タレントマネジメントの目的は?メリットや効果を解説

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労働人口が減る中、成長していく企業であり続けるには、優秀な人材を獲得したり、従業員の能力を活かすことが求められています。その点で効果を上げる手段として注目されているのが、タレントマネジメントの考え方です。こちらでは、タレントマネジメントの意義や目的を説明した後、タレントマネジメントを導入するメリット・デメリットを取り上げ、導入の注意点や期待できる効果をご紹介します。

タレントマネジメントとは?

タレントマネジメントは、従業員の能力やスキルに着目し、会社全体の成果につなげるための人材管理方法ということができます。日本では、人材管理は部門や部署に依存していることが多く、組織ありきの人事が一般的でした。一方、タレントマネジメントは人材が基本にあり、従業員一人一人の能力を考慮して人事を行う点が特徴的です。

タレントマネジメントの目的は?

タレントマネジメントを行う主要な目的は、企業が掲げる経営目標の達成です。そのために、個々の能力が最も発揮される人員配置や採用育成を行うことが、タレントマネジメントに課せられた使命といえます。従業員一人一人の力の結集が、企業の目標につながっていく点を意識し、採用・配置・人材育成・目標設定や評価などを戦略的に行うことが、経営陣や人事担当者に求められます。詳細を説明します。

1.採用|必要な人材の確保

1つ目は、人材の採用を成功させることです。必要なスキルを持つ人材であっても、企業の社風や経営理念、業務内容によっては相性が合わないことも少なくありません。タレントマネジメントを導入していれば、募集する役職に求めるスキルだけでなく、実績や職歴などの必要条件をより詳細に設定できますので、自社に合った人材採用が可能です。

自社の社風や目的に合う人材を見つけるための採用指標を明確にしたり、社内のハイパフォーマーと言われる優れた人材が持つ能力や性格を分析し、採用に活かすことが必要です。

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2.配置|適材適所の配置

2つ目は、従業員の適材適所の配置を行うことです。タレントマネジメントを導入することで、客観的に個々の人材のスキルや特性を踏まえて、各人材の実力を最大限発揮することが可能です。限られた人材を有効に活用することで、企業の成長に繋げられるはずです。

従業員のスキルや経験、希望と部署の要望がマッチするように情報を可視化することが必要です。

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3.人材育成|優秀な人材への成長

3つ目は、人材育成です。タレントマネジメントに従った人材育成を行うことで、従業員自身も将来のビジョンを設定しやすく、目標に向けた研修や配属先を選べるようになります。その結果、従業員それぞれが自身のビジョンに必要な能力やスキルを効率よく身につけて、その能力をより活かせるようになるでしょう。

自社が求める優秀な人材像を明確にし、必要なスキルを把握できれば、優秀な人材に育てるにはどのような対策をすれば良いか検討しやすいでしょう。

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4.目標設定・評価|適切な目標設定と正当な評価

4つ目は、従業員に適切な目標設定を促し、正当な評価ををすることです。不透明な目標設定や評価方法であると、従業員のエンゲージメントも下がり、離職率が高まる可能性もあります。適切に行うことで、従業員も納得してモチベーションを持って働くことができます。

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タレントマネジメントが重要な理由

アメリカで誕生したタレントマネジメントですが、すでに人事システムが確立している日本でも注目を集めているのには理由があります。

1.少子高齢化

その一つの要因となっているのが、少子高齢化です。労働人口の減少で多くの企業が慢性的な人手不足の状態に陥り、人材獲得競争は熾烈を極めます。人手を増やすことに加え、限られた人材で生産性を上げる工夫が企業に求められますが、その有効な一手と期待されているのが、タレントマネジメントです。

2.多様な人材の必要性

事業の維持・拡大のために多様な人材が求められていることも、タレントマネジメントに注目が集まる理由です。日本企業はこれまで、企業風土に合う人材獲得を目指してきた節があり、画一的な人材が集まる傾向がありました。このような状況は、似た考え方や能力を持つ人だけが集まってしまい、新しいアイデアは生まれにくくなります。発想の転換やチャレンジが企業の存続や成長に必要不可欠となっており、タレントマネジメントを通して多様な人材を確保し、パフォーマンスを最大限に発揮する仕組みが作れると期待されています。

3.市場や環境の変化

また、市場や環境の変化についていくために、タレントマネジメントが力になると考えられています。テクノロジーが発達するにつれ、事業を取り巻く環境は常に変化していますし、災害や感染症流行などの突発的な事象が起こると、市場のニーズや生活様式が急激に変わることを実感している方は少なくないでしょう。さまざまな変化・変更に臨機応変に対応できるのは人であり、従業員に求められるもの・求めたいものは年々増える傾向にあります。専門性を高めるのはもちろんのこと、その人が持つ特性を生かして、個々の能力を最大限に活用するのに役立つとされるタレントマネジメントのニーズは高くなっています

タレントマネジメントのメリット・デメリット

経営陣に加え、人事・労務・採用担当者は、タレントマネジメントのメリット・デメリットを理解しておくとよいでしょう。タレントマネジメントの可能性や限界を熟知していると、自社の目的や方向性にかなった方策を上手に取捨選択できるに違いありません。

タレントマネジメントのメリット

1.適材適所の人材配置

タレントマネジメントを導入すると、従業員一人一人のスキルや特性を考慮した人員配置が可能になります。スキルというと、学校で学んできたことや資格・経験などをイメージしがちですが、人材を把握するうえで大切なのは、潜在的に持っている能力や個性です。潜在能力や独自性に着目して人員配置を行うと、ある部門で力を発揮できなかった人が、別の業務で才能を開花することもあるでしょう。

2.中長期の人材育成

タレントマネジメントをうまく活用できれば、経営の素質がある人材を見出し、早いうちから経験を積ませることも可能になるかもしれません。タレントマネジメントは、短期ではなく中長期的な人材育成に役立ちます。

3.モチベーションの向上・従業員エンゲージメントの向上

タレントマネジメントにより、それぞれの従業員が自分の能力を発揮し、働き甲斐がある部署で働くことができれば、モチベーションが上がり、社内活性化も可能になります。自分が必要とされ、やりがいをもって働けると、離職率が低下するとともに、会社への愛着や思い入れである「エンゲージメント」が向上していくでしょう。働く側の満足度は、顧客満足度にも良い影響を与えます。その人にマッチした業務や部署に配置することで、組織としての生産性が向上し、人材育成コストも削減できます。

タレントマネジメントのデメリット

1.人事の業務量増加や複雑化

タレントマネジメントの導入は、社内に浸透させるのに時間がかかり、従業員の協力も欠かせません。タレントマネジメントでは、従業員一人一人の能力や特性に関するデータ管理の煩雑さが伴います。従来の人事システムでは、部署などで管理していた情報を、人事部門で一括管理する必要も出てくるため、業務量増加や複雑化が懸念されます。

2.導入コストや人材コストが必要

タレントマネジメントはシステムを導入して運用するケースが増えており、そうなるとイニシャルコストに加え、ランニングコストや運用を支える人材も必要です。タレントマネジメントは、即効性のある施策ではなく、長期戦で行う覚悟が求められます。想定した効果が得られなければ、それまで投じてきた金銭的・人的・時間的コストが水の泡となってしまう可能性があります。
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タレントマネジメントを導入時の注意点と回避策

タレントマネジメントを導入すれば、人事に関する問題がすべて解決すると考えるのは間違いです。また、単に他社事例を参考にしたり、目についた課題に取り組むだけでは、効果が限定的だったり、逆効果になりうることがある点に注意が必要です。踏むべき正しい手順でタレントマネジメントを導入するのが、成功のポイントになります。どのように導入を進めていくとよいのか、具体的に見ていきましょう。

1.タレントマネジメント導入の目的を明確にする

導入のファーストステップとなるのは、自社におけるタレントマネジメントの目的の明確化です。人材育成など解決しなければならない問題とともに、経営課題も整理します。これは、人事から経営戦略にアプローチするタレントマネジメントならではの視点です。そして、タレントマネジメントにより、どんな成果を出したいかといったゴール設定をします。

2.タレントマネジメントに対応した評価制度や育成計画を立てる

次に、タレントマネジメントが可能になる評価制度や育成計画の構築に移ります。成果や能力を合理的に評価するルールや、報酬に反映させる仕組みなどをつくっていきます。タレントマネジメントによる評価制度が適切でないと、従業員が安心して働くことができず、モチベーションが下がったり、持ち前の能力発揮が難しくなるため、こちらのステップは重要になります。加えて、採用方針や研修制度など、人材の育成計画も作成します。

3.従業員のスキルや能力の可視化

タレントマネジメントの目的・制度・方針・計画が明確になったところで、従業員の能力やスキルの可視化を行います。集めたいデータとしては、学歴や職歴、資格や経験、上げてきた成果などが挙げられます。こちらのステップを適正に行うためには、人事担当者とともに各部署の責任者やリーダーが従業員の情報を正確につかむことがポイントになります。経年による状況の変化があるため、更新されたデータを効率よくアップデートする仕組み作りも求められるでしょう。

4.人材の配置・育成・採用

タレントマネジメントの仕組みが作られ、情報収集がなされた後に、従業員の能力に基づいた人材配置や、自社に必要なスキルや人材を確保するための育成・採用を行います。せっかく優秀な人材を確保したり、スキルを獲得した従業員がいても、適切な人事配置をしなければ、業務遂行に活用できないばかりか、従業員のモチベーションを低下させてしまいます。タレントマネジメントは、あくまで「人」が主人公です。気持ちよく働く環境や能力を発揮できる場を作るのが、経営や人事などの役割になります。

5.効果測定と見直し

タレントマネジメントで実施した点は必ず評価し、改善を目指す土台にします。事業を取り巻く環境は刻一刻と変わっており、求められる人材の在り方も変化し続けています。状況に合わせて適切な人材配置をし、それを定期的に見直す評価・改善のプロセスを省くことはできません。配置転換をした後に期待通りの結果が得られない場合は、臆せず再度配置換えをするなど、従業員が最大限に能力を発揮できるような環境づくりを続けていくことが重要です。

タレントマネジメントの効果

一口にタレントマネジメントといっても、いろいろな方法があります。タレントマネジメントを導入した企業は大手や資金力があるところが多く、劇的な効果が見られたケースもありますが、大掛かりな方法だと、事業規模や予算の関係であきらめざるを得ない企業も多々あることでしょう。こちらでは、比較的取り組みやすい方法を実践した例を取り上げつつ、得られた効果をご紹介します。

社内キャリアエージェントの創設

サイバーエージェントでは、社内組織として「キャリアエージェント」をつくり、従業員と会社の課題や問題点を明らかにできるツールを活用したり、社内異動公募制度を設けるなどしています。上司や先輩社員だけでなく、キャリアエージェントに職場環境やキャリアに関する相談ができるようになった結果、風通しの良い職場づくりが可能になりました。働き甲斐があると答える従業員が増え、離職率も大幅に低下したようです。

タレントマネジメントシステムの導入と人事部門の強化

日本マイクロソフトでは、人材情報を一元管理できるタレントマネジメントシステムを構築し、経営をサポートする機能を持たせることで人事部門の裁量や権限を強化しました。世界中の従業員の情報を可視化できるシステムを導入することで、人事部門は適切な人員配置・生産性向上に役立つ人事評価制度の立案・成長に資する教育プログラムの考案ができるようになりました。経営視点を持つ部門に成長し、生産性も向上しています。

タレントマネジメントの導入による効果は、さまざまな業種の企業から報告されています。大企業が行っていることを同じ仕方で導入するのは難しいかもしれませんが、それぞれの施策のエッセンスや方向性は中小企業であっても取り入れられるでしょう。

タレントマネジメントの効果を上げるには?

タレントマネジメントは、これまでの日本の人事システムにはない考え方が含まれています。そのため、効果を上げるには、従来の人事システムを土台にして考えるというよりも、新しい発想が必要になる場合があります。以下に取り上げる点を考えると、タレントマネジメントの効果を上げやすくなるとされます。

1.これまでの人材に対する見方を考え直してみる

人材イコール労働力という、従来の人事システムの根底にある考え方を見直す必要もあるでしょう。人材は会社全体の財産と認識することが、タレントマネジメントの効果を上げる第一歩となります。会社と従業員がお互いを信頼し、企業の方針や戦略に共感してもらい、同じ方向を向くことが大事になります。減点方式ではなく、良い部分をほめ、個人を尊重し、真摯に向き合う姿勢を経営陣やリーダーが持つよう、意識改革が求められる場合もあります。
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2.人事制度の評価基準を再考する

人事評価において成果や数字は大事ですが、簡単に手に入る情報に偏った評価基準だと、従業員の成長や変化に気づくのが難しくなります。働く姿勢や意欲も評価の対象とし、バランスの取れた人材育成を行えるようにする必要があります。評価基準を再構築した後も、時代の流れや目指すべき目標に合っているかどうか定期的に見直し、納得できる制度に改革していくと満足度が高くなるはずです。
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3.システム導入も視野に入れる

初期投資が必要なシステム導入に二の足を踏む企業は、中小を中心に多く見られます。しかし、ある程度の従業員を抱える企業の場合、従業員すべてのスキルや状況を管理したり、定期的にアップデートしていくのは大変で、人事部門の負担が大きくなります。タレントマネジメントシステムを活用すると、作業効率がアップし、生産性の高い仕事をするのに役立ちます。システムを導入し、工数を削減しながら、人材の最大活用を目指すことも検討しましょう。
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タレントマネジメントの目的を理解し、効果の最大化を狙う

タレントマネジメントの主な目的は、企業が掲げる経営目標の達成ですが、あくまで「人」が中心の管理手法で、従業員一人一人の力が経営目標達成に至るという視点が必要です。タレントマネジメントを導入して効果を上げるには、会社や組織中心の考え方や評価制度をいったん白紙にし、人材は宝という意識で考えていくことが大事になります。人事部門の負担が過大になる場合は、システム導入も検討するとよいでしょう。