アフォーダンス理論とは? 具体例を交えて基本概念をわかりやすく解説

アフォーダンス理論とは? 具体例を交えて基本概念をわかりやすく解説

環境や物事が人の行動にどのように影響するのか、知覚と行動の関係を理解すれば、日々の生活やビジネスなどさまざまな場面で活用できます。

製品やWebサイトのデザイン設計など、ビジネスで生かせる理論の一つが「アフォーダンス理論」です。

本記事では、アフォーダンス理論とは何か、概要や日常生活で見られるアフォーダンスの具体例、アフォーダンス理論を活用したデザイン戦略を解説します。

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アフォーダンス理論とは

アフォーダンス理論は認知心理学における概念です。現在ではデザイン分野などでも活用されています。アフォーダンス理論は、人や動物が行動する際に、周囲の環境がどのように影響しているのかに着目した理論です。

アフォーダンス理論とはどのような理論なのか、まずは概要から見ていきます。

ギブソンのアフォーダンス理論

アメリカの心理学者であるジェームズ・J・ギブソンは、環境が人や動物に与える影響に着目してアフォーダンス理論を提唱しました。

アフォーダンスとは英語のafford(与える・提供する)がもとになっている用語で、周囲の環境が人や動物に与える情報や意味のことです。

たとえば、丸い形のドアノブを見たとき、私たちはそのドアノブを「回すものである」と認識します。ドアノブの形が私たちに情報を与えていて、特に何か思考を巡らせる必要なく、直感的に「回すものである」と知覚できるわけです。

アフォーダンス理論では、人や動物の行動は、見たり聞いたりして感覚器官が刺激されて起きるのではなく、周囲の環境が与える情報がもとになっていると考えます。

ノーマンのアフォーダンス理論

アメリカの心理学者ドナルド・A・ノーマンは、ギブソンのアフォーダンス理論をデザインの分野に取り入れた人物です。

ノーマンは、製品やインターフェースの外観によって利用者がどのように行動するのかが決まる点に着目しました。デザイン分野におけるアフォーダンス(周囲の環境が与える情報)の重要性を指摘した点が特徴です。

前述のドアノブの例では、人は丸い形のドアノブを見ることで回すことを知覚できます。もののデザインが人の行動に与える影響に着目した点がノーマンの理論の特徴であり、「知覚のアフォーダンス理論」と呼ばれます。

製品の形や配置など、そのもののデザイン要素が使い方に関する情報やヒントを人に与える結果、ユーザーは自然と使用方法を理解できます。アフォーダンスの中でも特に知覚できる要素に着目したのがノーマンの「知覚のアフォーダンス理論」です。

シグニファイアとの違いや関連性

ギブソンのアフォーダンス理論とノーマンのアフォーダンス理論は、アフォーダンスに着目している点は同じではあるものの、異なる理論です。

ギブソンのアフォーダンス理論は、周囲の環境が人に与える情報そのものに着目した理論です。一方で、ノーマンのアフォーダンス理論は、その情報を人が知覚し行動する点に焦点を当てています。

ノーマンは自身の理論とギブソンの理論を区別するため、自身が提唱した「知覚のアフォーダンス」を「シグニファイア」という名称に置き換えました。これは、英語のシグナルがもとになっている用語です。

一般に「アフォーダンス理論」といえばギブソンの理論を指しますが、デザインの文脈ではノーマンの理論、あるいは「シグニファイア」として語られることが多くなっています。

アフォーダンス理論との混同を避けるため、デザイン分野ではシグニファイアを使うほうが適切でしょう。

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日常生活で見られるアフォーダンスの具体例

アフォーダンス理論は普段の生活の中でさまざまな形で活用されています。私たちが日頃影響を受けているアフォーダンスにはどのようなものがあるのか、以下では具体例を紹介します。

駅のホームや案内表示

駅のホーム上の表示や電車内の案内表示を見ることで、表示を見ることで、利用者は目的地までの行き方や行動を瞬時に判断できます。

こうした案内表示は、行動を自然に導くアフォーダンスの代表例といえるでしょう。

たとえば、電車の発車時刻や行き先がホーム上の電光掲示板に表示されると、自分がどの電車にいつ乗ればよいのかがわかります。乗車する際の整列位置がホーム上に書かれていることで電車のドアの位置がわかり、どこに立って待っていれば乗車がスムーズなのか判断が可能です。

また、駅構内の地図や路線図を見れば、行きたい駅や駅の出口、他路線への乗換口などがわかり、自分が行こうとしている場所に行くための行き方がわかります。

公共のゴミ箱デザイン

公共のゴミ箱では、可燃ゴミ・不燃ゴミ・ペットボトル・缶・ビンなど、ゴミの種類ごとにゴミ箱の色やゴミ投入口の形などを変えているケースが見られます。

分別のしやすさを促すこのようなゴミ箱の設計も、アフォーダンスの一例といえるでしょう。

たとえば、ペットボトルや缶ビンのゴミ箱では、ゴミの投入口の形が丸くなっています。この形を見ることで、丸い形のものを捨てるゴミ箱であると認識できるわけです。ペットボトルや缶ビンを捨てる際は、他のゴミ箱ではなくこのゴミ箱に捨てる行動につながります。

コンビニや高速道路のサービスエリアでは、ゴミの種類ごとにゴミ箱のデザインを分けているケースが見られます。アフォーダンスをデザインにうまく応用している事例といえるでしょう。

家庭用電化製品の操作パネル

家庭用電化製品の操作パネルでは、ある操作をする際にどのボタンを押せばよいのか、わかるように、ボタンごとに形や色、記載が変わっています。あるボタンを押すことで人の特定の行動につながるように促している点で、アフォーダンスの一例といえます。

たとえば、テレビのリモコンでは、音量調整のボタンに「ー」と「+」が記載されています。「ー」を押せば音量が下がり、「+」を押せば音量が上がることが視覚的にわかり、アフォーダンスとなっている事例です。

また、家電製品の「ON」「OFF」やエアコンのリモコンの「強」「弱」なども、それぞれのボタン表示がアフォーダンスとなり、人の特定の行動につながります。

ウィリアム・ゲイバーのアフォーダンス

アフォーダンスは性質に応じて分類することができます。ウィリアム・ゲイバーが提唱した

「知覚可能なアフォーダンス」「隠されたアフォーダンス」「偽のアフォーダンス」の3つの分類方法もその一つです。以下ではそれぞれのアフォーダンスについて解説します。

知覚可能なアフォーダンス

知覚可能なアフォーダンスとは、対象の見た目や形状から、どのような行動が可能か・適切かが直感的に伝わるものです。

人は明確にその特性を知覚できてある行動につながります。たとえば、床に矢印が書かれているケースが該当します。

矢印の向きが順路を示すことで、人は自然と進むべき方向を選ぶようになります。

隠されたアフォーダンス

隠されたアフォーダンスとは、明示的な手がかりがなく、ユーザーが行動を判断するには経験や試行錯誤に頼る必要があるタイプのアフォーダンスです。

たとえば、Webサイトのプルダウンメニューが挙げられます。疑わしいメニューボタンにマウスカーソルを合わせたりクリックしたりすることでやっとプルダウンメニューが表示されます。

ある特定の行動につながるアフォーダンスは含まれているものの、明白性に欠けて隠されてしまっている状態です。

偽のアフォーダンス

偽のアフォーダンスとは、本来実行できない行動を可能であるかのように誤認させる要素です。

たとえば、インターネット上の記事を読んでいて下線付きで強調されている部分を、リンク設定がされていると思い込むケースです。

この場合、リンク先に飛べると思ってその箇所を押す行動につながりますが、実際にはリンク先には遷移しません。これは、下線付きの箇所を押せばリンクに飛べるという偽のアフォーダンスを与えているケースです。

「隠されたアフォーダンス」と「偽のアフォーダンス」は何かしらの意図がなければ可能な限り避けるべきでしょう。


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レックス・ハートソンのアフォーダンス

アフォーダンスの分類方法の一つに、レックス・ハートソンが提唱した「物理的」「認知的」「感覚的」「機能的」の4分類があります。

以下では、それぞれのアフォーダンスについて解説します。

物理的アフォーダンス

物理的アフォーダンスとは、ユーザーに「何をすべきか」を示す知覚特性を持っているタイプのアフォーダンスです。

たとえば、ネットショッピングのサイトに表示される、大きくて目立つ「カートに追加」ボタンが該当します。

認知的アフォーダンス

認知的アフォーダンスとは、ユーザーが情報を理解したり、機能の存在に気づいたりするのを助けるデザイン上の仕組みを指します。

たとえば、特定のキーを押すと何が起こるかを知らせる、明確にラベル付けされたテキストなどが該当します。

感覚的アフォーダンス

感覚的アフォーダンスとは、音や光などの感覚刺激によってユーザーに変化を知らせるデザイン上の工夫です。

たとえば、利用可能なアップデートがあることを示す、はっきりとした「ピン」という音のフィードバックなどが該当します。

機能的アフォーダンス

機能的アフォーダンスとは、ユーザーの目標達成を支援するデザイン特性を持っているタイプのアフォーダンスです。

たとえば、ユーザーが「カートに追加」をクリックすると、商品がショッピングカートに表示されるケースが該当します。

アフォーダンス理論を活用したデザイン戦略

アフォーダンス理論は、製品やWebサイトのデザイン設計において有効な手法です。アフォーダンスを意図的に取り入れることで、ユーザーにとって直感的で行動しやすいデザインが実現します。

以下では、製品デザイン・Webデザインにおけるアフォーダンス理論の活用方法を紹介します。

製品デザインでの活用

製品設計にアフォーダンスを取り入れることで、ユーザーは使い方を直感的に理解し、迷わず操作できるようになります。

使い方がわからず迷うことが減ると、「使いやすい製品」という印象につながり、ブランド評価や売上の向上にも寄与します。

たとえば、電源や開閉用のボタンは、色・形・配置を工夫して視覚的に区別しやすくすると効果的です。

製品の各箇所がどんな機能を持つのか、視覚や触覚などによってユーザーが判別しやすいデザインにするとよいでしょう。

Webデザインへの応用

WebサイトのUI設計においても、アフォーダンスを活用することでユーザーの行動を導くことが可能です。

たとえば、商品の購入や申込といった行動を促したい場合、アフォーダンスを意識したデザインは非常に効果的です。

たとえば、Webサイト上でクリックしてほしいボタンがあるケースです。それがボタンであることが強調される形でデザインすれば、ユーザーに認識されて押してもらいやすくなります。浮き上がらせて視覚的にわかりやすくする方法などが効果的です。

このように「押すべきボタン」であることを視覚的に示すことで、ユーザーは自然とクリックする行動へと導かれます。

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アフォーダンス理論と関連する心理学的概念

心理学には、アフォーダンス理論以外にも人の行動や知覚に関わる多くの理論が存在します。

以下では、アフォーダンス理論と関連する概念として、ゲシュタルト心理学と認知負荷理論の2つの概念を紹介します。

ゲシュタルト心理学との関連性

ゲシュタルト心理学とは、人が物事を認識する際、個々の要素の集まりとしてではなく、全体として意味のあるまとまり(ゲシュタルト)として捉えるとする心理学の立場です。

アフォーダンス理論とゲシュタルト心理学はいずれも、環境が人の行動に影響を与える点に着目しているという共通点があります。

しかし、人の行動を引き起こす要素に対する考え方が異なります。

アフォーダンス理論では、人の行動に影響する要素は周囲のものや環境の中に存在するとされ、知覚者の経験や価値観によって変化するものではありません。アフォーダンスは変化するものではなく、客観的に存在するものです。

一方でゲシュタルト心理学では、知覚された対象がどのような行動を引き起こすかは、知覚者の経験や価値観によって左右されると考えます。

あるものが人のある行動を誘発する際、その誘発特性は客観的・不変なものではなく、知覚者の経験などで変わるものと考えます。

認知負荷理論との比較

認知負荷理論とは、人の情報処理能力には限界があるという前提のもと、認知の負荷を考慮して学習や作業の効率を高めようとする理論です。

認知負荷理論は、学習や業務において情報負荷を適切に調整することで、人の処理能力の効率的な利用を図り、学習や業務を効率化する際に活用されます。

アフォーダンス理論が「環境が与える行動の手がかり」に焦点を当てるのに対し、認知負荷理論は「人がどのようにその情報を処理するか」に着目しています。

この2つの理論は、いずれもアフォーダンスに関する理論という点で関連しています。

まとめ

アフォーダンス理論は、環境が人や動物の行動にどのような影響を与えるかに着目することで、意図した行動を引き出しやすくなるという考え方です。

駅や電車内の案内表示、公共のゴミ箱デザインなど、日常生活のさまざまな場面でアフォーダンス理論が活用されています。

製品デザインにおいても、ユーザーに期待する行動を自然に促す手法としてアフォーダンス理論は活用できます。

アフォーダンス理論は心理学に関する理論ですが、ビジネスの世界でもさまざまな形で応用できます。

アフォーダンス理論を活用したデザイン戦略によって、操作方法をユーザーが自然と理解できるようになります。

ユーザーが使いやすいと感じれば、製品に対する顧客の評価が上がり、売上向上などの効果を期待できるでしょう。日々の業務やビジネスの場面でアフォーダンス理論を上手に活用していきましょう。

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