スタートアップ企業は経済を活性化させる大きな原動力になる可能性を秘めています。しかしそのためには、企業にマッチした人材を獲得し事業をしっかりと回していかなければなりません。
自社に合った人材を採用するには、効果的な採用戦略が必要です。スタートアップ企業が取るべき採用戦略とはどのようなものなのでしょうか。失敗せずに優秀な人材を採用するために気を付けるポイントや採用手順を解説します。
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スタートアップは、ベンチャー企業や大企業とは異なる特徴を持つ企業です。まずは、スタートアップとはどのような企業なのか、概要や採用戦略の特徴を確認してみましょう。
そもそもスタートアップとは
一般的にスタートアップとは、新しい市場やビジネスモデルによって革新的な価値を生み出し、短期間での急成長を目指す企業を指します。
スタートアップでは、ゼロから新しいビジネスモデルを構築し、新たな事業に挑戦して市場を開拓できる人材が求められます。
また、短期間での急激な成長を目指すスタートアップ企業では、企業として成長するなかで求める人物像が変化するため、企業の成長フェーズによって取るべき採用戦略が変わる点が特徴です。
ベンチャー企業の採用との違い
一般的にベンチャー企業とは、独自の技術や新しいアイデアをもとに、新たな事業へ取り組む企業を広く指します。革新的な技術やビジネスモデルによって短期間での急成長を目指すスタートアップも、ベンチャー企業の一形態と捉えられます。
一方、スタートアップ以外のベンチャー企業には、既存のビジネスモデルをもとに独自のサービスを展開し、長期的な成長を目指す企業もあります。そのため、両者を設立年数や企業規模だけで区別することはできません。
採用では、スタートアップは仮説検証や急速な事業変化に対応できる人材、長期的な成長を目指すベンチャー企業は既存事業の改善・拡大を担う人材を重視する場合があります。
ただし、必要な人材像は名称だけで判断せず、事業モデルや成長方針、組織フェーズに応じて定めることが重要です。
大企業の採用との違い
大企業は一般的に規模が大きな企業を指す言葉ですが、定義が明確に一つに決まっているわけではありません。
厳密な定義はないものの、これに近い概念として、会社法には「大会社」という区分があります。会社法であれば、「資本金が5億円以上」または「負債の合計額が200億円以上」のいずれかに該当する株式会社を大会社と定めています。また、中小企業基本法が定める中小企業の定義に該当しない企業を大企業と捉えることもできます。
大企業では、事業内容やビジネスモデルが確立されているため、採用活動では、創業以来培ってきたノウハウや価値観、事業内容に共感してくれる人材を採用します。また、スタートアップやベンチャー企業に比べると大企業は知名度が高いことが多いため、ネームバリューを生かせれば人材が集まりやすい点が特徴です。
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スタートアップの採用戦略はフェーズごとに変わる
スタートアップの成長フェーズには統一された区分がなく、資金調達状況や事業の成熟度によって呼び方や境界が異なります。本記事では、シード期・アーリー期・ミドル〜レイター期の3段階に分け、採用目的や重視する人材像、採用手法、採用体制の違いを解説します。
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シードスタートアップの採用戦略
シード(seed)は種を意味する英語です。スタートアップにおけるシード期とは、種をまく期間、つまり事業やプロダクトが形になる前の起業前後の最初期を指します。商品・サービスの内容を検討したり事業計画を立てたりする期間です。
シード期の採用では、創業メンバーや事業仮説を一緒に検証できる人材を確保します。人員に限りがあるなかで採用活動を行うため、代表者自身が募集や面接を行うケースが一般的です。
シード期に採用する人材は、単なる従業員とは違い、今後の事業や組織の方向性を左右する創業メンバーです。この時期に採用した創業メンバーが企業の価値観や文化を形成します。また、リソースが限られている時期だからこそ、創業メンバーの生産性や判断力などの個々の能力が事業の成長スピードに直結しやすい時期でもあります。
アーリー期の採用戦略
アーリー期は、商品・サービスの開発や改善を進めながら、顧客ニーズや事業モデルを検証する段階です。先行投資によって赤字になる場合もありますが、収益状況だけで一律に区分できるものではありません。
アーリー期の採用では、事業の立ち上げを担える即戦力を確保します。創業メンバーが採用活動を行い、創業メンバー以外の実務を担える従業員を採用する時期です。従業員を初めて採用するケースも多く、採用基準やプロセスを形づくる時期でもあります。
資金や人材などのリソースが限られる時期であり、業務ごとに従業員を雇うのは難しいため、できるだけ幅広く柔軟に業務を担当できる人材を確保すべきです。商品・サービスの開発やマーケティング、事務を担える人材などが求められます。
ミドル〜レイター期の採用戦略
ミドル期は、顧客や売上の拡大に合わせて組織体制を整えていく段階です。レイター期は、事業のさらなる拡大や上場などを見据える段階とされます。ただし、各フェーズの区分は、資金調達状況や事業の成熟度によって異なります。
ミドル期やレイター期には、事業を拡大させるなかで人材も追加で確保する必要があります。黒字化に成功して経営が徐々に安定するなかで、組織体制も整えていく時期です。
社内で各業務の担当者を採用・配置するケースでは、商品開発や事務、営業など各部門で必要な専門人材や統括役を担えるマネージャー人材を採用します。
創業者自身が作業ごとまで担うことが多いシード期やアーリー期とは異なり、ミドル期やレイター期では従業員を追加で採用して、経営者が経営に専念できる体制を整えます。
スタートアップ採用が難しい理由
さまざまな理由からスタートアップの採用には難しさがあり、人材確保に苦労するケースが少なくありません。以下では、スタートアップ採用が難しい理由を4つの視点から解説します。
1.知名度が低い
スタートアップは大手企業に比べて知名度が低く、そもそも応募者を獲得しにくいのが現実です。
「新しいビジネスモデルを構築していく」というスタイルは、新しいことに挑戦したい人にとっては魅力ですが、すべての転職者に魅力的に映るわけではありません。
創業したばかりの企業に対して、「本当に成長性があるのか」「すぐに倒産しないか」と不安に感じる転職者もいます。また、転職者にとって「これまでのスキルが活用できるか分からない」という不安の原因になることも少なくありません。
2.リソースとコストがかかる
スタートアップの採用活動では、リソース不足とコストの両方が課題になることが少なくありません。
スタートアップ企業は人的リソースが限られているため、専任の採用担当者が不在ということも多いです。採用業務に充てられる時間が少ないと、せっかく応募があってもアプローチやフォローが十分行えない可能性があります。
また、採用にかけられる予算も大手に比べると小さくなりがちなので、広告を出稿したりイベントに出展したりといった採用活動が十分行えないことも多いです。エントリー数が思うように増えなければ採用活動も苦戦することになります。
3.応募者に魅力を伝えにくい
応募者に魅力を伝えにくい、というのもスタートアップの採用活動が難しい理由の一つです。スタートアップは立ち上がったばかりであり、応募者に説明できる明確な実績がないケースが多くあります。
また、スタートアップでは社内規定が明確になっていないことがあります。しかし、待遇や労働時間は応募者にとってその会社がどのような会社なのかを判断する重要な材料です。
このような重要な点が不明確だと、「無理させられそう」「残業が多そう」といったネガティブなイメージを持たれる可能性があります。安定を求めて就職や転職を考える人からは敬遠されやすくなります。
4.採用要件が曖昧になりやすい
スタートアップでは人手が不足しやすく、人が足りないと感じたときに場当たり的に人材を採用することがあります。「優秀な人がほしい」「一緒に働きたいと思える人」などの曖昧な基準で、採用要件が曖昧なまま選考するケースが見られます。
また、人手不足のなかで社内規定や基準の策定が追い付かず、採用基準を明確にせず選考をスタートさせてしまう場合も少なくありません。
スタートアップは事業の成長・フェーズの変化に応じて採用すべき人材像が変わります。現在のフェーズではどんな人材を確保すべきなのか、必要な人物像や採用基準を明確にしないとミスマッチが起きる可能性が高まります。
スタートアップ採用の成功ポイント
スタートアップでは、採用要件の明確化や採用手法の見直しなど、工夫しながら採用活動を行うと人材を確保できる可能性が高まります。以下では、スタートアップ採用を成功させるために押さえておきたい4つのポイントを紹介します。
採用要件と優先順位を明確にする
スタートアップでは、事業フェーズや職種によって必要なスキル・経験・人物像が異なります。採用前に、任せたい役割、必須スキル、歓迎スキル、カルチャーフィット、入社後に期待する成果を整理し、優先順位を明確にすることが重要です。
たとえば、創業初期であれば、幅広い業務を任せられる人材が必要となる一方で、成長期には、各部門で統括やマネジメントを任せられる専門人材が必要になります。
また、「採用する人材に求める、絶対に譲れない要件」と「絶対ではないがあるほうがよい条件」を分類して優先順位をつけておくと、採用活動を進めやすくなります。
採用広報で認知度を高める
スタートアップの採用広報では、認知度を高めるだけでなく、事業の目的や働く環境を具体的に伝え、自社に合う人材からの応募につなげることが重要です。知名度が十分でない場合でも、事業が提供する価値や入社後に担う役割などを継続的に発信することで、候補者に検討材料を提供できます。
スタートアップ企業は給与や福利厚生で魅力をアピールしにくい場合が多いので、事業内容や仕事内容など他の部分をできる限り明確にし、発信していくことが大切です。
SNSやホームページで積極的に情報発信を行い、オフィス見学や体験ツアーなどオフライン活動も重視していくといいでしょう。
採用手法を見直す
スタートアップは採用に割ける予算や人員が限られるため、採用ターゲットに応じて手法を選ぶことが重要です。
人材紹介会社や求人サイトに加え、従業員から知人や友人を紹介してもらうリファーラル採用、企業から候補者へ直接働きかけるダイレクトリクルーティングなども選択肢になります。応募数や採用単価だけでなく、採用後の活躍・定着も確認しながら、自社に合う手法を見直しましょう。
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候補者体験を整える
候補者体験とは、採用候補者が企業を知ってから応募・選考を経て内定に至るまでに得る経験や満足度のことです。
スタートアップの場合、大企業に比べて認知度が低く、応募者がネットなどで事前に入手できる情報が限られることがあります。そのため、候補者は選考を通じて企業の魅力や信頼性を判断するケースが少なくありません。
企業側からすれば、候補者体験を充実させ、自社に対する好感度を高めて入社につなげることが重要です。選考スピード、面接官の対応、事業説明の分かりやすさ、入社後の期待役割の説明などを整えることで、候補者の不安を減らし、入社意欲を高めやすくなります。
スタートアップが採用ターゲットにすべき人材像
自社にはどんな人材が必要なのかをしっかりと考え、ターゲットをはっきりさせることも採用活動では重要です。
必要な人材像は、事業フェーズ、職種、組織課題によって異なります。以下の4点は、変化が大きく役割が固定されにくいスタートアップで検討されることの多い観点です。
ただし、一律の採用条件にはせず、職務ごとの要件や具体的な行動例に落とし込んで評価しましょう。
1.成長意欲が高い
事業や役割が変化しやすいスタートアップでは、必要な知識を自ら学び、未経験の課題にも取り組む姿勢が求められる場合があります。
採用時には、抽象的な「成長意欲」だけで判断せず、学習や改善に取り組んだ具体的な行動を確認することが重要です。
2.自分で意思決定できる
「自分で意思決定できる」ことも、スタートアップでは重要視されるポイントです。
新しいビジネスモデルを展開していけば、当然、前例のない事態にも見舞われます。また、組織体制が明確でないことも多いスタートアップは、「上から指示が下りてこない」「判断を下すべき人がいない」という状況も多く発生します。
とはいえ、いつまでも行動できなければライバルに先を越されます。スピード感を持って仕事をするためには、恐れずに自分で考え行動することが必要なのです。
3.ビジョンを共有できる
事業の仮説検証を繰り返すスタートアップでは、方針や業務内容が変わることがあります。
変化のなかで協働するには、企業のビジョンを理解し、判断の基準として共有できることが重要です。
ただし、ビジョンへの共感だけで困難を乗り越えられると考えず、働く環境や役割、期待する成果も具体的に伝え、候補者との相互理解を深める必要があります。
4.変化に対応できる
スタートアップは短期間に成長を目指す企業であり、移り変わりが多いことが特徴です。事業の成長やフェーズの進展にあわせて、事業の規模や内容、組織体制、取引先などが変わっていきます。
自身の業務内容が変化したり、一緒に働く同僚や取引先が入れ替わったりしても、変化を受け入れ、柔軟に対応できる人がスタートアップに適した人材です。
突発的な事象や急な状況変化が起きても慌てず、変化を前向きに受け入れられる人材が適しているといえるでしょう。
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優秀な人材を採れば成長できるわけではない
スタートアップ採用では、人手不足のなかで「とにかく優秀な人材がほしい」と考えがちです。しかし、実際には、優秀な人材を採れば企業として成長できるわけではありません。
入社後の評価や目標の進捗、1on1の記録、スキル情報を継続的に蓄積し、定着状況と合わせて振り返ることで、採用要件やオンボーディング、育成計画を見直す判断材料になります。
以下では、採用した人材の活躍・定着を支えるポイントを解説します。
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採用のゴールは入社ではなく活躍・定着
優秀な人材を採用できても、採用後にミスマッチが発覚して、すぐに辞められてしまっては意味がありません。早期退職者が出ると、それまでの採用活動にかけた手間やコストが無駄になり、改めて募集をかけることになって余計な費用がかさみます。
人材採用では、候補者が優秀かどうかだけでなく、自社の事業内容に共感して一緒に歩める人材か、社風に馴染めるかなど、さまざまな視点から人材を見極めることが重要です。
また、面接などの際、自社の魅力や成長性を候補者に伝えるだけでなく、給与や業務内容など待遇についても正確に伝えることが大切です。求人情報の内容や面接時の説明内容と実態が違うと、入社後にトラブルになる場合や早期退職につながる恐れがあります。
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オンボーディングで早期離職を防ぐ
オンボーディングとは、新しく組織に加わった従業員が職場や業務に適応し、能力を発揮できるよう継続的に支援する取り組みです。
入社直後は、業務内容や人間関係、企業文化など分からないことが多く、不安を感じやすい時期です。業務習得の支援、定期的な面談、周囲との関係構築などを計画的に行うことで、職場への適応を支えられます。
会社が一方的に教育・管理するだけでなく、入社者自身が目標や習得したスキルを確認し、上司との対話を通じて次の行動を考えられる環境を整えることも重要です。自身の進捗を振り返れるようにすることで、早期の立ち上がりと自律的な成長を支援できます。
オンボーディングは早期離職を必ず防ぐものではありませんが、入社後のギャップやつまずきを早期に把握し、必要な支援や本人の成長行動につなげることで、定着を支える取り組みになります。
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まとめ
スタートアップは知名度が低いなどの理由から、採用活動で苦戦しがちです。自社にマッチした人材を獲得するためには、自社の現状や課題などをしっかりと理解した上で採用戦略を詰めていくことが求められます。
自社の魅力を積極的に発信し、スタートアップに魅力を感じる求職者を集めたり、採用方法を見直したりするなど、具体的に動くことが大切です。成長意欲が高く、ビジョンを共有でき、自ら意思決定できる人材を獲得できれば、企業の成長につながるでしょう。
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スタートアップ採用では、入社前のスキルや経験だけでなく、入社後に活躍・定着できるかを見据えて採用基準を見直すことが重要です。
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