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こんにちは。「HRMOS(ハーモス)タレントマネジメント」のHRMOS TREND編集部です。
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近年、アジャイル組織という言葉を耳にする機会が増えています。この言葉は、システムやソフトウエアの開発手法であるアジャイル開発が起源です。しかし、現在では開発の場面に限ったものではなく、組織のあり方としてさまざまな場面で使われる言葉になっています。この記事では、アジャイル組織が従来型の組織と異なる点、また、アジャイル組織への移行方法について説明します。
アジャイル組織とは何か
アジャイル組織とは、柔軟さや俊敏さの高い組織を指します。綿密な計画を立てて、それにきっちりと従うやり方ではなく、実行しながら改善や修正を重ねていくというやり方を採る組織です。適宜改善を重ねながら進むことを前提にしているため、素早い意思決定が行われます。また、スピード重視の観点から現場の判断を尊重するため、トップダウンではなく、現場のメンバーに一定の意思決定の権限が与えられるのも特徴です。これまで日本企業に多かったのは、中央集権的な意思決定のシステムです。これは、上から下に向けた権限序列を持っており、ビラミッド型組織と呼ばれます。アジャイル組織は、組織構成から運営のあり方、業務の進め方などにおいて、このピラミッド組織とは大きく異なるものです。
なぜアジャイル組織が求められるのか
アジャイル組織という言葉の起源であるアジャイル開発は、変化が早い顧客ニーズに対応して即座に商品・サービスが提供できるように考えられた手法です。プロジェクトの進め方としては、仕様を大まかに設計し、必要最低限の人員を集めて小規模単位のチームを作った上で、開発・実装・テストを繰り返します。これに対する従来型の開発手法はウォーターフォール開発と呼ばれるものです。最初に全体の仕様を隅々まで細かく設計し、作業工程を細かく決め、稀にしか仕様変更を行いません。ウォーターフォール開発は、顧客ニーズが既に定まっており、必要な品質や納期を守ることを重視する場合に用いられる手法です。
ウォーターフォール開発では、企画・設計・実装・テストといった各役割に応じて組織が分かれています。これに対して、アジャイル開発では、企画・設計・実装・テストの各部門から必要最低限の人員集めてチームを編成します。そして、リリースを短期間に繰り返し、顧客のフィードバックを受けては改善・修正を行い、再度リリースするということを繰り返します。このサイクルによって、より良いサービス・商品を提供しようという開発手法です。
このようなアジャイル開発の考え方が取り入れられた組織がアジャイル組織です。アジャイル組織は、変化に素早く対応しなければならないというビジネスの現代的ニーズに対応して求められてきました。人々の価値観が多様化し、個々人が自由に情報を発信し取得できるようになった現代社会では、社会の変化のスピードも以前に比べて早くなっています。この素早い変化に対応して、業務を行い、商品やサービスを刷新していくためにアジャイル組織が求められるようになったのです。
GoogleやAmazon、UberやAirbnbなどは、誰もがコンピュータやスマートフォンを使用し、インターネットが当たり前となるという世界の変化に応じて、新たなサービスを次々と生み出し大きな成長を遂げてきました。このような市場の変化に鋭く反応することで、市場の上位を占めるに至ったこれら企業の動向を、既存の企業が黙って見ているわけにはいきません。社会の変化、市場の変化、また競合企業の変化に対応するために、ピラミッド型組織で運営されている企業も組織変革が必要になります。そこで注目されてきたのがアジャイル組織なのです。
アジャイル組織にはどのような特徴があるか
アジャイル組織には次の4つの特徴があります。
小規模なチームによるフラットなネットワーク
アジャイル組織は小規模のチームを様々な立場のメンバーで構成し、現場に意思決定の権限と責任を持たせます。これらのチームが顧客にニーズを汲み取り、自ら判断しながら価値提供を行います。例えば、チームにはプロダクトマネージャ、エンジニア、デザイナー、サポートといった異なる役割をもったメンバーが数人いて、彼らが直接顧客と接しながら業務を進めていきます。設計や開発といった機能単位の組織をベースにするのではなく、異なる役割をもったメンバーが集まったメンバーが1つの単位となっているのです。これによって、各チームは顧客に対して価値を提供できる最低限の機能を備えることができます。
そして、社内の複数のチームが特に上下の関係なく、横の繋がりとしてネットワークを作り、それぞれの役割を互いに理解・尊重します。時に共有すべきスキルやノウハウがある場合は、フラットな関係を前提として情報を提供し合います。
明確な企業理念の共有
アジャイル組織は現場に意思決定の権限が与えられています。それだけに、それぞれが異なる価値観で判断を下すことを繰り返すと、企業としての一貫性が保てなくなってしまいます。そこで、アジャイル組織においては、企業の存在価値やミッションを明確に掲げ、これを従業員全員に浸透させることによって、判断の基礎となる価値観をメンバーに与えます。この企業の存在価値やミッションは、単なるお題目ではなく、メンバーが顧客や市場と対面しながら判断を下す上での重要な価値基準となるものです。
素早いPDCAサイクル
アジャイル組織は最初に詳細な計画を立てるのではなく、実行しながら改善するという組織です。ですから、早めにサービスや商品をリリースし、顧客や市場からのフィードバックを受けて改善を行います。PDCAサイクルを素早くまわすことを前提に業務を進めるので、失敗を許容し、失敗から学ぶという姿勢が徹底しています。失敗を恐れずチャレンジし、やってみていは反応を確かめて改善するというのが基本なのです。アジャイル組織は、このPDCAサイクルを高速で繰り返すことによって、サービスや商品の質を向上させます。
メンバー同士の結びつきが重視される
アジャイル組織は各メンバーに権限を与えます。したがって、リーダーはメンバーの「管理」をするのではなく、メンバーを育成し、モチベーションを上げることが大切になります。また、権限を与えるメンバーを信頼することが前提となっています。このようにアジャイル組織は自立したメンバーで構成されるため、個々のメンバー同士が結びつき、互いにモチベーションを向上させることが重視されます。
アジャイル組織の長所
アジャイル組織にはどのような長所があるのでしょうか。具体的にご紹介します。
柔軟で機敏な対応ができる
アジャイル組織のメリットは、機敏な対応ができることです。細かい点まで計画を詰めるのではなく、大まかな計画の下に実行しながら改善していくので、変化する顧客ニーズや市場の変化に対してもスピーディに対応することが可能です。また、少人数のチーム単位で事業を行うため、顧客の要望等についても柔軟に対応することが可能です。他の部署や上位組織の意思決定を待たなければ対応できないということがありません。また、メンバーに意思決定の権限が与えられているので、短時間で意思決定をすることができます。ピラミッド型組織のように、決裁を受けるまでに長時間待たされるということがないため、業務全体のスピードアップに繋がります。
社員のやる気を引き出すことができる
アジャイル組織は、個々のメンバーに意思決定の権限を与えているので、業務に対する主体性が養われます。何かをやりたいと考えた時、自らの判断で前進することをイメージできるため、業務推進に対して前向きな気持ちにもなります。また、日々の意思決定を自らが繰り返すことになるので、物事を判断するスキルが育まれ、また自ら身につけようとするようにもなります。自らの判断で業務を動かすことができるので、結果が出た際の喜びも大きく、メンバーのモチベーションは向上します。
アジャイル組織の短所
アジャイル組織の短所を見てみましょう。
従来型組織との違いを周囲に理解してもらう必要がある
アジャイル組織は、日本企業における従来のピラミッド型組織とは大きく異なるため、顧客や取引先などからの理解が得られにくいというデメリットがあります。現場が権限と責任を持っていることを理解してもらえないと、交渉や調整の過程で誤解が生じる可能性もあります。このデメリットを乗り越えるためには、自社のアジャイル組織のあり方について、周囲にしっかりと説明し理解を得る努力をすることが必要です。
これまでにないマネジメントスキルが求められる
アジャイル組織は個々のメンバーに意思決定の権限が与えられているため、リーダーは管理するという姿勢ではうまくマネジメントはできません。企業の存在価値やミッションなど同じ価値観を共有するものとして信頼しつつも、間違った方向に向かっている場合には適切に修正しなければなりません。また、メンバーのスキルや意思決定に依拠する部分が多いので、個々のメンバーの特性に応じた育成方針や育成スキルが要求されます。
一方で、アジャイル組織は機能別ではなく、様々な異なる役割をもったメンバーで構成されているので、特定の役割に関するスキルや課題解決のノウハウを伝えあう機会が減ってしまうという面もあります。機能別に組織化されたピラミッド型組織であれば、各機能別にノウハウが上から下へと伝えられますが、アジャイル組織ではその機会が薄くなってしまうのです。そのため、これを補うために、役割ごとのスキルやノウハウを共有させる役割を担う人材を配置することも必要となります。
アジャイル組織に移行するには
従来型の組織からアジャイル組織に移行するには、様々な準備と段階的なプロセスが必要です。
大前提としての組織哲学の変更
従来型の組織からアジャイル組織に移行することは、組織にとって非常に大きな変化です。これまでのピラミッド型の組織、中央集権型の組織の考え方が残っていては、アジャイル組織への移行はできません。したがって、まず大前提として、企業のトップがアジャイル組織への変革を明確に意思決定し、それを社内に強く訴え、その決定を社員に理解させることが必要です。なぜ組織を変える必要があるのかについて、外部環境の変化などを踏まえて、説得力を持って社員たちに訴える必要があります。従来型組織では何が実現できないのか、アジャイル組織によって何を獲得しようとしているのかを明確に示すことが必要です。
また、アジャイル組織への変更によって、従来型組織に慣れ親しんだ社員が、思考や行動にどのような変化を求められるのかについても、わかりやすく伝えなければなりません。組織のあり方や行動の指針を大きく変更する場合には、必ず社内に反発が生じます。表面的には何もないように見えても、水面下では不満がくすぶり、組織変革に抵抗するような動きが生じることもあり得ます。このような事態は絶対に避けなければなりません。そのためには、トップが変革への意志を強烈に示す必要があります。
企業理念の再確認と徹底
アジャイル組織では、現場で意思決定を行うメンバーが判断の基準とできる企業理念やミッションの共有が大切です。これらは、短なるお題目ではなく、各チームの具体的な業務判断に使えるレベルになっていることが必要です。そのためには、大きな理念の理解のみならず、その理念が各業務に具体化されるとどのような行動を要求するのかについて、何度も繰り返し思考し、話し合うプロセスが必要になります。ビラミッド型組織においても、会社の上位方針をメンバーに徹底することは重要なことです。しかし、明確なヒエラルキーの下で、会社の大きな方針との齟齬は各リーダーの責任において修正されることが予定されています。
一方、アジャイル組織においては、日々の業務の中でメンバーが権限をもって意思決定をします。したがって、常に会社の掲げる大きな方針との整合性を各メンバーが求められているということになります。そのため、自らの判断・選択が本当に正しいものなのかどうか、常に立ち戻って確かめることができる基準が必要となります。アジャイル組織への変更を行う際には、これまで以上に企業理念の確認を徹底する必要があるのです。
挑戦を推奨する価値観にシフトする
アジャイル組織は現場に意思決定権が委ねられていますが、それが真の価値を発揮するのは、現場が挑戦する意欲を持っている時です。新しい価値を提供したい、大きく変革したいといったチャレンジ精神があってこそ、スピード感をもって様々なことを試すことができるアジャイル組織のメリットが活かされるのです。したがって、組織として挑戦を推奨することを明確に宣言するとともに、失敗を許容する風土、それを支える制度なども必要となります。挑戦して失敗した際に、組織的にどのようなフォローがされるのかについて制度として明確になっていれば、社員は安心してチャレンジすることができます。
小さなチームからスタートする
従来型組織からアジャイル組織への変更は非常に大きな変更です。いきなり、組織全体にアジャイル組織を広げようとしても、社内のあちこちで同時に移行が頓挫する可能性も否定できません。そのようなことになれば、業績に直接の大きな影響を与えてしまう可能性すらあります。したがって、最初は少ないメンバーで構成するパイロットチームをアジャイル組織にすることから始めて、試行錯誤しながら社内全体に拡大していくのが賢いやり方です。いきなり大きなリスクを負うのではなく、様子を見ながら進めるのです。
もちろん、アジャイル組織への移行が本気であることを社員に理解させる必要はあります。トップが明確に宣言し、強力なリーダーシップで組織変革を進めるのであれば、パイロットチームの動向などについては、常に社内で共有し、トピックとして注目を集めるような手立ては必要です。そして、パイロットチームでの様々な取り組みから、社員がアジャイル組織への理解を徐々に深めることが、社内にアジャイル組織を広げていく際の鍵になります。
アジャイル組織への適性を慎重に判断する
社内の全ての部門がアジャイル組織に向いているとは限りません。たとえば、間接部門でスピードよりも安定的な業務遂行が特に求められるような部署においては、ビラミッド型組織の方が向いている場合もあるでしょう。また、アジャイル組織に向いている人材がそろわないような場合には、無理にアジャイル組織への移行を行おうとしてもうまくはいきません。アジャイル組織は、自ら判断し、責任を負い、自律的に行動することを個々のメンバーに要求します。このような人材がそろわず、自ら意見を積極的に述べるような人がいないという状況であれば、アジャイル組織への移行は行わない方が良いのです。
人材育成環境の整備
アジャイル組織においては、各メンバーに確固たるスキルが必要となります。メンバーに意思決定の権限が与えられているので、判断スキルも求められます。これらの能力を適切に開発できる環境を社内に整備しなければなりません。加えて、スキルやノウハウの共有について、アジャイル組織特有の課題を解決する配置も考えておく必要があります。従来型の機能別の組織とは異なり、アジャイル組織では異なる役割を持ったメンバーが少人数でチームを作ります。
それだけに、各役割に関するスキル、課題解決ノウハウが、同じ役割を担うメンバー同士で共有されにくくなります。この課題を解決するためには、各チームの動きを俯瞰して見ることができ、同じ役割で共有すべき情報を見極め、必要に応じてメンバーに対してコーチするような人材の配置が必要です。
学ぶサイクルを重視する
アジャイル組織は、行動しながら改善するものです。したがって、失敗を許容しつつ、失敗から学び、前進し続けるという姿勢を基本とします。そのため、アジャイル組織では、学習することが重視されます。新たな知識を積極的に取り入れる姿勢とともに、学んだ知識を基に実践し、フィードバックを受けて修正し、また学ぶという学習サイクルを実践しようというメンバーが組織を支えます。したがって、このような学ぶ意欲を支え、あるいは引き出すような社内の仕組みを整備する必要があります。
コミュニケーションを重視する
アジャイル組織では、チームごとに事業に取り組みます。同じチーム内には異なる役割を担う人材が多数います。同じ役割同士でのコミュニケーションに慣れている人でも、これまでは異なる部署にいたような人と日常的にコミュニケーションを取ることになります。従来は、上司と部下、先輩と後輩といった縦の序列を意識して関係性を築いていたのに対し、アジャイル組織ではフラットな横の関係性を築くことが求められます。一方的にノウハウを伝授する指導的な姿勢ではなく、互いの役割に敬意を払いながら、情報交換し刺激を与え合うという姿勢が必要です。
また、アジャイル組織では、小さなチームが機動的に顧客やユーザーと接し、ニーズを反映させることが求められています。したがって、顧客とのコミュニケーションが極めて大切です。顧客から正確にニーズを引き出す力、潜在的ニーズまで推測し引き出すようなコミュニケーションスキルを向上させるために訓練が必要です。このように、組織としてこれまで以上にコミュニケーションを重視することを社内に明確に示すとともに、様々な場面でコミュニケーションの取りやすい社内環境を作ることが大切となります。
DX推進の鍵となるアジャイル組織
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、経済産業省のDX推進ガイドラインによれば、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指します。これは、単なるデジタル化やICT化のみを指すのではなく、商品やサービスを刷新し、組織も変革しながら、新しい価値を作り出すという大きな変化の流れを指す言葉です。このDX推進にとって、アジャイル組織が大きく貢献する可能性があります。
DXを推進しようとする時、会社内のIT部門と他の業務部門が連携して動かなければなりません。これまでのように、デジタル化、ICT化とだけ言われていた頃であれば、IT部門のメンバーと業務部門のメンバーの関わりは、業務上の課題のヒアリングと導入時程度しかありませんでした。しかし、DXは単なる業務効率化ではありません。商品やサービス、あるいは組織のあり方を変革し、新たな価値を生み出す試みなのです。したがって、IT部門と業務部門のメンバーは、継続して同じチームに所属し、サービスや商品、顧客や市場等と向き合いながら、日々変化を起こす行動を取ることが求められます。
このような役割をメンバーが果たすためには、従来型の組織よりもアジャイル型組織の方が有利です。役割別に分けられたチームではなく、異なる役割を持つメンバーで構成される少人数のチームだからこそ、刺激し合いながら新たな価値を生み出すことに繋げることができるのです。アジャイル組織では、これらのメンバーに意思決定の権限が与えられ、自らチャレンジすることが認められています。IT人材と業務部門の人材が、共に顧客や市場と向き合いながらアイディアを出し合い、チャレンジを繰り返し、試行錯誤していくことでDX推進が現実のものになるのです。
DX推進は、一部の優秀な人材がこれを先導し、全体を俯瞰して進めればうまくいくというものではありません。新しい価値を生み出すためには、さまざまな役割や能力を持った人材が、自律的な判断の下に協調して業務を進める組織が必要です。その意味では、アジャイル組織はDX推進の鍵になるものと言えるでしょう。
まとめ
アジャイル組織への移行は慎重に行うことが大切
従来型のピラミッド型組織から脱却し、アジャイル組織に移行することができれば、日々変化する市場や顧客のニーズに即応可能となります。また、社員のモチベーションが上がり、自主的・積極的な人材が育つことも期待できます。ただし、移行に適した人材がいるか、アジャイル組織を運営できる体制整備が可能かについては慎重に判断することが大切です。