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誰かと接するときに、相手との距離が近すぎると感じた経験はありませんか?快適と感じる距離感は人によって異なります。そのため、ある人にとっての適度な距離が、別の人にとっては不快な距離になるケースがあります。
相手に不快な思いをさせず、円滑にコミュニケーションを進めるためには、適度な距離感を知っておくことが大切です。ビジネスシーンにおいてもパーソナルスペースの知識を活用すれば、良好な人間関係の構築に役立てられるでしょう。
本記事では「パーソナルスペース」の意味や、パーソナルスペースの広い人と狭い人の特徴などについて解説します。
パーソナルスペースとは
パーソナルスペースは他人との距離を示す言葉であり、パーソナルスペースは人々の生活に次のような影響を与えています。
パーソナルスペースの意味
パーソナルスペースは「個人空間」とも呼ばれる、目に見えない境界線で囲まれた自分の周りの空間です。自分が快適に過ごすための、心理的な領域のような空間であるともいえるでしょう。
パーソナルスペースに他人が侵入すると、不安感が高まり、不快な感情を抱くようになります。また、心臓がドキドキするといった生理的な反応が生じる場合があります。
しかし、家族や恋人などの場合と仕事上の付き合いがある人との場合では、近づいてきたときに不快に感じる距離感は変わります。このように、パーソナルスペースは相手とどのような関係にあるかによって大きく変化するものなのです。
また、他人との距離感が遠いことをパーソナルスペースが広いと表現し、近いことをパーソナルスペースが狭いと表現します。
パーソナルスペースが人間関係に与える影響
パーソナルスペースは、人間関係の構築にも大きく影響します。よく知っている相手であり、信頼関係が築かれている人との間では、パーソナルスペースは狭くなります。それは、相手に対する警戒感が弱まるからです。
反対に、親密な関係ではない相手がパーソナルスペースを侵害して近づくと、不安な気持ちを抱き、コミュニケーションに支障をきたす恐れがあります。
相手が快適に感じるパーソナルスペースの理解と尊重が、友好的な人間関係の形成には欠かせないのです。
ストレスや快適さとの関連性
自分のパーソナルスペースが侵害され、相手が自分と近い距離にいる場合、精神的ストレスや居心地の悪さを感じるようになります。プライバシーが侵害されたように感じる場合もあるでしょう。また、緊張感が高まり、心拍数が上がるなど身体的なストレスを招く恐れもあります。
一方、自分のパーソナルスペースが守られ、相手との間に適度な距離を確保できている状態では、ストレスを感じにくくなります。パーソナルスペースが守られると、適度な距離によって生まれる安心感が相手への信頼感につながり、良好な関係性を築きやすくなるのです。
パーソナルスペースの4つの分類
アメリカの文化人類学者であるエドワード・T・ホールは、パーソナルスペースを次の4つに分類しています。
密接距離(0~45cm以下)
密接距離とは、0〜45cm以下と、パーソナルスペースの4つの分類のうち最も狭い距離感です。親子や恋人同士の間に見られる距離感で、会話でコミュニケーションを図れるだけでなく、スキンシップもできます。
密接距離は、心を許している相手だけが侵入を認められる空間です。したがって、心の距離が離れている人が入り込むと、不快な思いを招きます。相手と特別な関係ではない限り、密接距離のゾーンにまで入り込まないような配慮が必要です。
個体距離(45~120cm以下)
個体距離とは、45〜120cmの距離感を指します。会話をするときに相手の表情の変化を確認できる距離であり、親しい友人や知人などと接するときに快適に感じられる距離感です。
個体距離は手を伸ばせば触れられる距離でもあり、個体距離で快適に接することができるのは、友人などの親しい間柄だけに限定されます。
社会距離(120~360cm以下)
社会距離は、120〜360cmほどの距離です。ある程度は知っている相手ではあるものの、個人的な関係ではない、ビジネス上の付き合いなどで用いられる距離が社会距離に該当します。職場の同僚・上司などとの会話や取引先との商談、採用面接などのシーンに適した距離です。
しかしながら、社会距離は120〜360cmと、最小距離と最大距離に大きな幅があります。職場の同僚と会話をするときなどは、比較的近い距離の方が適しており、初対面の相手との会話などでは遠めの距離の方が適しているといわれています。
公衆距離(360cm以上)
公衆距離とは、個人的な関係が成立しない360cm以上離れた距離のことです。相手の顔や表情をはっきり確認できないほど空間が空きます。具体的には、講演会やコンサートなどにおける、講師や演奏者と聴衆の位置関係が公衆距離に該当します。
また公衆距離は、公の場などにおいて他人同士が居合わせるときに不快感やストレスを感じない距離であるともいえます。
パーソナルスペースが広い人・狭い人の特徴
人によってパーソナルスペースの広さは変わり、良好な関係の構築には、相手のパーソナルスペースの見極めが重要な意味を持ちます。パーソナルスペースが広い人と狭い人には、それぞれ次のような特徴があります。
パーソナルスペースが広い人の特徴
- コミュニケーションが得意ではない人
- 内気な性格の人
- 大人数の集まりが苦手な人
- 1人の時間が好きな人
コミュニケーションがあまり得意ではなく、内気な性格の人ほどパーソナルスペースは広くなる傾向にあります。
多数の人との付き合いよりも特定の人と親密な付き合いを好む人や、1人での時間を好む人などは、内向的な性格に近いといえます。内気な人は、人と打ち解けるのが苦手なことから、パーソナルスペースを広く確保し、相手との距離を維持しておいた方が安心できるのでしょう。特に、知らない同性や異性に対しては、親しい同性や異性が相手のときよりも前方向のパーソナルスペースが広くなることが分かっています。
パーソナルスペースが狭い人の特徴
- 人付き合いが得意な人
- 外交的な性格の人
- 友達が多い人
- 大人数で過ごす時間が好きな人
外向的な性格の人は、パーソナルスペースが狭いことが分かっています。知らない人でも気軽に話しかけられる人や、人と一緒に過ごす時間が好きな人、誰とでもすぐに友達になれる人などはパーソナルスペースが狭くなる傾向にあります。
外向的な人は、コミュニケーションスキルが高く、他人との会話に不安を感じないために、相手との距離が近くなってもそれほど抵抗を抱かない人が多いのでしょう。
パーソナルスペースに影響を与える要因
パーソナルスペースの広さにはその人の性格が影響することが分かりましたが、そのほかにも次のような要因がパーソナルスペースに影響します。
性別による違い
男性と女性を比べると、女性の方がパーソナルスペースは狭くなる傾向にあります。また、
女性のパーソナルスペースには、前後左右の距離に差が見られないという特徴もあります。女性は、四方全体を見渡す特性があるために、パーソナルスペースは円形に近くなると考えられているのです。
一方、男性のパーソナルスペースは、前方のパーソナルスペースが広く、左右と後ろのパーソナルスペースは狭くなる傾向にあります。男性は前方に視線を集中させる特性があることから、前方が長い楕円形になると考えられており、正面から近づく相手に警戒心を抱きやすくなります。
また、男性は正面からの接近を好まないため、女性に対しても横から接近する傾向があります。しかし、女性のパーソナルスペースは円形に近いため、横から近づいた場合でも不快感を与える可能性が高いのです。男女間でコミュニケーションを図るときは、性差によるパーソナルスペースの違いも考慮するとよいでしょう。
文化や国による違い
文化や国民性の違いもパーソナルスペースに影響を与えます。南米や中東など、握手やハグなどのスキンシップの習慣を持つ国は、人との距離が近く、パーソナルスペースは狭い傾向にあります。一方で、日本のようにスキンシップの文化があまりない国やシャイな国民性を持つ国では、パーソナルスペースは広くなるといわれています。
そのほか、インドや中国など人口密度が高い国では、パーソナルスペースが狭いことが分かっています。電車など、他人が近い場所にいるケースが多いといった社会状況も、パーソナルスペースの広さに影響を及ぼすと考えられています。
年齢による変化
年齢が低いとパーソナルスペースは狭くなります。赤ちゃんや小さな子どもは警戒心がそれほど大きくありません。そのため、人が入り込めるパーソナルスペースも狭くなるのです。成長とともに警戒心が芽生えると、12歳頃からパーソナルスペースは徐々に広くなると考えられています。
ただし、パーソナルスペースは年齢とともに広がり続けていくわけではなく、最もパーソナルスペースが広がる年齢は40歳頃だといわれています。
ビジネスにおけるパーソナルスペースの活用法
パーソナルスペースについての理解は、ビジネスにも生かせます。では、具体的にどのようなシーンにおいてパーソナルスペースの知識を活用できるのでしょうか。
オフィスレイアウトに生かす
ビジネス上でストレスを感じずに過ごせる社会距離は120cm〜350cmです。したがって、オフィスレイアウトを考えるときは、少なくとも隣の席との距離を120cmは確保した方がよいでしょう。集中力も高まり、生産性も向上する可能性があります。
フリーアドレスオフィスの場合は、座席の間にパーティションを設置し、視線をシャットアウトするとパーソナルスペースを確保しやすくなります。電話の話し声やタイピング音なども気にならなくなるため、作業に集中しやすくなるでしょう。
リーダーシップの発揮
リーダーシップを発揮したい場合は、ミーティングの際にある程度の距離を空けると適度な緊張感を生み出せます。たとえ普段は親しい間柄であっても、120cm以上の社会距離を取るとよいでしょう。角テーブルを使い、上座に座ると、無理なく、他の参加者との距離を確保することができます。
商談に生かす
取引相手は個人的な関係にあるわけではありません。そのため、取引先と商談を進める際には120cm〜350cmの社会距離を意識し、一定のパーソナルスペースを設けるようにします。テーブルを挟んだ商談は、パーソナルスペースを確保するためにも有効です。
ある程度の距離を確保した方が、難しい商談をする際にも落ち着いた精神状態で交渉ができるでしょう。また、相手もパーソナルスペースを確保することでストレスを感じにくくなるため、円滑に商談を進められる可能性が高くなります。
パーソナルスペース侵害のリスク
パーソナルスペースを侵害すると、相手との間でさまざまなトラブルを招く恐れがあります。他人のパーソナルスペースを侵害した場合の3つのリスクについてご説明します。
ストレスを招き、苦手意識を与える
それほど深い関係にない状態で、相手のパーソナルスペースに入り込むと、心理的なストレスを与える可能性があります。特に、パーソナルスペースが広い人の場合は注意が必要です。急に距離を縮められると、不快感を抱かせると同時に苦手な人であると認識されてしまう恐れがあります。
一度、苦手意識を与えてしまうと、悪い印象を挽回するまでには時間がかかります。パーソナルスペースを見誤り、相手に不快な印象を与えると、よい関係性の構築が難しくなるため注意が必要です。
ハラスメントにつながる
パーソナルスペースとは、心理的な縄張りのような空間であり、縄張りに他人が入り込めばストレスを感じるようになります。親しくない相手であるにもかかわらず、45cmよりも近い密接距離に近づけば、ハラスメントにつながる恐れもあるでしょう。
例えば部下がミスをした場合、上司が密接距離で部下を叱責すれば、パワーハラスメントと受け止められる可能性もあります。また、異性が必要以上に接近しパーソナルスペースに侵入すれば、セクシャルハラスメントになる場合もあると考えられます。
生産性の低下を招く
ワークスペースが狭く、十分なパーソナルスペースを確保できない職場では、常に不安感や不快感を抱きながら仕事を進めなければなりません。精神的なストレスは、集中力の低下につながり、生産性を低下させる恐れがあります。
また、パーソナルスペースを確保できない場合、他の社員の動きが視界に入るようになったり、騒々しい環境になったります。静かな環境でなければ気が散り、作業効率は低下します。
パーソナルスペースが確保できないオフィス環境では、従業員が十分なパフォーマンスを発揮できない可能性が高くなるのです。
パーソナルスペースを理解して円滑な人間関係を築く方法
パーソナルスペースをしっかり理解すれば、円滑な人間関係の構築も可能です。良好な関係を築くためのポイントをご紹介します。
相手によって距離感を見極める
パーソナルスペースは、人によって異なることを解説しました。また、相手との関係性によってもパーソナルスペースの距離感は変わってきます。
円滑な人間関係を築くためには、相手のパーソナルスペースの広さや相手との関係性を見極め、適切な距離を保つことが大切です。まだ互いをそれほど理解していない関係性や、パーソナルスペースが広い人に対しては、急激に近づくのではなく、時間をかけながら徐々に気持ちの距離を縮めていくようにしましょう。
立場を考慮する
人と接する際には、立場も考慮しなければなりません。上司と部下の関係にある場合、部下をしっかり理解し、良好な関係を築きたいという思いから、近い距離で接してしまうケースがあるかもしれません。しかし、上司がパーソナルスペースに入り込むと、部下はストレスを感じるケースが多くなります。上司と部下という立場上、部下は距離の近さを指摘しづらいものです。相手が不快に思っているという事実に気が付かない場合、かえって部下との距離は開いてしまうでしょう。
また、上司と部下の距離が近すぎても、関係性が親密になりすぎ、適度な緊張感を持って業務を進められなくなるリスクが生じます。円滑な人間関係を築く際には、立場の違いも考慮すべきです。
人事領域におけるパーソナルスペースについて
採用活動や社員教育など、人に関わる業務を担う人事領域においても、パーソナルスペースの知識は有効的に活用できます。
採用面接でのパーソナルスペースの配慮
採用面接では、面接者は面接官を前に緊張しているケースがほとんどです。面接官との距離が近ければより緊張は高まり、ストレスを与える可能性が高くなります。
採用面接時には、120cm〜360cmの社会距離を意識するとよいでしょう。面接では、相手の本音を引き出す必要がありますが、パーソナルスペースを空けすぎると、表情を読み取りにくく、相手の本音を把握できない可能性があります。採用面接では最低でも120cmの距離は確保するとともに、圧迫感を与えず、表情もしっかり確認できる距離感を大切にしましょう。
1on1での効果的な距離感
上司と部下が1対1で定期的な面談機会を持つ1on1ミーティングを実施する際にも、パーソナルスペースの知識を活用できます。ビジネスの場では、社会距離が適切な距離であるとされますが、1on1の場では120cmよりもやや近い距離の方が適している可能性があります。
距離が近すぎると相手にストレスを与えてしまいますが、距離を少し縮めると親密さが増し、相手の本音を引き出しやすくなるのです。ただし、人によってパーソナルスペースの広さは変わるため、相手との関係性や相手の性格などへの配慮が必要な点を忘れないようにしましょう。
<関連記事>1on1とは?実施の目的や効果、トーク例などを解説
チームビルディングにおけるパーソナルスペースの考慮
目標を達成できるチームを構築するためには、メンバー全員が互いを理解し、協力し合う体制を整えなければなりません。チームの結束を高める際には、パーソナルスペースを狭めると親密な関係性を築きやすくなります。丸いテーブルを使ってミーティングを行えば、対等な間隔で並び、自然に距離が近くなるため、関係を強化できます。また、机を置かず、椅子を円形に並べて話す方法も結束力を高め、活発な意見交換を促すためには効果的です。
まとめ
パーソナルスペースは、人が快適に過ごすための他人との距離です。パーソナルスペースが侵害されるとストレスや不快感を抱くようになります。また、人によってパーソナルスペースの広さは異なり、相手との関係性によってもパーソナルスペースの距離は変わってきます。
相手に合わせたパーソナルスペースを意識し、ビジネスシーンにおいても円滑なコミュニケーションを実現しましょう。
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