ヒエラルキー組織とは? 意味やメリット・デメリット、日本の事例を解説

ヒエラルキー組織とは?

年功序列が崩れ、働き方の多様化が進む中で組織の在り方を見直す企業が増えています。

今回は、日本企業で長く導入されてきたヒエラルキー組織の定義や特徴、メリットとデメリットをご説明します。

今の時代に適したヒエラルキー組織の生かし方やポイントもあわせて解説します。

ヒエラルキー組織とは

ヒエラルキー組織とは、階層ごとに権限と責任が分かれた、ピラミッド型の組織構造を指します。

語源となる「ヒエラルキー(hierarchy)」は、階層や階級という意味を持つ言葉です。

経営層を頂点に、部長、課長、一般社員などが階層を構成し、それぞれの立場に応じた役割を定めて運用します。企業においては、全体の統制を取るための有効な手段として採用されてきました。

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ヒエラルキー組織が採用されている事例

ヒエラルキー組織は、企業に限らず、広く社会の中で活用されている組織形態です。例えば、軍隊や官公庁などでは、厳格な指揮命令系統と階層的な役割分担によって、組織の効率的な統制と分業を実現しています。

企業においても同様に、経営層から現場までの役割と責任を明確にするため、ヒエラルキー型の構造が多くの場面で採用されています。

特に製造業や金融業、大企業の本社部門などでは、複雑な業務を滞りなく進めるためにヒエラルキー組織が採用されています。

ヒエラルキー組織のメリット

ヒエラルキー組織は、特に規模の大きな組織において、業務を円滑かつ秩序立てて進めるために有効な構造とされています。

ここでは、ヒエラルキー組織の具体的なメリットを4つの観点から解説します。

指揮系統の統一による効率的な組織運営

ヒエラルキー組織では、トップからの意思決定が各階層を通じて現場へと伝達されるため、指揮系統が一本化されやすくなります。

この仕組みにより、企業理念や経営戦略といった抽象度の高い方針も、部門単位の業務レベルまで落とし込むことが可能になります。

現場の混乱を防ぎつつ、全社的に統一された動きを取ることができる点は、変化の激しい市場環境でも組織力を発揮しやすくなります。

役割と責任の明確化による業務効率の向上

ヒエラルキー組織は、階層ごとに業務の範囲や責任が明確に定義されているため、担当者の役割が曖昧になることが少なくなります。

特に複数部門が関与するプロジェクトや、業務の境界が複雑になりやすい中堅〜大企業においては、役割分担の明確さが業務の重複や漏れを防ぎ、業務効率の向上につながります。

また、責任の所在が明確になることで、問題発生時の原因究明や対処も迅速に行えるようになります。

従業員の帰属意識の高まり

ヒエラルキー組織では、部署やチームといった単位での活動が基本となるため、所属意識が育ちやすい環境が整っています。

中間管理職が上層部と一般社員のパイプ役を果たすことで、従業員の心理的安全性が保たれ、信頼関係の醸成につながります。

また、部門ごとに目標や役割が与えられることで、チームとしての成果を追求する意識が強まり、組織全体の一体感やエンゲージメント向上にもつながります。

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明確なキャリアパスによる業務意欲の増進

ヒエラルキー型の組織では、昇進・昇格の基準やキャリアパスが階層に応じて設計されていることが多く、従業員にとって将来像を描きやすい点が特徴です。

評価制度とキャリアパスが連動している場合、自身の努力や成果がどのように処遇に結びつくかが可視化されるため、日々の業務に対するモチベーションの維持・向上につながります。

また、部門単位での専門性が高まりやすく、職務領域におけるスキルアップや専門知識の習得にもつながりやすい点はメリットといえるでしょう。

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ヒエラルキー組織のデメリット

ヒエラルキー組織は、運営や責任の明確化を通して組織の秩序を高める利点がある一方で、意思決定の遅さや組織の柔軟性の欠如といったデメリットも抱えています。

ここでは、ヒエラルキー組織の代表的なデメリットを3つ解説します。

意思決定の遅延と柔軟性の欠如

ヒエラルキー組織では、意思決定が階層を通じて上から下へと流れるため、対応に時間がかかる傾向があります。

例えば、現場の従業員が提案したアイデアが実行に移されるまでには、直属の上司、部門責任者、本部、経営層といった複数の承認プロセスを重ねる必要があります。

意思決定が遅れると、迅速な対応が求められる場面で機会損失につながる恐れがあります。

また、従業員は指示を待つ受け身の姿勢に陥りやすく、自ら考え行動する力が育ちにくくなることもあります。結果として、変化や多様性への適応力が低下し、時代の変化に対応しきれない組織になるリスクがあります。

部門間のコミュニケーション不足

階層構造のもとでは、各部門が縦割りで業務を遂行しがちです。その結果、部門ごとの最適化が進み、部門間のコミュニケーション不足が課題になりやすいでしょう。

特に、各部門が独自の目標を追う中で、他部門との協力や情報共有が後回しにされるケースも少なくありません。

また、部門間での競争や主導権争いが起きやすく、派閥化や組織分断のリスクがあるため、注意が必要です。

管理職の増加による人件費の上昇

ヒエラルキー組織では、階層ごとに役割と責任を持たせるため、中間管理職のポジションが必要不可欠となります。

しかし、階層が増えるほどに管理職の数が増加し、人件費がかさむリスクがあります。

また、上層部と現場の板挟みになりやすい中間管理職は、ストレスが高く、メンタルヘルス対策の観点でも配慮が求められます。管理職の数や役割を適切に見直すことが、組織の持続性を左右します。

ヒエラルキー組織は時代遅れなのか

昨今ではボトムアップ型やアジャイル型といった、より柔軟な組織運営の在り方に注目が集まっています。この流れを受けて、「ヒエラルキー組織は時代遅れなのではないか」と不安視する声も聞かれます。

ここでは、グローバル化や変化の激しい現代におけるヒエラルキー組織の現状について解説します。

日本企業におけるヒエラルキー組織の現状

ヒエラルキー組織は、年功序列制度と親和性が高く、日本の大企業を中心に採用されてきました。

確かに変化の激しい時代においては、意思決定の遅さや、現場の声が通りにくいといった課題が指摘されます。ただし、それを理由にヒエラルキー構造を時代遅れと一概に否定することはできません。

創造性やスピード感が損なわれる背景には、情報や権限の偏在、上下関係を硬直的に運用していることにあります。

こうした課題に対しては、組織文化や仕組みの工夫で対応することが可能です。構造そのものの問題ではなく、ヒエラルキー組織をどのように生かすかが問われています。

グローバル化に伴う変化の兆し

グローバル化の進展により、企業は多国籍・多文化の環境下で迅速かつ柔軟な意思決定を求められるようになりました。

従来のヒエラルキー型組織では対応しきれない課題も増えてきた中で、組織形態にも変化の兆しが見えています。

近年では、階層構造を維持しつつも、一部の意思決定に裁量を持たせるハイブリッド型組織や、権限委譲を前提としたアジャイル型など、新しい組織形態が注目されています。

これらの組織論をヒエラルキー組織にかけ合わせて、より時代に適応するかたちを追求することが重要でしょう。


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ヒエラルキー組織を効果的に運用するためのポイント

ヒエラルキー組織は、構造自体が問題なのではありません。明確な指揮系統や役割分担という強みを生かしながら、柔軟性や創造性を両立させる工夫が求められます。

ここでは、ヒエラルキー組織をより効果的に運用するための実践的なポイントを解説します。

コミュニケーションの活性化

ヒエラルキー構造では、上からの指示が優先される分、現場の声が埋もれやすいという課題があります。

そのため、ボトムアップの姿勢を意識し、双方向の情報伝達を設計することが重要です。

例えば、部下からの提案や意見を拾い上げる仕組みを設け、発言してもよいと感じられる組織カルチャーを醸成する必要があります。

そして上司自らが傾聴とフィードバックを積極的に実践することで、信頼関係の構築につながります。こうした取り組みがなければ、硬直的なトップダウン組織に陥り、創造性やスピードが損なわれる可能性があるでしょう。

権限委譲と従業員の育成方法

組織の上層部がすべてを決める体制では、意思決定が遅くなり、現場の柔軟な対応力が損なわれます。そこで有効なのが、権限委譲を前提とした人材育成です。

上司が持つ業務や判断の一部を部下に委ねることで、従業員のエンパワーメントを促進できます。

部下の責任感と主体性が高まれば、業務効率や成長意欲にも好影響を与え、リーダー層も重要な意思決定に集中しやすくなるでしょう。

部門横断的なプロジェクト制の導入

縦割りのヒエラルキー組織では、部門間の連携不足や視野の狭さが課題となります。その打開策として有効なのが、部門横断型のプロジェクトチームの導入です。

異なる部署から人材を集め、共通の課題に取り組むことで、多角的な視点と知見が集まり、実行力のある解決策を導き出しやすくなります。

通常業務では得られない刺激や学びも後押しし、参加メンバーのモチベーションや成長にもつながります。

ただし、本業との両立負担やリーダーのマネジメント力の問われ方など、運用上の課題にも注意が必要です。

ヒエラルキー組織と他の組織形態の比較

近年は、自律性や柔軟性を重視する新しい組織形態が複数登場しています。

ここでは、ホラクラシー組織、アジャイル組織、ティール組織といった代表的な組織形態について解説します。

ホラクラシー組織との比較

ホラクラシーは、役職や階層を持たないフラットな組織構造で、ヒエラルキーの対極にある存在ともいえます。

ホラクラシー組織では、役割ベースでチームが編成され、意思決定も各サークル(小単位のチーム)で分散的に行われます。

個々人の自律性やアイデアを生かしやすい点が魅力ですが、一方で役割や責任の不明確さから混乱を招くこともある組織形態です。

アジャイル組織との比較

アジャイル組織は、変化の激しい環境下でのスピーディーな対応を目的とした柔軟な組織運営手法です。ソフトウエア開発において、短期間でテストと実装を繰り返す「アジャイル開発」を参考にした概念となります。

役職や階級を持たない点はホラクラシー組織と同じですが、アジャイル組織はホラクラシー組織のようにチーム単位で権限を持ちません。

階層構造を緩めることで現場の個人に裁量を与えつつ、全体の方向性は経営層が牽引する側面は、ヒエラルキー組織の要素も持ち合わせています。

このようにヒエラルキー型でも、アジャイル的な要素を取り入れることで、俊敏性と統制のバランスを図ることが可能です。

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ティール組織との比較

ティール組織は、従業員の内発的動機に基づく自律分散型の組織モデルです。明確な指揮系統を持つヒエラルキー組織とは対照的に、階層構造をなくし、個人が意思決定の主体となる点が大きな特徴です。

中心にあるのは「存在目的(エボリューショナリーパーパス)」であり、組織全体がその目的に沿って進化し続けることを重視します。

ヒエラルキー組織では、役職ごとの責任と決裁権が明確であり、統制や安定性に強みがあります。一方、ティール組織では管理職という概念がなく、信頼と対話に基づいたフラットなマネジメントが基本となります。

すべてのメンバーに経営者視点が求められるため、高い自律性と自己管理能力が必要であり、導入には慎重な制度設計と文化的土壌の醸成が欠かせません。

ヒエラルキー組織の進化と今後の展望

ヒエラルキー組織は、変化の激しい時代においても一定の強みを持つ構造です。デジタル化、AI時代において、今後のヒエラルキー組織はどのような展望があるのか解説します。

デジタル時代における適応策

AIやデータドリブン経営の普及により、現場からリアルタイムで情報を吸い上げ、迅速な意思決定が求められるようになっています。

スピード感を持った経営判断を行うためには、トップダウン一辺倒ではなく、現場に一定の裁量を与える構造改革が不可欠です。

ヒエラルキー型の中でもITツールによる情報の可視化や、意思決定プロセスの分散化をもたらせて、変化対応力を高めることがポイントでしょう。

新しい働き方に対応するための組織改革

テレワークやフレックスタイム制、副業解禁など働き方が多様化する中で、ヒエラルキー組織ならではの「上司が部下を直接管理する」仕組みが機能しなくなる場面も増えてきています。

ヒエラルキー構造を維持しつつも、成果主義やジョブ型への移行、バーチャルチームのマネジメント設計など、新たなマネジメント手法が求められています。

固定的な階層関係を超え、信頼をベースにした働き方への転換が、これからのヒエラルキー組織に必要とされるでしょう。

まとめ

ヒエラルキー組織の特徴である明確な役割分担や統制力といった強みは、依然として多くの企業にとって有効です。

ただし、従来の年功序列的なマネジメントやトップダウン一辺倒の運用では、急速に変化する市場環境に対応しにくくなっているのも事実です。

今後は、創造性や自律性を育む文化や制度と組み合わせ、ITツールを活用しながらヒエラルキー組織を再構築していくことが重要です。

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上下の階層を持つヒエラルキー組織では、役割や責任が明確である一方、個々のスキルや適性が埋もれてしまうこともあります。

タレントマネジメントシステムを活用することで、従業員の強みやキャリア志向を可視化し、適材適所の配置やリーダー候補の育成が可能になります。

各階層の情報を一元管理し、組織全体の人材戦略と連動させることで、組織の柔軟性を高めていきましょう。

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