勘に頼らない採用課題解決ガイド-後編-

人材獲得競争の激しい近年の採用では、応募者を確保できたというだけでは、安心はできません。選考の方法や、分析による成果の把握と対策にも、時代に合った変革が求められています。それにともない、採用担当者が解決すべき採用課題も日々変化しています。

本記事では前編に引き続き、採用活動の全工程を6つのステップに分類し、シーン別でよく見られる課題とその解決策をご紹介します。後編となる今回は、採用活動の要である「選考」から、採用活動の真の成否が判明する「採用後」までを対象とし、具体的な例をみていきます。

前編はこちら
勘に頼らない採用課題解決ガイド-前編-

採用課題解決へのSTEP4 選考

【ケース1】一次面接の辞退者が多く、採用が思うように進まない

課題

書類選考の通過者を一定数確保し安心していたが、一次面接の辞退者が多く採用が思うように進まない。会ってもらえなければ、書類選考に費やした時間が無駄になってしまう。

解決策

採用活動のスピードアップを図り、他社に先んじて候補者と接点を持つことで、一次面接に進んでもらえるようにしましょう。

求職者の多くは、同時期に複数の企業に応募書類を送付しているため、いち早く接点を持つことで、「これ以上の面接は不要」と思われるのを避けられます。

書類選考をスピードアップするポイントとしては、「事務作業の効率化」や「応募者情報の共有」、「選考結果の共有」、「スケジュール調整の効率化」などが挙げられます。いずれも、情報を一元管理できるシステムを使用することで実現可能です。

また、応募者の心変わりも面接辞退の要因の1つです。応募後に「この企業で働きたい」という気持ちが薄れるケースもあり、こうした場合は、あらかじめ詳細な情報を提示することで「とりあえず応募する」という応募者を減らしたり、自社の熱意を伝えることで「話を聞いてみても良さそうだ」と思わせたりする、などの手段が考えられます。

ただし、気持ちの変化を止めることは困難な場合も多く、一定の成果が見込める採用活動のスピードアップは、一次面接辞退の防止策としてより効果的といえます。

採用活動のスピードアップを図り、他社に先んじて候補者と接点を持つことで、一次面接に進んでもらえるように。
採用活動のスピードアップを図り、他社に先んじて候補者と接点を持つことは入社の意向上げにもつながる。

【ケース2】日程調整が煩雑で、面談・面接設定に多くの時間がとられてしまう

課題

面接官や候補者の都合を聞き、会議室の空き状況を確認するなど、やりとりの手間やタイムロスにより、面接の日時を決めるのに時間がかかりすぎてしまう。

解決策

面接官の予定と会議室の空き状況をリアルタイムで確認しスケジュール調整ができる体制を構築することで、面接日程の調整が楽になります。採用担当者が個々に確認をすると時間のかかってしまう作業も、テクノロジーを活用して、面接官や会議室のスケジュールを一元管理することで手間が大幅に減り、返信待ちのタイムロスもなくなります。

その際、注意したいのは一元管理されている予定が、常に最新の情報であるようにすることです。ダブルブッキングなどを避けるためにも、社内のカレンダーアプリと同期できる採用管理システムを用いるなどし、リアルタイムで更新できるようにしておくことでミスを防ぎましょう。

スケジュールの一元管理で日程調整にかかる時間と工数を削減する。
スケジュールの一元管理で日程調整にかかる時間と工数を削減する。

【ケース3】面接で印象が良かった有望な候補者が、選考途中で離脱してしまった

課題

面接を行い、有望視していた候補者が選考途中で離脱。その候補者の存在を前提に進めてきたそれまでの選考は見直しが必要になり、面接までの過程で費やした労力も無駄になってしまった。

解決策

面接の質を上げ、自社への関心・印象を高めることで、候補者が次の選考ステップへ向かう意欲を向上させましょう。企業の様子がわかり、未来の上司や同僚との交流が持てる面接の良し悪しは、候補者が選考の継続・離脱を決定するのに大きな影響を与えます。面接官が果たすべき役割として、「不安や疑問を解決する」ことや「入社意欲を高める」こと、「自社を印象づける」ことのほか、「入社の決断を促す」といったことまで求められます。しかし、これらの役割を1人の面接官が果たすことは困難なため、役割に特化した最適な面接官をアサインする必要があります。

「不安や疑問を解決する」:選考プロセスを通して候補者と接点を持つ採用担当者や、実際の業務をよく知る現場のマネージャー・現場のメンバーが担うことが一般的です。最も候補者に近い立場で接することになり、候補者にとっては選考プロセスを通して味方に徹する役割です。

「入社意欲を高める」:候補者の描いている未来像やキャリアの志向性を察し、志望動機をつくる役割です。基本的には最初の面接を行う面接官がこの役割であり、採用担当者や現場のマネージャーが担うことが一般的です。

「自社を印象づける」:「一緒に働きたい」と思わせるような現場のトッププレイヤーが効果的です。また、自社で働く覚悟を問い、次の面接につなげる役割も担うため、部長・役員クラスが担うことが一般的です。

「入社の決断を促す」:候補者にとって重大な決断を迷いなく行ってもらうため、経営者や役員が担うことが一般的です。

役割に特化して適切な面接官をアサインする。
役割に特化して最適な面接官をアサインする。

また、いくら優秀な社員をアサインしても、面接の方法を知らなければ真価が発揮できません。候補者の入社意欲の高め方や、適性や能力の見極め方など、具体的な指導をすることで面接官としての力量を教育で補うことで対応しましょう。

面接官の教育は、ベースとなる全体トレーニングと、面接官ごとの個別チューニングをバランスよく行い、数値をモニタリングしながら面接官ごとの力量や、傾向を把握するようにしましょう。

【ケース4】前回の面接と同じ質問をしてしまい、候補者に不信感を与えてしまった

課題

面接官同士の連携ミスにより、前回の面接と同じ質問を繰り返してしまい、「自分の話を聞いていないのかもしれない」と候補者に不信感を与えてしまった。そのことにより、入社意欲を損なわないか心配だ。

解決策

採用に関わる全ての社員で、最新の情報を漏れなく共有できる仕組みを構築することで、候補者に好印象を与えられる対応を実現しましょう。

同じ質問を繰り返されたり、伝えた希望が社内で共有されていなかったり、候補者の話を聞いていないと感じられる対応は不信感につながってしまいます。候補者の基本的な情報だけでなく、面接でのやりとりなど詳しい情報も共有しておくことで、「最適な対応」「追加で聞くべき質問」を、正しく推察できるようになり面接の質が向上します。

こうした候補者情報は、選考ステップが進むにつれて増えていくため、テクノロジーを活用し、一元管理システムで共有することが手間や負担を減らすだけでなく、ミスを防ぐのにも有効です。

応募者情報だけでなく、面接の結果や普段のやりとりの内容もすべて一元化することで一貫した候補者体験を提供できる。
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採用課題解決へSTEP5 内定

【ケース5】内定を出したが、辞退されてしまった

課題

書類選考から幾度かの面接を経て、内定を出すに至った優秀な候補者から、内定辞退の連絡が届いた。選考に費やした労力が無駄になっただけでなく、採用計画にも大きなダメージが生じてしまった。

解決策

内定辞退の理由を正確に見極め、課題を解決し、入社意欲を高める施策を初期から継続して行う必要があります。

内定辞退の防止は、辞退理由により対処法が異なるため、理由の正確な見極めが重要です。例えば、辞退理由が「企業に魅力を感じなかった」場合、自社の強みや魅力を伝える施策の強化が必要です。また「給与など待遇に不満がある」場合、待遇の改善や、待遇以外に候補者を納得させる説明などが必要となります。

応募書類や適性検査の結果、面接内容など、さまざまなデータから総合的に分析し、自社の課題を正確に把握しましょう。

もう1つ大切なのが候補者の入社意欲の向上です。内定が決まってからではなく、選考過程の初期から候補者との関係を構築し、入社意欲を高めつづけることで、内定辞退を防ぐことができます。

また、関係性が良好に築けたものの「入社時期が合わない」「別の業務であれば入社したい」という理由で辞退した候補者は、状況が変われば再度採用のチャンスがあるため、タレントプール化しておくことで今後の採用活動にもつながります。

内定が決まってからではなく、選考開始の段階から候補者との関係構築がはじまる。

採用課題解決へSTEP6 採用後

【ケース6】慎重に評価したはずなのに、入社後のパフォーマンスが期待に沿わなかった

課題

面接を重ね、慎重に評価して採用したはずなのに、実際に業務が始まると仕事のパフォーマンスは期待に沿うものではなかった。候補者のスキルを正確に見極める力を向上させたい。

解決策

採用手法の選択、評価基準の統一により面接の質を高め、見極めの精度を上げることができます。募集するポジション・職種に必要な能力や考え方を、候補者が備えているかを確認するには、その情報を引きだすために有効な面接手法を使い分けましょう。例えば、以下のような面接方法があります。

  • インシデント面接
    身近な問題事例を通し、候補者に質問をさせることで能力を見極める方法。リーダー候補・マネジメント人材の面接に有効。
  • コンピテンシー面接
    候補者の過去の取り組みに関する特定の事実を掘り下げ、潜在能力を見極めることで、候補者に対する評価のブレや見込み違いの発生を防ぐ方法。
  • プレゼンテーション面接
    候補者に自由に自分の考えをプレゼンテーションしてもらうことで、質問に対して返答する面接に比べ、思考力や人となり、企画力をより深く推し量る方法。

また、属人的な評価でなく、評価基準を統一しておくことも重要です。ある面接官が高く評価した候補者を結果として採用したが、実は別の面接官の評価が低かったという具合では、採用活動の精度は定まりません。募集職種やポジションごとに面接時の見極めポイントを明確化し、判断基準を定め、面接にあたる全員で統一しておきましょう。

【ケース7】採用活動で得た経験を次回に活かしたいが、対策の時間がとれない

課題

自社の採用活動の課題を改善したいと考えているが、日々の業務に追われてしまい、問題点を正確に把握するための分析や、しっかりと成果が得られる対策を練る時間がない。

解決策

経験は貴重な情報資源となります。採用活動で得た経験やデータを最大限に活用するため、効率的に蓄積・分析できる環境をつくっておきましょう。客観的事実である数値データを管理することで、多くのメリットが得られます。

メリットの1つ目として、採用チャネルごとに選考の実績を数値で可視化することで、応募者が集まりやすい職種や通過率の高い職種などが見えてきて、投資すべき最適な採用チャネルがわかり、無駄を削減できます。

続いて2つ目に、各採用ステップに数値目標を設定し、進捗状況をモニタリングすることで「このままでは目標を達成できない」といった予測ができるため、早めに軌道修正ができるようになり、採用活動の目標達成率を高められます。

そして、3つ目に、採用ステップごとに通過率を管理し、成果を振り返ることで、自社の採用活動全体における課題の有無や、必要な対策が見えるようになります。

こうした数値管理のメリットを確実に得るには、正確な情報を把握しやすい形で、リアルタイムに確認できる環境が不可欠です。優れたレポーティング機能を備えた採用管理システムを使えば、少ない負担で手間や時間をかけずに、課題の把握や対策の検討が可能となります。

ここまで、採用活動における後半の3ステップでよく見られる課題と、その解決策をご紹介しました。どのステップにおいても重要となるのが、「データの一元管理」です。多様化し、人事担当者の負担も増えている採用活動の工程を、テクノロジーで1つにまとめることで、業務を効率化するだけでなく、より安全性の高いものにしましょう。

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