勘に頼らない採用課題解決ガイド-前編-

採用活動において「これまで通り」の手法では、優秀な人材を確保するのが難しいというのは、多くの企業感じている採用課題です。厳しい人材獲得競争に加え、採用活動のスピードアップや採用チャネルの多様化への対応など、人事担当者を取り巻く採用課題に大きな変化が生じるなか、頭を悩ませる担当者も少なくないことでしょう。

「勘に頼らない採用課題解決ガイド」では、本記事と次回の2回に渡り、採用活動の全工程を6つのステップに分類し、シーン別でよく見られる採用課題とその解決策をご紹介します。前編となる今回は、採用活動の礎となる「採用計画」から、煩雑さにより課題が積算する「応募者管理」までを対象とし、具体的な例をご紹介しながら解説していきます。

採用課題解決へのSTEP1 採用計画

【ケース1】前回より良い採用活動にしたいが、どこをどう改善すべきかわからない

課題

採用計画の立案時は、過去より良い採用を行いたいと意気込んでいるが、過去の実績が残されていないため、どこに問題がありどう修正すべきかがわからず、的確な改善ができずにいる。

解決策

各種データを分析して問題となる箇所を明確にすることで、無駄を減らした計画立案が可能となります。実際に、採用に強い企業の67%が採用活動をデータで可視化しています。

自社の採用活動の状況を詳しく正確に把握するためには、感覚や記憶に頼るのではなく、数値という事実をもとに状況を分析しましょう。目標を達成するまでの、各プロセスの業績を評価する指標であるKPIを設計し、適切なモニタリングを行うことにより、ゴールまでの最適な道筋が予測できます。

また、目標までの進捗を計測し、パフォーマンスを改善していく際にも、KPIの管理は最適です。ただし、採用計画の立案時にデータを収集するのは、大変な時間がかかるため、日常的に採用活動に関するデータを可視化できる環境を構築することが必要です。

採用課題の解決には目標から逆算したKPI設定がカギ
採用課題の解決には目標から逆算したKPI設定がカギ

【ケース2】採用活動に費やせるコストが削減されてしまった

課題

経費削減のあおりを受け、採用活動に費やせるコストが削減されたものの、採用のペースはこれまでと変わらず、採用活動をどのように進めるべきか悩んでいる。

解決策

単に「安く」済ませようとするのではなく、低コストでも成果を維持できる費用対効果の高い採用チャネルを利用するのが有効です。採用活動のコスト削減では、確保する人材の量や質を下げず、さらに人事担当者の負担を過度に増やさない対策が求められます。

それまでと同じ成果を、より安価に達成できる採用チャネルへの選択と集中は、もっとも現実的かつ効果的な方法です。一般的に、採用活動コストで大きな割合を占めるのは、「求人媒体の広告費」と「人材紹介会社の費用」の2つです。

採用チャネルの費用対効果は、過去の実績を数値化し、さまざまな角度から事実を把握・分析する必要があります。手間のかかるデータ分析作業ですが、分析機能の充実した採用管理システムなどを活用することで容易にすることが可能です。

採用チャネルの費用対効果はさまざまな角度から分析する
採用チャネルの費用対効果はさまざまな角度から分析する

採用課題解決へのSTEP2 母集団形成

【ケース3】求人媒体からの応募や人材紹介会社からの紹介数が減り、母集団が形成できない

課題

これまでと同じように求人媒体と人材紹介会社を利用しているが、条件は変わっていないにもかかわらず、応募数や紹介者数が減ったことにより、母集団形成に支障が出てしまっている。

解決策

採用チャネルの量や種類を増やし、間口を広げて応募者を呼び込むことで、応募者の増加が期待できます。ただし、ここで注意をしなければいけないのが各採用チャネルごとの費用です。

求人広告の場合、数を増やせば広告費もその分発生するため、結果として応募数が増えなくてもコストは確実に増えてしまいます。一方、人材紹介会社の場合は、成果報酬のため、コストを増やさずに応募数を増やすことが可能です。

また、採用チャネルも多様化しています。近年増えている「能動的な採用活動」であるダイレクトリクルーティングのなかでも、自社の状況をよく知る社員の知人を対象としたリファラル採用や、転職潜在層との関係を醸成し、転職意欲が顕在化したタイミングで最適なアプローチをするタレントプールなどを活用することで、旧来の方法では出会えなかった人材を採用できる可能性が広がります。

こうした異なる複数の採用チャネルを活用する際に生じる情報は、一元管理できるシステムを使うことで、人事担当者の負担を軽減することが可能になります。

多様化する採用チャネル
多様なチャネルを活用することで、転職健在層だけではなく潜在層にもアプローチが可能に。

【ケース4】応募者数は多いが「ターゲット外」の割合が大きく、書類選考の効率が悪い

課題

応募者の数は確保できているものの、書類選考をしてみると採用要件に満たない応募者が多く、結果的に必要な人数が確保できていない。書類選考の負担を減らし、効率的に、優秀な人材が採用できるようにする必要がある。

解決策

データにもとづいた改善により、より正確な求人票をつくることで、ターゲット外の応募者を削減することが可能です。そのためには「掲載して終わり」だったり、「改善してもその結果を検証しない」とするのではなく、検証と改善を繰り返すことで、求人票の精度を高める必要があります。

求人票の改善のコツとしては、現場へのヒアリングを行い、組織戦略も含めて検討することで「社内のニーズを見極める」こと。そして、求職者が自社をみた場合、また他社と比較した場合にどう映るかを客観的に分析したり、自社のような企業で働きたいのはどのような人物かを分析したりすることで、「自社の魅力の棚卸し」をし、求める人材を的確に把握することが大切です。

実際に、求人票を作成する際には万人に好まれるメッセージではなく、「採用したい人材の胸に響く」ことを意識し、設定した採用要件に合致する人物に訴えかける内容であることが重要です。

また、求人票を適宜改善するためには、効果の測定を感覚だけで行っては意味がありません。実績の分析は採用管理システムなどを用いて数値を算出し、事実を正確に把握しましょう。

検証と改善活動を継続することで採用課題解決につながる
検証と改善活動を継続することで採用課題解決につながる

【ケース5】母集団の質が悪く、採用したいと思う人材になかなか出会えない

課題

面接に進んでほしいと思える人材が少ない。採用要件を満たしていない応募者を減らし、採用要件を満たした人材の割合を高めたい。

解決策

課題を洗い出し、求める人材の要件が正確に伝えられる環境を整えることで、母集団の質を変えられます。母集団の質を左右する大きな要因としては、次の3点が挙げられます。

1つ目は、求人票に問題がある場合。前のケース4でも述べた通り、求人票を見た応募者に課題が多い際は、その傾向を分析し、課題の洗いだしと改善が必要です。

2つ目は、人材紹介会社との意思疎通に問題がある場合。その場合、自社の希望が正しく認識されていない可能性があります。抽象的な表現を避けたり、採用ステップごとの詳細なデータを共有するなど、コミュニケーションの質の改善を図りましょう。

3つ目は、採用チャネルの選定に問題がある場合。採用チャネル内に自社にマッチングする求職者が少ない場合は、思うような効果が得られません。各採用チャネルの利用者層や、自社における過去の採用実績などを分析するようにしましょう。

採用課題解決へのSTEP3 応募者管理

【ケース6】個人情報保護の強化を求められ、応募者情報管理の煩雑さに時間をとられる

課題

採用チャネルの多様化、個人情報保護の必要性など採用活動の複雑さが増したことで、応募者情報の管理に時間がかかり、コア業務に割く時間がつくれない。

解決策

テクノロジーを活用してトラブルのもとを排除することで、効率的な運用体制を構築し、負担を軽減することが可能です。Excelなどを用いた手動の選考管理では業務スピードに限界があり、情報の種類が増えると管理が煩雑化し手間がかかるだけでなく、転記ミスや見落としなどの人的エラーの可能性も出てきます。

採用活動でやりとりされる応募者の情報は、企業が守るべき個人情報の1つです。企業の信用に傷をつける情報漏洩の対策は、採用活動においても不可欠となるため、テクノロジーをうまく活用し、ミスを確実に防ぐ仕組みをつくることが重要になります。

採用管理システムは閲覧制限機能による安全性を備えているだけでなく、データの一括管理により関係者それぞれが、必要な時に必要なデータをリアルタイムで確認できるので、採用活動のスピードアップも期待できます。

採用活動で生じるさまざまデータを一元化する採用管理システム
採用活動で生じるさまざまデータを一元化する採用管理システム

【ケース7】求人票の改善のために分析や対策を行いたいが、作業に追われて手が回らない

課題

自社の採用活動における課題を改善したいと考えているが、問題点を正確に把握するための分析をしたり、しっかりと成果が得られる対策を練る時間がない。日々の業務に追われ、現状維持が続いている。

解決策

情報の収集・データ化をテクノロジーで自動化し、分析に必要なデータを簡単に取り出せる環境をつくることで、分析作業を楽にすることが可能です。

課題の洗いだしや成果の予測には、採用活動をさまざまな角度から正確に分析することが必要ですが、多くのデータを個別に手作業で用意するのは、とても大変です。採用管理システムで情報を一元管理することで、情報は採用活動の過程で随時蓄積され、データをそのまま分析に活用することができます。

また、正確な分析のためには採用チャネル、選考プロセス、採用職種など、さまざまな角度からの検討が必要です。採用管理システムにデータを蓄積しておくことで、グラフや表などの形にして可視化することもできるため、常に最新のデータを簡単に、必要な形式で確認することが可能となります

一元化したデータを自由な形式で取り出すことができる
一元化したデータを自由な形式で取り出せるので、採用課題の発見につながる

ここまで、採用活動における前半の3ステップでよく見られる課題と、その解決策をご紹介しました。どのステップにおいても重要となるのが、「データの一元管理」です。採用チャネルが多様化し、人事担当者の負担も増えている採用活動の工程を、テクノロジーの力で自動化・一元化することで、業務を効率化するだけでなく、より安全性の高いものにしましょう。

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勘に頼らない採用課題解決ガイド-後編-