目次
問題点や課題が見つかった場合、状況分析や原因の特定のために活用できる手法はさまざまありますが、「フィッシュボーン図」も有効な手段の一つです。
事業経営やビジネスにおいて課題に直面したケースでも、フィッシュボーン図を活用することで、解決の糸口が見つかることがあります。
本記事では、フィッシュボーン図の概要から、書き方や活用するメリット、作成するときのポイントや注意点を紹介します。
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フィッシュボーン図とは
フィッシュボーン図とは、結果に対する原因を究明する際に用いられるフレームワークです。
結果と原因の関係性を図式化することで、原因を明確にし、問題解決の手がかりを得るために活用されます。フィッシュボーン図は特性要因図とも呼ばれます。
フィッシュボーン図は、具体的には以下のような図のことです。魚の骨の形に似ているため、その名が付いています。

解決したい問題や課題を「頭(特性)」に置き、そこから「背骨」「大骨(主な要因)」「小骨(詳細な要因)」を順に書き出すことで、因果関係を視覚的に整理し、問題の本質に迫ることができます。
フィッシュボーン図は事業経営やビジネスの世界などで広く活用されています。
フィッシュボーン図の歴史と発展
フィッシュボーン図はもともと、製造業における品質管理を目的として開発された手法ですが、現在では多様な分野で活用されています。
以下では、フィッシュボーン図の歴史と発展を紹介します。
品質管理の手法として開発
フィッシュボーン図は、化学工学者である石川馨によって1956年に考案されたフレームワークです。
東京大学名誉教授である石川馨は、生産工程における品質管理の重要性を早くから唱えた人物で、「日本の品質管理の父」と呼ばれています。
品質管理(QC:Quality Control)研究の先駆者であり、経営管理手法の一つであるTQM(Total Quality Management)の基礎を築いた人物です。
もともとフィッシュボーン図は、製造業で問題が発生したときに原因を特定し、対策を考えるために考案されました。
使い方の応用と進化
フィッシュボーン図は、現在では製造業以外も含めて多くの業界で使われています。
サービス業での顧客満足度向上やプロジェクトマネジメントの分析など、ビジネス上のさまざまな場面でフィッシュボーン図の活用が可能です。
要因が複雑に絡み合い、状況が把握しづらい場合でも、フィッシュボーン図を用いて結果と原因を可視化することで、問題の構造を整理し、要因を明確に特定できます。
そのため、品質管理に留まらず、現在では原因分析や解決策の立案が必要なときにフィッシュボーン図が広く活用されています。
フィッシュボーン図は作業効率の向上やマーケティング手法の改善を図る際などにも活用できるフレームワークです。
フィッシュボーン図の基本要素と構成
フィッシュボーン図は、「頭(特性)」「背骨」「大骨」「小骨」の4つの要素で構成されており、それぞれに明確な役割があります。
本章では、それぞれの構成要素が何を意味し、どのように機能するかを解説します。
頭(特性):解決したい問題や課題
魚の「頭」にあたる部分は、問題となっている結果(=特性)を記載する場所です。
ここに「不良品が多い」「クレームが頻発している」など、解決すべき課題を簡潔かつ具体的に記載することで、図全体の方向性が明確になります。
背骨:要因と結果をつなぐ
魚の「背骨」にあたる部分は、図の中心軸として「頭(特性)」と「大骨(要因)」をつなぐ役割を果たします。
原因と結果の関係性を視覚的に整理するための基準線となる重要な要素です。
大骨:具体的な要因
魚の「大骨」にあたる部分は、問題の主な原因を大分類で整理する部分です。
「人」「方法」「機械」「材料」「環境」「測定」など、一般的に使われるカテゴリをもとに、状況に応じた要因を記載します。
小骨:さらに詳細な要因
魚の「小骨」にあたる部分は、大骨で挙げた原因をさらに細分化し、具体的な内容を明らかにするための部分です。
たとえば「人」という大骨に対しては、「人手不足」「研修不足」「作業手順の理解不足」といった詳細な要因を小骨として記載します。
さらに、小骨で示した要因を細分化した孫骨を利用する場合もあります。これにより、根本原因をより詳細に特定することが可能になります。
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フィッシュボーン図の活用メリット
フィッシュボーン図は、業種や部門を問わず幅広く活用でき、多くの利点を持つ分析ツールです。以下では、フィッシュボーン図を活用する主なメリットを3つ紹介します。
複雑な問題の構造化と可視化
複雑で全体像がつかみにくい問題も、フィッシュボーン図を使えば「原因と結果」の構造を整理・可視化できます。
問題の本質を冷静に分析できるため、的確な対応策を導き出しやすくなります。
また、フィッシュボーン図では複数の観点から問題を捉えるため、偏った分析を避けることができます。
状況分析を適切に行うことで的確な解決策の立案につながります。原因を整理し、影響度の大きい要因を特定することで、改善策を効率的に講じることができるでしょう。
網羅的な原因分析と新たな視点の獲得
フィッシュボーン図を使えば問題の根本原因を漏れなく整理できるため、根本的な原因や見落としがちな原因の早期発見につなげやすい点もメリットです。
フィッシュボーン図では、結果に対する原因を整理する際、最初に大きな分類(大骨)を確認した後に小さい分類(小骨)に掘り下げていきます。順序立てて状況を考察することで、網羅的な分析が可能になります。
頭の中だけで考えると、論点が抜け落ちるリスクがありますが、図にすることで原因が網羅されやすくなり、新たな視点や気付きが生まれる可能性が高まります。
コミュニケーションの促進
フィッシュボーン図は視覚的に分かりやすい図表なので、社内会議などチームメンバーと状況を共有するときに活用できます。
口頭で伝えたりメールなどの文章だけで伝えたりすると分かりづらい場合でも、フィッシュボーン図を使えば相手に伝わりやすくなります。
例えば、上司への報告や他部署との情報共有の際、フィッシュボーン図を使えば問題の全体像を視覚的にわかりやすく伝えられます。
図式化されて状況の構造が明確化されればメンバー全員が同じ認識を持てるようになり、認識の相違によるミスなどを防ぐことにもつながります。
フィッシュボーン図の書き方
フィッシュボーン図は、5つのステップで作成します。
- 問題の明確化と特性の設定
- 主要な要因カテゴリーの決定
- ブレインストーミングによる要因の抽出
- 要因の整理と分類
- 重要な要因の特定と分析
以下では、書き方の流れに沿ってフィッシュボーン図の作成方法を紹介します。
Step 1:問題の明確化と特性の設定
フィッシュボーン図を作成する際は、魚の骨の頭の部分に記載する特性の内容を最初に明確にする必要があります。
どのような問題が起きているのか、解決したい問題や課題は何なのか、現状を踏まえてまずは特性を明確にしましょう。
フィッシュボーン図では、特性の内容を起点として原因や解決策を検討します。
特性の設定は、議論や分析の出発点となる非常に重要なプロセスです。
誤った課題設定をすると、以降の議論がすべてやり直しになる可能性があるため、初期段階で正確に行うことが求められます。
Step 2:主要な要因カテゴリーの決定
フィッシュボーン図で大骨にあたる箇所に具体的な要因を記載するためには、解決すべき問題の背後にある要因を特定するには、まず大まかな分類(カテゴリー)を決めることが必要です。
主要な要因を書き出す際、4M分析や3C分析など、一般的に広く知られている分析手法を活用すると、カテゴリー分けがしやすくなります。
用いるカテゴリーは、4M分析であれば「人」「機械」「材料」「方法」、3C分析であれば「顧客」「競合」「自社」です。
4M分析や3C分析で用いるカテゴリーを参考にしつつ、状況に応じて関係している要因をフィッシュボーン図に記載するとよいでしょう。
Step 3:ブレインストーミングによる要因の抽出
大骨に大きな分類での要因カテゴリーを記載した後、より詳細な要因について考えて小骨の箇所に記載するには、さまざまな視点で検討する必要があります。
さまざまな要因を抽出する際、役立つ手法の一つがブレインストーミングです。
ブレインストーミングとは、複数人で自由に意見を出し合い、発想を広げる手法です。一人で考えるよりも多角的で創造的なアイデアが生まれる可能性があります。
テーマを決めて自由に意見を出し合う際には批判や評価を禁止し、どのようなアイデアでも自由に発言できるようにしましょう。さまざまなアイデアが生まれて多くの要因を抽出できることを期待できます。
Step 4:要因の整理と分類
ブレインストーミングで出た意見を、ホワイトボードや付箋などに書き出し、視覚的に整理していきます。
要因を書き出したら、よく似ている意見や関連がありそうなアイデアをまとめて整理します。大骨で記載した大きなカテゴリーのどれに分類される要因なのか、個々の要因を分類して小骨の箇所に記載しましょう。
Step 5:重要な要因の特定と分析
問題の解決や状況の改善を図る際には、主要な要因を特定して対策を講じることが重要です。
さまざまな要因を抽出して整理し、大骨・小骨に書き込んでフィッシュボーン図が完成したら、抽出した要因の中から、問題に最も影響していると思われる「主要因」を特定します。
解決すべき課題や問題の主要な要因となっているものを突き止めたら、その要因について分析して、実行すべき対策や実現可能な対応策を考案します。
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フィッシュボーン図作成のコツとポイント
フィッシュボーン図で正確な要因分析を行うには、いくつかの重要なポイントをおさえておく必要があります。
ここでは、図を効果的に作成するための主なコツを紹介します。
客観的事実に基づく記述
要因分析では、主観的な推測ではなく、客観的な事実やデータに基づいて記述することが重要です。
主観に頼ると誤った原因分析や不適切な対策につながる恐れがあります。
ブレインストーミングでは主観的な意見や正確性に欠ける内容が含まれることもあるため、整理・分類の際には事実に基づいているかどうかを必ず確認しましょう。
4M(Man,Machine,Method,Material)の活用
要因分析には、4Mの枠組みを活用すると、整理しやすくなり、改善策の立案にも効果的です。
4Mで分析の柱となる4つの要因、すなわち「人(Man)」「機械・設備(Machine)」「方法(Method)」「材料(Material)」を軸にして考えると、状況を分析しやすくなります。
要因として考えられるのは、例えば、「人」であれば技術の習熟度や人数・配置の問題、「機械・設備」であれば必要な設備の不足や設備の老朽化の問題などです。
作業のやり方に問題があって作業工程の見直しが必要な場合や、使用している材料に問題があって調達先の変更が必要な場合もあります。
ブレインストーミングの応用
ブレインストーミングでは、まず質より量を優先し、思いついた要因を制限なく書き出すことが重要です。
多様な視点を得るために、関係部署や異なる職種のメンバーを交えて実施するのが効果的です。
意見を出し合うときには批判や否定、評価は行わず、まずは意見を自由に出し合うことを優先します。自由に意見を言える雰囲気の中でこそ自由な発想が可能になり、要因の特定・分析に役立つ意見が出てくる可能性が高まります。
フィッシュボーン図の注意点
多くのメリットがあるフィッシュボーン図ですが、デメリットや注意点もあります。以下では、フィッシュボーン図活用時の主な注意点を紹介します。
多角的な視点と深い専門知識の重要性
フィッシュボーン図を使って問題の要因を特定するには、問題に対する深い理解と分析力、広い視野が必要です。
経験の浅いメンバーのみでは難しく、関係者の協力や対話の場が必要となり、人材や時間などリソースを要する点は、フィッシュボーン図のデメリットといえるでしょう。
効率的に議論を進めるためには、あらかじめ進行役や議論の進め方を決めておくことが重要です。
また、要因特定には、専門知識を持つ人材を部門横断で集めた議論が不可欠です。
要因分析のための会議を開催する際は、各分野・各部署で専門知識を持つ関係者が参加できるよう、スケジュール調整は早めに行うことが重要です。
フォローアップと継続的な改善の必要性
フィッシュボーン図を使って要因を特定して改善策を考案しても、あくまで仮説に過ぎません。改善策の実行後には、効果の有無を必ず検証する必要があります。
フィッシュボーン図を活用した問題原因の特定・改善策の実行は単に実行して終わるのではなく、改善に向けて継続的に取り組むことが重要です。
効果がなければ要因特定からやり直し、効果が不十分な場合は施策を見直すといった柔軟な対応が求められます。
フィッシュボーン図作成ツールの比較と選び方
フィッシュボーン図を作成するときに使えるツールには、大きく分けると「オフラインツール」と「オンラインツール」の2種類あります。以下では、それぞれのツールの特徴を紹介します。
オフラインツール:紙とペン、ホワイトボード
ネット環境がない場合は、紙やホワイトボードを使ってフィッシュボーン図を作成します。
大人数での議論では、意見を可視化できるホワイトボードの活用がおすすめです。
ホワイトボードに書き出すことで、議論が可視化され、意見の整理・分類・要因特定がしやすくなります。
また、ホワイトボードがない場合は、紙とペンを用意して、フィッシュボーン図を紙に書いて出された意見を記入していき、関係者で確認しながら議論してもよいでしょう。
オンラインツール:ソフトウエアとクラウドサービス
オンラインには、作図サービス、マインドマップツール、表計算ソフトなど多様な作成ツールがあります。
事前に図の大枠をオンラインツールで準備しておけば、議論中に出た意見をその場で入力でき、効率的です。
パソコンで図を作成し、画面をプロジェクターで投影すれば、議論の進行状況や意見をその場で共有でき、スムーズな話し合いにつながります。
フィッシュボーン図と他の問題解決手法との違い
問題解決の手法にはフィッシュボーン図以外にもさまざまな手法があります。以下では、フィッシュボーン図と他の問題解決手法の違いについて解説します。
SWOT分析
SWOT分析とは、内部環境と外部環境におけるプラスの要因とマイナスの要因を分類して、現状を分析するフレームワークです。
「S(Strengths):強み」「W(Weaknesses):弱み」「O(Opportunities):機会」「T(Threats):脅威」の4つの視点で分析することで、強みや課題を把握できます。
両者とも現状分析に活用されますが、目的とアプローチに違いがあります。
SWOT分析は戦略立案のために全体像を俯瞰する手法であり、内部・外部環境を大局的に捉えるのが特徴です。
一方、フィッシュボーン図は個別の問題に対し、原因を掘り下げて特定することに重点を置いています。
なぜなぜ分析
なぜなぜ分析とは、発生した問題・事象に対して原因を問う「なぜ?」を繰り返し、掘り下げていくことで根本的な原因を特定して問題解決を図る手法です。
一般的には5回ほど「なぜ?」という問いを繰り返すと根本原因にたどり着くとされています。
どちらも要因分析に用いられますが、アプローチが異なります。
なぜなぜ分析は一つの問題に対して「なぜ?」を連続して問うことで、因果関係を直線的に深掘りします。対してフィッシュボーン図は、複数の要因を並列的・構造的に整理し、仮説ベースでも幅広く要因を洗い出す点に特徴があります。
パレート図による重要度の可視化
パレート図は、各要因の影響度を数値化し、重要度の高い要因を特定するためのツールです。
棒グラフと折れ線グラフの複合図によって要因ごとの影響度合いを視覚化でき、問題点の発見に役立ちます。
両者とも問題分析に用いられますが、視点が異なります。
パレート図は「どの要因が影響度が高いか」を数値で示し、優先順位付けに役立ちます。
一方、フィッシュボーン図は「なぜその結果が生じたのか」を構造的に可視化し、原因の全体像を把握するために活用されます。
まとめ
事業運営で課題に直面した際、フィッシュボーン図を活用することで、原因の特定と改善策の検討がしやすくなります。
複雑に見える問題も、フィッシュボーン図を使えば視覚的に整理でき、原因や因果関係を明確に把握できます。
フィッシュボーン図を使って要因を特定する際は、できるだけ多くの人に参加してもらい、さまざまな視点で意見を出してもらうことで要因を特定しやすくなります。まずは自由に意見を出してもらい、多くの意見が出たところで整理して特に重要な要因を特定し、分析して改善策を検討してください。
4M分析やSWOT分析など、フィッシュボーン図以外の問題解決手法もあわせて活用すれば、状況の把握・分析や原因の特定をより的確な形で行うことができるでしょう。
HRMOSタレントマネジメントで適切な人材管理を推進
事業経営において問題が生じ、フィッシュボーン図で要因分析を行うと、多くの場合、「人」に関する問題が浮き彫りになります。
スキルの習熟度や人材配置の最適化といった「人」に関わる課題は、企業パフォーマンスに直結する重要な要因です。
企業が事業活動を行って効率よく生産活動を行ううえでは、社員の能力や成果を正しく把握・評価し、人材配置を適切に行うことが重要です。
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