タレントマネジメントをExcelでやりにくい理由、効率的な運用方法を解説

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タレントマネジメントとは、米国で生まれた人材管理の新たな考え方で、日本でもその手法に注目する企業が増加し、導入に向けた動きが加速しています。しかしその特徴から、管理手法としてはこれまでのような表計算ソフトのexcel(エクセル)ではやりにくいという面もあります。この記事では、タレントマネジメントがどのような管理方法であるかを確認したうえで、効果的に運営していくためのポイントについても解説していきます。

タレントマネジメントとは

タレントマネジメントとは、自社の従業員の持つ資質(タレント)を一元管理することで、人材の育成や人員の適正配置をはかっていく施策のことをいいます。学歴や職務経歴といった基本情報を形式的に管理するだけではなく、従業員それぞれが持っている能力や特技、専門性、外部評価などについて詳細に把握し、人材情報として各部門が共有しながら、中期計画や経営目標などに伴う事業展開に即応できる人事マネジメントを行っていくという点に特徴があります。経営戦略と人事戦略を有機的に結合させることで、事業拡大に向けた効果の最適化をはかっていこうというのがこの施策の最大のねらいです。


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タレントマネジメントが必要な背景

タレントマネジメントが注目を集めるようになった背景には、労働市場を取り巻く急激な環境の変化が生じたことがあります。これまでのような年功序列制度をもとに設計された人事管理では対応できない事案がもはやデフォルトとなっており、企業はその再構築を迫られつつあるのが現状です。タレントマネジメントの導入が急がれる理由には次のようなものがあります。

少子化による労働人口の減少

少子高齢化に伴う労働人口の減少は、人員を大量に採用して入社後に育成し、能力を見ながら適材適所化をはかろうとする年功序列の人事スキームを根底から覆しました。人材は争奪戦となり、少数精鋭で従業員一人ひとりのパフォーマンスを最大限に発揮しないことには、事業展開を円滑に行うことが不可能な時代に突入したともいえます。タレントマネジメントは、人材個々の能力や特性について十分把握したうえで人事に関する戦略を練ることができるため、事業計画に沿った人員配置が可能になり、生産性を最大限に向上させることが期待できるようになります。

労働に対する価値観の多様化

仕事は収入を得るために行うもの、一度入った会社には定年まで勤め続けるもの、といった終身雇用の考え方が揺らいでいる点も、従来の人事制度では対応しにくくなった要因の一つです。収入だけではなくやりがいも求めたい、社会的に意義のあることをしたい、といった労働に対する価値観の多様化は、職場を変えることに抵抗を感じない人材の流動性を生み始めています。フリーランスへの転身や他社への転職が増加している傾向もその表れといえるでしょう。加えて、ワークライフバランスを重視することで、在宅勤務なども視野に、働き方自体にフレキシブルさを求める人も増えてきました。タレントマネジメントでは、従業員の仕事に対する満足度などを調査する項目を取り入れることができ、モチベーション低下に向けた人員の見直しなどについても対応を可能にするという面でのメリットもあります。

経営戦略のスピードアップ

ネット環境下でのSNSの急速な普及、ブロックチェーン技術に基づくWEB3の導入など、テクノロジーの進化は企業規模の大小にかかわらず、事業を取り巻く環境を大きく変えつつあります。このような目まぐるしい変化にも遅れを取らないよう、事業内容も柔軟に対応していかなくてはならないため、経営にはよりいっそうスピーディーな判断が求められるようになります。自社の人材の能力を把握して、その内容を常に更新しておくことで、新たな事業展開にも即応できるようになりますが、そのためにはタレントマネジメントの導入が必須であるといえるでしょう。

タレントマネジメントの導入手順

時代に即した新たな人事戦略としてメリットの大きいタレントマネジメントですが、実際に導入するには適切な手順を踏むことが必要になります。「自社の課題と導入目的の明確化」「基本設計の構築」「運用と見直し」の3つがその具体的な手順です。

1.自社の課題と導入目的の明確化

タレントマネジメントとは、経営戦略と人事戦略を有機的に結合させて効力を発揮させるものです。そのため、まずは中期計画や経営理念に基づいて進めるべき事業内容を明確化することからスタートします。次に、その事業を行うために直面している問題は何か、課題を明らかにします。そのうえで、どのような人員をどの部署に配置すれば課題が解決できるのか、その解決策を案出するという流れになります。

2.基本設計の構築

課題に対する解決策が明確になったら、その実現に向けてタレントマネジメントの基本設計を行います。まずは人材の把握です。社歴や職務歴といった基本情報はもちろん、社員個々に関する自他評価、特技、能力、専門性などあらゆる情報について整理していきます。さらにそれらの情報が常に最新であり、部署間で共有されるような仕組みを考えておく必要があります。そのうえで、適正配置に向けて即戦力となるよう、そのスキルの育成方法を決定します。育成方法には研修などで知識を得てもらう方法や、実際に仕事を経験する中でトレーニングを行う方法など、いくつかの手法がありますので、実情に合わせて最適な方法を選ぶのが効果的でしょう。

3.運用と見直し

基本設計を構築し育成方法を決定したら、運用を開始します。配属先が新規事業の立ち上げ部署である場合や既存部署での戦力補充という場合など、ケースバイケースであることが考えられますが、いずれにしても部署の管理者は重要な役割を果たすことになります。なぜなら、従業員が設計通り十分にスキルを発揮しているかどうかを常に確認することはもちろん、従業員のモチベーションが下がっていないかどうかをチェックしたり、そもそも適材適所の人材として機能しているかどうかを見極めたりすることが欠かせない仕事となってくるためです。

運用を行った後には見直しが必要になります。見直しには2つの段階があり、一つ目は基本設計に基づいて行った人選が適切であったかどうかを振り返るものです。従業員の能力や特性、専門性、自他評価により行った選考が正しく機能したかを確認して、現場の実情と合わなかった場合は、タレントマネジメントの項目を再考するなどの改善策を講じます。そして二つ目が、基本設計そのものが最適な状態で機能していたかを検証するものです。必要な人員に対する部署同士の認識や意思疎通は適切であったのか、管理者によるチェック方法は最善かなどの観点で、実情にそぐわない点があれば修正し、ノウハウを蓄積しながら、次回に向けた改善をはかることが重要です。

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タレントマネジメントを効果的に運用する方法

タレントマネジメントを成功させるためには、導入の目的を明確にすることや基本設計をしっかりと行うことなどは当然大切な事柄ですが、特に留意する点についてまとめておきましょう。

1.マネジメント項目の軸を定める

基本設計にかかわるところですが、タレントマネジメントを効果的に行うためには、どのような項目を取り上げるべきかについて整理しておくことは大切です。まず基本情報ですが、「年齢」「性別」「所属先」「役職」「入社日」「家族構成」などは必須事項として記入するようにします。これらの事項については常にアップデートしていくことが求められます。次に特記事項として「能力」「スキル」「職務実績」「勤怠実績」、他には「価値観」「自己評価」「他者評価」などを設けます。

「能力」や「スキル」に関しては、業務にかかわる専門知識についての詳細を記すほか、業務以外でも資格や語学力などについて特筆すべき点があれば記載するようにします。「職務実績」は定期面談による上司評価や業務上の表彰履歴、前職があればそこでの職務歴などをまとめます。「勤怠実績」では職務態度のほか、勤務時間の傾向からライフワークバランスの重視度なども確認できます。「価値観」では仕事に対するマインドや、志向性、考え方がわかります。この項目を見れば、チームの中でどのような役割が果たせるのか、市場開拓に対する積極性はあるか、などを判断する際の材料にもなるでしょう。「自己評価」「他者評価」は人物像を把握する際に役立ちます。自己評価と他者評価が一致している部分は、その人の個性として信頼できる側面です。
関連記事:タレントマネジメントでのスキルマップの作り方は?目的、メリット、注意点も解説

2.部署間の連携を緊密にしておく

新たな事業展開には部署間の緊密な連携が不可欠です。必要な人材を人選する場合にも、各部署の立場から重視するポイントも変わってくるでしょう。そのため人物像の共有がうまく図られないと、的を射た人選ができなくなる恐れも生じます。ターゲットとなる従業員のプロフィールについては、常にアップデートされた情報が共有できるよう、基本設計を構築しておかなくてはなりません。

3.従業員の理解を得ておく

タレントマネジメントの導入にあたっては、事前に従業員の理解を得ておくことが必須事項になります。なぜかといえば、年齢や性別、業務歴といった基本情報だけにとどまる一般的な人事管理とは異なり、タレントマネジメントでは、性格や価値観など、プライベートに関わる項目に関しても調査し掲載することになるからです。このようなデータ収集には一定の抵抗が予想されますが、その際は、タレントマネジメントを導入する趣旨や目的について丁寧に説明し、このマネジメントが公平な人事評価につながるということも含めて従業員の納得を得たうえで、改めて協力を求めることが大切になります。

タレントマネジメントをExcelでやりにくい理由

タレントマネジメントを実行に移す際は、データの記録方法として、従来のexcel(エクセル)を使った管理が思いつくかもしれません。実際、excelのような表計算ソフトで管理することもできなくはありません。しかし継続して効果的な管理を行ううえで、excelは非常に使いにくいといういくつかの難点があります。

1.データの一元管理が困難になる

excelでタレントマネジメントを行うとすれば、従業員一人ひとりにつき、1枚のシートを作成することになります。それが人数分必要になるわけですが、調査項目をすべて記入すると人数によっては膨大な数になり、比較検討する作業に手間取ることが予想されます。そもそもexcelという表計算ソフトの性格上、上書きして保存していくスタイルになるため、誰がいつデータの更新をしたのかをチェックしなければならず、その中で単純な入力ミスなどによるヒューマンエラーも起こりやすくなるというデメリットも生じてしまいます。

2.閲覧権限が設定しにくい

タレントマネジメントはプライベートな部分にも踏み込んだ人事情報であるため、当然のことながら誰もが見られる資料ではなく、閲覧には制限をかける必要があります。しかしexcelでは細かい閲覧制限がかけにくく、編集に関してもシートの一部を制限して手を加えるといった機能がありません。そのため、閲覧・編集に手間がかかり、日常的にデータを更新しながら活用するという点ではどうしても使い勝手が悪くなってしまうという欠点があります。

3.セキュリティと操作性に難点がある

excelは表計算ソフトとしては機能性を発揮しますが、セキュリティ面で十分であるとはいえません。閲覧に関する管理も人力でやっている以上、ヒューマンエラーを100パーセント防ぐことは難しく、個人情報を掲載したシートが対象者ではない別の第三者に送信されてしまうといったケースも起こり得ます。タレントマネジメントのように個人情報が記されたデータを、表計算の専門ソフトであるexcelで管理することには、このようなセキュリティ面での不安がどうしてもつきまといます。また、excelは複数の人が一斉にデータを更新する同時編集が難しく、誰かが編集している最中は、他の人がシートを更新することはできません。業務効率を考えたうえでもこの操作面での使いにくさはやはりデメリットに感じられてしまいます。

タレントマネジメントを行う際は、Excel管理に難点を感じる場合も

タレントマネジメントは、従業員の持つ資質を一元管理しながら人材の育成や人員の適正配置をはかっていく人事施策です。労働市場を巡る環境が急速に変化し、仕事に関する価値観も多様化する中で、限られた人材を効果的に活用できる人材管理手法として注目されています。タレントマネジメントは個人情報を多く含むため取り扱いには慎重を期すことが求められ、excel(エクセル)のような表計算ソフトで管理するには難しい面があります。

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