目次
企業を取り巻く外部環境は、労働力人口の減少やAIの普及・法改正・働き方改革などにより、急速に変化しています。
変化が激しい環境に適応するための企業戦略を立てる際は、外部環境を整理するPEST分析が有効です。
本記事では、PEST分析の基本的な考え方から活用のメリット、具体的な進め方を解説します。
あわせて企業事例や、他の分析手法との違いや組み合わせ方についても紹介するので、実務に生かす際の参考にしてください。
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PEST分析は、企業が直接コントロールできない外部環境の変化を整理・分析するためのフレームワークです。
近年のビジネス環境は、AIの普及や国際情勢の不安定化など、将来の見通しが立ちにくい状況にあります。
そこで、企業は勘や経験だけに頼らず、客観的な根拠に基づいた戦略を検討する姿勢が求められます。
PEST分析を活用すれば、社会や市場で起きている変化を事実ベースで客観的に整理できます。
その結果、予期せぬ環境変化への備えや、新たなビジネスチャンスの発見につながるでしょう。
PEST分析は戦略を考える前提となる情報を整理し、持続的な成長に向けた判断を支える分析手法といえるでしょう。
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PEST分析の4つの要素
PEST分析では、企業を取り巻くマクロ環境を4つに分けて整理します。
具体的には「政治的要因(Political)」「経済的要因(Economic)」「社会的要因(Social)」「技術的要因(Technology)」の4つです。
ここからは、それぞれの要素を解説していきます。
政治的要因(Political)
政治的要因とは、法律や政策などの政治に関わる要素を指します。
政治的要因の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 政権交代
- 法改正や制度改正
- 外交関係や国際情勢
- 税制や補助金制度
これらの要因は、事業を行ううえで守るべきルールの基盤となるものです。政治的要因に変化が生じると、事業の前提そのものを見直さなければならない場合もあります。
政治的要因を適切に把握できれば、事業が制限されるリスクに事前に備えたり、規制緩和をきっかけとした新たなビジネスチャンスを見つけたりすることが可能になります。
したがって政治的な動向は、企業の経営方針の検討に欠かせない視点といえるでしょう。
経済的要因(Economic)
経済的要因とは、あらゆる経済指標に関わる要素を指します。
企業活動に影響を与える代表的な項目には、次のようなものがあります。
- 経済成長率や国内総生産(GDP)
- 景気動向
- エネルギー価格
- 為替レートや株価の動き
経済の状態は、消費者の支出動向や企業の収益性に大きな影響を与えます。
景気が良いと人々の消費意欲は高まり、企業の売り上げも伸びやすくなります。一方で、景気が悪くなると支出を控える動きが強まり、企業の売り上げにも影響が及びます。
経済的要因は、企業の売り上げだけでなく、原材料費や人件費といった製造・運営コストにも大きく影響します。
こうした影響を適切に判断するためにも、国内外の経済動向を継続的にチェックしていく必要があります。
社会的要因(Society)
社会的要因とは、人口構成や価値観、ライフスタイルなど社会全体の動きに関わる要素を指します。
数値で把握できるものだけでなく、人々の考え方や行動の変化といった抽象的な要素も含まれるのが特徴です。
社会的要因の具体例としては、次のものが挙げられます。
- 人口動態(人口減少など)
- 文化や価値観の変化
- ライフスタイルの変化
- 流行や世論の動向
社会的要因を把握することで、消費者のニーズや行動の変化をいち早く捉えることができます。
社会の変化に合った商品やサービスを提供することは、顧客満足度の向上につながるだけでなく、企業に対する信頼向上にもメリットがあります。
技術的要因(Technology)
技術的要因とは、新しい技術や技術革新など、テクノロジーの進歩に関わる要素を指します。
技術的要因の具体例としては、次のものが挙げられます。
- 新技術の開発や普及
- AIやビッグデータの活用
- 開発技術・生産技術の進化
- デジタル化や自動化
技術的要因を分析することで、業務の効率化やコスト削減、新たな商品やサービスの創出に寄与します。
一方で、技術革新によって、これまでのビジネスモデルや業務の進め方が通用しなくなる可能性もあります。
技術の進化を継続的に把握し、どのような変革が必要であるか見極めることが重要です。
このように、技術的要因は競合との差別化や競争力の維持にも必要不可欠な要素といえるでしょう。
PEST分析が企業戦略に与えるメリット
PEST分析は、業界や企業規模を問わず、多くの企業で活用されている外部環境分析の手法です。
ここでは、企業戦略にPEST分析を取り入れるメリットを解説します。
戦略立案の方向性を明確にする
企業が戦略を立案する際には、まず全体の方向性を明確に定めることが欠かせません。
方向性が曖昧なまま戦略を検討すると、判断基準がぶれやすくなり、その場しのぎの施策に終わってしまう可能性があるためです。
PEST分析を活用すれば、企業を取り巻くマクロ環境を整理し、社会や市場の大きな流れを俯瞰的に捉えることができます。
外部環境を前提に戦略を検討することで、自社が進むべき方向が見えやすくなるでしょう。
その結果、根拠に基づいた一貫性のある戦略を描きやすくなり、将来を見据えた意思決定につなげることが可能になります。
新規事業機会の発見を促す
新規事業のチャンスは、すでに目に見えている市場だけでなく、将来的な環境変化の中から見出されることが少なくありません。
PEST分析は、客観的な事実に基づいた環境変化の分析を得意とするため、新規事業機会の発見を後押しするものとして役立ちます。
PEST分析を用いれば、「なぜその市場が伸びる可能性があるのか」「どの要因が事業機会につながるのか」といった背景まで含めて検討しやすくなります。
その結果、再現性や中長期的な成長性を踏まえた、持続可能な新規事業の検討が可能になります。
リスク管理体制を強化する
PEST分析の活用により、業務上起こり得るリスクを早い段階で整理することができます。外部環境の変化に伴って生じるリスクを事前に想定しておくことで、被害を最小限に抑えられるでしょう。
例えば、法改正によってこれまでの事業運営が見直しを迫られたり、景気の悪化によって需要が減少したりするケースが考えられます。
PEST分析で、こうしたリスクを具体的に想定しておけば、変化が起きた際にも早急かつ適切な対応を取ることができます。その結果、突発的な環境変化に振り回されることなく、長期的に安定した事業運営を行うための土台を築くことができます。
PEST分析のやり方
PEST分析を実務で活用するには、目的を意識しながら情報を整理することが重要です。
ここでは、PEST分析の進め方を4つのステップに分けて解説します。手順を段階的に押さえることで、漏れの少ない分析ができるようにしましょう。
4要素ごとの情報収集
PEST分析の第1ステップは、外部環境に関する情報を収集することです。分析を始める前に、「政治的要因」「経済的要因」「社会的要因」「技術的要因」の4つの要素ごとに、関連する情報を整理して集めていきます。
この段階では、できるだけ信頼性の高い情報を集めることが重要です。
政府が公表している統計データや学術論文、シンクタンクの情報などを参考にすることで、客観性のあるデータを基に分析を進められます。
情報を要素ごとに分けて収集しておくことで、その後の整理や分析がしやすくなり、PEST分析全体の精度を高めることにつながります。
「事実」と「解釈」に分類
4要素ごとの情報収集が完了したら、次に行うのが、集めた情報を「事実」と「解釈」に分けて整理する工程です。
例えば、統計データや公表されている数値、制度の変更といった情報は「事実」に該当します。一方で、事実を元に将来を予測する主観的な意見は「解釈」に分類されます。
ここでは客観的なデータや出来事そのものと、それに対する自社の見方や評価を切り分けて考えます。この工程を行うことで、事実と解釈が混同されたまま戦略を検討してしまうリスクを防ぎ、根拠に基づく判断が可能になります。
「機会」と「リスク」の特定
次は、前段階で「事実」に分類された情報を、「機会」と「リスク」のどちらに該当するのかを特定していきます。
重要なのは、同じ「事実」であっても、すべての企業にとって同じ意味を持つとは限らない点です。企業の事業内容や立場によっては、ある変化が成長のチャンスになる場合もあれば、注意すべきリスクになる場合もあります。
なお、一見するとリスクに見える変化が、新たな事業のきっかけになることもあります。複数の視点から影響を検討することが、より効果的なPEST分析につながります。
分析結果に基づいた戦略立案
最終ステップでは、これまで検証してきた分析結果を基に、具体的な戦略を検討していきます。PEST分析は、外部環境を理解するための手段であり、分析そのものが目的ではありません。
特定したリスクにどのように備えるのか、機会をどのように生かしていくのかを検討します。その内容を、事業方針や施策として具体化することが重要です。
分析結果を実行可能な戦略へと落とし込むことで、はじめてPEST分析は実務に生かせるものとなります。各ステップを適切に進めて、環境変化を踏まえた持続的な事業運営を目指しましょう。
PEST分析を効果的に活用するためのポイント
PEST分析の効果を高めるためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
ここでは、分析の精度を高め、実務に結びつけるために意識すべき考え方や活用のコツについて解説します。
他の分析手法の併用
PEST分析は、マクロ環境を整理するのに適した手法ですが、企業を取り巻くすべての事象を網羅するものではありません。企業の成績や競合相手との比較など、内部状況は分析対象外です。
そのため、PEST分析だけで戦略を完結させるのではなく、他の分析手法と併用することが推奨されます。
PEST分析と併用される代表的な分析手法として、「3C分析」や「SWOT分析」が挙げられます。PEST分析を起点として他の分析手法を組み合わせることで、環境変化を踏まえた実行性の高い戦略を検討しやすくなります。
定期的な見直しの重要性
PEST分析は、一度実行して終わりではなく、定期的に見直すことが重要です。
マクロ環境の変化に伴い、当初想定していた戦略が実情に合わなくなる場合があるためです。
見直しの頻度としては、半年から1年ごとの実施が適切とされています。法改正や経済情勢の大きな変化など、事業に影響を及ぼす出来事が発生した場合には、その都度あらためて分析を行いましょう。
技術革新の影響を受けやすい事業や、変化の激しい市場で事業を展開している企業においては、より頻度を高めて見直しを行うことが望まれます。
定期的にPEST分析を最新の状態に更新することは、企業の持続的な成長や競争力の維持・強化に欠かせません。
タレントマネジメントでHR領域の変化へ対応
近年では、AIの普及や働き方改革などにより、従業員に求められるスキルや人材像が今まで以上に急速に変化しています。
こうした変化に対応していくためには、PEST分析を通じて外部環境の現状や今後の動きを把握することが欠かせません。HR(Human Resource)領域では、人材に関する情報を横断的に管理し、状況に応じて継続的に見直せる仕組みを整えることも重要です。
そこで有用なのがタレントマネジメントです。タレントマネジメントは、従業員のスキルや経験、育成状況などの情報を一元的に管理し、人材施策に生かしていく手法です。
タレントマネジメントの活用で、属人的な判断に頼らない、データに基づいた人材活用が可能になります。
PEST分析で把握した情報をタレントマネジメントと組み合わせることで、市場の動きを踏まえた人材育成や配置、採用の判断がしやすくなります。環境変化に即した人事戦略を検討していくための有効な手法といえるでしょう。
関連記事:【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法
PEST分析の企業事例
ここからは、PEST分析を実際に活用している企業の事例を紹介します。
今回は、株式会社ユニクロ、トヨタ自動車株式会社、伊藤忠商事株式会社の3社を取り上げます。
それぞれの事例から、PEST分析がどのように企業戦略へ生かされているのか確認していきましょう。
株式会社ユニクロ
株式会社ユニクロは日本を代表するアパレルブランドとして、国内外で事業を展開しています。PEST分析を活用した事例として、新型コロナウイルス感染症の拡大後の戦略が挙げられます。
コロナ禍ではリモートワークが急速に普及し、フォーマルウェアの需要が落ち込みました。こうした生活様式の変化を社会的要因として捉え、商品展開を柔軟に見直しました。自宅での就業に適したアイテムを強化したことで、新たな売れ筋商品の創出につながりました。
また、ユニクロは国ごとに異なる気候や消費者ニーズを把握するため、各国単位でPEST分析を行っています。地域に合った商品展開や販売戦略を行うことで、各市場での売り上げ拡大につなげています。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は大手自動車メーカーとして、PEST分析を活用した事業戦略を行っている企業です。自動車産業は、法的規制や技術革新などの影響を受けやすい業界といえます。そのため、PEST分析によって社会全体の大きな流れを捉えることが特に重要とされています。
トヨタ自動車株式会社は、世界的に脱炭素に向けた動きが進む中、ハイブリッド車をはじめとした環境対応車の開発を進めてきました。こうした取り組みは、環境規制という外部環境の変化を踏まえた戦略の一例といえます。
このように外部環境の変化を早期に捉えることで、トヨタ自動車は競争力を維持しています。
伊藤忠商事株式会社
伊藤忠商事株式会社は、自社のPEST分析を投資家向けに公開し、政治・経済・社会・技術といったマクロ環境の変化を、経営や事業戦略にどう結びつけるかという視点で整理して紹介しています。
大手総合商社らしく多角的な視点で分析していることが特徴です。例えば、温室効果ガス排出規制などの「税制・規制の変化」を、単なるコスト増や制約といったリスクとして捉えるのではなく、中長期的な事業機会の兆しとして分析しています。
具体的には、環境規制の強化を背景に、風力・太陽光といった再生可能エネルギー市場の拡大を見据え、新たな投資や事業展開の可能性を検討しています。このように伊藤忠商事は、外部環境の変化を「避けるべきリスク」と「生かすべき機会」の両面から構造的に捉え、柔軟な事業判断につなげています。
PEST分析を単なる現状整理に終わらせず、意思決定や戦略に落とし込んでいる点が、同社の分析の大きな特徴といえるでしょう。
他の分析手法との違いや組み合わせ
企業ではPEST分析以外にもいくつかの分析手法が活用されています。それぞれの分析手法には役割や得意分野があり、目的に応じて使い分けることが重要です。
ここでは、PEST分析が他の分析手法とどのように異なるのかを整理します。あわせて、分析手法の組み合わせによって得られる効果についても解説します。
SWOT分析
SWOT(Strengths, Weaknesses, Opportunities, Threats)分析は、「強み」「弱み」「機会」「脅威」の4要素からなるフレームワークです。
自社の強みをどのように生かすか、弱みをどう補うかなどを整理・分析するのに役立ちます。
PEST分析が外部環境の分析に特化しているのに対し、SWOT分析では「強み・弱み」といった内部要因もあわせて扱う点が特徴です。そのため、自社の立ち位置をより具体的に把握することができます。
SWOT分析とPEST分析は、組み合わせて活用することで、より効果を発揮します。PEST分析によって整理された「機会」や「脅威」を、SWOT分析に取り入れることで、現実的で高精度な戦略を検討しやすくなります。
ロジックツリー分析
ロジックツリー分析は、課題を細かく分解し、原因や解決策を整理するための手法です。
ひとつの大きな課題を幹に見立て、そこから枝分かれするように要因や選択肢を広げていくのが特徴です。
ロジックツリー分析は考えを構造的に整理し、検討を深めていくための思考法といえます。そのため、ロジックツリー分析単体では、どの視点から分解するかが曖昧になることもあります。
分解していく際の視点としてPEST分析を組み合わせることで、外部環境の変化を切り口に考えを整理しやすくなります。
政治・経済・社会・技術といった観点から順序立てて検討すれば、情報収集の方向性が明確になり、アイデア出しも効率的に進められるでしょう。
PPM分析
PPM(Product Portfolio Management)分析は、企業が保有する資源の配分の最適化をはかる分析手法です。
分析には、市場成長率と市場占有率という2つの軸を用います。製品や事業を「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つのカテゴリーに分類します。
複数の事業を持っている企業が現在持っている資源をどのように分配するか決めるときの判断に役立ちます。
PPM分析は過去のデータを基に評価を行うため、将来の環境変化を十分に反映できないという側面があります。PEST分析と組み合わせることで、外部環境の変化を踏まえたうえで事業の位置づけを見直すことができ、より中長期的な視点での判断が可能になります。
関連記事:PPM分析とは?やり方や4つの分類、事例から学ぶ戦略立案の方法を徹底解説
まとめ
PEST分析は、外部環境の変化を整理し、企業戦略の前提条件を把握するためのフレームワークです。
PEST分析を活用することで、戦略の方向性が明確になり、新規事業の機会発見やリスクへの備えにつながります。
一方で、PEST分析では自社の強みや内部状況など、カバーできない領域も存在します。そのため、目的に応じて他の分析手法と組み合わせることが重要です。
外部環境は常に変化するため、PEST分析は一度行って終わりではなく、定期的に見直す必要があります。複数の分析手法を活用しながら、変化を継続的に捉えていくことで、より柔軟で現実的な戦略判断につなげることができるでしょう。
HRMOSタレントマネジメントで環境変化に強い人材基盤をつくる
外部環境の変化が激しい現代において、HR領域では根拠に基づいた人事判断が求められます。PEST分析によって環境変化を整理できても、それを人材施策に落とし込めなければ十分にその効果を生かすことはできません。
HRMOSタレントマネジメントを活用すれば、従業員のスキルや経験、育成状況などの人材データを一元的に把握できます。PEST分析で得られた結果を基に、人材育成や配置、採用といった施策の検討に役立ちます。
外部環境の分析を、実行性のある人事施策につなげるためにも、HRMOSタレントマネジメントの活用を検討してみてはいかがでしょうか。



