材育成の主な目的は、社員を育成し組織をさらに成長させることです。社員の潜在的な能力を底上げし、それが企業に還元されれば、業績の向上が期待できます。企業の経営目標を達成させ、さらなる成長を遂げるために、人材育成は欠かせない要素なのです。

幹部候補を育成する

新人社員や若手社員の育成は、通常3カ月~1年程度の期間で計画されることが一般的です。一方、幹部や管理職候補の育成には、3~10年など長期的な期間が必要になります。役員や幹部は企業に大きな影響を与える存在です。こうした幹部や管理職候補の育成は、組織の未来を考えるうえでも重要なこととなります。

離職を防ぐ

人材育成は離職を防ぐ目的もあります。人材育成に注力し、成果が出ると社員にもどんどん大きな業務や役割を任せられるようになります。すると、社員はやりがいを持って仕事を継続していくことができるのです。このように、成長できる環境が整っていると従業員のモチベーション維持や向上などに役立ちます。その結果、有能な人材が他社に流出する事態を避けられ、離職率の低下につなげられます。

生産性を向上させる

人材育成は各社員の能力を底上げする効果を期待できます。こうしたアプローチは個々の能力向上に限らず、ひいてはチームの連携強化などの効果も見込めます。その結果、業務効率が上がり、生産性アップにもつながっていくでしょう。

組織の方向性やゴールを周知させる

組織としてどのようなゴールを目指しているのか、どのようなミッションがあるのかなど、価値観や行動規範は企業運用の核となる部分です。人材育成を通じるなかで、社員に自社の大切にしていることや思い描くビジョンをきちんと伝えることができます。価値観や行動規範を浸透させることで、社員は「自分は何ができるのか」「企業は何を目指すべきか」など、主体的な考え方を身につけられるようになります。

人材育成をするうえで大切になる考え方

人材育成に取り組む際、意識したい考え方がいくつかあります。具体的にどのようなものか、人材育成で大切になる考え方を見ていきましょう。

VUCA時代を意識する

VUCAとは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字をとって作られた言葉です。一般的には未来や環境変化を予測しにくいことを指し、VUCA時代におけるビジネスでは、経営者やベテラン社員でもわからないことが多くなっています。こうした環境変化が激しいなか、柔軟に対応できる組織をつくるためには、社員の主体性やチャレンジ精神を育むことが不可欠といえるでしょう。だからこそ、企業理念や価値観を浸透させ、主体的に動ける人材を育成することを意識する必要があります。

言動に一貫性を持たせる

人材育成をするうえで、重要になるのが一貫性のある言動を心がけることです。もし人材育成担当者の言うことに一貫性がなかったり、口だけで行動が伴わなかったりすると、育成される側は不信感を抱きます。その結果、人材育成の効果が損なわれてしまう原因になるのです。成果を出すためにも、指導する側は言動に一貫性を持たせましょう。

部下や新入社員が相談できる環境をつくる

人材育成では部下や新入社員が話しやすく、相談しやすい環境をつくることが必要です。なぜなら、部下や新人の育成では、相談を通じて解決できる悩みや課題が多いためです。ところが、上司などに相談できる環境が構築されていないと、部下や新人は一人で悩みや課題を抱え込んでしまいます。すると、成長が思うように進まなくなる原因になるのです。スムーズな人材育成を目指すためにも、環境整備を行いましょう。

長期的な目線で人材育成に取り組む

人材育成をする際、注意したいのが「すぐに成果を求めない」ことです。人材育成は思うようにならないことも多々あります。なぜなら、指導する側もされる側も人間であるためです。いくら綿密に計画を練ったとしても、人には相性があります。それに、飲み込みが早い人もいれば、遅い人もいるでしょう。長所や短所も人によって異なるため、ときには育成がうまく進まなかったり、成長が停滞したりする可能性もあります。このようなときに、短期的な視点で育成を行うと落ち込んだり途中で諦めたりする原因になり得ます。人材育成に焦りは禁物です。数カ月、数年後など、長期的な視点でじっくりと成長を見守りましょう。

階層ごとに人材育成を行う

人材育成と一口にいっても、階層によって適した育成方法は異なります。これは階層ごとに必要とされる能力が変わってくることが理由です。たとえば、新卒を指導するのと管理職を指導するのでは、教える内容もスタンスも大きく異なるでしょう。したがって、人材育成をする際は、まず指導を受ける社員がどの階層や立ち位置なのかを把握することが重要になります。

人材育成をするための基本的な始め方を4ステップで解説

実際に人材育成をしようと思っても、いざとなると何から始めればいいのかわからず困ってしまうケースも少なくありません。そこで、ここでは基本的な人材育成の始め方を4つのステップに分けて解説します。

ステップ1. 課題を把握する

人材育成は、まず「課題を把握する」ことからスタートします。そのためには、社員がどのような業務を行っているのか、正確に把握することが肝心です。把握できたら、生産性や効率などを考えていきましょう。業務の重要度に対し、割り振られている労働時間や経費が適切かどうかチェックします。また、各社員のスキルを整理し、その能力を生かすための適切なポジションに配置できているかどうか、確認することが重要になります。

ステップ2. 自社にとって理想の人材を洗い出す

企業の成長のためには「どのような人材を求めているのか」を知ることが肝要です。企業の現状を整理し、理想と現実のギャップについて考えてみましょう。そして、そのギャップを埋めるためにはどのような人材が必要なのか、具体的にイメージしていきます。これにより、必要な人材の理想像が明確になっていきます。なお、人材育成はきちんと計画を立てることも重要です。ただ思いつきで育成に着手するのではなく「3年以内にはマーケティングに特化した人材を2人以上生み出す」など、具体的な数字を盛り込んで目標を設定しましょう。自社で将来どのような人材に活躍してほしいのか整理することで、実施すべき育成方針がはっきりとしてきます。

ステップ3. スキルマップを作成する

企業のギャップが明確になれば、現状として不足しているスキルや意識などがおのずと見えてきます。この段階で、スキルマップを作成することがおすすめです。スキルマップとは、社員一人ひとりもしくは組織が業務を行うにあたり、必要なスキルを有しているか可視化するツールをいいます。その際、重要になるのがゴールを踏まえてスキルマップを作ることです。いつまでに何を、どのようにしたいのか、整理しつつスキルマップを作っていきましょう。

そして、最終的には予定通りにゴールを迎えられるよう、どのような人材育成の制度と仕組みを構築すべきか考えます。どのような頻度で研修を実施するか、またどのような担当者を任命するかなど、人材育成を実際に実行できる状態へと計画を練っていきましょう。

ステップ4. 効果測定と改善点の洗い出しをする

人材育成はただ計画通りに実践するだけではなく、効果を測定することがポイントとなります。カリキュラムに沿って人材育成をした結果、実際にスキルは向上したか、企業の利益になっているかなど、多角的な観点から効果を測定しましょう。数値化できる変化だけではなく、仕事に対する積極性など、育成される側の勤務態度やモチベーションにも注目することが大切です。また、育成の結果を分析したあとは改善点を探していきましょう。この一連の流れによって、人材ひいては企業の成長につなげることができます。

人材育成のための代表的な施策・手法を5つ紹介

人材育成といっても、さまざまな施策や手法があります。それぞれ企業によっても合う施策や手法が異なるため、自社に適切な方法を選択することが大切です。そこで、ここでは人材育成の際に用いられる、代表的な施策や手法を厳選して5つ紹介します。

OJT

OJTとは、日常的な業務を遂行しつつ行われる人材育成方法を指します。具体的には、上司や先輩社員が日常業務を行いつつ、その仕事の取り組み方や作業手順などを指導します。業務における基本的な指導を行うため、主に新入社員が対象です。OJTのメリットは即戦力を育成できること、コストカットを見込めることです。OJTは実際の業務に携わることになるため、現場ですぐに活躍できるスキルや知識が身につきます。また、指導者は社員となるため、わざわざ教育のための時間や場所を設けずに済み、コストを安く抑えられます。

一方、上司や先輩社員が育成担当となるため、知識や指導方法に偏りが出やすいことが難点です。プロの講師ではないため、指導スキルによっては思うように育成が進まない可能性があるでしょう。

OFF-JT

OFF-JTは通常業務を離れて、集合研修や座学を通じて行われる人材育成方法のことです。たとえば、専門講師に依頼して特定の知識習得を目指し、指導を受けるケースなどが挙げられます。特定の知識やスキルを学ぶことになり、中堅社員から新入社員までさまざまな人が対象となります。メリットは均等に教育を受けられることです。プロの講師に依頼するため指導者のスキルのばらつきが少なく、むらのない教育を行えます。

一方、講師に依頼するためのコストがかかるというデメリットがあります。育成のための時間や設備費なども発生するため、実施の際はあらかじめコストを計算しておきましょう。

自己啓発

自己啓発とは、自分の意志で習得したい知識やスキルを主体的に学習するものをいいます。たとえば、社内外の勉強会に出席する、業務に関する資格を取得することなどが挙げられます。メリットは自由度の高い学習ができることです。自分で内容や時間を決められるため、無理なく学習を継続しやすい傾向にあります。一方、社員によって習熟度がばらつきやすいことが難点です。社員によってもやる気や取り組み方は異なります。それぞれモチベーションが異なるぶん、身につく知識やスキルにも差が出やすいのです。

集合研修

集合研修は、外部講師を招いて目的に沿った指導を行う人材育成方法をいいます。たとえば、外部講師を招き、新入社員を対象にマナー講習を行うものが該当します。メリットは学習に集中しやすいこと、効果的に知識やスキルを深められることです。集合研修は通常業務から離れて行うため、安心して学習に注力できることが魅力です。また、専門の講師から指導を受けることで、効率的に深い知識やスキルを習得できます。一方、学習の時間や場所が限定されることがデメリットです。たとえば、外回り業務のある営業職などは、学習の時間を確保することが難しい場合があるでしょう。

eラーニング

eラーニングはインターネット上で学習できる人材育成方法をいいます。たとえば、オンラインツールを組織内に導入し、社員が好きな場所やタイミングで学習を行うことができます。社内に限らず、離れた場所でも学習できることがメリットです。好きな時間や場所を選び、自分のペースで学習を進められます。一方、ツールなどを導入する手間や費用がかかることがデメリットです。そのほかにも、必要に応じて教材費用などが発生する可能性があります。

階層別の人材育成のポイント

人材育成は階層別に実施することが重要になります。どのような点を意識すれば良いのか、ここでは階層別に人材育成をする際のポイントを解説します。

新入社員の育成方法

新入社員を育成する際は「基礎から教える」「価値観の違いを理解する」ことがポイントです。新入社員は業務経験がなく、当然社会人の基礎もわかっていない状態です。社会人にとっての「当たり前」が通用しないことを前提とし、教育する必要があります。基礎の基礎から丁寧に教育するという姿勢を意識しましょう。また、重要になるのが世代による価値観の違いを受け入れることです。世代によって物事の考え方が異なる可能性があります。その世代の考え方や捉え方を頭ごなしに否定するのではなく、理解しようとする姿勢が求められます。

中堅社員の育成方法

チームを率いる機会も増えてくる中堅社員は、管理職へのステップアップも視野に入れた育成がポイントとなります。重要になるのは「マネジメント能力を鍛える」「難易度の高い挑戦をさせる」ことです。中堅社員はリーダーとなる立ち位置にいても、まだ自ら行動してしまう人も少なくありません。そこで、個人ではなくチームとして成果を生み出す能力を鍛えられるように工夫することが求められます。ポジションを移動させる、マネジメント研修を実施するなどの方法で育成しましょう。

また、身の丈以上の業務を経験させることも良い方法です。これまでよりも難易度の高い業務をアサインすることで、自分に足りない部分を自覚できたり、成長実感を得られたりするなどの効果を期待できます。

管理職の育成方法

管理職は組織全体の能力に影響をおよぼすポジションだからこそ、しっかりと育成する必要があります。ポイントは、サポート体制を充実させることです。管理職は部下の育成などに注力し、自分のスキルアップにあてる時間を確保できないケースが多くみられます。管理職が自分のために時間を使えるよう、企業はサポート体制を手厚くしましょう。業務負担を軽減するための施策を講じたり、忙しいなかでも受講できる管理職向けの育成プログラムを導入したりすることも一案です。

人材育成を成功させるためのコツ

人生育成を成功させるためにはコツがあります。ここでは、効果的な人材育成を行うためのコツを紹介します。

目標を明確にする

人材育成を成功させるためには、まず明確な目標を提示する必要があります。目標が定まっていなければ、育成される側はその学習に何の意味があるのかわからず、モチベーションを維持できません。意味が理解できなければ、育成のために長時間拘束されたり、先輩社員から注意されたりするなど、マイナスの捉え方をしてしまう可能性があります。目標を明確に提示することによって、教育の重要性を理解してもらうことができます。その結果、より真剣に学習に取り組んでもらえるようになり、成果にもつながりやすくなるのです。

現場で実践できる内容にする

人材育成の効果を引き出すには、現場で実際に実践できる内容にすることが重要です。難しい説明をされても、指導された側はそれをすぐに現場で生かせるわけではありません。そのため、まずはすぐに現場で実践できるタスクに落とし込むことが肝要です。まず「最先端のIT知識を身につける」「トークスキルを磨く」など、わかりやすいタスクにしましょう。すると、指導される側も自分が何をすべきか、何を求められているのか明確に把握でき、行動に移せるようになります。

社員目線で人材育成を実践する

人材育成は社員目線で行うこともポイントです。企業の上層部目線で教育を行っても、なかなか理解や共感を得ることは難しいものです。そこで、社員の目線を意識し、教育の目的をしっかりと伝えるようにしましょう。人材育成は従業員のために行っているものだと、納得してもらうことが重要になります。

自社オリジナルのカリキュラムを考える

大手企業の実践例やトレンドの施策などをただ自社に取り入れても、同様の成果を得られるとは限りません。なぜなら、企業によって在籍する社員の属性や抱えている課題、適した人材育成の方法もそれぞれ異なるためです。そのため、安易に既存のカリキュラムを取り入れるのではなく、なるべく自社のオリジナルのカリキュラムを用意することがポイントとなります。まず自社が直面する課題を洗い出し、そこから適切な人材育成計画を考えていきましょう。

まとめ

ポイントを押さえて人材育成を成功させよう!

人材は企業にとって宝ともいえる存在です。企業の将来を担う人材を確保するためにも、しっかりと計画を立て、階層別に適した人材育成を行う必要があります。なお、人材育成の際は言動に一貫性を持つこと、長期的な視点で取り組むことなどがポイントとなります。また、実際に人材育成を実施する前に、自社の課題を洗い出し、オリジナルのカリキュラムを考えるようにしましょう。