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リファレンスチェックとは、候補者の前職の仕事内容や勤務期間、スキルなどを本人以外の第三者にヒアリングして採用に役立てることを指します。リファレンスチェックを導入する外資企業が増えている一方で、日系企業ではまだ普及率が低いのが現状です。
本記事ではリファレンスチェックの概要と目的、進め方や導入メリットなどを解説します。採用ミスマッチを防止したい、客観的な候補者データを収集したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
リファレンスチェックとは
リファレンスチェックとは、採用の際に候補者の過去の職歴や能力、人物像などについて前職の上司や同僚に情報提供を得ることです。候補者の関係者から勤務態度や人となり、スキルや実績を詳細にヒアリングすることが重要です。よって、客観的な情報を収集し、採用判断に役立てることが可能です。
リファレンスチェックを実施する目的
リファレンスチェックは候補者の経歴、能力、人物像などを第三者の客観的な視点で確認する目的で行います。また、候補者から提出された職務経歴書の実績や面接で聞いた情報の正確性を確認する目的もあります。
例えば「日常会話レベルの英語が話せる」と本人が話していても、前職の上司から見たときに「英単語は理解できるが会話力はない」と判断する場合もあるでしょう。本人は嘘をついているつもりはなくても、自覚しているスキルセットと実態にズレが生じることはよくあることです。
他にも、リファレンスチェックには面接官の主観による採用判断ミスを防ぐ目的もあります。面接官のスキルが不足していると、候補者の第一印象や話し方などの雰囲気で合否判断してしまうケースが見られます。しかし、リファレンスチェックは面接官のバイアスや主観を正す効果もあるのです。このように、候補者について多角的な目線で判断し、ミスマッチを防ぐことが目的となります。
バックグラウンドチェック(身辺調査・採用調査)との違いは
リファレンスチェックとバックグラウンドチェック(身辺調査・採用調査)は混同されがちですが、両者は異なる目的・手法で実施されます。
バックグラウンドチェックは候補者や取引先の身辺を事前に調べることで、情報の真偽性や反社会的勢力とのつながりがないかを確かめたり、企業のリスク管理に役立てたりする目的で行うものです。主に機密情報を扱う職種や、役員のような重要なポジションを採用する場合に導入されます。対象者の経歴や提供情報の信憑性を確認することで、企業のセキュリティやコンプライアンス遵守にも効果的と考えられています。
一方、リファレンスチェックは採用のミスマッチ防止のために実施されるものです。バックグラウンドチェックが対象者の学歴、職歴、犯罪歴、信用情報など個人情報全般を確認するのに対し、リファレンスチェックは過去の上司や同僚などから、応募者の実績や人物評価、前職での働きぶりをヒアリングする点で異なります。
リファレンスチェックの実施率
とある調査によると、中途採用におけるリファレンスチェックの実施率は外資系企業で58%、日系企業で23%と大きな差が出ました。リファレンスチェックの認知度は外資系93%、日系73%と両者共に高いものの、実施率には開きがあるのが現状です。
リファレンスチェックを実施している企業の約7割が、リファレンスチェックの内容は採用判断に影響すると回答しています。リファレンスチェックの導入により「人物像や能力の確認」ができる一方、回答の信憑性に不安があることが懸念点となっているそうです。また、現在リファレンスチェックを未実施の企業のうち7割は、回答の信憑性に懐疑的です。リファレンスチェックの時間やコストを考えると導入メリットを感じないと回答しています。
リファレンスチェックのメリット
リファレンスチェックを行えば、第三者の客観的な視点から候補者の強みや弱み、実績などを把握できます。リファレンスチェックの主なメリットを見ていきましょう。
採用ミスマッチと早期離職防止
リファレンスチェックは、候補者の人となりや能力、得意不得意を詳細に把握して企業と候補者のミスマッチを防ぐ有効な手段です。面接だけでは見えにくい特性も、第三者の評価を通じて理解できます。例えば、面接では「ストレス耐性が高そう」と判断した候補者が、実際は「神経質で繊細」という評価を受けることもあります。
ジョハリの窓が示すように、他人にしか見えない自分の側面もあるため、第三者からの情報は貴重です。これにより、採用ミスマッチや早期離職のリスクを低減し、長期的な雇用関係を築く基盤を整えることが可能です。
最適な人事配置や目標設定による入社後活躍
リファレンスチェックで得られた情報は、候補者の適切な人事配置や目標設定に大きく貢献します。候補者の強みや経験を深く理解することで、その能力を最大限に活かせる部署への配属が可能となります。また、入社後に与える業務内容や目標について、候補者の適性や成長可能性に合わせて適切に調整できるのもメリットです。これにより、新入社員の早期戦力化と高いパフォーマンスの実現が期待できます。
オンボーディング
リファレンスチェックを通じて候補者をよく知ることは、スムーズなオンボーディングにつながります。候補者の過去の経験、学習スタイル、コミュニケーション方法などの情報を事前に把握できれば、個々に最適化された研修プログラムや支援体制を構築できるでしょう。
これにより、新入社員の組織への適応がより速やかになり、生産性の早期向上や職場環境への満足度アップが期待できます。リファレンスチェックは、入社後間もない候補者が早期に活躍できる土壌づくりにも不可欠といえます。
リファレンスチェックの実施方法
リファレンスチェックの具体的な実施方法を説明します。
1.候補者の同意を得る
リファレンスチェックを行う前に、必ず本人の同意を得る必要があります。個人情報保護法の観点から、本人の了承なしにチェックを行うことは避けなければなりません。
同意を得る際は、以下の項目をまとめて本人の承諾を得ましょう。
・リファレンスチェックを実施すること
・リファレンスチェックのために、前職(一緒に働いたことのある方)などの第三者に説明を行い、回答の同意を得ること
・推薦者に面談、電話、アンケートなどを実施して候補者に関する情報を取得すること
なお、リファレンスチェックは最終面接の前に実施するケースが多いです。
2.前職の上司や同僚を推薦してもらう
本人の了承を得られたら、候補者の前職または前々職などの上司や同僚を推薦してもらいます。リファレンスチェックサービスを活用する場合は、システム上で推薦者との関係性や連絡先などを確認できます。推薦者とコンタクトをとり、日程調整を進めていきましょう。
3.質問項目の準備
リファレンスチェック当日までに、勤務状況や人となり、候補者の長所・短所などの質問項目を準備します。多くのリファレンスチェックのサービスでは、質問テンプレートが備わっているため質問設計がスムーズになるでしょう。
4.電話・アンケートなどで回答を得る
リファレンスチェックの方法としては、面談や電話、アンケートなどが一般的です。在職中の推薦者にストレスがかからないよう、Webフォームで回答を受け取る形式もおすすめです。ヒアリングした内容は、実施者情報・質問内容・推薦者からのコメント・総評などをまとめてレポート化します。
リファレンスチェックの主な質問内容
リファレンスチェックを実施する際の、主な質問内容を4つご紹介します。
勤務状況・在籍期間など
在籍期間に嘘はないか、所属部署や役割、業務内容などの勤務状況は間違いないかを確認します。勤務態度に関しては、遅刻や急な欠席がなかったかどうかも確認するとよいでしょう。
人物像・人となり
どのような性格・タイプの人材か、人物像を掘り下げる質問を行います。第三者視点で人となりを説明してもらうことで、短い面接時間では見極めが難しい性格や会社とのマッチング度合いを確認します。また、プライベートではスポーツを楽しんでいた、休日は家族と過ごしているようだった、などの業務以外の情報も分かる範囲で収集します。同僚や後輩から慕われていたかどうかなど、周囲からの評判も含めてヒアリングすると信憑性が高まるでしょう。
対人スキル
周囲とのコミュニケーション力や、上司や同僚との人間関係についての情報を収集します。仕事中にチームワークを発揮できていたか、顧客との関係性なども確認をします。
業務スキル・実績
長所・短所、仕事の得意・不得意について質問を行います。リーダーシップや問題解決能力、プレゼン力、遂行力など、自社の業務に求められるスキルをベースに確認を行いましょう。また業務の具体的な実績についても確認を行います。
リファレンスチェックの注意点
リファレンスチェックを導入、運用する際に注意すべき事項をご紹介します。
事前の同意
本人の同意なくしてリファレンスチェックを行うことは、個人情報保護法により禁止されています。口頭での確認や一方的な調査は避けて、エビデンスが残る手法で事前の同意を得ましょう。
機密保持
リファレンスチェックで得た情報は、厳重に管理し、第三者への漏洩がないよう十分注意する必要があります。個人情報保護法19条により、個人データを扱う必要がなくなったときは、当該個人データを速やかに削除するよう努めなければなりません。
法的配慮
リファレンスチェックが必要とはいえ、どんな質問でも認められるわけではありません。例えば職業安定法では職業差別を禁止するため、採用時に以下の質問を禁止しています。
・本人に責任のない事項の把握…本籍や出生地、家族に関することなど
・本来自由であるべき事項…宗教、支持政党、人生観、思想に関することなど
・採用選考の方法…身元調査の禁止、合理的かつ客観的に必要性が認められない健康診断の実施
公務員
公務員については、公務員法の規定によりリファレンスチェックが拒否される可能性が高いでしょう。国家公務員法では、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならないと記載されています。なお、地方公務員法においても同様です。
リファレンスチェック実施時のポイント
リファレンスチェックをより効果的に実施するためのポイントをご紹介します。
推薦者と候補者の関係性を確認する
リファレンスチェックを行うときは、候補者と推薦者との関係性を正しく理解することが大切です。例えば、候補者と長年苦楽を共にしてきた同僚に話を聞く場合と、前職で1ヶ月だけプロジェクトを共にした他部署の同僚に話を聞くとしましょう。前者から得られる情報量は多く、質も高いと推定されますが、候補者に対する情も厚く恣意的な情報になる可能性もあるでしょう。
一方、後者から得られる情報量や質は少ないことが想定されるものの、短期間で候補者の本質を見抜く力がある方であれば、回答内容の信憑性が高まります。このように推薦者との関係性や、推薦者自身の力によって、回答の信憑性に影響が出ることを理解する必要があるでしょう。
回答の信憑性を考慮する
推薦者との関係性、推薦者の言語化スキルなどにより、回答内容に偏りが出る可能性は否めません。推薦者からの情報を鵜呑みにせず、慎重に情報を見極めましょう。
回答の信憑性を高めるために、なるべく複数名のリファレンスチェックを行うことや質問設計を工夫する必要があるでしょう。
候補者・推薦者に丁寧に依頼をする
リファレンスチェックが広がっているとはいえ、必ずしもリファレンスチェックを前向きに受け取ってもらえるとは限りません。候補者・推薦者に依頼をするときは丁寧な説明を心掛けて、マイナスな印象を与えないように注意しましょう。
候補者にも可能な範囲で、どのような質問をするのか説明をしたり、経歴詐称などがなければ基本的には内定取り消しにつながることはないと説明しておくとよいでしょう。
タレントマネジメントシステムの活用
リファレンスチェックの情報を組織内で一元管理し、人材活用に活かすために、タレントマネジメントシステムの導入が有効です。タレントマネジメントシステムは、候補者の採用時の情報をはじめ、前職でのスキルやキャリアをシステムで一元管理できるのが魅力です。従業員データを蓄積することで、データドリブンな経営が可能になります。
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リファレンスチェックを頼まれたら
リファレンスチェックを依頼された場合は、依頼者の目的を確認し、本人の同意を得た上で協力することが求められます。ただし、個人情報保護に十分配慮する必要があります。回答の際は、候補者をよく見せようと誇大表現しないよう注意しつつ、可能な限り具体的なエピソードを交えて説明するとよいでしょう。
リファレンスチェックの拒否について
リファレンスチェックは本人の同意なしでは実施することができません。リファレンスチェックを断られるケーススタディを3つ取り上げて、対応方法を解説します。
本人
候補者がリファレンスチェックを拒否した場合、企業は慎重に対応する必要があります。まず、拒否の理由を丁寧に聞き取り、候補者の懸念を理解することが重要です。その上で、リファレンスチェックの目的や重要性を明確に説明し、情報の取り扱いに関する企業の方針を伝えて不安を和らげましょう。
候補者の面接辞退を防ぐため、柔軟な代替案を提示することが効果的です。例えば、前職の業績資料や具体的なプロジェクト実績の提出を依頼したり、より詳細な技能テストや課題解決型の面接を提案したりするなど、リファレンスチェック以外の方法で候補者の能力を評価する姿勢を示します。
また、候補者との信頼関係を損なわないよう、強制的な態度は避け、互いに最適な解決策を見出す姿勢で臨むことが大切です。このような対応により、候補者の理解と協力を得つつ、採用プロセスを円滑に進められる可能性が高まります。
推薦者
プライバシーの観点から、推薦者にもリファレンスチェックの拒否権があります。リファレンスチェックで推薦者から回答を断られた場合、企業は断りの理由を丁寧な姿勢で確認し、応募者に状況を説明して別の推薦者の提案を求めます。
推薦者と直接的なやり取りが難しければ、業績資料や推薦状など間接的な情報収集が可能かどうか検討しましょう。また、詳細な面接や実技テストなど、他の評価方法に重点を置くことも有効です。
強制的に進めようとせず、より効果的で負担の少ないリファレンスチェック方針を検討し、採用プロセス全体の改善につなげることが重要でしょう。
企業
リファレンスチェックの存在を知らなかったり、忙しかったりすると候補者が前に働いていた企業から断られるケースもあります。企業にリファレンスチェックを断られた場合は、まずは断りの理由を確認することが重要です。
企業によってはリファレンスチェックを一律で断るように決めていたり、候補者の退職をよく思っていないため断ったりする場合も想定されます。いずれにせよ、無理に依頼をせずにリファレンスチェック以外の代案も検討しながら進めましょう。
リファレンスチェックを拒否された場合の対策
リファレンスチェックが拒否された場合、代替手段として面接やテストなどの方法で、より詳細な情報収集を行うことが重要です。また、拒否理由を確認して対応策を検討することも必要でしょう。
なお、リファレンスチェックを拒否された場合は、以下のような方法で候補者について確認することも可能です。必要に応じて代案を取り入れてみましょう。
リファレンスチェックの代案 | 内容 |
ポートフォリオや実績資料の提出 | 候補者に過去のプロジェクト成果や業績評価などの具体的な資料を提出してもらいます。これにより、客観的な実績を確認できます。特にクリエイティブ職では、過去の作品や実績をまとめたポートフォリオの提出を求めます。 |
スキル確認のペーパーテスト、および実技試験 | 職種に応じた専門的なスキルテストを実施し、候補者の能力を直接評価します。 |
ケーススタディ面接・STARメソッドを用いたコンピテンシー面接 | 実際の業務に近い状況を想定したケーススタディを用意し、問題解決能力や思考プロセスを評価します。STAR法などを用いた行動面接を詳細に行い、過去の具体的な行動や成果を聞き出します。 |
模擬タスク、プレゼン課題 | 実際の業務に即した模擬タスクを与え、短時間で成果を出してもらいます。あるいは選考過程でプレゼン課題を与えて、実力を確かめます。 |
自己評価シートの提出 | 詳細な自己評価シートを用意し、候補者に強みや弱み、過去の成果を記入してもらいます。 |
推薦状の提出 | 直接のリファレンスチェックではなく、前職の上司や同僚からの推薦状を提出してもらいます。 |
インターンシップ | 可能であれば、短期間の有給インターンシップを提案し、実際の業務適性を確認します。 |
副業の参加 | 正規雇用ではなく、業務委託の副業で参加を促して適性を確かめる方法です。 |
リファレンスチェックの実施企業の事例
大手広告会社グループの株式会社ADKホールディングスは、年間100名以上の採用活動をオンラインに切り替える際にリファレンスチェックを導入しました。オンライン面接では採用判断に必要な情報が不足しがちで、また100名規模の採用活動では一人一人の候補者と十分に向き合う時間が限られていることが課題だったためです。候補者を十分に理解できないまま採用すると、入社後のミスマッチにつながる恐れがあります。そこで導入されたのがリファレンスチェックでした。
当初は候補者にとって実施のハードルが高いツールだと想定されていましたが、案内方法や質問項目を社内で慎重に検討したことで、スムーズな導入が実現したそうです。立場の異なる推薦者から情報を得ることで、候補者を多面的に理解できるメリットを感じています。また、入社前から候補者の人柄やスキルを把握できるため、入社後の人事配置や業務割り当ての決定に役立っているとのことです。
導入目的を明確にして慎重な判断を
リファレンスチェックの主なメリットは、第三者から候補者の情報を得て、候補者への理解を深めて採用ミスマッチを減らせることです。しかし、売り手市場が続き、候補者と企業が対等な立場で向き合うことが重要視される現在、企業が一方的に候補者を見極める選考スタイルが受け入れられないケースも出てきています。
また、選考ステップが複雑であったり、プロセスが長すぎたりすると、応募を控える候補者も一定数存在します。最悪の場合、リファレンスチェックを実施している企業への応募自体を避ける可能性もあるため、導入は慎重に判断すべきでしょう。
リファレンスチェックの特性や候補者に与える影響、運用コストを考慮すると、この手法は全業種・全職種で一律に導入すべきものとはいえません。例えば、個人情報・機密情報を取り扱うポジションや、スタートアップ企業の重役、ハイクラス人材の採用時など、特定の状況下で活用することが望ましいでしょう。
まとめ
第三者目線で候補者の情報を確認できるリファレンスチェックは、入社後の活躍や採用ミスマッチの防止に効果的です。ただし、個人情報保護や職業安定法などの観点で留意すべきポイントがあるため、下準備をしてから慎重に進めましょう。万が一リファレンスチェックを断られたら、無理に進めようとせず、リファレンスチェック以外の方法で候補者理解を行うようにしましょう。
リファレンスチェックの情報はタレントマネジメントシステムで一元管理を
HRMOSタレントマネジメントは、従業員の採用や育成、配置、評価などの情報をシステム上で一元管理して、適切な人材配置や育成につなげるツールです。
リファレンスチェックで収集した社員情報をタレントマネジメントシステムに登録して管理することで、入社前後の情報を分析・活用して社員のスキルを最大限に引き出すことが可能です。
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