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こんにちは。「HRMOS(ハーモス)タレントマネジメント」のHRMOS TREND編集部です。
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加速するビジネススピードへの対応や、多様な人材の活用に適したパフォーマンスマネジメントが注目されています。目標管理制度など従来の方法では限界を感じてパフォーマンスマネジメントを検討している企業担当者もいるのではないでしょうか。そこでこの記事ではパフォーマンスマネジメントの特徴、注目される背景、メリット、デメリット、効果を高める方法などを解説しています。
そもそもパフォーマンスマネジメントとは?
ここではパフォーマンスマネジメントの定義や考案者、目標管理制度(MBO)の違いについて解説します。
パフォーマンスマネジメントの定義
パフォーマンスマネジメント(Performance Management)とは、個人のパフォーマンスを伸ばすマネジメントと、成果を創出するマネジメントを組み合わせた手法です。単なる昇給や昇進のための評価から脱却し、従業員の能力や個性を引き出すことをサポートする考え方、仕組みが特徴です。パフォーマンスマネジメントはビジネススピードが速く、さまざまな人材が働いているグローバル企業を中心に採用されています。すでに人材マネジメント手法として評価が確立されており、多くの欧米の教育機関における人材マネジメント課程では、パフォーマンスマネジメントを学びます。
パフォーマンスマネジメントの考案者
パフォーマンスマネジメントは1970年代に、アメリカのコンサルタントのダニエルズが考案したとされています。この考え方はヨーロッパ最大級の人材開発協会「CIPD」に受け継がれ、単なる目標管理、人事評価だけでなく人材開発を含めた総合的な人材マネジメントとして提唱されるようになりました。また、アメリカのコスト・マネジメント・パフォーマンスの専門家ゲーリー・M.コーキンスは、マネジャーとメンバーが連携することで、メンバーが事業主のように活動できる職場環境を整えることだと定義しています。
パフォーマンスマネジメントと目標管理制度の違い
パフォーマンスマネジメントと目標管理制度の違いは、実施サイクルと、評価、フィードバックで重視するポイントの2つです。目標管理制度は「目標設定→業務→評価→フィードバック」という流れで実施される人材マネジメント手法です。大きな流れはパフォーマンスマネジメントと同じですが、一般的には半年か1年に1回程度のサイクルで実施します。つまり、従業員はある程度長い期間で目標を立てて業務に取り組み、その結果を評価され、上司や人事担当者などからフィードバックを受けるわけです。一方、パフォーマンスマネジメントは1週間から1カ月の短いサイクルで実施されます。このため目標は具体的に決まる場合が多く、上司や人事担当者からのアドバイスも直近の活動への実践的な内容になるのが特徴です。
また、フィードバックで重視するポイントも異なります。多くの企業が導入している目標管理制度は、昇進や昇給、異動などの参考データとして活用されるために、評価の中心は過去の実績、現時点でのスキルや業務に取り組む姿勢などです。一方、パフォーマンスマネジメントは個人の成長が重視されるために、過去がどうだったかではなく、今後どうするべきかを中心に評価、フィードバックされます。
パフォーマンスマネジメントの特徴
ここではパフォーマンスマネジメントの特徴であるリアルタイム性、個性尊重、未来志向の3点を解説します。これらはそのまま、パフォーマンスマネジメントを導入する目的にもなります。
リアルタイム性が高い
先にも述べたように、パフォーマンスマネジメントの実施サイクルは1週間から1カ月と短いものです。したがって、上司は部下の仕事のやり方や方向性について、その都度フィードバックをかけられます。また、会社や部署の戦略が短期間で変わった場合も、臨機応変に目標を設定し直してマネジメントできます。そして「鉄は熱いうちに打て」ではありませんが、直近の成果や行動に対するフィードバックを与えられるため、従業員の学習効果が高まる効果もあります。
個性を尊重する
パフォーマンスマネジメントでは、従業員ごとの個性や長所を重視するのが特徴です。名称のとおり、個人のパフォーマンスを高めることに重点が置かれ、どうしたら目標を達成できるようになるのか、上司と部下が対話しながら方法を考えます。この点は従業員を画一的な尺度でランク付けするようなマネジメント方法と対照的です。パフォーマンスマネジメントには、従業員ごとに違う強みを生かすことによって、結果として目標達成に近づくという個人起点の考え方があります。
未来志向である
パフォーマンスマネジメントでは、基本的に過去の振り返りはせずに、今後のことを考えます。もちろん過去の失敗を踏まえて上司が部下にアドバイスする場合はありますが、あくまで中心は今後の事柄です。例えば、「プレゼンの話が長かった」などと評価したり反省を促したりするのではなく、「次回のプレゼンでは動画を流して説明を短縮しよう」などと、これからの対策をアドバイスします。イメージ的には、パフォーマンスマネジメントの面談は反省会ではなく、作戦会議のような内容になります。
パフォーマンスマネジメントが注目されている背景
パフォーマンスマネジメントはグローバル企業を中心に採用され、多様な働き方を推進する会社にも導入が進んでいます。なぜパフォーマンスマネジメントが注目されているのか、3つの背景を解説します。
ビジネス環境の変化が早くなった
経済のグローバル化やIT技術の発達などによってビジネススピードが加速し、従来の目標管理制度では対応できないと考える企業が増えてきました。ビジネススピードが遅かったころは、半年から1年単位で成果を評価して、それから今後の目標を決めても問題ない企業がほとんどでした。しかし、現在のビジネススピードでは、当初立てた目標やアプローチが無意味になってしまうケースもあります。例えば、Web広告運用はリアルタイムで更新できるため、顧客の反応をみながら方針転換するようなことは日常茶飯事です。こうした場合にはパフォーマンスマネジメントによって、1週間から1カ月ぐらいのスパンで管理したほうが、機動力が上がり、柔軟に対応できます。
多様な人材を認める考え方が広まった
価値観が多様化し、画一的な人材マネジメントが時代遅れになってきたことも、パフォーマンスマネジメントが注目されている理由です。例えば、いろいろな国から従業員が集まる職場はめずらしくなくなりましたし、仕事よりもプライベートを優先する考え方が従来に比べて尊重されるようになってきました。日本では働き方改革関連法案が施行され、育児中や介護中の人、シニアの人、テレワークによって遠隔地で働く人など、多様な人材を活用しようとする動きが広まっています。こうした状況では、目的に合った人材を集めて働いてもらうよりも、それぞれの個性を生かして適材適所に人事配置したほうが、企業運営としても成果が上がりやすい状況です。また、時間をかけて研修を行って、目的に適した人材になるように努力してもらうよりも効率的です。個性を尊重するパフォーマンスマネジメントは、個人や集団間の多様性を認めるダイバーシティ・マネジメントと連携させやすい面があります。
従業員エンゲージメントを得られにくくなった
従業員エンゲージメントを獲得しにくくなったことから、従業員のモチベーションを高める一環として、パフォーマンスマネジメントを採用する企業もあります。従業員エンゲージメントとは従業員が会社に対して抱く貢献意欲のことで、業績にも大きな影響を与える要素です。従業員エンゲージメントが低くなった理由はいろいろありますが、先に述べた価値観の多様化はそのひとつです。また、日本では終身雇用制が崩壊して、転職や非正規雇用としての働き方があたりまえになったことも関係しているでしょう。
従業員エンゲージメントを高める方法のひとつは、「会社はあなたの個性を尊重します」「会社はあなたについて、よく知りたいと思っています」という姿勢を伝えて施策を実施し、信頼関係を構築することです。パフォーマンスマネジメントでは、業績や仕事のやり方を従業員側の立場で考えるため、従業員エンゲージメントが高まりやすい面があります。
パフォーマンスマネジメントを導入するメリット
パフォーマンスマネジメントを導入すると、個人のパフォーマンスにも組織にもよい影響をもたらします。特にビジネス環境の変化が激しい会社や、上司と部下の関係が弱くなっている会社、従業員の積極性に課題がある会社などは、パフォーマンスマネジメント導入のメリットが大きくなるでしょう。
スピーディーに変化に対応できる
パフォーマンスマネジメントは、ビジネス環境の変化にスピーディーに対応できるようになります。実際、半期や1年ごとの目標管理制度の運用では、外部要因や競合他社の動きに対応できないために、パフォーマンスマネジメントに移行した企業も多くあります。例えば、コロナ禍によって、対面接触の手段が失われたり、テレワーク導入によって部下の仕事が十分に管理できない状態になったりした会社も多いのではないでしょうか。パフォーマンスマネジメントではタイムリーなフィードバックが可能になるため、こうした急激な変化に合わせた軌道修正も可能です。
上司が部下の個性を理解できるようになる
パフォーマンスマネジメントは短いサイクルで面談やフィードバックを繰り返すため、必然的に、上司と部下のコミュニケーション機会も増えます。そして上司が部下の長所や短所、行動や思考のパターンなどを理解できるようになります。また部下のほうも上司のマネジメント能力や人柄などに信頼感を持てるようになるケースもあるでしょう。したがって、パフォーマンスマネジメントは縦の連携がいまひとつ弱いと考えている企業にも向く方法です。
従業員の主体性を引き出せる
パフォーマンスマネジメントでは上司が部下に対して目標を押し付けたり、取るべき方法を命令したりせずに、なるべく従業員の主体的な行動を促します。上司はリーダシップを発揮するというより、従業員に対して献身的な相談相手という位置づけで対応します。先に紹介したゲーリー・M. コーキンスが、パフォーマンスマネジメントの定義を、マネジャーとメンバーが連携してメンバーが事業主のように活動できる職場環境を整えること、としているのはこのためです。したがって、パフォーマンスマネジメントは従業員に主体的に仕事に携わってほしい、積極的に自分の意思でチャレンジしてほしい、などと考えている会社に適したマネジメント手法です。特に業務の均質化ではなく、従業員が互いによい刺激を与え合って、チームとしての生産性を高めていくような職場に向いています。
パフォーマンスマネジメントを導入するデメリット
パフォーマンスマネジメントを導入しますと、上司や人事担当者の負担が増す場合があります。また、パフォーマンスマネジメントが向かない人がいることも知っておきましょう。
上司や人事担当者などの負担が大きい
パフォーマンスマネジメントは面談やフィードバックの回数が多いため、双方の時間が取られます。特に多くの部下を抱える上司は負担が大きくなるでしょう。評価シートの記入や、誰がどこまで目標を達成できたか状況を確認したり、アドバイスの方法を検討したりと管理業務が大変になってしまいます。また、従業員の個性を尊重するにしても、一定の公平性や客観性も確保しなければなりません。例えば、特定の従業員に共感するあまり評価が甘くなるようなことがあれば、他の従業員の不満を招きますので、全体のマネジメントを調整する必要があります。
このように丁寧な従業員フォローは、上司や人事担当者の献身的な努力なしには成立しません。もしマネジメント側の負担が大きすぎる場合は、ITツールの導入も検討しましょう。パフォーマンスマネジメントツールと呼ばれるツールでは、評価シートの共有や、進捗状況の見える化、未提出者へのリマインドメールなど、管理負担を減らす機能が搭載されています。
個人が優先されて組織力が高まらない
個人の特性に注目するパフォーマンスマネジメントでは、個人の活動が優先されて組織力が高まらないリスクもはらんでいます。例えば、積極的な行動を評価しすぎてしまえば、独断的な行動に走る従業員が出てくるかもしれません。また、個人のパフォーマンス向上が組織の目標達成にリンクしていることが理解できていませんと、自分の成績やキャリアアップばかり考えてしまう人もいるでしょう。過度な個人主義にならないようにするためには、やはり共通のビジョンや価値観が必要です。これらは1人の上司が設定するには無理があるため、経営層や人事担当者などが各部署の責任者と話し合いながら決めていくとよいでしょう。
評価する・されることに苦手意識を持つ人が多い
人が人を評価する、されることに苦手意識を持っている人はたくさんいます。パフォーマンスマネジメントは面談、フィードバックの回数が多いため、余計に苦痛を感じる場合もあるでしょう。このためパフォーマンスマネジメントでは、上司と部下の間をとりもったり、上司の悩みを聞いたりする人事担当者の役割が大きくなります。特にパフォーマンスマネジメント導入直後は慣れない部分も多いため、パフォーマンスマネジメントの考え方や手法をよく知っている人事担当者の存在が、成果を大きく左右します。
パフォーマンスマネジメントを実施する手順
ここではパフォーマンスマネジメントを実施する手順を、3つのステップに分けて解説します。全体的な流れを知っておけば、具体的な計画を立てやすくなるでしょう。
従業員ごとの目標を設定するには、会社やチームの目標が決まっている必要があります。会社のチームの目標から離れて個人目標を掲げてしまえば、たとえ個人のパフォーマンスが上がっても、組織として成果が上がらない場合があるからです。ただし、個人の個性や自由を過度に制限してしまえば、パフォーマンスマネジメントのメリットが失われてしまいかねません。例えば、あまり具体的な目標を設定すれば、パフォーマンスマネジメントではなくノルマ達成の工程表のようになってしまいます。一般的には従業員すべてに求める行動規範や、ビジョンなどを決めておきます。できるなら、この時点で従業員を参加させ、モチベーションを持てる目標を設定するとよいでしょう。
パフォーマンスマネジメントは個人目標の設定からはじめます。先に決めた会社やチームの方針に沿って、個人の特性や状況に合わせて目標を設定しましょう。この際、上司と部下が話し合って目標を決めることが大切です。双方が納得した目標なら、部下はモチベーションが高まり、上司は部下をサポートしやすくなります。
組織によって違いますが、1週間から1カ月、長くて3カ月ぐらいで結果を評価して、フィードバックします。パフォーマンスマネジメントは未来志向のマネジメントですので、今後どうするかという観点で話し合いましょう。過去の結果を参照する場合も、改善策の根拠を示すために使い、あまり主観を交えず客観的なデータで説明します。フォードバックの内容は双方の納得が大切です。上司が一方的に内容を伝えるのではなく、部下の意見や希望も聞き取るように心がけます。そして、フィードバックが終わったら、会社やチームの目標が変わらない限り、ステップ2に戻ってパフォーマンスマネジメントのサイクルを回します。
パフォーマンスマネジメントの効果を高めるポイント
パフォーマンスマネジメントを成功させるポイントは、端的に言えば従業員のモチベーションと自主性を引き出せるかどうかです。そのためにはマネジメント層のスキルアップや職場環境の整備が必要です。
マネジメント層の研修を実施する
パフォーマンスマネジメントは、従業員の個性や主体性を尊重するボトムアップ型のマネジメントです。トップダウン型の人材マネジメントをしていた場合は、まずは経営者、マネジメント層の意識改革からはじめなければなりません。特に上下関係が厳しい職場は、パフォーマンスマネジメントの意義や、部下に取るべき行動や態度について知っておく必要があります。現場でのパフォーマンスマネジメントの基盤となるのは、上司のコミュニケーション能力であり、なかでも重要になるのがアクティブリスニングスキルと、コーチングスキルです。
アクティブリスニングは直訳すると積極的傾聴で、カウンセリング現場などで使われています。単に相手の意見を聞くのではなく、話者の感情を主体的に理解して、本質的な話に導く手がかりにします。コーチングとは自発的行動を引き出すコミュニケーションで、答えを与えるのではなく、自ら見つけ出す手がかりを与える質問や意見を述べることです。どちらも知識として学ばなければ実践できないため、専門機関や知見を持つ人事担当者などから研修を受けたほうがよいでしょう。
従業員の主体性を尊重する環境の整備
パフォーマンスマネジメントを成功させるポイントは、従業員が参加意識を持って取り組めるかどうかです。もし部下が上司に自分の意見を述べられないような雰囲気があるなら、そこから改善する必要があります。また、目標を達成できず、試行錯誤を繰り返すのを認めるスタンスも重要になるでしょう。成長には失敗がつきものですので、過度に結果を求めてしまいますと、パフォーマンスマネジメントはあまり機能しません。この意味では、パフォーマンスマネジメントのひとつずつのサイクルは短いですが、長期的な取り組みとして捉えることが大切です。
パフォーマンスマネジメントと親和性が高い手法
ここではパフォーマンスマネジメントと親和性が高い手法の一例として、1on1ミーティング、ノーレイティング、360度評価を紹介します。
1on1ミーティング
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う面談、対話です。パフォーマンスマネジメントの面談、フィードバックの際は、基本的に1on1ミーティングで実施します。パフォーマンスマネジメントでは従業員ごとの個性に踏み込んで信頼関係を築かなければならないため、集団ミーティングで済ますわけにはいきません。1on1ミーティングを効果的に活用すれば、上司と部下の関係が強まったり従業員エンゲージメントが高まったりして、パフォーマンスが向上します。ただし、上司側のスキルが低ければ、一方的な進捗確認ミーティングになってしまいがちな点に注意が必要です。また、運用がブラックボックス化しやすいため、経営層や人事担当者が上司に対してパフォーマンスマネジメントの状況を聞き取る仕組みも検討しましょう。
ノーレイティング
ノーレイティングとは、通常、年度末に実施する従業員のランク付けを行わない制度です。従業員の個性を伸ばしたい会社や、評価基準が画一的で従業員のモチベーションが上がらない会社などが導入しています。このノーレイティングをパフォーマンスマネジメントと組み合わせているケースがアメリカの大企業を中心に採用されています。また、日本でも大企業を中心にノーレイティングを取り入れる会社が増えてきました。ノーレイティングはパフォーマンスマネジメントと同様に、上司のマネジメント能力が成果に大きな影響を与えます。このため、導入は慎重に検討するべきです。
360度評価
360度評価とは、直属の上司だけでなく、従業員の同僚や部下などの意見を広く聞く人事評価手法のひとつです。パフォーマンスマネジメントでは1on1ミーティングがベースになるため、上司の主観的な判断がマネジメントの失敗につながりかねません。360度評価のデータがあれば、上司が自分の考えを修正する参考になりますし、自分が知らなかった部下の個性や長所などを知ることができます。ただし、主観的な意見が含まれている場合もありますので、上司が情報を取捨選択する作業も大切です。
まとめ
パフォーマンスマネジメントは個性を生かす人材マネジメント手法
パフォーマンスマネジメントは個性を尊重する未来志向型のマネジメント手法です。フィードバックするまでのサイクルも短いため、ビジネス環境の変化にも柔軟に対応できます。画一的な人材マネジメントに限界を感じており、個のパフォーマンスを高めて業績向上や組織力アップを目指す企業は、パフォーマンスマネジメントを導入するメリットが大きくなるでしょう。