タレントマネジメントで押さえるべき2つのポイント

ビジネス環境のグロ ーバル化や労働人口の減少などを背景に、昨今注目されている「タレントマネジメント」。 本来であれば、人事戦略や経営戦略を実行するうえで絶大な効果を発揮するタレントマネジメントですが、現状は「実施したものの失敗した」「検討時間がなく、まだ手つかずの状態」など、導入に至らない企業が大半です。本記事では、実践企業の失敗談を取り上げながら、タレントマネジメントを導入し成果につなげるポイントをわかりやすく解説します。

タレントマネジメントが必要とされる背景

「タレントマネジメント」という考え方は、1990年代にアメリカで導入され始めました。日本では馴染みの少ない言葉ですが、最近では市場や労働環境の変化を背景に、注目が高まっています。タレントマネジメントが必要とされる背景について、2つの視点から見ていきましょう。

①市場の変化

1つ目は「市場の変化」です。今世の中はVUCA(Volatility 変動性・不安定さ、Uncertainty 不確実性・不確定さ、Complexity 複雑性、Ambiguity 曖昧性・不明確さの頭文字をとった用語)という言葉に象徴されるように、テクノロジーの急速な変化により事業の変化もスピーディーになり、正確な予測が困難な時代になっています。また、市場のグローバル化も進み競争が激しくなっています。そういったことを背景に、企業内では必要な人材を必要なポジションに適切に配置し、経営全体を効率化する必要が出てきました。その文脈から、従業員のスキルや経験を把握して管理する「タレントマネジメント」の考え方の必要性が高まりました。

②労働環境の変化(人口の変化・意識の変化)

2つ目は「労働環境の変化」です。労働力の流動化や人口減少により、人材採用が厳しくなっている昨今。今後も労働人口は減少傾向が続き、企業は限られた人材を最大限に活かしきることが求められるようになっています。また、価値観の多様化や労働意識の変化もタレントマネジメントが必要とされる大きな理由の一つです。労働生産性を高めるためにも、働き方への意識として「やりがい」などのような内的なモチベーションを維持・向上させる必要が出てきており、そのためには、個人の価値観やスキル、経験に注目し、その人の提供価値が最大化される適切な人材マネジメントが求められているのです。

タレントマネジメントの現状

今までの人事では、担当者の勘や経験、感覚に頼るなど属人化が強い傾向がありましたが、タレントマネジメントは個人に紐づくデータを活用して、その人の価値観やスキル、経験を最大限に活かす育成や配置を行うことを指します。しかし、実際には、タレントマネジメントの導入には多くの課題があり、失敗してしまったケースも少なくありません。タレントマネジメントの失敗例としては、下記のようなものがあります。

  • 社内に従業員に関するデータが散在していて、一元化の作業負荷が大きい
  • 目的が不明確で結果につながらない
  • 情報に不備や誤りが多く活用できない

タレントマネジメントの目的が不明確になってしまうとデータ収集だけが目的になり、成果につながりません。また、データに不備や誤りがある状態では十分に活用できず、タレントマネジメントに着手できず失敗に終わってしまうこともあります。

成功のために押さえるべきポイント

①目的の設定

タレントマネジメントを成功させるためには、「目的の設定」が重要なポイントです。タレントマネジメントの目的は、経営目標を達成するために、その経営戦略を実行に向けた組織をつくること。タレントマネジメントそのものは目的ではなく、あくまで経営目標を達成するための手段なのです。経営目標を達成するために、どこに課題があるのかを見極めながら適切に目的を設定することが重要になります。例えば、退職者が増えていることが課題であれば、給与や人間関係、社内環境などの原因を特定し離職率を下げることを目的に設定します。このように、現状の課題とタレントマネジメントの目的を明確にすることが大切です。

②データ収集と一元化

タレントマネジメントを成功させるべきポイント2つ目は「データ収集と一元化」です。従業員にまつわるさまざまなデータを正しく収集し、生きた、使える情報として整えることによってはじめて、その人にあった人材育成プログラムの開発や適材適所への配置といった、人事施策を起案・実行・改善することが可能になります。

また、根幹となる従業員データは、履歴管理をすることで、常に最新性を保つ必要があります。なぜなら、過去のデータをもとに人事施策を検討しても、現実とかけ離れたものになりかねないからです。導入後も随時(例えば半期に1度といったタイムスパンで)情報更新が必須となりますので、更新のオペレーションも事前に検討しておく必要があります。こういった課題に対して有効なのが、業務負担にならずに新鮮なデータを集約・一元化できるシステムの活用です。これまで複数のExcelやGoogleスプレッドシートなどで管理していたデータを一元化し、人事業務を効率化することが可能なので、ぜひご検討ください。

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まとめ

近年、日本でも注目が高まっている「タレントマネジメント」ですが、実際に導入するまでには多くの課題があります。目的が不明確であることや、データに不備や欠損があり十分に活用できず、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。タレントマネジメントを成功させるためには、その目的を明確にし、必要なデータを収集して一元化をしたうえで、データを最新に保つためのオペレーションを設計することが重要になります。