ガラスの天井とは?その意味、ヒラリークリントンのスピーチ事例などわかりやすく解説

女性の社会進出が注目され、男女雇用機会均等法や女性活躍推進法といった法整備が行われているものの、未だに女性の出世・昇進を阻む壁が存在します。「男性は仕事、女性は家庭」といった考え方から脱却するには、見えない障壁である「ガラスの天井」を解消しなくてはなりません。

本記事では、日本社会に根付いているガラスの天井の意味や、ガラスの天井が生じる原因に迫ります。ガラスの天井を解消することで得られる企業のメリットや、具体的な解消方法、企業事例をご紹介します。

ガラスの天井(glass ceiling)の意味とは?

ガラスの天井(glass ceiling:グラス・シーリング)とは、能力や実力があるにもかかわらず、目に見えない障壁によって上級管理職への昇進や成長が妨げられる現象を指します。ガラスの天井は、主に女性や少数派グループが直面する問題として知られており、男女が平等に活躍する職場づくりをするうえで重要な課題です。

実力主義を掲げる組織でも、無意識の偏見や固定観念によってキャリアの天井が形成されることがあります。表面上は平等であっても、実態としては女性管理職の比率や男女の賃金に差があることが多く、女性のキャリア形成にマイナスの影響が出ています。

ガラスの天井という言葉が生まれた背景

ガラスの天井は、1978年にアメリカの企業コンサルタントであるマリリン・ローデンが使った言葉として知られています。1991年にはアメリカ連邦政府労働省がこの言葉を取り上げたことで、ガラスの天井の概念が広く知れ渡るようになったそうです。

類似した用語とその違い

ガラスの天井に類似した言葉として、「壊れたはしご」「第2のガラスの天井」「ガラスの地下室」の3つの意味を解説します。

壊れたはしご

壊れたはしご(Broken Ladder)とは、女性が昇進・昇格するためのはしごが壊れており、最初から土俵にも乗っていないことを揶揄した言葉です。ガラスの天井は、ある程度キャリアを重ねた女性の前に立ちはだかる障壁を指す一方で、壊れたはしごは、そもそも初期段階から道が閉ざされている状態を表す点で異なります。

第2のガラスの天井

第2のガラスの天井とは、ガラスの天井から派生した言葉です。一度ガラスの天井を突破して昇進、昇格をしたにも関わらず、新たな障壁に直面する状態を意味します。例えば、女性が経営陣に加わった後にさらに上位の役職に就くことが困難になることを指します。

ガラスの天井が最初の大きな障壁を表すのに対し、第2のガラスの天井はより高度かつ複雑な課題を示したものとなっています。

ガラスの地下室

ガラスの天井は職場における女性の課題を示した言葉であるのに対し、ガラスの地下室(Glass Basement)は、男性が直面する社会的な成約や問題を表現する概念です。男性特有の社会的期待や役割による制約を指し、収入と引き換えに危険な職種や長時間勤務を強いられる状況を表したのがガラスの地下室です。

女性の出世や昇進の障壁であるガラスの天井と、男性が収入と引き換えに過酷な状況を強いられるガラスの地下室、それぞれの立場に立って解決方法を検討する必要があるでしょう。

ガラスの天井が生じる原因

男女雇用機会均等法や女性活躍推進法など法整備が進んだにも関わらず、ガラスの天井が生じて女性などの昇進が閉ざされてしまうのはなぜでしょうか。ここでは、ガラスの天井が生じる主な原因を2つ解説します。

アンコンシャスバイアスの影響

アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)は、ガラスの天井形成の主要因の一つです。人々は無意識のうちに、特定の性別や人種に対して固定観念を持っていることがあります。例えば、男性にはリーダーシップがあるが、女性はそれを持ち合わせていないという無意識の思い込みが、女性の昇進を妨げることがあります。

また、同質性バイアスが働くと、自分と似た属性の人ばかりを評価する傾向も見られます。その結果、評価されて昇進・昇格するのはいつも男性となり、多様性の欠如につながるのです。これらのバイアスは、公平な評価や昇進の機会を阻害し、ガラスの天井を生み出す要因と考えられます。

<関連記事>バイアスとは?意味と使い方、種類を一覧でわかりやすく解説

長時間労働文化の弊害

長時間労働を美徳とする日本ならではの考え方もガラスの天井を生み出す要因の一つです。特に、育児や介護の責任を担うことが多い女性にとって、長時間労働は大きな障壁となります。

長時間労働が常態化すると、企業の重要な会議が遅い時間帯に行われたり、夜の飲み会に参加しなければ昇進に影響が出たりするなど、ガラスの天井が形成されやすくなるでしょう。

世界で見られるガラスの天井

ガラスの天井は、日本以外でも見られる現象です。中でもアメリカの大統領選に敗れたヒラリー・クリントンの演説で「ガラスの天井を打ち破ることができなかった」と発言したことは、全世界から注目を集めました。ここでは、世界で見られるガラスの天井の事例を取り上げます。

ヒラリー・クリントンのスピーチ:ガラスの天井は誰かが打ち破る

2016年のアメリカ大統領選挙で民主党候補となったクリントンは、指名受諾演説で印象的なガラスの天井に関するスピーチを行いました。「私たちは最も高くて最も固いガラスの天井をまだ打ち破っていませんが、そう遠くない将来に誰かが実現してくれると期待しています(出典:NHK アメリカ大統領選挙2016)」と語り、女性大統領誕生への期待を表明しました。

クリントンは、自身の経験を通じてガラスの天井の存在を可視化し、その克服に向けた社会の意識改革を促しました。このスピーチは、ガラスの天井に対する世界的な注目を集める契機となりました。

ドイツの女性クォータ制

ドイツでは、2015年に大企業の監査役会における女性クォータ制が導入されました。クォータ制とは、女性比率に対する何らかの目標を掲げて取り組む措置の総称で、このクォータ制のもと、上場企業の監査役会における女性比率は2021年に30%台に達したそうです。これは、法的な枠組みでガラスの天井を解消した事例として日本でも参考にされています。

インドの会社法改正

インドでは、2013年の会社法改正により、上場企業に少なくとも1名の女性取締役を置くことが義務付けられました。この法改正は、日本と同様に男性優位となっている状況をふまえ、ジェンダーギャップ解消のために施行されたものです。その後、インドの女性取締役の比率は大幅に増加しました。2020年には約17%となり、2012年と比較すると倍増となっているそうです。

日本社会におけるガラスの天井

日本社会におけるガラスの天井の状況は、他の先進国と比較して依然として厳しい状況にあります。特に女性の管理職比率は低く、意思決定層への参画が限られています。以下、日本におけるガラスの天井の実態を示す具体的なデータと事例を見ていきましょう。

女性管理職比率の低さ

日本の女性管理職比率は、国際的に見て非常に低い水準となっています。日本では2030年に女性管理職比率を30%とすることを目標に掲げていますが、残念ながら2022年の雇用均等基本調査では管理職に占める女性割合は12.7%にとどまり、前年から微増の結果となりました。

出典:男女共同参画局『「共同参画」2024年2月号

年々、女性管理職比率は増加傾向にあるものの、OECD諸国の平均である約30%を大きく下回っており、特に部長級以上の上位職になるほど女性の比率は低下しています。この状況はまさにガラスの天井が顕著に表れているもので、今後も継続的な取り組みが必要といえます。

業種間格差の存在

日本におけるガラスの天井の現状は、業種によって大きな差があります。例えば、厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」の結果によると、医療・福祉分野では女性管理職の比率が比較的高く、課長相当職以上の女性管理職は53%、係長相当職以上では55.4%、部長相当職以上では45.4%となっています。一方、製造業では課長相当職以上の女性管理職は8.0%、係長相当職以上では9.5%、部長相当職以上では4.5%となり、部長相当職以上では10倍もの差が見られます。

この格差は、業界特有の文化や慣習などが影響していると考えられます。女性の就業者数の少なさは女性管理職の数に繋がってしまうため、女性が働きやすい職場づくりに注力して、女性就業者を増やす必要があるでしょう。

出典:厚生労働省 「令和4年度雇用均等基本調査」結果を公表します 

女性の非正規雇用割合の高さ

出産・育児期にあたる30代後半から40代にかけて女性の離職率が高くなる「M字カーブ」の問題は解消傾向となり、女性の就業率は上昇しています。しかし、正規・非正規雇用の男女比を見ると、非正規雇用者に占める女性比率が圧倒的に多く、女性管理職比率が上がらない要因の一つとなっています。

厚労省の調査によると、育児や介護の負担が女性に偏っていることや、育児介護と仕事の両立が困難であることが、非正規雇用を選ぶ理由となっています。つまり、ガラスの天井を解消するには、育児や介護の男女差をなくすアプローチも有効と言えるでしょう。

※女性の就業率は向上しているものの、増加しているのは非正規雇用者であることが以下の図から確認できる。令和3(2021)年の非正規雇用労働者は男性652万人(21.8%)に対して女性1,413万人(53.6%)である。

出典:男女共同参画局『正規雇用労働者と非正規雇用労働者数の推移(男女別)

ガラスの天井に対する日本政府の取り組み

日本政府は、特に女性を対象としたガラスの天井解消に向けて様々な施策を実施しています。これらの取り組みは女性の活躍推進と働き方改革を通じて、社会全体の変革を目指しています。以下、主要な政策について解説します。

女性活躍推進法

女性活躍推進法(正式名称:女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)とは、女性が個性・能力を職業生活のなかで十分に発揮できる社会を実現することを目的として作られた法律です。ガラスの天井のような障壁をなくし、迅速かつ重点的に推進するために、企業や国、地方公共団体などの取り組むべきことを明文化したものとなっています。

もともとは時限立法でしたが、女性活躍推進が喫緊の問題となっている背景も相まって、2022年の法改正で対象企業を拡大。一般事業主行動計画の策定や、女性活躍に関する情報公開、えるぼし認定制度など、複数の制度を整備することにより、ガラスの天井の課題解決に取り組んでいます。

男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法とは、募集・採用・配置・昇進などの職業生活において、性別を理由とする差別の禁止や婚姻、妊娠・出産などを理由とする不利益取扱いの禁止を定めた法律です。この法律により、間接差別やポジティブアクションの導入などが進み、ガラスの天井の解消に向けて前進した一方で、依然として根付いている日本ならではの慣習や、アンコンシャスバイアスを完全に解決するには至っていません。法律の実行力や民間企業の協業体制をもとに、根気よく改善を続ける必要があるでしょう。

働き方改革

働き方改革は、働く人々が個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を実現するために2019年に施行された法律です。主に長時間労働の是正や年次有給休暇の取得義務化、同一労働・同一賃金などを主軸として、ライフワークバランスを保ちながら働ける社会づくりを目指しています。働き方改革は、ガラスの天井の解消に直接働きかけるものではありませんが、一人ひとりの多様性を活かし、それぞれの事情に応じた自由な働き方を推奨することで、女性の社会進出および女性管理職比率の上昇などを後押しすると考えられています。

ガラスの天井を解消するメリット

企業がガラスの天井の解消に取り組むことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ガラスの天井がなくなることで期待できる効果を2つご紹介します。

組織パフォーマンスの向上

ガラスの天井の解消は、組織のパフォーマンス向上に直結します。女性のみならず、多様なバックグラウンドを持つ人材が事業運営に参画することで、イノベーションが促進されます。

マッキンゼーの研究によると、経営陣の多様性が高い企業は財務パフォーマンスが平均を上回る傾向にあります。また、多様な視点が加わることでリスク管理能力も向上し、組織の持続可能性が高まります。さらに、公平な昇進機会は従業員のモチベーション向上につながり、生産性の向上にも寄与するでしょう。

ESG投資における評価の向上

ガラスの天井の解消は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも高く評価されます。ESG投資とは、環境・社会に配慮して企業統治されている企業に投資をしていく方針を指します。企業の中長期的成長を考えたとき、キャッシュフローや利益率といった定量的な財務情報だけでなく、非財務情報を重視する投資家が増えており、ESGの概念が着目されるようになりました。

2018年のコーポレート・ガバナンスコードの改訂では「ジェンダーや国際性の確保」が明記され、国内では女性活躍推進の改正により「男女賃金格差の公表」も義務化されています。見方を変えれば、ジェンダー問題に前向きに取り組むことで、機関投資家の関心を集めてESG投資の評価を得られるといえるでしょう。

人手不足の解消

共働き世帯が増え、女性のM字カーブは解消されつつある一方で、女性の多くは非正規雇用を選択しています。この背景には、ガラスの天井や育児・介護と仕事の両立など、複数の問題が絡み合っているといえます。非正規雇用、すなわちパートタイムの短時間勤務を選ぶ女性がフルタイム勤務に移行すれば、企業の人手不足の解消に寄与するでしょう。引き続きガラスの天井を解消し、女性の能力・経験を活かした正当な人事評価を行って女性管理職比率を向上させ、働く女性の力を活かしていくことが人手不足解消の鍵となるでしょう。

ガラスの天井を解消する方法

ガラスの天井を解消するためには、評価基準を見直したり、多様な人材を受け入れたりするための制度づくりなどが有効です。ここでは、ガラスの天井を解消する方法を3つ取り上げてご紹介します。

評価基準の見直し

多くの企業が、ガラスの天井解消のために評価基準の見直しを行っています。従来の長時間労働や転勤を前提とした評価基準から、成果主義や多様な働き方を認める基準へと移行しています。

例えば、KDDI社では独自にジョブ型人事制度を導入し、実力に基づいた評価・報酬で社員の成長を後押ししています。本制度の導入によって社員一人ひとりの自律的なキャリア形成が可能になり、年功序列や性別差バイアスのバイアスを防ぐことができるでしょう。

DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進

DEIとは、多様性を認めて公平性を担保し、さまざまな人の考えや価値観を受容していく概念を指します。表層的なダイバーシティに性別、人種、国籍があり、グローバル企業や大手企業、先進的な企業などではDEIを積極的に推進しています。

例えば、アクセンチュア社では、グローバルレベルでD&I戦略を推進する専門チームを設置し、女性の登用やLGBTQ+支援など包括的な取り組みを行っています。同社の経営陣は、女性の最高経営責任者(CEO)となっており、ジェンダーバランスのとれたメンバーによる経営に取り組むことで、持続的にガラスの天井の解消へ取り組んでいます。

メンタリングプログラムの実施

メンタリングプログラムとは、ガラスの天井を打破するための効果的な手段として注目されています。例えば、取締役や執行役員などをメンターに配置し、取締役や部長候補の女性をメンティーとします。メンティーはガラスの天井に対する意識改革を図り、視座を高めて自律的なキャリア形成に繋げることができます。

一方、メンターとして参加した社員もジェンダーギャップ解消に貢献することができ、多様な人材育成のヒントを得られるメリットもあるでしょう。メンタリングプログラムは、複数企業が合同で実施した事例もあり、アンコンシャスバイアスやジェンダーギャップの気付きにも有効と言えます。

ガラスの天井に対して人事担当者が取り組めること

性別や属性に関わらず社員の能力などを活かすため、ガラスの天井の解消に向けて人事担当者は何に取り組めばいいでしょうか。具体的な取り組みを3つご紹介します。

バイアス解消に向けた研修・トレーニングの実施

人事担当者は、組織全体でアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に対する認識を高めるトレーニングを実施することが重要です。これにより、採用や昇進の過程で生じる可能性のある偏見を最小限に抑えることができます。例えば、ケーススタディを用いた実践的なワークショップや、オンラインでの自己診断ツールの提供などが効果的です。定期的なトレーニングの実施により、公平な評価文化を醸成し、ガラスの天井の解消につながります。

キャリア支援制度の整備

性別や年齢、国籍などにとらわれず、社員それぞれの能力や意欲を活かせるキャリア支援制度を構築する方法があります。女性管理職比率を向上させるため、制度面を整備し、面談や各種サポートを行います。

特にライフイベントによってキャリアを中断しやすい世代を支えるために、産休育休取得や復職支援、時短勤務制度、フレックスタイム制などの検討も有効です。公平性かつ柔軟性のあるキャリア支援制度を整えることで、慣習やバイアスの影響を最小限に防ぐことができるでしょう。

柔軟な働き方の推進

人事担当者は、多様な働き方を認め、推進する制度設計を行うことが重要です。フレックスタイム制やテレワークの制度、副業推進など、社員の希望やライフステージに合わせた柔軟な働き方を提供します。柔軟な働き方を提供することで、ライフイベントによるキャリア中断のリスクを減らし、ガラスの天井の解消につなげます。

また、働き方の自由度を高めることで、長時間労働の是正にも期待できます。長時間労働が解消されれば、プライベートと仕事の両立もしやすくなり、よりガラスの天井の解消に効果が期待できるでしょう。

タレントマネジメントシステムを活用したガラスの天井への対策

タレントマネジメントシステムの活用は、アンコンシャスバイアスを抑止して、ガラスの天井の解消が期待できます。タレントマネジメントシステムとは、採用、育成、配置、評価などの人事業務における戦略的人事の実現やプロセス改善をデータに基づいて行うものです。

HRMOSタレントマネジメントは一人一人の人事データやスキル、人事配置情報などを収集し、データによる定量的な判断ができるのが特徴で、バイアスによるガラスの天井を解消するのに役立ちます。

<関連記事>【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法

ガラスの天井に対する企業の具体例

ガラスの天井の解消に積極的な企業事例を3つ取り上げます。アンコンシャスバイアス研修の導入やDEIの推進など、自社の取り組みの参考にしていただければ幸いです。

三井化学株式会社|アンコンシャスバイアス研修の導入

同社では、ダイバーシティ推進を図る具体的アプローチ方法として、女性管理職比率の向上を目標に掲げていました。女性管理職比率を妨げる原因は「バイアス」であることに着目をして、管理職向けのダイバーシティ研修で「上司の声掛けが性別によって異なることが、女性の育成遅延につながっている」と指摘されたそうです。

その後、2018年からアンコンシャスバイアス研修を本格的に導入し、eラーニングなど外部サービスも活用しながら取り組みを継続しました。その結果、徐々に部長クラスの社員意識にも変化が見られました。今後は女性社員の意識改革も進めて、ガラスの天井の解消を目指していくとのことです。

イオン株式会社|ダイバーシティ推進室の設置

小売大手のイオン株式会社では、ダイバーシティ推進室を設置して女性活躍推進を全社で掲げています。積極的な取り組みの成果として、約9000人もの女性が管理職として活躍を果たし、2023年時点で女性管理職比率は26.4%と、非常に高い数値を記録しています。同社はDEI推進および女性活躍推進を経営戦略の一つと捉え、女性管理職比率50%を達成するための積極的な取り組みを続けています。

株式会社タカラトミー|業務をカバーする社員の「応援手当」

玩具メーカー大手の株式会社タカラトミーでは、社員が子どもを一人出産した際に「出産育児祝い金」として200万円の手当を男女問わず支給する制度を導入しました。また、育休取得者の周辺社員に対しては「応援手当」を支給することで、産休・育休取得をした社員だけが優遇されないように努め、性別問わず育児と仕事の両立を促します。

あえて「女性だけ」「育休取得者だけ」にフォーカスしないことで、公平性を担保しながらも長く働ける環境を構築しました。結果的に、女性の働きやすさ・長期就業につながり、ガラスの天井の解消にも期待できる施策といえるでしょう。

ガラスの天井を解消する際の注意点

ガラスの天井の解消に取り組む際、「女性優遇」にならないよう注意が必要です。例えば、産休・育休取得や休業からの復帰に関して、出産する女性だけに気を遣ってしまい、産休・育休取得する女性の同僚への配慮を忘れてしまうと反感を買うこともあるでしょう。必ず周囲の社員にもサポートする姿勢を示し、何らかの対策を講じることが大切です。

また、育児・介護休業は性別問わず取得が可能なため、男性にも平等に取得を促すことも必要でしょう。

他にも、ポジティブ・アクションの活用も有効です。ポジティブ・アクションとは社会的・構造的に不利益を被っているもの(ここでは女性)に対して、一定の範囲で特別な機会提供を行い、実質的に機会均等を実現するための措置を意味します。ポジティブ・アクションで女性限定の管理職求人を出したり、女性管理職の育成に力を入れたりして、ガラスの解消に取り組むことができます。女性の採用や昇進・昇格に対する法的説明ができるため、男性社員の納得度も高くなるでしょう。

他人事と思わず、見えない壁と向き合う姿勢が求められる

多くの女性は、ライフイベントが変化するタイミングでガラスの天井を感じています。例えば、平均的な結婚年齢の女性が転職に臨むと、「この年齢の女性は結婚・出産してすぐに辞めるから」などと判断され、不利になる場面は少なくありません。もちろん採用面接の際に、結婚したら辞めますかなどと直接的に話すことはタブーとされていますが、事実上、「女性は結婚や出産で仕事を辞める」「女性は管理職にならない」といったアンコンシャスバイアスは、身近なところで見られるものです。

また、小さな子どもがいる女性に対して一方的に「この人は家庭が優先だから責任の重い仕事を任せるのは辞めよう」と、勝手な判断をされるケースもあります。男女共働きや男性の育児参加が進む現代とは裏腹に、人々のなかに根付いた昔からの思い込み、慣習によって、まだまだ見えない壁が立ちはだかっている現状です。

今後ますます女性活躍、多様性が最重要視される時代において、ガラスの天井に関する課題を自分事として捉えて、積極的に解消に取り組む姿勢が求められています。

まとめ

ガラスの天井は、性別や人種などを理由に昇進・昇格を阻まれる現象のことで、キャリアアップを阻害する「見えない障壁」として知られています。ガラスの天井は女性の職業生活において特に問題視されており、世界的に見ても女性の社会進出が遅れている日本にとって喫緊の課題です。

ガラスの天井を解消することで、多様な意見が経営に反映されてイノベーションが生まれるだけでなく、人手不足の解消や生産性向上、機関投資家によるESG投資の評価を得られるなどメリットが豊富です。

アンコンシャスバイアスによるガラスの天井を解消するため、制度の見直しやシステムの導入など、企業にできることを考えて最初の一歩を踏みだしてみませんか?

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