フィードフォワードとは? 意味・効果・フィードバックとの違いを解説

フィードフォワードとは?

ビジネスシーンでは、過去の実績を振り返り、課題を明確にして改善を促す「フィードバック」に注目が集まりがちです。

しかし、近年では「フィードフォワード」という新たな人材育成手法を導入している企業が増加傾向にあります。

では、フィードフォワードとは、どのような効果を得られるマネジメント手法なのでしょうか。

今回は、フィードフォワードの意味や効果、フィードバックとの違いなどについて解説します。

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フィードフォワードとは

フィードフォワードとは、もともと電子制御工学の分野で用いられてきた考え方です。

出力に影響を及ぼす要因を予測し、その影響を事前に抑えることで目標値の実現を図るという考え方です。このフィードフォワード制御の考えをビジネスや教育分野に応用したものが、「フィードフォワード」です。

ビジネスシーンでは、未来の目標を実現するためにどのような行動が必要になるのか、意見交換をすることで社員の成長を促す人材育成手法をフィードフォワードと呼びます。

一般社団法人フィードフォワード協会では、フィードフォワードを「会話により、相手が前向きになるのを促し、自らも前に進むための方法論」であるとしています。

つまり、フィードフォワードとはよりよい未来の実現のために、コミュニケーションを通じ、部下に自律的な成長を促す取り組みであるということです。

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フィードバックとフィードフォワードの違い

フィードフォワードと混同されやすい概念にフィードバックがあります。フィードバックとフィードフォワードには、次のような違いがあります。

時間軸の違い:過去と未来

フィードバックとフィードフォワードでは、注目する時間軸に違いがあります。

フィードバックでは過去に目を向け、成果や課題を振り返ります。「なぜそのような結果になったのか」「どう改善すべきか」といった検討を通じて、今後の行動につなげていきます。

一方、フィードフォワードは過去や現在ではなく、未来に目を向ける考え方です。先を見据え「目標を達成するためには、これからどのような行動をとるべきなのか」にフォーカスし、前向きな対話を行います。

焦点の違い:問題点と解決策

フィードバックは本来、よい点と反省すべき点の両方を踏まえて、総合的に過去を振り返る手法です。

しかしながら、過去を振り返る際には、できなかった点に注目が集まりがちです。そのため、伝え方によってはフィードバックによって部下のモチベーションを低下させる恐れがあります。

しかし、フィードフォワードは、未来の目標を実現するために必要な改善策などについて、互いに意見を交換する手法です。

そのため、反省が必要なフィードバックに比べ、より前向きな意見が出やすくなり、部下のモチベーションを高め、主体的な成長を促せます。

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コミュニケーションスタイルの違い:一方向と双方向

フィードバックの場合、できなかった点や改善すべき点などについてフォーカスする傾向にあるため、上司から部下に対する一方向のコミュニケーションになりがちです。

また、よくない点を指摘されるため、部下からは意見がしにくいという特徴があります。

一方、フィードフォワードでは、これから始まる未来について目を向けたうえでコミュニケーションを図ることになるため、より自由に意見を出し合うことができます。

そのため、前向きな意見交換がしやすく、互いの理解も深めやすくなるでしょう。

フィードバックについては、以下の記事でも詳しくご説明しています。ぜひ合わせてご一読ください。

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フィードフォワードのメリットと効果

フィードフォワードを実践することによって得られるメリットや効果についてご紹介します。

個人の成長と自信の向上

フィードフォワードは、部下の成長意欲を引き出す効果的なアプローチです。

フィードフォワードでは、部下との対話を通じて、改善点を指摘するのではなく、よりよい未来を描く視点でアドバイスができます。

ネガティブに受け取られがちな指摘に比べ、将来志向でのアプローチは、部下に前向きな印象を与えます。

また、アドバイスによって成長を実感できるようになると、自信もつき、業務への意欲も向上するため、さらなる成長も期待できます。

組織全体のパフォーマンス向上

フィードフォワードでは、未来に向けた建設的なアイディアを出し合うため、ポジティブな組織文化の醸成が可能です。

一人一人が前向きに業務に取り組み、組織内でのコミュニケーションが活発化すると、組織全体のパフォーマンスも向上します。

社員一人一人の成長は、組織全体の成長にもつながります。活発な意見交換が行われる環境は、社員にとって刺激となり、組織と個人の双方にメリットをもたらします。

イノベーションの創出と促進

フィードフォワードは、上司と部下が前向きに未来を語り合うためのコミュニケーション手法です。

上司と部下という立場を超えて自由な意見を出しやすくなるため、互いの意見が刺激となり、イノベーションの創出につながるようなアイディアが生まれることもあるでしょう。

また、フィードフォワードによってポジティブ思考が養われると、新しいことにも前向きに挑戦できるようになります。こうした姿勢は、イノベーションの創出にもつながるでしょう。

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人材の定着

若手社員の離職防止には、主体性を尊重するフィードフォワードの活用が効果的です。

企業の発展のためには、人材の定着が必要不可欠です。特に、少子高齢化が進む今、若手人材の定着率の向上は、企業が成長するうえでの重要なポイントとなります。

現在の学校教育では、社会的・職業的自立を重視したキャリア教育が行われています。

そのため、上司が一方的に指摘する従来の育成方法では、社員のモチベーションを下げ、離職につながる恐れがあります。

人材を定着させるためには、多様な考え方や主体的な取り組みを評価するフィードフォワードの考えが重要になるでしょう。

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コンプライアンスの強化

フィードフォワードは、ポジティブな意見の交換を促進するものであり、良好な人間関係の構築につながる考え方です。

フィードバックでは、部下の課題を指摘する際に、精神的な負担を与えてしまい、ハラスメントと受け取られるリスクもあります。

しかし、フィードフォワードでは、できなかったことではなく、これからできることという未来を見据えた前向きな意見を交わすため、ハラスメントの防止やコンプライアンスの強化にもつながります。

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フィードフォワードの課題と対策

フィードフォワードはメリットの多い取り組みです。

しかしながら、導入にあたっては次のような課題もあるため、導入時にはあらかじめ対策を講じておくようにしましょう。

マネージャーの教育と意識改革

フィードフォワードの導入にあたっては、上司にあたるマネージャーの教育が欠かせません。

これまでのマネジメントにおいては、上司が部下を指導するという形が一般的でした。しかし、フィードフォワードでは部下と上司が未来に向かい、対等な立場で意見交換をします。

また、部下が忌憚のない意見を出せるよう、心理的安全性を高めるためには部下との信頼関係の構築も必要です。そのためには、部下との接し方そのものを見直す必要がある場合もあります。

フィードフォワード導入にあたっては、マネージャーに対する教育を通じて、フィードフォワードの重要性を理解させ、意識改革を促すことが重要です。

定着までに時間がかかる

フィードフォワードは、未来志向で、部下と上司の双方向のコミュニケーションを促進する人材育成手法です。

過去を振り返り、改善点について上司の視点からアドバイスを行うフィードバックのような従来の手法とは、180度違う手法であるともいえます。

特に、マネジメント層だけでなく、部下にとってもフィードフォワードは初めての概念となることがあります。そのため、すぐに未来に関するアイデアを出すのは難しい場合もあるでしょう。

フィードフォワードが定着するまでにはある程度の時間がかかることを理解したうえで、早急に定着を図るのではなく、時間をかけて丁寧に浸透させていく姿勢が求められます。

フィードフォワードの実践方法

フィードフォワードの導入手順を誤ると十分な効果が得られないことがあります。フィードフォワードを実践する際には、次のような流れで実践するようにしましょう。

対話相手の許可を得る

フィードフォワードの効果を高めるためには、互いにフィードフォワードの概念を理解しておく必要があります。

初めてフィードフォワードを行う際、上司が急に未来の意見を求めると、部下に不安や精神的な負担を与える可能性があります。

積極的な意見交換を実現するためには、相手の不安を取り除くことが重要です。

まずは、相手に話し合いの時間を持つことの許可を得てから、フィードフォワードについての説明を行ったうえで対話を始めるようにしましょう。

具体的な事実を伝える

相手の許可を得たら、話し合いのテーマを具体的に伝えます。

現在の状態を正しく把握しなければ、未来について建設的な意見を交わすことはできません。抽象的な表現をすると相手に正しく伝わらない可能性があるため、事実を具体的に伝えるようにしましょう。

また、主観を交えた意見を伝える場合、相手が不安感や嫌悪感を抱く可能性もあります。事実を伝える際には、主観を交えず、データなどを用いながら、客観的な情報を伝えることが大切です。

未来の行動と結果に注目する

具体的な事実を伝えることで、過去の延長にある今の状態を把握できます。

フィードフォワードは、未来に目を向ける姿勢が重要です。目標達成に必要な行動に焦点を当て、部下の意見を引き出すよう心がけましょう。

相手の意見を引き出すためには、質問をしながら会話を進めていくことが大切です。

また、相手の意見を否定すると、萎縮してしまい、自由な発言ができなくなる恐れがあります。

相手の意見を否定することなく、多様な意見を受け入れることで、自律的な課題解決力を育むようにしましょう。

フィードフォワードを活用するポイント

フィードフォワードを活用する際には、次の3つのポイントに気を付けると、より効果を高めやすくなります。

具体的で建設的なアドバイス

フィードフォワードで未来に視点を向けた対話をしても、意見を否定されると、円滑なコミュニケーションが妨げられる恐れがあります。

また、描く未来が否定されることでモチベーションを低下させる可能性もあるでしょう。

フィードフォワードにおいては、相手を否定せず、建設的なアドバイスを行うことが重要です。

抽象的ではなく具体的なアドバイスを意識することで、相手は理解しやすくなり、現実的な行動計画も立てやすくなります。

強みに焦点を当てる

未来に意識を向けるということは、前向きな思考や行動を促すことでもあります。

苦手なことやできなかったことなど、ネガティブな側面に焦点を当てると、ポジティブな思考にはつながりにくいものです。

フィードフォワードでは、相手の強みに着目し、それをどう活かすかを一緒に考える姿勢が大切です。

長所を認められると自己肯定感を高められるため、自信を持って行動ができるようになり、新しいことにも意欲的に取り組めるようになります。

従来のフィードバック文化との調和

フィードフォワードを取り入れることで、未来志向の対話が促され、社員のモチベーション向上や組織の前向きな変革につながります。

しかしながら、業務の成果を振り返り、指導を行うフィードバックが必要になる場合もときにはあるでしょう。

また、未来に向けた目標を立てる際にも、過去を振り返り、現状を把握する必要があります。より効果的に人材育成を進めるためには、フィードバックとフィードフォワードの併用をおすすめします。

フィードフォワードの活用シーン

フィードフォワードは、次のようなシーンで活用すると効果を得られる可能性があります。

新入社員の育成

フィードフォワードは、新入社員の育成と相性のよい人材育成手法です。

現代の若手世代は、キャリア教育を通じて、自分自身の将来について主体的に考える習慣が身に付いています。そのため、フィードフォワードのアプローチにも柔軟に対応しやすいといえるでしょう。

入社のタイミングで目標実現のためにやるべきことを明確にすると、自己成長に必要なスキルや経験の習得に主体的に取り組むようになるでしょう。

積極的な意見交換を通じて、自ら考え行動する「自律型人材」の育成にもつながります。

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管理職のスキル向上

フィードフォワードは、管理職の育成にも効果的です。

管理職の場合、自身のマネジメント手法についてフィードバックやアドバイスを受ける機会が減るため、自分の考えに執着しやすくなる傾向があります。

しかし、フィードフォワードを導入した場合、一方的なフィードバックとは異なり、部下の意見を積極的に取り入れることで、新たな視点を得ることができます。

多様な考え方を取り入れることで、管理職のスキルの向上にもつながるでしょう。

業務の改善

フィードフォワードによって、前向きかつ主体的に業務へ取り組む姿勢が根づけば、業務改善につながる可能性が高まります。

業務効率を向上させる必要がある場合などに、フィードフォワードを行うと積極的な意見が出され、最適な施策の実施につながります。

また、実施した施策で思うような効果を得られない場合でも、よりよい結果を求め、具体的かつ前向きな意見交換ができるため、さらなる改善案が見つかる可能性もあるでしょう。

これらのポイントを意識してフィードフォワードを活用することで、前向きな人材育成や組織文化の醸成につなげることができるでしょう。

フィードフォワード導入時の人事部門の立ち位置

フィードフォワードは、イノベーションの創出を促し、企業全体の成長を支える人材育成手法であるため、人事部門が主導して組織への導入を図るとよいでしょう。

一部の部署だけで導入すると、従業員が混乱し、期待する効果が得られないおそれがあります。そのため、フィードフォワードの導入時は、全社的な取り組みとして導入を図るようにしましょう。

加えて、フィードフォワードは未来志向のマネジメント手法であり、過去の実績評価が主となるこれまでの人事評価制度だけでは適切な評価ができない可能性も出てきます。

フィードフォワードの導入にあたっては、成果だけでなく、目標達成に向けたプロセスや行動も評価対象とする、新たな人事評価制度の検討が必要です。

人事評価制度の見直しが必要になる点からも、フィードフォワードの導入は人事部門の主導によって進めるべきだといえます。

フィードフォワードとその他のマネジメント手法との比較

よく活用されている他のマネジメント手法と比較することで、フィードフォワードならではの特徴を改めて整理しておきましょう。

コーチングとの違い

コーチングでは、指導する側とされる側の役割が明確に分かれています。一方、フィードフォワードでは立場を区別せず、対等な関係で意見を交わす点が大きな違いです。

また、コーチングでは対話によって答えを見出すことにフォーカスしますが、フィードフォワードは未来を見据えて対話をするものの、明確な答えを求めるわけではない点にも違いがあるでしょう。

いずれも「未来志向の対話」を通じて成長を支援するという共通点があります。

<関連記事>コーチングとは?スキルやロールプレイの事例、ティーチングとの違いを解説

ティーチングとの違い

ティーチングも人材育成の場面で使用されることの多いマネジメント手法です。

ティーチングでは、生徒と先生のように指導者と指導を受ける人の立場に明確な違いがあり、知識や経験を豊富に持つ教育担当者が、業務で必要となる知識やスキルを指導します。

一方、フィードフォワードでは指導者と指導を受ける人に明確な区分はありません。

また、ティーチングでは指導という形の一方的なコミュニケーションという側面が強くなりますが、フィードフォワードは双方向のコミュニケーションである点にも違いがあります。

1on1に生かす

1on1は、上司と部下が直接対話をする絶好の機会です。

1on1の際にフィードフォワードを導入すると、互いに未来を見つめ、建設的な意見交換ができるため、部下のモチベーションを高められるとともに、信頼関係を強固なものにすることができるでしょう。

ただし、フィードフォワードでは互いの意見交換をするために、フィードバック形式の1on1よりも対話の時間が必要になる可能性があります。

フィードフォワードを効果的に活用するには、1on1の時間設定にもゆとりを持たせることが重要です。

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まとめ

上司・部下といった立場にとらわれず、未来に目を向けて「目標達成に必要な行動」について前向きな対話を行うフィードフォワードは、多くの企業で注目されている人材育成手法です。

フィードフォワードを活用する際には、社員の強みに焦点を当てるとよいでしょう。自己肯定感を高められるため、業務への意欲やスキルの向上にもつながるでしょう。

さらに、フィードフォワードは、個人の成長を促進するだけでなく、ポジティブな組織文化を醸成し、企業全体を成長させる可能性をも秘めているマネジメント手法です。

フィードフォワードが定着するまでには時間もかかりますが、活発な意見が飛び交う、前向きで自律的な組織づくりに向けて、フィードフォワードを導入してみてはいかがでしょうか。

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フィードフォワードの効果を最大化するには、現状把握と課題解決を促すフィードバックと併用するのが効果的です。

HRMOSタレントマネジメントには、1on1の実施記録と内容を蓄積し、従業員の成長の課程を確認できる1on1レポートがあります。

1on1だけでなく、人事目標も確認できるため、的確なフィードバックも可能になります。

現状に基づく現実的な目標設定が可能になるため、フィードフォワードを実践する際にもより建設的な意見交換が可能になり、社員の成長を加速させることが可能です。

フィードフォワードは、組織の可能性を引き出すための強力なマネジメント手法です。

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