アンダーマイニング効果とは?意味や事例、対策を解説

ビジネスで成果を上げるには、いかに従業員のモチベーションを高められるかが重要なポイントです。基本的に会社はチームで動くため、一人でもモチベーションの低い従業員がいれば、全体の士気にも大きな影響を与えてしまいかねません。

本記事では、社員のモチベーション低下を防ぐために知っておきたいアンダーマイニング効果について、意味や事例、対策を解説します。従業員のモチベーション低下にお悩みの企業様はぜひ参考にしてください。

アンダーマイニング効果とは?

アンダーマイニング効果とは、内発的動機(やりがいや好奇心など)で始めた行為に外発的動機(金銭や評価など)を与えることで、元々あった内発的動機が失われることを指すものです。「過剰正当化効果」とも呼ばれています。

アンダーマイニング効果は、1971年に米国の心理学者、エドワード・L・デシ氏とマーク・R・レッパー氏によって提唱された行動実験です。その後、脳科学研究所の松元健二准教授とミュンヘン大学の村山航研究員らが、実際にアンダーマイニング効果を反映した脳活動を捉えることに世界で初めて成功しました。

この研究結果は、2010年に米国の科学雑誌に掲載され、アンダーマイニング効果の実在性を脳科学的にも実証した形となっています。

内発的動機づけと外発的動機づけの違い

内発的動機づけと外発的動機づけの違いは次のとおりです。

  • 内発的動機づけ

内発的動機づけとは、活動自体を目的として、その活動を行っている状態を指すものです。例えば自分の部屋を清潔に保ちたいから掃除をする、毎月の売上確認を効率化するために自動集計プログラムを作成するなどが挙げられます。

  • 外発的動機づけ

外発的動機づけとは、報酬の獲得や罰則の回避などの手段として活動を行っている状態を指すものです。例えば、お小遣いをもらえるから家の手伝いをする、罰則があるので真面目に業務を行うなどが挙げられます。

アンダーマイニング効果が起こるメカニズム

アンダーマイニング効果が起こる要因としては、内発的な動機だった活動がいつしか外発的な動機にすり替わってしまう点にあります。

元々は興味がある、自身の成長につながるなど内発的に面白いと思って始めた活動が、後々報酬や罰則が絡むと、報酬をもらうだけのために業務を行っている、母親に叱られるのが怖いから掃除をしているなどと当初の目的がすり替わってしまい、活動自体に興味を失ってしまいます。

報酬や罰則など外発的動機のために行っていると考えるようになってしまうのが、アンダーマイニング効果が起こる大きな要因です。

逆の効果「エンハンシング効果」

報酬や罰則などの外発的動機づけがあるからといって、必ずアンダーマイニング効果が起きるわけではありません。それが「エンハンシング効果」です。

例えば自分の業務が楽になるからと始めた自動プログラムの作成が、他部署の効率化も実現したくなり、プログラムをつくるようになるケースが該当します。他にも、親に褒めてもらえるのが嬉しくて箸や茶碗を並べていた子どもが、料理にも興味を持ち、自分でおかずをつくるようになるのもエンハンシング効果です。

そうした意味でエンハンシング効果は、報酬を得る、罰則を回避することが目的になってしまうアンダーマイニング効果とは逆の効果だといえます。


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アンダーマイニング効果の具体例

実際にアンダーマイニング効果が起きてしまう状態の具体例を3つ紹介します。

教育現場

教育現場におけるアンダーマイニング効果としては、試験の結果により、親が子どもにお小遣いを与えると約束したとします。

子どもは、元々は成績が上がるのが嬉しくて勉強していました。しかし、試験でよい点を取るとお小遣いがもらえるようになったことから、次第にお小遣いのために勉強するようになってしまったのです。

その結果、思ったように成績が上がらなくなるとお小遣いがもらえなくなるため、勉強自体のやる気をなくしてしまいました。

趣味

趣味におけるアンダーマイニング効果としては、ギター好きの少年が友人とバンドを組んでライブハウスに出るようになったとします。

ライブを始めた当初は、自分のつくった曲を聴いてもらえるのが嬉しくて、次々に曲づくりをしていきました。しかし、お客さんから昔の曲の方がよかった、あの頃のようなギターソロが聞きたいなどといわれるようになっていったのです。

元々は自分のつくった曲を聴いてもらうことが目的だったのが、次第に他人の評価に合わせた曲づくりが目的になり、ギターを弾くのも嫌いになってしまいました。

職場

職場におけるアンダーマイニング効果としては、それまでなかった義務や罰則が生まれたことによって起こる可能性が考えられます。

例えば、週に2時間だけ自分のやりたい業務に当てられる制度が導入され、ある従業員が新規事業の企画書を作成し、それが大きな成果を上げました。しかし、元々は何をしても自由だった時間が、1つの成功をきっかけに何をしたかの報告が義務づけられるようになったのです。また、やったことに対する成果も求められるようになりました。

自由時間とはいえ常に上司への報告義務が発生し、成果を上げないと叱責される可能性も出たことで、ほとんどの従業員はやる気を失ってしまったのです。その結果、誰もが当たりさわりのないようなことしかやらなくなり、自然とやりたいことをやる制度もなくなってしまいました。

アンダーマイニング効果が発生する原因

ここで、改めてアンダーマイニング効果が発生する主な原因について解説します。

目的が報酬に変わってしまう

当初の目的が薄れ、報酬が目的に変わってしまうと、アンダーマイニング効果が生まれる可能性は高まります。

ビジネスにおいては、成果に対して報酬が与えられるのは基本的に通常の行為であるため、それだけでアンダーマイニング効果が生まれるとは限りません。

しかし、以前はもらえていた報酬が会社の事情でもらえなくなると、従業員はただ働きをさせられていると感じるようになり、アンダーマイニング効果が生まれやすくなります。

自己決定感の喪失

仕事や勉強をやること自体が目的ではなくなると、人は報酬を得るために活動したのだと考えるようになります。その結果、たとえ仕事や勉強がうまくいっても、自らが決めてやったと感じられなくなってしまうのです。

そのため、仮に成果を上げられたとしても、自己決定感を喪失しているため、モチベーションも高まりません。結果としてアンダーマイニング効果につながりやすくなります。

過度なプレッシャーや監視

過度なプレッシャーや監視もアンダーマイニング効果を生み出す要因の一つです。適度なプレッシャーや監視であれば、緊張感を保つことも可能になり、高い成果を上げられる可能性も高まります。

しかし、プレッシャーや監視が過度になると、モチベーション低下につながる可能性があります。特に就業時間以外の休憩中や帰社後にまでプレッシャーをかけられる場合、アンダーマイニング効果が発生する要因となります。

過度なノルマ

過度なノルマを課せられた場合、ノルマ達成が目的となってしまう可能性が高まります。そうなれば成果は二の次と考えるようになり、ノルマを達成できたとしても、満足感は得られません。

ノルマ達成が目的となると、仕事自体を楽しむこともできないため、アンダーマイニング効果が発生しやすくなります。

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アンダーマイニング効果がビジネスに与える影響

アンダーマイニング効果が発生することでビジネスに与える主な影響は次のとおりです。

生産性の低下

アンダーマイニング効果が発生すると、ビジネスの生産性が低下してしまうリスクがあります。なぜなら「納期までに仕事を終わらせればよい」「ノルマを果たせば問題ない」といった状況に陥ってしまうからです。

生産性を高めるには、量をこなすだけではなく、同時に質の向上も欠かせません。しかしアンダーマイニング効果が発生した場合、質を向上させようといった意欲も削がれてしまうため、生産性向上は難しくなるでしょう。

従業員の離職率上昇

アンダーマイニング効果により、仕事に対するモチベーションが低下すると、仕事に対する愛着も薄れてしまう可能性が高まります。その結果、会社に対する愛着もなくなり、意欲を持って働ける会社への転職志向が強まってしまうでしょう。

外発的な動機づけだけでは、自己決定感を得られにくくなるため、自己成長や自己実現を目指す従業員が退職して離職率上昇につながります。

職場の人間関係悪化

報酬の獲得や罰則の回避がビジネスの主目的となり、アンダーマイニング効果が発生することで同僚と協調して業務を行おうといった意識が働かなくなる可能性があります。

同僚よりも早く報酬を得たい、自分だけは罰則をもらいたくないといった意識が強くなり、仲間同士での足の引っ張り合いが起これば職場の人間関係も悪化してしまうでしょう。

アンダーマイニング効果を防ぐための対策

アンダーマイニング効果は、ビジネスにさまざまな悪影響を及ぼすリスクがあります。そこでアンダーマイニング効果の発生を防ぐための主な対策は次のとおりです。

内発的動機づけを意識する

アンダーマイニング効果を防止するには「仕事をやらされている感」をいかに与えないかが重要なポイントです。一定の裁量を与える、従業員の個々の適性に合った業務の振り分けなどが欠かせません。

そのためには、部下との適性面接やチーム内でのミーティングなども必要なものの、強制や定例ではなく、気軽にコミュニケーションが取れる環境づくりが求められます。

適切な褒め方と評価

金銭や表彰といった形ある報酬だけにこだわることなく、言葉で褒めることもアンダーマイニング効果防止に効果的です。また、結果だけを見て褒めるよりも過程も含めて褒めることで、しっかりと見てもらえていると感じられモチベーション低下も防げます。

評価方法に関しては、評価基準を明確にすることや、人によって評価方法が変わるなど不公平な評価を行わないようにすることが重要です。

ノルマや締め切りの見直し

過度なノルマや実現が難しい締め切りは見直しを行い、適正な設定にする必要があります。ノルマや締め切りが厳しいと、こなすことで精一杯になり仕事の質は低下してしまうでしょう。

業務の進捗状況は常にチーム内で共有し、ノルマや締め切りについても従業員に一定の裁量を与え、自発的に業務を進められる環境づくりの意識が必要です。

柔軟な目標設定

アンダーマイニング効果を防止するには、目標についても柔軟な設定が欠かせません。上司からの押しつけにならないよう注意することがポイントとなります。

具体的には、上司と部下が面接により、従業員側が主体となって目標設定を行うMBO(目標管理制度)がおすすめです。

まずおおまかな目標を上司が示し、それを元に部下が自ら目標を設定します。上司はある程度高めの目標を示すこと、常に部下との信頼関係を構築しておくことが成果を高めるポイントです。

競争よりも協力を重視

ビジネスにおいて、競争原理の活用は、短期的には高い効果を発揮する場合もあります。しかし、常に競争のプレッシャーにさらされていると、いずれはストレスとなりモチベーション低下にもつながってしまうでしょう。

基本的に会社はチームで動くものであり、個人プレイに走るのではなく、協力して進めていった方が高い成果を得る可能性も高まります。個人の報酬だけを求めるよりも、チームで協力する方が内発的動機を高めることにもつながります。

従業員の内発的動機づけを促進

従業員の内発的動機づけを促進するには、従業員との密接なコミュニケーションによる信頼関係の構築や、個々の特性を明確に把握しなければなりません。そのためにはタレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。

具体的にはタレントマネジメントシステムを活用し、それぞれの目標設定や評価を行い、従業員のスキルや能力の可視化を実現させます。その上で継続的にフィードバックを行うことで、内発的な動機づけの促進が可能になります。

タレントマネジメントとは?

また、同時に従業員の育成においては、個人のキャリアビジョンに寄り添う上でも1on1ミーティングの実施によるコミュニケーションが有効です。

ただし、上司からの強制になるとモチベーション低下につながる可能性があります。そのため、従業員が自発的にコミュニケーションを求めたくなるような信頼関係の構築も、内発的動機づけ促進に欠かせないポイントです。

1on1とは?

アンダーマイニング効果に関する注意点

アンダーマイニング効果を防止するための対策は欠かせないものの、実施する際には次の点について注意が必要です。

個人差に配慮する

アンダーマイニング効果が発生する要因は人によって異なります。一般的には外発的動機づけにより、内発的動機が失われるといわれるものの、自分の価値観に基づいて行動する人はアンダーマイニング効果が発生しにくいともいわれます。

そのため、画一的な対策を行うのではなく、従業員個々の差を配慮した上で、それぞれに対して適正な対応をすることが重要です。

過剰な対策を控える

過剰な対策は部下から見れば強制に感じられてしまう可能性もあり、かえってアンダーマイニング効果を生み出す要因にもなりかねません。

特に1on1やチーム内ミーティングなどは、上司との信頼関係構築があって初めて効果が出るケースが多いため、強制にならないよう十分な注意が必要です。

対策は期間を定めて行う

過度な対策をとらないようにするのと同時に、1つの対策で思ったような効果が出ない場合は、できるだけ早い段階で次の対策を行うことも欠かせません。

常に同じ対策で従業員を監視している状況は、アンダーマイニング効果防止とは逆の結果になる可能性が高まります。事前に複数の対策を用意し、個々の従業員の適性により期間を定めて実施することが重要です。

まとめ

アンダーマイニング効果とは、内発的動機で始めた行為に外発的動機づけを行うことで、元々あった内発的動機が失われることを指すものです。

最初は興味がある、自身の成長につながるなど内発的に面白いと思って始めた活動が、次第に報酬獲得や罰則の回避など外発的動機のために行っていると考えるようになってしまいます。

アンダーマイニング効果の発生を防止する対策としては、結果だけではなく、経過も含めて言葉で褒めることが欠かせません。また、従業員が自己決定感を持てるよう一定の裁量を与えることも重要です。

そのためには、従業員との信頼関係構築が求められます。上司側から強制的に話し合いの場を用意するのではなく、従業員側からコミュニケーションを取りたいと思われるよう、常に真摯に向き合う姿勢でいることが必要です。

信頼関係の構築には従業員個々の適性把握がポイント

従業員との信頼関係構築には、従業員個々の適性やスキルの見極めが欠かせません。そのためにはタレントマネジメントシステムを活用し、それぞれの従業員のスキルを数値で可視化するのがおすすめです。

イメージや先入観に頼ることなく、誰に対してもフラットで公平な評価により信頼関係は構築しやすくなり、結果として内発的動機づけの促進にもつながります。

アンダーマイニング効果防止にお悩みの際は、ぜひHRMOSタレントマネジメントシステムの活用をご検討ください。

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