失敗しない人事管理システムの選び方

少子高齢化による労働人口の減少により「人」の価値が高まっている近年、勘や経験に頼らない「データに基づいた人事戦略」が求められています。 本記事では、タレントマネジメントやピープルアナリティクスといった手法を活用し、戦略人事を実現するために必要な人事管理システムについて、 失敗しない選び方をお伝えいたします。

人事管理システムが求められる背景

人事管理システムが求められる背景には、労働市場の変化や急速なテクノロジーの進化にともなう経営戦略の変化などが挙げられます。特に、労働人口の減少により限られた人数の中で業務を行うためには、従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大化する必要があります。そのためには、一人ひとりのスキルや経験を活かしながら、労働市場や事業変化に合わせた柔軟な人員配置を行うことが重要です。従来の人事や採用の領域では、担当者の勘や経験に頼る傾向がありましたが、人事データを活用することで戦略的な人事戦略を立てることが可能になります。そのため、人事データを適切に把握するためのシステムを有効活用することが必要になります。

人事管理システムを導入する2つのメリット

人事管理システムの活用には、業務の効率化とデータを用いた人材活用という2つのメリットがあります。以下では、それぞれについて説明していきます。

①業務効率化

1つ目のメリットは、「業務効率化」が実現できることです。多くの企業では、入社時の提出書類・採用選考での評価情報や入社後の評価・異動の履歴など、個人にまつわる情報をそれぞれのExcelやGoogleスプレッドシートで管理していますが、管理する情報が増えれば増えるほど、記入漏れなどの人為的なミスが発生します。そこに人事管理システムを導入し、従業員データを一元化することで、データの入力や、必要なデータの検索・抽出といった業務負荷の軽減につながるでしょう。

②データにもとづく人材活用

2つ目は「データにもとづいた人材活用」が可能になることです。複合的なデータの活用により、客観性と公平性のある視点から従業員の適性を判断することができます。従来の勘と経験に頼った採用・人員配置ではなく、従業員のスキルや経験が見える化されたデータにもとづき、特定のスキルや経験を持った人材を検索・抽出し、必要なポジションに配置することで、戦略的な人事を実現できます。また、一元化されたデータを用いることで、人材育成の見える化も可能になります。例えば、新人研修の実施後には、研修前後での変化や習得スキルについての効果測定は行われないことが多く、研修内容の振り返りや改善が十分に行えていない企業も多いです。研修前後の評価や業績の変化を分析することで、一人ひとりにあわせた育成プランを検討することもできます。

自社にあった人事管理システムを選ぶための3つのポイント

人事管理システムにもさまざまな種類があるため、自社にあったものを見極めることが重要です。ここでは、自社にあった人事管理システムを選ぶための3つのポイントをご紹介します。

①従業員データの一元化ができるかどうか

1つ目のポイントは「従業員データの一元化ができるかどうか」です。従業員データを活用するためには、データの一元化機能が十分なものを選ぶことが大切です。一元化機能が脆弱なシステムとは、次のようなものがあります。

  • データの出し入れに時間と手間がかかる
  • データの入力ごとに項目が上書きされて変更履歴が残らない
  • 複数の項目を関連づけるのが難しい
  • 他のシステムとのデータ連携が難しい
  • 追加したいデータ項目を気軽に設定できない

上記に該当するシステムを利用した場合、将来的にデータ活用ができなかったり、数年後に大がかりなシステムの入れ替えが必要になる可能性があります。従業員データベースは人事戦略の基盤となるため、一元化の機能は重要視しましょう。

②人事管理システムを導入することで人事業務が効率化できるかどうか

2つ目のポイントは「人事管理システムを導入することで人事業務が効率化できるかどうか」です。必要な情報すべてを人事担当者が入力するのではなく、必要に応じて従業員自らが情報を入力できるようになっているか、データを活用する人が自ら検索して必要な情報だけを抽出することが可能か、など必要な業務効率化ができるものを選ぶことが重要です。

③可視化/活用のしやすさ

3つ目のポイントは、人事データの「可視化/活用のしやすさ」です。従業員データを集めるだけではなく、活用してこそ意味があります。たとえば、データの項目が柔軟に追加できたり、過去データの履歴管理ができたり、常に最新で質の高いデータを活用できるなど、「蓄積されたデータを活用しやすい」システムを選ぶことが重要です。

一元化機能を確認するための4つのポイント

人事管理システム選びにおいて重要な一元化機能ですが、失敗しないためには、下記の4つのポイントを押さえておくことが重要です。

  1. データの「項目数」
  2. データの「質」
  3. データの「履歴」
  4. データの「抽出」

1つ目の「項目数」については、企業によって必要なデータ数が異なるため、柔軟に項目を追加したり、項目を細分化できる必要があります。例えば、項目の追加そのものにコストがかかったり、項目を細分化するのに手間がかかったりする場合は、導入失敗のリスクが高くなります。2つ目の「質」については、柔軟に最新情報の更新ができるか、今現在のデータだけではなく、データの変更履歴も残せるか、など管理するデータの質をコントロールできるかが重要です。そして、3つ目の「履歴」は、データの推移や過去と比較した際の傾向値を把握するために必要になります。各項目に適した形式での「履歴管理」ができることが望まれます。最後の「抽出」は、柔軟にデータを抽出・出力できることが重要です。データの検索性が低い場合や出力が困難な場合は、データ活用が難しくなるでしょう。

まとめ

労働市場の変化、テクノロジーの急速な変化といった外部環境により、「人」の価値が高まり、データを活用した戦略的人事の重要性が増しています。人事管理システムを活用して戦略的人事を実現するためには、自社の活用方法にあったシステムを選ぶことが重要です。データ活用には人事データの一元化が最重要であり、一元化機能が効率化や活用のしやすさを左右すると言っても過言ではありません。人事管理システム選びで失敗しないためにも、本記事でご紹介したポイントを活用してみてください。