HRBPとは?仕事内容や人事との違い、役割を解説

企業経営や事業成長をサポートするための役割として、注目されている「HRBP(HRビジネスパートナー)」。人事の戦略性が重要視されるなかで、HRBPの需要が高まっています。しかし、HRBPの必要性を感じ始めているものの、HRBPの役割や仕事内容、キャリアパスについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。そこで、この記事ではHRBPの意味や役割、仕事内容をはじめ、人事との違いや求められている背景について解説します。

HRBPとは

HRBPとは「Human Resource Business Partner」の略称で、その頭文字をとったものです。通称「HRビジネスパートナー」とも呼ばれ、経営者や事業部門の責任者などのビジネスパートナーとして、事業や組織の成長を促す役割を持ちます。いわゆる「戦略人事のプロ」です。

HRBPは人事機能の一つであり、経営戦略や戦略人事を実現させます。戦略人事とは、経営の目標および計画に深く関わりを持ち、経営者の視点で人事活動をすることをいいます。変化の激しい社会において、企業が成長するためには人事領域の戦略が必要です。このような事業成長のための戦略的な採用・育成・配置などを戦略人事といい、HRBPはこの戦略人事を実現させるための重要な役割を担っています。

HRBPが生まれた背景

HRBPは、デイビッド・ウルリッチの著書である『MBA の人材戦略』にて提唱された概念として知られています。ウルリッチは、戦略人事を以下の4つの役割に分けて定義しました。企業戦略および事業戦略と人事戦略を結び付けて実行する役割がHRBPとなります。

  • 戦略パートナー(HRBP)
  • 変革エージェント
  • 管理エキスパート
  • 従業員チャンピオン

ウルリッチは、HRはビジネスパートナーとして新たな価値を生み出す存在であり、職務活動を通して生み出した成果が重要であると主張しました。つまり、HRとしてやるべきことが決まっているのではなく、得たい成果から逆算してHRの職務を決めるという考え方が基本となります。

日本企業におけるHRBP

日本企業におけるHRBPは、諸外国よりもHR部門の権限が強い点が特徴的となっています。

「HRに対する意思決定権」について、フランス、ドイツ、イギリス、ロシア、日本、アメリカ、台湾の7ヵ国を比較すると、日本以外の6ヵ国では「ライン管理者がHR部門のサポートを受けて決定」「HR部門がライン管理者のサポートを受けて決定」という回答が多くなりました。これに対して日本は「HR部門が決定」との回答が多く、HR部門の権限が強い集権的意思決定が特徴であることがわかります。

出典:エッセイ【企業経営と人事】ウルリッチ『MBAの人材戦略』|日本労働研究雑誌 2023年4月号(No.753)

また、「経営戦略にHR部門が関わる時期」と「明文化されたHR戦略の存在」の2 つの調査結果を見ると、日本では経営戦略に「最初から」関わる割合が他国に比べて最も低く、HRの明文化された戦略は高いとはいえませんでした。これらの調査より、日本のHRは集権的意思決定構造を持つ一方で、戦略性があまり高くないという特色がわかりました。すなわち、日本のHRマネジメントは国際的に見ると強くない点が課題といえるでしょう。

HRBPを導入するメリット

HRBPを導入すると、企業側にさまざまなメリットがあります。具体的なメリットには、以下のようなものが挙げられます。まず「経営者や事業責任者の負担軽減」です。HRBPを導入することで、経営者や事業責任者などは頼れるパートナーを得られます。良き理解者として悩みを相談でき、精神的な負担を軽減できることが期待できます。また「組織の活性化」を見込めることもメリットです。経験年数によってポジションが確立される年功主義はいわゆる「守りの人事」であり、優秀な若手人材が不満を持ちやすくなる原因の一つです。

このような構造は結果的に組織の成長を阻害し、機会損失につながるおそれがあります。HRBPの導入によって「攻めの人事」へと変化するきっかけを得られます。優秀な若手人材が昇給しやすい仕組みを構築すれば、組織の活性化が見込めるでしょう。

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HRBPが必要とされている背景

HRBPはなぜ企業で求められるようになったのでしょうか。ここでは、HRBPが求められている背景について解説します。

時代の変化

HRBPが求められるようになった理由の一つが、社会環境の変化です。変化の激しい社会のなかでは、少しの対応の遅れが事業継続に大きな影響を与えることもあります。たとえば、現代は働き方の多様化にともない、テレワークが普及しつつあります。このようななか、時代の変化に追いつけずテレワークに取り組んでいない企業は、ビジネスシーンで遅れを取ってしまう可能性があるでしょう。人事は常に先を読み、社会環境の変化に早く対応できるようにすることが求められます。企業の課題を見つけ、早期解決を目指すためにもHRBPが必要とされています。

人材獲得競争の激化

デジタルトランスフォーメーションの進展によって、人材獲得競争が激化している現代。AIやビッグデータ解析など、どのような事業においてもデジタル人材は欠かせない存在となっています。人事はこのようなデジタルトランスフォーメーションにも対応し、事業運用において必要な人材をスピーディーに確保することが求められます。このような人材獲得競争に勝ち抜くためにも、HRBPの存在が強く求められているのです。

HRBPの4つの役割

HRBPには主に4つの役割があります。ここでは、その4つの役割について見ていきましょう。

1.戦略実現パートナー

HRBPは経営者の視点で経営目標を実現するため、人事戦略を考えて行動する役割があります。そのためには人事異動・配置換え・教育などの人事活動が必要です。従業員一人ひとりとしっかりと向き合い、個々への理解を深めて経営戦略を浸透させることが求められます。

2.管理エキスパート

HRBPは人事や労務などを管理するエキスパートとしての役割もあります。とはいえ、実際に採用活動を行うわけではありません。主に人事に関連する制度や施策を管理し、事業戦略達成に向けて生産性の高い運用をすることが求められます。実際の人事や労務の作業を行うのではなく、事業戦略のために必要な人材や組織のあり方を考えていきます。

3.従業員チャンピオン

HRBPは経営者の立場に近く、従業員と経営層との橋渡し役も果たします。企業規模が大きければ大きいほど、経営層は従業員と直接コミュニケーションを取ることが難しくなりがちです。現場にまで目が届かず、気軽に話せるような機会を設けることはなかなか困難でしょう。そこで、HRBPが従業員の意見を聞き、経営者に伝える役割を担います。反対に、経営層の考えを従業員に伝えることもできるでしょう。このように、HRBPが橋渡し役となることで従業員の不安を解消でき、経営戦略の実現に近付けられます。

4.組織改革

HRBPは組織改革のリードも担います。組織改革は時代の変化に適応するためにも欠かせないものです。経営者の代理として信頼関係を構築しつつ、現場の従業員と変革を進めていきます。

HRBPの仕事内容

HRBPは全社や事業の経営陣と協力して事業価値を高めるため、中長期的な人事戦略を描いたうえで業務を実行します。通常の人事や労務、採用ポジションのように実務メインで手を動かすのではなく、事業領域をまたがって全社目線で課題を抽出し、それらの解決施策を検討し進めることが多いでしょう。以下のような仕事内容に関わりながら、現場の人事課題を明確化して、経営陣と連携をしながら解決を行います。なお、HRBPの仕事内容は企業ごとに範囲が異なります。

<採用>

  • 採用計画立案
  • 採用広報、採用ブランディング
  • オンボーディングの企画、運用

<人事企画>

  • 人員計画立案
  • 人事評価、報酬制度など人事制度の設計、運用

<人材・組織開発>

  • 個人のキャリア開発支援
  • タレントマネジメント
  • 人材育成、教育研修の企画、運用
  • 部門全体の人員計画に基づく配属、異動の組成

タレントマネジメントシステムを活用する

HRBPは、ファクトに基づく課題抽出を行いながら各部門、組織のコンサルティングや変革を推進する役割を持ちます。属人的な勘に頼らず、ファクトデータを収集分析する場合、タレントマネジメントシステムの活用が不可欠です。HRBPの業務範囲は、採用や育成のみならず、人事配置(配属や異動)、評価、昇進、育成、キャリア開発など多岐にわたります。一人ひとりの社員データを正しくキャッチして課題抽出を行う際に、タレントマネジメントシステムが役立ちます。

<関連記事>【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法

HRBPと類似した仕事との違い

HRBPと意味を混同されやすいのが、人事・労務・CHROなどです。これらとHRBPにはどのような違いがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

HRBPと人事の違い

人事とは、組織における従業員をまとめるための仕組みや制度を整え、管理・維持する役割をいいます。効率的に運用管理することを重視し、採用活動や人材育成などを行います。一方、HRBPは経営目標や事業目標の達成を目的として、人材の育成・移動などの能動的な人事活動を行う仕事です。変化や競争の激しい経営環境において、業績を上げるための戦略を立案・実行することが主な役割といえるでしょう。

HRBPと労務管理の違い

労務は従業員が働きやすいよう職場の環境を整えることが主な仕事となります。勤務管理・給与管理・福利厚生などを通じ、従業員のモチベーションや生産性のアップが求められます。一方、HRBPは労務管理を行うことはあるものの、あくまでも目的は経営戦略や組織改革の実現であることが大きな違いといえるでしょう。

HRBPとCHROの違い

CHRO(最高人事責任者)は人事領域を管轄する経営幹部として、企業に対して経営責任を負う役割を持ちます。人事に関するマネジメント業務や人事・ビジネス両方の知識を生かし、経営の戦略立案や経営の意志決定などを行います。一方、HRBPは事業と人材の両方の領域を包括的に見据えて、経営層の方針に沿う施策を組織やチームに対して伝達・実施することが主な役割です。現場に近い立ち位置でチーム・組織の固有課題に取り組むことが求められます。

HRBPに必要なスキルや能力

HRBPにはどのようなスキルや能力が求められるのでしょうか。ここでは、HRBPに必要とされる代表的なスキルや能力について解説します。

経営視点

HRBPは経営者や事業責任者の理解者であり、ビジネスパートナーとなる必要があります。したがって、同等の議論をするための知識やビジネス感覚、経営視点が必要です。

リーダーシップ

ルーティンワークの処理能力が備わっていることは前提として、それだけではなく優秀な人材を見極めるための判断力が求められます。また、適正な育成をするためのスキルや周りを引っ張っていく頼れる存在として、リーダーシップも必要になるでしょう。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は幅広い職種で必要とされるものですが、HRBPにも必要なスキルの一つです。特にHRBPは高いコミュニケーション能力が求められます。なぜなら、事業戦略と連動した人事戦略を考えるうえでは、現場の情報収集が欠かせないためです。情報は待っていてもなかなか集まりません。積極的に自分から働きかけをして情報を集めることが重要になります。そのためには、社内に「HRBPになら困ったことを相談できる」という意識を浸透させる必要があるでしょう。信頼を勝ち取るためにも、従業員と円滑にコミュニケーションを取り、良好な関係を構築するスキルが求められます。

人事に関する知識や経験

HRBPとして活躍するには人事領域のプロフェッショナルとしての知識や経験が必要です。労務や法律といった単純な業務知識だけではなく、事業戦略に基づく採用活動、ビジネスにおける目標達成に必要となる人材育成への知見やノウハウなども必要です。

事業理解

HRBPは所属する業界や企業の事業領域をはじめ、その企業独自の文化に対する理解も求められます。ビジネスシーンは変化が目まぐるしく、常に情報がアップデートされます。最新の情報を集めつつ事業に対する理解や洞察を示し、経営者や現場の従業員の信頼を得る必要があるでしょう。

課題解決能力

HRBPは経営上の成果が求められることが従来の人事職との違いです。そのためには、課題解決能力が必要になります。社内外の課題を分析しつつ、従来は行われていなかった手法も参考にして、課題を解決する姿勢が求められます。

ファシリテーション能力</h3>

社内のコンサルタントやアドバイザーのような立ち位置を確立するため、現場へのヒアリングや調査をして信頼を得る必要があります。そのためには、論理的に会議を進めて議論を活発化させるファシリテーション能力が求められます。発言者の意見に耳を傾け、具体的な質問をして会議の場を調整し、最終的な合意形成を実現させることがファシリテーターの役割です。ファシリテーション能力を高めるためには、場数を踏んで慣れていくことが重要になるでしょう。

HRBPのキャリアパス

HRBPのキャリアパスはまだ確立されていませんが、HRBPならではの経験を活かしてさまざまなキャリアを描ける可能性があります。部門・組織の垣根を超えて経営課題を見極める力や、複数事業部を横断で推進するプロジェクトマネジメント力、タレントマネジメントシステムや人事関連システムを使いこなす専門スキルなどを養いつつ、次のようなキャリアパスが想定されるでしょう。

CHRO

CHROとは、経営層の一人として企業の人事部門を率いる役割を持ちます。ただの人事部社員ではなく、CxO(Chief x Officer)として経営戦略を実現するために人事業務に取り組む最高責任者です。HRBPも経営目線で戦略的に人事業務を推進する役割となりますが、HRBPが人事部門の一員であるのに対し、CHROは複数の人事部門を率いる上位の立場という点で異なります。

ただし、企業によってCHROや人事部長、HRBPの定義はまちまちなため、必ずしもCHROになることが絶対的なステップアップとは言い切れないことに注意しましょう。

本社の人事部長や関連会社の人事、海外人事

HRBPを経て本社所属の人事部長や関係会社などの人事、あるいはグローバル人事のポジションに異動するケースもあります。HRBPは事業部門の多くの社員と関わりを持てる立場となるため、さまざまな人とつながりを持ち、幅広いキャリアパスが想定されるのが魅力です。人事部長の役職につけば、より大きな権限を持って人事全般に関わることが可能です。

人事コンサルティング・外部の専門機関

事業会社のHRBP経験を活かして、人事を支援するコンサルティング会社などへキャリアチェンジすることも可能です。HRBPは人事実務よりも企画や戦略に関わることが多いため、シンクタンクや人事・経営コンサルティング会社、社労士や産業医などの士業法人、VCHR(VCに所属して投資先企業のHR支援を行う専門的な立場)など多様なステップアップ先が見込まれるでしょう。

HRBPを導入する方法と手順

企業における需要が高まりつつあるHRBP。HRBPを企業に導入するには、どうすれば良いのでしょうか。ここでは、HRBPを導入する方法や手順を4つのステップに分けて解説します。

人事戦略をまとめる

HRBPを導入する際は、まず今後の自社の人事戦略について考える必要があります。人事戦略を考える際は、自社にとってどのような組織や人材が必要なのかを洗い出します。また、人材を確保するための採用活動だけではなく、育成も含めて計画を立てることが重要です。今後の事業環境に合わせた組織・人材における検討事項を2~3年程度計画し、人事戦略としてまとめましょう。

戦略実行のための体制を考える

数年の人事戦略について考えが固まったら、その戦略を実行する体制を整えていきます。現在の人事部体制で問題はないか、HRBPを導入すべきか検討していきましょう。検討した結果、事業の成長や環境への対応のためにHRBPが必要だと判断した場合、設置を決定します。

トライアルの実行

HRBPを自社に導入することが決まったら、まず思いつきで運用するのではなく、トライアルを行うことがおすすめです。HRBPを設置する場合、人事はもちろん部門側もHRBPを良き相談相手として認識する必要があります。まずはHRBPが意欲的に部門の課題を聞き出し、対応することがおすすめです。小さなことからコツコツと対応して行くことで信頼関係が生まれ、より大きな問題解決へと発展させられます。

問題解決能力の向上

HRBPの運用がある程度安定したら、担当者との問題解決能力をアップさせていきます。問題解決能力を高めるためには、ロジカルシンキングをマスターしつつ、多くの解決手段をそろえることが重要です。解決手段の選択肢を増やすためには、人的資源管理の理論を理解したり、人材開発から労務管理にいたるまで幅広い人事知識を身につけたりする必要があります。

HRBPを導入する際のポイント

戦略人事を行うにあたり、重要な役割を持つHRBP。実際のところ、HRBPを企業に導入する際はどのような点に気を付ければ良いのでしょうか。導入の際のポイントについて見ていきましょう。

信頼関係を構築する

HRBPは各部門から情報を集め、小さな要望を叶えてコツコツと信頼関係を作っていくことが大切になります。信頼関係を築けないと、なかなか従業員の本音を引き出すことができません。信頼関係を構築できればHRBPと各部門が一体となり、目標達成に一歩近付くことができます。

ほかの部署との連携力を強化する

HRBPはほかの部署との連携も重要です。従来の人事で対応できなかった問題は、現場と離れた環境で仕事をしていたことが要因の一つといえます。このような状況だと、人事は実際の現場の雰囲気や従業員の本当の要望を把握することができないでしょう。HRBPがミッションを達成するためには、やはりほかの部署との連携力を強化することが重要になります。

部分的な導入からスタートする

HRBPの役割をすぐに果たせる人材はなかなかいないため、社内で育てるという意識が必要になります。HRBP導入にあたり、まずは優先する役割やテーマを決定し、解決に向けて取り組むようにすると良いでしょう。部分的な導入から始めることで、HRBPとしての役割や定義が明確になります。

経営者に意見できる人材を選ぶ

HRBPは経営者や人事の言いなりにならない人を選ぶことも重要です。HRBPは経営者視点で従業員に声をかけ、その情報を経営層に反映させる役割があります。しか、現場で働く従業員の代表となるべき立ち位置のHRBPが経営者や人事の言いなりになっては、企業を成長させることができないでしょう。HRBPは経営者にきちんと意見でき、経営層と従業員をつなぐ架け橋として、企業の成長を促せる人材が適任です。

いきなり労務メインの人事部に導入しない

HRBPには人事戦略の知識や経営視点などが求められます。もしも人事部が労務中心である場合は、いきなりHRBPを導入しないほうが無難です。人事機能の再定義、また必要に応じて人員補強などからスタートすると良いでしょう。

役割を明確にする

HRBPの業務は経営戦略や事業計画にコミットするものであり、内容が抽象的になることもあります。そのため、HRBPを導入するにあたり、経営層が具体的に何を求めるのか、どのような役割を期待するのか、あらかじめ設定しておくことがおすすめです。HRBPが担当すべき業務や関わる領域を前もって明確にしておくことで、方針や施策を決定しやすくなります。

事務作業を集約する

事務作業などは人事部内で特定のメンバーに集約することがおすすめです。これにより、HRBPは人材登用や育成といった、いわゆる「攻めの人事」というべきコア業務に注力できる環境を作れます。とはいえ、企業によっては業務が多く分業できないこともあるでしょう。このような場合、労務管理など手続き作業が多いルーティン業務をアウトソーシングに委託することも一案です。

HRBPを導入する企業事例

HRBPは日本では導入事例が少ない傾向です。しかし、なかにはHRBPを導入する企業もみられます。どのような企業で導入されているのか、事例をチェックしていきましょう。

カゴメ株式会社

日本の飲食メーカーとして広く知られている「カゴメ株式会社」では、従業員のライフワークバランスを向上させるため「生き方改革」を実施しています。ジョブ型をベースとした人事制度の改革として、会社に使いすぎていた時間を個人に戻し、人生をより充実したものにしてもらうという取り組みです。この改革を推進するため、現場経験が豊富でなおかつ優れた問題解決能力を持つHRBPを設置しました。カゴメ株式会社では、HRBPの役割を明確にしています。具体的には、人材開発委員会を設置し、人事部長と同格ラインにHRBPを置いているのです。HRBPは現場で働く社員の希望をヒアリングし、集めた意見は人材移動の検討材料にするなどの活用を行っています。

株式会社ディー・エヌ・エー

AIやインターネットなどの事業を手がける「株式会社ディー・エヌ・エー」では、チームで戦略人事を行うことに努めており、HRBPチームを運営しています。戦略人事は現場との信頼関係や経営への理解がポイントだとしており、HRBPには現場経験が必要という考えです。ただ、コンサルタントのような関わり方をしていると、経営への理解は示せても現場との関係構築が難しくなります。その一方で、事業部での経験が深く現場との信頼関係は構築できても、経営への理解には辿り着きにくくなるでしょう。したがって、両者の強みを身につけることが、戦略人事やHRBPには必要だとしています。HRBPは事業成功のために必要なものや、人材・組織のパフォーマンス向上のために必要な変化を考えています。

ラクスル株式会社

「ラクスル株式会社」では、各事業部にHRBPの役割を持つ人事メンバーを置いています。採用業務から販管費の管理など、幅広い役割を担うことが大きな特徴です。各事業部のHRBPが人事業務から人件費や販管費などの幅広い情報を把握することで、経営層が人材や予算の投資判断をするにあたって、HRBPに相談すれば済む関係性を実現させようとしています。

GEヘルスケア・ジャパン株式会社

医療機器メーカーの「GEヘルスケア・ジャパン株式会社」では、経営課題を解決して組織変革を行うことを目的の一つとしてHRBPを導入しました。HRBPは組織変革を先導するチェンジエージェントの役割を果たしています。また、従業員の意見を経営層に反映するための橋渡し役、いわゆる従業員チャンピオンとしての役割も見込んでいます。

ギャップジャパン株式会社

年代や性別を問わず幅広く愛されるアパレルブランド「ギャップジャパン株式会社」でも、HRBPが導入されています。人事の要求をただ叶えるだけのコンサルタントではなく、現場の意見や要望を人事側に共有し、従業員がより働きやすい環境を構築できるような働きを求めてHRBPを設置しました。そのため、HRBPは人事経験ではなく、現場経験の豊富な人材をピックアップしています。

合同会社DMM.com

インターネットを通じて動画配信などさまざまなコンテンツを提供する事業を展開する「合同会社DMM.com」では、人事部にビジネスパートナーグループを設けています。これにより、各事業部の特性を理解し、個別に必要なサポートを行っているのです。DMMでは収益化に成功している事業を継続しつつ、収益の柱となる次の事業を作り続けることに注力しています。HRBPはその実現のための人材戦略・採用戦略を考え、事業の持続的成長を支えることが一つの役割です。事業責任者の良きパートナーとして事業部の意志決定やマネジメントのサポートを行っています。事業部と今後の組織や事業をどうすべきか深く議論し、先を見据えた戦略づくりをしています。

株式会社メルカリ

CMなどでも目にする機会も多いフリマアプリのメルカリを企画・開発・運用する「株式会社メルカリ」。株式会社メルカリでは、JPHRBPというチームを設けています。HRBPを導入した大きな目的は、新入社員が増えつつあるなかで「採用に強いメルカリ」から「育成に強いメルカリ」へとコンセプトの転換を目指すことです。HRBPでは「人と組織に入り込み、ビジネス成功に向けて人材開発や人材戦略を立案する」ことを目標として掲げています。一例として、部下を管理するという立場から孤立しがちなマネージャー同士の課題を共有するための「Manager Peer Learning Session」を実施しました。

ほかにも、新入社員のオンボーディングを従来よりも手厚くするなど、HRBPが主体となってさまざまな取り組みをしています。また、HRBPのメンバーによってリモートワークを実現するうえで必要な機材をそろえた「ハイスペックルーム」を実現させました。HRBPは事業推進を行うリーダーのパートナーとして、人と組織の強化や最適化を実現させるための施策を実施しています。

HRBPの必要性や目的を明確にしよう

HRBPの導入企業は約2割程度といわれており、まだまだ知名度が低いと考えられます。そのため、これまでHRBPを導入してこなかった企業では、HRBPの必要性や役割を十分に理解できておらず失敗する場合もあるでしょう。ましてや「競合他社が導入しているから」という理由だけで真似をするのはおすすめできません。まずは自社にHRBPが必要な理由を整理して、導入目的を言語化する必要があるでしょう。

経営層や一部の社員がHRBPの必要性を感じていても、現場社員にその重要度を伝えるのは難しいものです。決して一方的に押し売りをせず、繰り返し説明を行ったり、スモールスタートで一部部門のみに導入したりするなど、工夫を凝らしながら慎重にHRBPの導入を進めることを推奨します。

まとめ

戦略人事に課題がある場合はHRBPの導入を検討してみましょう。

企業は年度の終わりなど、組織が今後どうすべきか在り方を見直すタイミングがあるものです。組織開発や戦略人事に課題があったり、新しい取り組みが必要になったりした場合は、HRBPの導入を検討することも一案です。HRBPは大企業に限らず、中小企業でも人事部の機能の一つとして導入されているケースがあります。人事や事業について深い理解を持つ人材を見つけ、HRBPを導入してみてはいかがでしょうか。

タレントマネジメントシステムはHRBPの活躍を推進

先々が予測しづらいVUCA時代に突入し、企業のグローバル化が求められるなかで人事戦略の必要性が高まっています。人と組織に対して戦略的に人事を実行するHRBPの力を最大化させるには、タレントマネジメントシステムの活用が不可欠です。

HRMOSタレントマネジメントは、HRBPのリソース不足を解消しつつ、高度なデータ収集と分析で人事戦略の策定をサポートします。また、リアルタイムで情報を一元管理できるため、スピーディーな意思決定にも役立ちます。

詳しい機能やサービス概要は、以下のページからご確認ください。

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