CRMとは? ツールの種類と特徴からマーケティングの実践方法まで徹底解説

CRMとは? ツールの種類と特徴からマーケティングの実践方法まで徹底解説

変化の激しいビジネス環境の中で、顧客との関係性をいかに深め、長期的な信頼を築くかは企業の成長を左右します。その鍵を握るのが「CRM(顧客関係管理)」です。

本記事では、CRMの基本的な仕組みや主な機能、導入によるメリットと注意点、実践的な活用方法、そして代表的なツールの特徴までをわかりやすく解説します。

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CRMとは

CRMとは、顧客情報や行動履歴を一元的に管理し、顧客と良好な関係を築くことで、長期的な取引やサービス利用の継続を促進する経営・マーケティング手法です。

Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の頭文字からCRMと呼ばれ、日本語では「顧客関係管理」と訳されます。

顧客のニーズが多様化・複雑化する中で、単に商品やサービスを販売するだけではなく、「顧客との関係性そのものをマネジメントする」ことの重要性が高まり、CRMが注目されました。

また、CRMの最終目的は、LTV(顧客生涯価値)の最大化です。顧客と中長期的に関係を構築することで、企業への信頼や愛着といったロイヤリティが高まり、LTVの向上につながります。

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CRMの主要機能とメリット

CRMは、顧客情報などをマネジメントする経営・マーケティング手法の一つですが、近年ではこの手法を支援するシステムやツール自体も「CRM」と呼ばれています。

CRMは単なる顧客情報の管理ツールではなく、営業・マーケティング・カスタマーサポートを横断的に支援する統合システムです。

ここでは、CRMの代表的な5つの機能と、各機能のメリットを紹介します。

顧客情報管理

CRMの中核となる機能が、顧客情報の一元管理です。

顧客名、連絡先、住所といった基本情報に加えて、担当者・決裁者の氏名や連絡履歴、問い合わせ内容、商談状況など、関係性を時系列で蓄積します。

顧客情報管理機能によって、社内の誰が対応しても顧客との過去のやり取りを正確に把握でき、対応の質を維持しながら業務を引き継ぐことが可能になります。

また、対応漏れや重複連絡などのミスを防ぎ、顧客満足度を安定的に保つことができます。

営業支援

営業支援機能では、案件や商談の進捗、見積金額、受注確度などを可視化し、営業活動の全体像を共有できます。

営業プロセスの「どこで停滞しているのか」「どの案件に注力すべきか」が明確になることで、チーム全体のリソース配分が最適化され、生産性の高い営業体制を構築できます。

属人的な営業スタイルを脱却し、データを基盤とした営業判断を可能にすることがメリットです。

マーケティング支援

多くのCRMツールには、メール配信やキャンペーン管理などのマーケティング機能も搭載されています。

マーケティング支援機能を用いれば、顧客の属性や行動履歴をもとに、適切なタイミングで最適なメッセージを届けることができ、顧客一人一人に合わせたパーソナライズドなアプローチが可能です。

また、配信結果の分析を通じて、マーケティング施策の改善やROI(投資利益率)の最大化にもつなげられます。

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カスタマーサポート

問い合わせ管理やサポート履歴の共有など、カスタマーサポート機能もCRMの重要な機能です。

電話・メール・チャットなど複数チャネルの問い合わせを一元管理できるため、担当者間での情報共有がスムーズになり、対応の漏れの防止につながります。

さらに、過去の対応履歴やFAQを活用することで、顧客からの問い合わせを迅速に解決し、顧客満足度の向上や離反防止に寄与するでしょう。

顧客データ分析

多くのCRMツールには、顧客データをさまざまな角度から分析できる機能も搭載されています。

CRMに蓄積された顧客データを分析することで、優良顧客の特性や購買傾向を把握でき、より効率的なマーケティング活動や営業活動が可能になります。

例えば、RFM分析(Recency:最終購入日、Frequency:購入頻度、Monetary:購入金額)を活用することで、リピート率の高い顧客を特定し、最適な施策を展開できます。

顧客データ分析は、限られたリソースを利益貢献度の高い顧客に集中させ、データドリブンなマーケティングや営業戦略を実現するために欠かせない機能です。

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CRM導入の潜在的なデメリット

CRMは顧客関係の可視化や業務効率化に大きく寄与する一方で、導入・運用の過程では注意すべきリスクも存在します。

ここでは、代表的な3つの潜在的デメリットと、それを回避・軽減するための対策を紹介します。

初期投資とランニングコスト

CRMシステムの導入には、初期費用や月額利用料などの継続的なコストが発生します。

特に、大規模な組織や複数部門での利用を想定する場合は、ユーザー数に応じた課金体系となることが多いため、ランニングコストが想定以上に膨らむケースもあるでしょう。

加えて、既存システムとの連携やデータ移行、運用ルールの整備といった準備作業にも工数がかかるため、人的コストも無視できません。

対策としては、事前にCRMの「導入目的」と「期待する成果」を明確にし、コストとのバランスを評価することが重要です。

段階的な導入を検討し、一部門で試験的に導入を進めたり、CRMツールの利用機能を必要最小限から利用したりするなど、スモールスタートすることも有効でしょう。

また、無料トライアル期間がないか、段階的なプラン変更に応じてくれないかなど、ベンダーと協議のうえ段階的に進めることが有効です。

導入・運用の手間

CRMは導入しただけで成果が出るわけではありません。

顧客情報の移行や既存システムとの連携、社内オペレーションの整理など、定着までに一定の時間と手間が必要になります。

また、CRMを活用する際、データ分析や施策設計などの専門知識も求められるため、担当者が不在のまま運用を始めると、効果を実感するまでに時間がかかることもあるでしょう。

対策としては、導入初期に専任担当者や運用チームを設けて、ツールの活用方法や詳細のルールを管理する人材を明確にしておくことが重要です。

体制を整備しないまま進めてしまうと、運用にのせるまでに時間がかかってしまい、トラブル時も初動が遅れてしまう可能性があるためです。

また、ベンダーが提供するオンボーディングやトレーニングサービスなどを活用し、社内にナレッジを蓄積する仕組みを整えることも有効でしょう。

データセキュリティリスク

CRMでは、非常に多くの顧客情報や商談情報、取引履歴といった重要データを扱います。それらのデータセキュリティのリスクが発生することを、デメリットに感じる場合もあるでしょう。

アクセス権限の管理が不十分だったり、社外からの不正アクセスが発生したりすると、企業の信頼にかかわる重大なリスクとなります。

また、クラウド型のCRMの場合、システム障害や通信トラブルによって一時的にデータへアクセスできなくなるリスクも考えられます。

対策としては、暗号化通信(SSL/TLS)や多要素認証など、セキュリティ対策が十分に整っているベンダーを選定することが大切です。

社内でのアクセス権限を最小限に設定し、定期的な監査やログ管理を行うことで、内部リスクを軽減しましょう。

また、クラウド型のCRMツールを利用する場合は、データのバックアップ体制や障害対応フローを確立しておくことも重要です。


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CRMツールの種類と特徴

CRMツールには、提供形態や目的によって多様な種類があります。

ここでは、オンプレミス型、クラウド型、業界特化型の3つに分けて、それぞれの特徴や導入のポイントを紹介します。

オンプレミス型CRM

オンプレミス型CRMは、自社のサーバー上にシステムを構築し、社内で運用・管理するタイプのツールです。

データを自社内で完結して管理できるため、セキュリティ要件の厳しい企業や官公庁、金融機関などで多く採用されています。

オンプレミス型CRMは、自社の業務プロセスに合わせた柔軟なカスタマイズができ、他の社内システムとの連携もしやすい点が特徴です。

一方で、導入の際にサーバー構築やIT人材の確保が必要となり、初期費用や維持コストが高くなりがちな点がデメリットです。

また、クラウド型のように自動でアップデートされる仕組みがなく、メンテナンスやバージョン管理にも一定の手間がかかる点も注意が必要です。

この特徴から、オンプレミス型は「自社独自のセキュリティポリシーを維持したい」「社内の情報資産を外部に預けたくない」といった企業に適しているでしょう。

クラウド型CRM

クラウド型CRMは、インターネットを介してベンダーのサーバー上でシステムを利用するタイプです。

自社でサーバーを用意する必要がなく、インターネットにアクセスする環境さえ整っていれば、契約後スピーディーに利用開始が可能です。

クラウド型CRMは、ベンダー側が最新の機能をアップデートしていくため、ユーザーはメンテナンスに手間をかけることなく最新環境で運用できる点がメリットといえます。

ただし、初期投資が安く、月額課金制で利用できる手軽さがある一方で、利用人数が増えるとコストが積み上がる点には注意が必要です。

また、データを外部サーバー上で管理する仕様のため、セキュリティ基準やデータ保管場所を確認しておくとよいでしょう。

これらの特徴から考えると、クラウド型CRMは、市場変化が激しい業界や新規部門での利用が相性がよいといえます。また、リモートワークを導入している企業や、複数拠点での情報共有にも向いているでしょう。

業界特化型CRM

業界特化型CRMは、特定の業種や用途に合わせて設計されたタイプのCRMツールです。

例えば、ECや製造、不動産などの業界に加え、営業やコールセンターなどの利用部門向けに特化したものもあります。

業界や利用部門別(目的別)に分けてツールを開発することで、業界ならではの機能が搭載されていることがメリットです。

一方で、特定の業界や部門での利用を想定して最適化されていることで、他部門との連携や新規事業への転用が難しいケースもあります。

そのため、単体の業種で長く利用したい企業や、業種ならではの専門的な課題にアプローチしたい企業に適しているといえます。

CRMツールにはどのような製品があるか

代表的なCRMツールの製品概要と、それぞれの主な特徴をご紹介します。

Salesforce

「Salesforce」は、1999年にアメリカで創業したクラウド型CRMの先駆けとなるサービスです。

ソフトウエアをクラウド上で提供するSaaSモデルを採用し、世界中の企業が利用しています。

サーバー管理や保守をSalesforce側が担うため、自社でインフラを整える必要がなく、導入・運用コストを抑えられる点が特徴です。

高い拡張性とカスタマイズ性を備え、スタートアップから大企業まで幅広いニーズに対応します。2023年の世界CRM市場ではシェア22%で1位を獲得しており、CRM分野のリーダー的存在といえます。

Zoho CRM

「Zoho CRM」は、インド発のグローバル企業であるZoho Corporationが提供するクラウド型CRMです。

営業支援(SFA)や顧客管理、データ分析、チームコラボレーション、AIアシスタントなど、ビジネスを効率化する幅広い機能を備えています。

特徴は、カスタマイズの自由度の高さです。画面デザインの変更やワークフロー構築、プログラミングによる拡張まで、企業の業務に応じた柔軟な設計が可能です。

また、プロフェッショナルサービスや堅牢なセキュリティ体制を備え、大企業から中小企業まで幅広い規模の企業で活用されています。

Sansan

「Sansan」は、名刺管理を基盤としたクラウド型の営業支援・顧客管理サービスです。

従業員一人一人が持つ名刺情報をデータ化し、全社で人脈情報を共有できる点が特徴です。

データ化の精度は99%と高く、重複や表記ゆれを自動で修正することで、常に最新・正確な顧客データを維持できます。

さらに、Salesforceなどの外部CRMと連携でき、データ入力の手間を省きながら顧客情報の一元管理を実現します。

名刺交換によるリアルなつながりをビジネスデータとして活用し、営業機会の創出や関係性の深化を支援する、国内発のCRMとして多くの企業に導入されています。

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CRMツールの選び方

数多くのCRMツールの中から自社に最適なものを選ぶには、単に機能の多さや知名度だけで判断せず、自社の課題や運用体制に合った設計かどうかを見極めることが重要です。

導入後に「使いこなせなかった」「現場に定着しなかった」といった失敗を防ぐために、CRMツール選定の際に押さえておきたい5つのポイントをご紹介します。

自社の課題とニーズの明確化

CRMツール導入の第一歩は、自社が抱える課題と導入目的を明確にすることです。

属人的に取り組んでいる営業活動を可視化したい、表計算ソフトや紙に散らばっている顧客情報を一元管理したい、手作業で作成しているメルマガなどマーケティング施策を自動化したいなど、解決したい課題を整理して、目的を定めましょう。

取り組みたい課題に優先順位をつけ、目的を定めたら、それに必要な機能が備わっているCRMツールを選定していきます。

最初に課題の整理や目的設定を行わなければ、「機能がたくさんあるほうがいい」「安いツールがいい」といった選定方法になりがちです。

自社が本当に必要な機能を見極め、根拠を持って選定していくことが重要でしょう。

ユーザビリティ

どれほど高機能なCRMツールでも、操作性が複雑で現場が使いこなせなければ、定着は難しくなります。

例えば、入力補助機能や自動保存機能、ドラッグ&ドロップで案件移動する機能など、日常業務の負担を軽減する仕組みが備わっているかをチェックしましょう。

何よりも、実際にCRMツールを利用する従業員に試してもらい、「使いやすいかどうか」「入力がスムーズかどうか」を見極めることが大切です。

無料トライアル期間やデモ環境を活用し、データの登録や検索、レポート出力など、主要な操作を現場目線で体験しておくと安心でしょう。

カスタマイズ性

企業によって営業プロセスや顧客管理の方法は異なるため、柔軟にカスタマイズできるかどうかも重要な判断軸です。

入力項目の追加・変更や、ダッシュボードの編集、承認フローの設定、既存データのインポート方法など、自社の業務フローに合わせた調整ができるかを確認しましょう。

また、MA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)など、他の業務システムとの連携機能も重要な検討ポイントです。

顧客データを一元化し、マーケティングから営業、サポートまでシームレスに活用できる環境を拡張できるかどうかを確認するとよいでしょう。

サポート体制の充実度

CRMツールは導入して終わりではなく、運用を通じて効果を高めていくツールです。

そのため、ベンダーのサポート体制がどれほど整っているかは、定着率を左右する大きな要素になります。

初期設定やデータ移行を支援してくれるか、トラブル時に迅速に対応してもらえるか、マニュアルやFAQのほか、有人チャットや電話サポートがあるかなどを確認しましょう。

また、導入後に伴走支援を行ってくれるベンダーであれば、社内での活用ノウハウを蓄積しやすく、運用定着までの時間を短縮できます。

特にIT担当者が少ない企業では、手厚いサポートを受けられるサービスを選ぶことが、運用定着と効果的な活用の鍵になります。

コストパフォーマンス

CRMツールの選定の際は、コストパフォーマンスの確認も欠かせません。

導入の際は、初期費用・月額料金・ユーザー数による従量課金の有無やオプション費用といった項目を確認しましょう。

検討の際は、目先の「導入コストの安さ」だけでなく、長期的な運用コストと機能のバランスを見極めることが重要です。

利用人数に応じて課金されるツールでは、将来的な増員時のコストも想定しておく必要があるでしょう。

また、不要な機能が多いツールを選ぶと、使わない部分にまで料金を支払うことになり、費用対効果が下がります。

反対に、初期費用はやや高くても運用コストを抑えられるツールを選ぶことで、長期的に見れば安定したコストパフォーマンスを実現できるケースもあります。

コストを比較する際は、「自社の課題解決や業務改善に対して、適切な投資となるかどうか」を基準に判断することが重要です。

CRMマーケティングの実践方法

続いて、CRMマーケティングの実践方法を解説します。CRMを活用し、成果を最大化するために、基本的な実践手法をおさえておきましょう。

ターゲットセグメンテーション

CRMを実践的に活用する際の基本となるのが、ターゲットセグメンテーションです。セグメンテーションとは、顧客を性別・年齢・地域・業種・購買履歴・行動傾向などの共通点で分類し、それぞれの特性に合わせて最適なアプローチを行う手法を指します。

CRMに蓄積された顧客データを分析し、データに基づいたターゲットの絞り込みができる特徴を活用した手法といえます。

例えば、購買頻度や顧客の問い合わせ内容を分析し、「継続利用の見込みが高い顧客層」を抽出できれば、ロイヤル顧客向けの施策を重点的に実施できます。

このようにターゲットセグメントは、顧客理解を深めるだけでなく、限られたリソースを最も効果的に活用するための基盤となります。

パーソナライズドコミュニケーション

CRMを実践的に活用するうえで重要なのが、パーソナライズドコミュニケーションです。これは、顧客一人一人の属性や行動データに基づき、最適な内容・タイミング・チャネルで情報を届ける手法を指します。

顧客の購買履歴やサイト閲覧履歴、問い合わせ内容などをCRMに蓄積・分析することで、関心度や購買意欲に応じたメッセージを自動的に配信できます。例えば、誕生日に合わせたクーポンメールの送付や、購入後のフォローメール、休眠顧客への再アプローチなどが代表例です。

近年では、メールやSNSといったデジタル手段に加え、DMやイベント招待などリアル施策も組み合わせることで、より効果的なパーソナライズが可能になっています。

このようにパーソナライズドコミュニケーションは、顧客の体験価値を高め、長期的な関係構築やロイヤルティ向上につなげるCRM施策の中核となる取り組みです。

リードナーチャリング

CRMを活用した代表的な施策のひとつが、リードナーチャリングです。リードナーチャリングとは、見込み顧客の育成とも呼ばれます。

リードナーチャリングとは、商品やサービスに関心を持つ「見込み顧客」に対し、段階的に情報提供を行い、購買意欲を高めていくプロセスです。

具体的な取り組み方としては、CRMに蓄積された顧客データをもとに、関心度や検討段階に応じてメール配信やセミナー案内、資料提供などを行って、信頼関係を構築します。

特に、マーケティングオートメーションと連携することで、顧客の行動をトリガーにした自動フォローが可能になり、効率的な顧客育成を実現します。

リードナーチャリングは、短期的な売上獲得だけでなく、中長期的な顧客基盤の強化にもつながる重要な取り組みです。

アップセル・クロスセル

アップセル・クロスセルは、既存顧客との関係を深め、売上を拡大するためのCRM活用法です。アップセルは「上位の商品・サービスへの提案」、クロスセルは「関連商品の提案」を意味します。

CRMに蓄積された購買履歴や利用状況を分析することで、顧客が次に求める可能性の高い商品やサービスを予測できます。

例えば、ソフトウエア利用データから上位プランを提案したり、関連機能の追加導入を案内したりすることで、自然なかたちで単価向上を図ることが可能です。

顧客の満足度を維持しながら収益性を高められる点が、アップセル・クロスセル施策の大きな特徴といえます。

顧客ロイヤルティプログラム

顧客ロイヤルティプログラムとは、顧客の継続利用やブランドへの愛着を高めるための仕組みを指します。

CRMに蓄積された購買データや利用履歴をもとに、ポイント付与や会員ランク制度、限定特典の提供といった施策を行い、リピート購入や推奨行動を促します。

近年では、デジタルアプリやECサイトとCRMを連携させ、顧客の行動に応じてリアルタイムで特典を付与する仕組みも一般的です。

こうしたプログラムは、単なるリピート施策にとどまらず、顧客満足度の向上やブランドコミュニティー形成にもつながります。

CRMを基盤にした顧客ロイヤルティプログラムは、長期的な顧客関係を築くうえで欠かせない施策といえるでしょう。

タレントマネジメントとの連携で顧客満足度を最大化

CRMの導入・運用をさらに発展させるには、タレントマネジメントシステムとの連携が効果的です。

顧客情報と従業員情報を統合的に管理することで、「どの従業員が・どの顧客に・どのような価値を提供できるか」をデータに基づいて判断できるようになります。

例えば、特定の業界を得意とする営業担当を重点顧客の担当者としてアサインしたり、コミュニケーションスキルの高い従業員をカスタマーサクセスに配置したりすることで、成果を高められるでしょう。

ここでは、CRMとタレントマネジメントの連携効果を測定するための主要KPIを紹介します。

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CRMの効果測定指標

CRMとタレントマネジメントシステムを連携させるためには、成果を測る指標(KPI)を明確にすることが欠かせません。

単なる売上や満足度の数値だけでなく、人材のスキル活用度やシステムの定着状況といった内部指標も組み合わせて評価して、CRM活用における効果を俯瞰して把握しましょう。

営業関連KPI

営業活動では、従業員のスキルデータをもとに担当顧客を最適化することで、商談の質と成果を高められます。営業関連の主なKPIは次の通りです。

  • 売上継続率(NRR):既存顧客からの収益がどの程度維持・拡大できているかを示す指標。CRMと人材データを連携することで、担当者の配置や対応の質が収益維持に寄与しているかを可視化できる。
  • 商談数:一定期間内に発生した商談件数を測る指標。営業スキルの高い従業員を重点案件に配置した結果、商談機会がどの程度増加したかを把握する。
  • 成約率:商談から契約に至った割合を示す指標。顧客ニーズと担当者スキルのマッチング精度が成果にどう影響しているかを確認する。

顧客関連KPI

顧客満足度や顧客維持率などの顧客関連のKPIでは、顧客体験の品質を確かめます。

どの従業員が担当すると顧客満足度やLTVが高まるのかを見極め、適切な配置を行いましょう。主な顧客関連KPIは次の通りです。

  • 顧客満足度(CSAT):サービスや対応に対する顧客の満足度を数値化する指標。対応スキルの高い従業員を顧客窓口に配置し、満足度の変化を定量的に確認できる。
  • 顧客維持率(リテンション率):一定期間内に継続取引している顧客の割合を示す指標。従業員のモチベーションや担当交代時の引き継ぎ精度を可視化することで、顧客離脱を防止し、維持率の改善につなげられる。
  • 顧客生涯価値(LTV):1人の顧客が企業にもたらす累計収益を示す指標。タレントマネジメントシステムでスキルや経験を踏まえた長期的な担当体制を構築することで、顧客の信頼度と収益貢献度を高められる。

マーケティング関連KPI

CRMに蓄積された顧客データと、タレントマネジメントシステムに蓄積された人材データを組み合わせることで、マーケティング施策の精度も高まります。

マーケティング関連で確認すべきKPIは次の通りです。

  • リード獲得数/リード獲得コスト(CPA):新規顧客リードをどの程度効率的に獲得できているかを示す指標。CRMの顧客データに加え、タレントマネジメントシステムで把握した従業員のスキルや特性を活用することで、ターゲティング精度を高め、リード獲得コストを最適化できる。
  • ROI(投資収益率):マーケティング施策に投じたコストに対して、どれだけの成果を上げられたかを測る指標。CRMと人材データを連携させ、適材をキャンペーンや施策に配置することで、効果を最大化し、ROIの改善につなげられる。

システム利用関連KPI

CRMシステムの活用度を定期的に確認することで、運用上の課題を早期に把握し、改善サイクルを回すことができます。

CRMとタレントマネジメントシステムそれぞれの利用関連KPIを把握して、効果的な連携に取り組んでいきましょう。システム利用関連の主なKPIは次の通りです。

  • ログイン率:CRMやタレントマネジメントシステムが、どのくらい日常的に利用されているかを示す指標。利用率を定期的に確認することで、システム定着の進捗や現場での活用度を把握できる。
  • データ入力完了率:顧客情報や人材情報が、どの程度最新の状態に保たれているかを示す指標。CRMとタレントマネジメントシステムの両方で入力状況や入力件数を追うことで、データ更新の滞りや属人化を早期に発見できる。
  • 機能別利用率:CRMとタレントマネジメントシステムの各機能が、実際にどの程度業務で活用されているかを測る指標。連携機能の利用率を分析することで、現場がどの機能を有効活用しているか、どこに改善余地があるかを明確にできる。

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CRM導入時の注意点と失敗しないためのポイント

CRMを導入したのにマーケティングや営業成果が得られず失敗しないためにも、導入時の注意点を事前に確認しておきましょう。

ここでは、導入時に押さえておくべき3つのポイントを紹介します。

社内体制の整備とトレーニング

CRMを導入する際は、運用ルールや社内体制を整え、継続的に活用できる仕組みを構築することが重要です。

CRMは、導入しただけでは成果につながりません。明確なルールと責任体制のもとで使い続けることで真価を発揮します。

「どのように顧客情報を入力するか」「誰が、どのタイミングで更新を行うか」「どの状態の顧客にアプローチするか」といった具体的な運用ルールを定め、定期的な振り返りや改善を行いましょう。

また、導入時にはベンダーによる初期設定・教育サポートを活用することが欠かせません。

導入後にサポート体制が不十分だと、現場での混乱や定着の遅れにつながります。他社事例やベストプラクティスを共有してもらいながら進めることで、スムーズな立ち上げが可能になります。

さらに、導入初期には責任者(管理者)を明確にし、経営層やマネージャーが積極的に関与することが現場定着の鍵となります。現場の課題や疑問点を責任者が吸い上げ、使い方のレクチャーやフィードバックを重ねながら「現場にとって使いやすいCRM」を共に育てていく姿勢が大切です。

データクレンジングの重要性

CRMを効果的に活用するには、正確で整理されたデータの保持が重要です。

古い顧客情報や重複データが残っていると、正確な分析ができず、課題の発見が困難になります。

特に、長年表計算ソフトや名刺管理ソフトなどで顧客データを管理してきた企業では、形式の違いや表記ゆれが多く発生しがちです。

導入前に顧客データを整理し、使える情報と不要な情報を明確に区分するデータクレンジングを実施しましょう。

また、CRMを活用できる人材が限られている場合、データ整備が属人化するリスクもあります。

運用初期に入力ルールや命名規則を定め、定期的にデータを見直す体制を作ることで、CRMが継続的に機能するでしょう。

段階的な導入とPDCAサイクル

CRMをいきなり全社展開すると、現場の混乱や負荷増大につながることがあります。

まずは、営業部門やサポート部門など一部のチームでスモールスタートし、運用上の課題を洗い出したうえで全社展開するのが現実的です。

導入後は、定期的に利用状況を分析し、入力率や活用度、成果指標などをもとに改善を重ねましょう。

このPDCAサイクルを継続的に回すことで、CRMの定着率を高め、データ活用の精度も向上します。

また、ツール提供企業によるアップデートや新機能追加のタイミングで、運用フローを見直すことも有効です。

自社の変化や市場環境に合わせて柔軟にCRMを進化させることで、長期的な成果を実現していきましょう。

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まとめ

CRMは、顧客情報を整理・分析するためだけのツールではなく、「顧客との関係性を深める仕組み」です。重要なのは、どのツールを導入するかよりも、それをどう運用し、どのように現場へ根付かせるかという点にあります。

目的やルールが不明確なままでは、CRMは単なるデータベースにとどまり、成果にはつながりません。

最終的にCRMの価値を決めるのは、ツールそのものではなく、それを活用する人と組織の運用力です。本記事をきっかけに、自社に合ったCRM運用体制を見直し、データを「顧客との関係を育てる資産」として活用しましょう。

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