リファラル採用人材は、入社後活躍しているか?入社後データから分析してみる

リファラル採用とは、従業員からの紹介を入口とする採用手法のこと。

本記事では、私たちVisionalが入社後に取得した人事データを、リファラル採用経由で入社した人とリファラル採用以外の経路で入社した人で比較し、わかったことを紹介します。 

リファラル採用のメリット・デメリットや成果を出すためのポイントはこちらの記事を一読ください。
リファラル採用とは?メリット・デメリットと成果を出すためのポイントを紹介

1.「人材の活躍」とは?

リファラル採用で入社した人は活躍しやすい、といったイメージを持っている方は多いのではないでしょうか。しかしこれは、「活躍」をどのように定義するかで変わってきます。

まずは具体的なデータを見る前に、活躍の定義について考えてみましょう。

まず、従業員の活躍をどのようにはかり、定義するか。私たちVisionalでは、「ELTV」が大きくなればなるほど活躍していると定義しています。

ELTV(従業員生涯価値)とは
ELTV(従業員生涯価値)とは

ELTVとは、Employee Life Time Valueの略で、従業員生涯価値のこと。

入社からオンボーディング→成長→退職検討→退職(転職など)の流れの中でどれだけアウトプットを出したかの総計を表しています(縦軸がアウトプット、横軸は在職期間)。上記図の面積がELTVです。

本記事では、この面積が大きくなるほど活躍していることと定義します。

では、この面積(ELTV)が大きくなるということは、具体的に何が起こるのでしょうか。1つは在籍期間が延びること、もう1つはアウトプットが早く高まることです。

リファラル採用では、企業のことをよく知っている状態で入社するため、ミスマッチが起こりにくく、エンゲージメントが高い状態になりそうです。また、企業に対する理解も早く、早期から高いパフォーマンスを挙げてくれることも考えられるでしょう。

2.Visionalのリファラル採用からわかったこと

この章では、実際にVisionalが自社データを分析し、リファラル採用に関してわかったことをご紹介します。

わかったことは、大きく2つでした。リファラル入社の人は早期退職が少ないこと。そして入社者と紹介者のエンゲージメントには相関があったということです。

2-1.リファラル採用は、早期退職が少ない

Visonalにおいては、リファラル採用とその他通常採用の従業員では、入社後早期退職(入社後半年以内の退職)の人数に大きく差が出ました。

リファラル採用で入社した人は半年以内の退職が少なく、「なじめなかった」「期待していた企業と違った」というミスマッチが起こりにくいと言えそうです。長く在籍しているということは、図の横軸が長くなるということなので、ELTVが大きくなる、つまり活躍しやすいということができます。

リファラル採用は早期退職が少ないため活躍する期間が長くなる
リファラル採用は早期退職が少ないため活躍する期間が長くなる

2-2.入社者と紹介者のエンゲージメントには相関がある

もうひとつの大きな特徴として、入社後のパルスサーベイの結果に、リファラル採用において紹介した従業員のパルスサーベイの結果との相関がみられました。

※パルスサーベイとは:企業が従業員の満足度や心身の状態を知るため、定期的に行う調査のこと。

Visionalでは定期的にパルスサーベイを行っており、従業員のエンゲージメントを数値化する試みを行っています。その結果を見ると、リファラル採用における紹介者がパルスサーベイにおいて高いスコアを出していた場合、紹介された入社者も入社後のパルスサーベイで高いスコアを出すことがわかっています。つまり、やりがいを強く感じながら働いている人から紹介された人もまた、やりがいを持って働きやすいことが考えられるのです。

やりがいを持ってはたらく人は、会社の魅力を積極的に伝えてくれ、入社者のことを社内で紹介したり社内での人脈づくりに寄与したりしてくれます。結果的に、その言葉に感化されたり社内で人脈をつくれたりした人は、やりたいことがモチベーション高くできる状態になりやすい。すると早期退職しにくく、早くから成果を出しやすい、ということへつながるのだと言えるのではないでしょうか。

上記2点は、リファラル採用で入社した人とそれ以外の経路で入社した人とで大きく差が見られた点でした。

ただし、両者の差は入社後3ヶ月を境に差が小さくなっていく傾向も見られました。つまり、リファラル採用は入社者の早期立ち上げに寄与すると言える一方、エンゲージメント維持のための努力は欠かせないということです。一方、他の経路による採用においても、オンボーディング期間の取り組みを工夫することでエンゲージメントやパフォーマンスの差は縮まり得るとも言えます。もちろん企業により違いはありそうですが、ここは覚えておきたいポイントです。

Visionalのリファラル採用を検証した結果についてより詳細に知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

3.活躍のカギはミスマッチ低減とオンボーディング

ELTV(従業員生涯価値)を最大化するには
ELTV(従業員生涯価値)を最大化するには

3-1.リファラル採用と入社後の活躍には相関がある

ここで、もう一度ELTVの図を見てみましょう。ELTVの最大化を活躍と定義するならば、リファラル採用は入社後に活躍する人材を採用しやすいと言えそうです。

その要因は大きく2点あります。1点目は、ELTVの横幅を長くすることと関連する動きです(下記図ポイント1)。リファラル採用では入社前に、より詳しく企業や業務内容のことを知っているため、オンボーディング期間を短くすることができ、かつ早期退職が少なくなる傾向にあります。早くからアウトプットを出し、在籍期間が比較的長くなる傾向にあります。加えて、エンゲージメントの高い社員からの紹介であれば、入社者のエンゲージメントが高くなり、それは在籍期間を長くすることにつながると考えられそうです。

もう1点はELTVの高さと関係します(下記図ポイント2)。リファラル採用では企業や仕事について比較的理解を深めた状態で入社となることが多く、より早い段階で高いアウトプットを発揮することにつながりやすいと言えます。

ELTV(従業員生涯価値)を最大化するためのポイント
ELTV(従業員生涯価値)を最大化するためのポイント

3-2.リファラル採用に限らずELTVの最大化は可能

ただし、上記はリファラル採用でなければ実現不可能であると一概に言い切れません。重要なのは早くからアウトプットを高くする、早期離職を防止する、という2点。リファラル採用は知っている人からの紹介であるがゆえにそれらをクリアしやすいといえますが、ミスマッチの低減とオンボーディングに力を入れることによって、リファラル以外の採用でもこの点はケアすることができます。

採用活動において重要なのは、企業のことをよく知ってもらう(ギャップをなくす)ことと、オンボーディングに力を入れ、孤立したりすることなく組織に早く定着してもらうこと。そのために、人事がこの役割を十分に果たす必要があります。

つまり、リファラル採用はELTVを高めることに寄与すると言えますが、オンボーディング支援を適切に行うことでリファラル採用に限らず、ELTVを上げることは可能だということです。入社後のオンボーディング施策に力を入れ、多くの人に活躍してもらえる環境を目指していきましょう。 

4.データの蓄積と検証の双方に取り組む必要がある

3章でVisonalのデータを見ていただいたように、データを見ることで新たにわかることはたくさんあります。今回はVisonalにおける例でしたが、企業ごとにまた違った発見があるかもしれません。分析結果を見ながら、自社における「活躍」の定義を改めて考えてみることも必要であるといえるでしょう。

逆にいえば、これらの分析は従業員の採用ルートやその後の活躍、在籍期間について入社者と紹介者それぞれのデータをとっていなければ不可能です。活躍人材が採用できたのかどうか、リファラルが他の採用と比べてどうだったのか、検証そのものができないままとなってしまいます。データは一度とって終わりではなく、パルスサーベイなど継続的に収集できるデータについては、時系列でその変化を追えるとうにとも重要だと言えます。 

Visionalが指標としたデータの一例
・マネージャーからの評価(過去半年間の評価データ)
・入社年度、退職年度などの在籍期間データ
・定期的なパルスサーベイによるエンゲージメントデータ

本記事では、上記データをもとに入社経路とのクロス分析を実施しました。

5.まとめ

リファラル採用の本来の利点は、ELTVの最大化にあります。

パフォーマンスやエンゲージメントで早くから高い結果を見せやすく、ミスマッチが起きにくい(離職しにくい)から成果を出す期間が長い。ELTVを大きくするため、リファラル採用で入社した人材は活躍しやすいといえることがポイントでした。

ただし、紹介してくれる従業員が正しく会社のことを理解してくれないと、結局ミスマッチが起きる点も注意しておきたいところです。つまり、採用は外向きの広報だけでなく、社内広報も大事だと覚えておきましょう。

また、定着を重視した施策を行うことでリファラル採用とそれ以外の採用の差を埋めることも十分可能だと言うことがわかりました。どんなルートで入社した人も、何もせずに100%活躍してくれることはあり得ません。オンボーディング施策などに力を入れ、ELTVを高めてもらうことを意識してみてください。