労働者名簿とは?作成の注意点やシステム化のメリットを解説

労働者名簿は、従業員を雇用しているすべての企業で作成・保存が義務付けられているものです。具体的にどのような内容で作成し、管理すればよいのかよく分からない担当者もいるのではないでしょうか。

この記事では労働者名簿の概要や必須の記載項目、保存方法や管理上の注意点などについて解説します。テンプレートやシステム化によるメリットも紹介するため、最後まで読んで効率的な人材管理に役立てていただければ幸いです。

労働者名簿とは

労働者名簿とは、氏名や住所、担当業務といった従業員の情報を記した名簿を指します。正式な呼称は「労働者名簿」ですが、会社によっては「従業員名簿」や「社員名簿」などと呼んでいるケースもあるでしょう。

ここでは、作成の義務がある企業や対象となる従業員、誰が作成を担当するのかなど、労働者名簿の概要について説明します。

法定三帳簿のひとつ

労働者名簿は、労働基準法によって設置が義務付けられている「法定三帳簿」のひとつです。法定三帳簿には以下の3つがあります。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 出勤簿

労働者名簿は、従業員の氏名や生年月日、住所などの事項を記載した帳簿で、労働基準法第107条で明確に作成・保存することが義務付けられています。賃金台帳は、従業員ごとに労働日数や時間、賃金の計算期間や方法といった法律で定められた事項を、給与支払いのたびに記載するよう定められている帳簿です。

また、労働基準法第108条で作成・保存するよう義務付けられています。出勤簿は従業員の出退勤や残業時間などを日々記載したもので、実は労働基準法には「出勤簿」の名称は出て来ないものの、労働基準法施行規則第54条の内容などから、一般に作成・保存が必要なものと考えられています。これらは、いずれも従業員の労働実態を把握するために必要な帳簿です。

労働基準監督署や年金事務所の調査が入った際に内容を確認されることが多く、作成自体していなかったり作成していても内容に不備があったりする場合は、是正勧告や30万円の罰則の対象となることがあります。必須項目を漏れなく押さえて作成し、必要なときにすみやかに提出できるよう日ごろからきちんと管理しておくことが大切です。


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労働者名簿の作成について

労働者名簿の作成は、労働基準法によって全ての企業に義務付けられています。この規定は、企業の規模や形態を問わず、従業員を1人でも雇用している場合に適用されます。個人事業主であっても例外ではありません。

労働者名簿には個人情報が含まれるため、通常は労務担当者が作成・管理を担当します。この名簿は単なる記録ではなく、労働基準監督署などの調査時に提示が求められる重要な文書です。そのため、常に最新の情報を反映し、適切に保管することが不可欠です。その作成と管理は企業の法的責任の一部であり、適切に対応することが求められます。労働者名簿の作成方法や決まりについて詳しく見ていきましょう。

  • 労働者名簿の対象者
  • 役員名簿
  • 労働者名簿の作成者
  • 書式・様式は自由

労働者名簿の対象者

対象者となるのは、原則として雇用している従業員全員です。つまり、正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトが該当します。ただし、日雇い労働者のような一時的な契約で雇用している労働者に関しては、労働者名簿の作成義務はありません。

また、派遣社員の場合は、労働者名簿の作成義務を負うのは派遣元企業です。派遣社員を派遣してもらって自社で働いてもらっていたとしても、労働者名簿を作成する必要はありません。

会社の命令に従って関連企業に異動する出向者の場合は、転籍か在籍かで対応が異なります。企業に籍を置いた状態で出向先企業で働く在籍出向の場合は、どちらの会社とも雇用契約が成立している状態です。そのため、出向先・出向元の両方の企業が労働者名簿の作成義務を負います。転籍出向の場合は、雇用契約を結ぶのは出向先企業です。労働者名簿も出向先企業が作成します。

役員名簿

役員名簿は、労働者名簿とは別に作成しましょう。役員は労働基準法上の労働者には該当しないため、労働者名簿への記載は不要です。しかし、役員も社会保険上では被保険者に該当します。そのため、社会保険事務所の調査が入ったときは、労働者名簿と一緒に役員名簿の提出を求められることがあります。

また、新たな役員の任命や変更があれば登記が義務づけられているため、その都度、役員名簿を更新する必要もあります。

役員には任期があるため、任期満了時に取締役会を開催し、再任決議などが必要です。任期を見落とさないためにも、役員名簿には就任年月日や役職名も記載しておくことをおすすめします。

労働者名簿の作成者

労働者名簿は、労務関係の担当者が作成を担当することが一般的です。しかし、企業によっては労務担当者がいないこともあるでしょう。そのような場合は、管理者などが作成することもあります。転居や結婚・離婚による改姓など、労働者名簿に記載されている情報に変更があった場合は、従業員本人からの申告が必要です。

日ごろから、個人情報に変更があったときはすみやかに会社に報告するよう従業員に伝えておくようにしましょう。なお、労働者名簿の内容はすべて個人情報のため、作成担当者以外が自由に閲覧できないように、厳重にセキュリティ対策を施すことが大切です。

書式・様式は自由

労働者名簿に記載すべき項目は、労働基準法第107条と労働基準法施行規則第53条において定められています。一方で、書式や様式に決まりはありません。厚生労働省のサイトでは、労働者名簿のテンプレートを配布しています。また、厚生労働省のサイト以外でも、インターネット上には労働者名簿のテンプレートを無料で配布しているサイトがいくつもあります。

労働者名簿を一から作るのであれば、厚生労働省やそのほかのサイトからテンプレートをダウンロードして活用するのも一つの方法です。もちろん、表計算ソフトを使って社内で作成したり、有料の社員管理ソフトを導入したりしても問題はありません。必須項目が記載できれば、形式は自由です。

労働者名簿が必要になる場面とは

労働者名簿は法的な要件を満たすだけでなく、効率的な労務管理にも活用できる貴重な資料となります。主に行政調査と日常の労務管理の2つの場面です。行政調査では提出を求められることがあり、労務管理面では、従業員の情報を管理することで評価基準などに役立ちます。

行政調査

行政機関は 違反の疑いのある企業やお店に対して行政調査を行うことがあります。たとえば「助成金を不正に受給していないか」や「社会保険料の納付漏れがないか」などです。こうした調査の際に、労働者名簿の提出を求められることがあります。特に、労働基準監督署の調査は、抜き打ちで実施されることもあるため、すぐに提出できるようにしておかなければなりません。

調査の際、労働者名簿の内容に不備があった場合には罰則が科されることもあるため、しっかり必須項目が管理できているか確認することが大切です。

労務管理

労働者名簿は、日常の労務管理においても活用することができます。たとえば、通勤手当の支給に間違いがないかを名簿に記載された住所で確認する場合などに役立つでしょう。また、従業員の資格保有状況などを把握することで、適切な人材配置や育成計画に活用することができます。

さらに、社会保険の扶養状況が変わったり、昇格などの履歴を記入したりする場合も個人別に管理が必要なため名簿に紐づけておくと便利です。


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労働者名簿の保存期間や保存方法

労働者名簿は、保存期間や保存方法についても決まりがあります。従業員が退職したからといってすぐに廃棄しないようにしましょう。

保存期間

労働基準法第109条では、労働者名簿の保管期間は5年と定められています。労働者名簿、賃金台帳をはじめ、雇入れ・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類は、5年間(当分の間は3年間)保存しなければなりません。なお、いずれの書類も必要事項が記載されていればどんな様式でも構いません。

また、履歴書や雇用契約書などの入社に関わる書類も5年の保管が義務付けられているため、合わせて保管しておかなければなりません。過去にさかのぼって調査が入ることもあるため、在籍している従業員と退職した社員を分けて保存しておくとよいでしょう。

作成・保存方法

従業員名簿の作成については紙でもデータでも問題ありません。表計算ソフトで作成したり、管理用ツールに入力して作成したりするのが一般的です。自社が管理しやすい方法で作成するとよいでしょう。パソコンに保存する場合は、データが壊れた際に見られなくなるといったトラブルが起きた時のために、バックアップをとることをおすすめします。

また、ファイルにパスワードを設定するなど、誰でも閲覧や書き換えができないようにする必要があります。保管についても同様で、施錠できるキャビネットに保管するなど、個人情報が漏れない対策が必要です。なお、行政調査で提出を求められた際は、すぐに出せるようにしておく必要があります。

更新のタイミング

従業員が異動したり転居したりするなど、労働者名簿に記載した情報には変更が生じます。労働者名簿の内容はいつ更新すればよいのか、年に1回など定期的に行えばよいのかと考えている担当者もいるのではないでしょうか。

労働者名簿の内容に変更が生じたときは、その都度情報を更新する必要があると労働基準法施行規則第53条に定められています。アルバイトやパートタイマーをたくさん雇い、短期間での出入りが多い企業などは、更新の頻度も高くなるため漏れがないよう注意しましょう。なお、労働者名簿を紙で作成している場合、変更する箇所に二重線を引いて訂正印を押し、新しい情報を書きこんで更新することが決められています。手間がかかりますが、手順に従って情報の更新を行いましょう。

労働者名簿の必須項目

労働者名簿は、労働基準法第107条〜第109条によって、以下の9つの項目の記載が義務付けられています。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 住所
  • 従事する業務
  • 履歴
  • 雇入れ年月日
  • 退職年月日と事由(解雇の場合はその理由)
  • 死亡年月日と原因

氏名・生年月日

性別、住所、氏名や生年月日、性別、住所は従業員から提出された書類などをもとに、そのまま記載します。氏名の読み方が難しい場合は、読み仮名を振っておくと管理しやすいでしょう。住所に関しては、従業員が単身赴任中などで住民票と実際の住居が異なるケースがあります。その場合、会社がスムーズに連絡を取れることが大切なため、住民票の住所ではなく従業員が実際に住んでいる所を記載しましょう。

従事する業務

「従事する業務」は、従業員が実際に従事している業務の内容が分かるように記載します。たとえば、バックオフィスの仕事に従事する場合、「事務」とだけ記してもどのような業務をどこまで担当しているか分からないでしょう。そのため、「経理事務」「営業事務」など、ある程度は業務内容が把握できる書き方をすることが必要です。

ただし、新卒者を採用した場合は、研修後に配属を決定するといったケースも多く、労働者名簿の作成時点では配属先が決まっていない場合もあるでしょう。その場合は、労働者名簿を作成して氏名や性別、住所といったほかの項目を埋めておき、「従事する業務」の欄だけ空けておくのがおすすめです。配属後、すみやかに入力することを忘れないようにしましょう。また、後から業務を書き加えた場合は、更新した日時を記しておくと後々確認の必要が生じた際などに役立ちます。

履歴

「履歴」の項目は、労働基準法ではどこまで記すべきか具体的に言及されていません。そのため、履歴の内容については会社ごとの判断によります。履歴というと、履歴書にある学歴や職歴をイメージしがちですが、労働者名簿の場合はこれらを書いても書かなくても法的な問題はありません。

一般には、新卒で採用した場合は最終学歴、中途採用の場合は、最終学歴から自社に入社するまでの職歴を記したうえで、自社内の異動や昇進が発生したときに記載することが多いでしょう。学歴を記す場合は最終学歴だけでよく、大卒であれば高校や中学校、小学校にまでさかのぼって書く必要はありません。

雇用年月日

「雇用年月日」は、採用を決定した日や内定を通知した日などではなく、実際に雇用を開始した日を記しましょう。また、試用期間を設けている場合は、試用期間の開始日を雇用年月日として記載します。この日から社会保険や賃金台帳の登録が始まるため、間違いのないよう正確に記載することが大切です。

退職年月日とその事由

従業員が退職した日を記します。退職理由は、従業員都合で退職した場合は特に書く必要はありません。会社都合で解雇した場合は、その理由を記載しましょう。退職年月日や理由は、退職者がハローワークで失業手当の給付申請を行う際に必要な情報です。ハローワークから問い合わせが入ることもあるので、退職日や退職理由については従業員と認識を合わせておく必要があります。会社都合で解雇しておきながら、従業員都合などと虚偽の理由を書かないようにしましょう。

死亡年月日と原因

在職中に従業員が亡くなった場合は、その年月日や原因を記します。労災にあたるか判断するのに重要な情報のため、亡くなった理由・原因についても記載することが必要です。

労働者名簿のテンプレート

労働者名簿の作成には、無料のテンプレートを利用するとよいでしょう。

厚生労働省が公開しているテンプレートがおすすめです。厚生労働省のウェブサイトから直接ダウンロードすることができます。

参考サイト:厚生労働省|主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)

民間企業が提供する無料テンプレートも多く存在します。Microsoft Corporationが提供する「Excel」や「Word」では、企業に合わせてカスタマイズしやすいのが特徴です。ただし、無料テンプレートには法定要件を満たしていないものや、セキュリティ面の不安もあるため、信頼できる提供元からダウンロードするようにしましょう。

近年では、タレントマネジメントシステムで管理している企業も増えています。このようなシステムの活用は従業員が直接情報を入力するため、更新漏れや転記ミスが発生しにくいことが大きなメリットです。

労働者名簿のテンプレートはこちらの記事でも紹介しています。

必須ではないがよくある項目

労基法で定められた必須項目を満たしていれば、それ以外の項目を独自に設けても問題はありません。労働者名簿によくある項目としては、「従業員の扶養家族・家族構成」や「電話番号・緊急連絡先」などが挙げられます。「顔写真」を貼っている企業もあります。

それ以外にも、労務管理などで必要と思われる情報があれば、項目を設けるとよいでしょう。厚生労働省が配布している様式を使う場合は、備考欄などがないため、履歴の欄などに記載します。なお、マイナンバーの記載欄は設けないようにしましょう。

扶養家族・家族構成

扶養家族や家族構成などは必須項目ではないものの、労働者名簿に記載している企業もあります。これは、転勤や出向する従業員を決める際に重要な情報となるためです。

電話番号・緊急連絡先

電場番号や緊急連絡先も、労働者名簿に記載しなくても法律上の問題はありませんが、緊急で連絡を取る必要があるときなどに備えて記載している企業が多いです。電話番号は、従業員の自宅の電話番号や本人の携帯番号でもよいでしょう。緊急連絡先は、両親や配偶者の連絡先を記載することが一般的です。

顔写真

労働者名簿に顔写真を貼り付けている企業も見られます。顔写真があれば、従業員本人と情報が一致しやすく、管理しやすいというメリットがあります。

社会保険や雇用保険の関連事項

労働者名簿には、健康保険や厚生年金保険の被保険者番号、雇用保険の被保険者番号なども記載しておくとよいでしょう。社会保険や雇用保険の関連事項は法的には必須ではありませんが、手続きや届出の際に番号が必要となるため、労働者名簿に記載しておくと迅速な対応が可能です。

学歴

労働者名簿に学歴を記載することも、法的な義務ではありません。しかし、記載しておくことで、従業員の経歴をより詳細に把握でき、人員配置の判断材料などに利用できるため、記載するのが一般的です。具体的には以下の情報を明記しておくとよいでしょう。

また、中途採用者の場合は、前職の経歴も記載しておくことをおすすめします。

  • 学校名
  • 学部および学科名
  • 卒業年月

免許・資格

労働者名簿には免許・資格の情報も記載しておきましょう。どのような免許や資格を持っているかを記載しておくことで、その従業員が業務に必要な専門知識や技能を持っていることを把握しやすくなります。記載する際は、資格・免許の正式名称や取得年月日、有効期限(更新が必要な場合)を明記しておくとよいでしょう。

特に、更新が必要な資格の場合、更新時期が近づいたら従業員に通知して失効しないように促すなどに役立ちます。

労働者名簿の書き方の例

労働者名簿の書き方には、特に決まりはありません。実際に労働者名簿の作成方法を見ていきましょう。

労働者名簿
雇入れ年月日2010年4月1日
氏名山田太郎
生年月日1985年5月5日
性別男性
住所〒100-0001 東京都◯◯区◯◯1-1-1
従事する業務営業
履歴◯◯大学 経済学部 2008年3月卒業
扶養家族配偶者:有(山田 花子)
緊急連絡先山田 花子(妻)090-XXXX-XXXX
社会保険番号記号:12345678 番号:1
基礎年金番号記号:1234-567891
雇用保険番号番号:1234-567891-0
保有資格普通自動車第一種(2003年4月取得)日商簿記2級(2012年6月取得)TOEIC 800点(2015年9月取得)ファイナンシャルプランナー3級(2018年3月取得)
特記事項2016年4月1日:営業部チーフへ昇格
退職年月日と事由
死亡年月日と原因

このフォーマットでは、法令で決められている基本情報に加え、より詳細な情報を含めています。「特記事項」の欄を設けておくと、昇進やプロジェクトへの参加など社内での実績もメモ代わりに記入できるので便利です。

保有資格の欄では、業務に直接関連するもの以外も記載するとよいでしょう。そうすることで、従業員の潜在的な能力や興味分野を把握でき、部署異動などの検討材料となります。

労働者名簿管理の効率化とシステム活用のメリット

労働者名簿を効率的に管理するためには、システムの活用が欠かせません。従来の紙や表計算ソフトでの管理から、専用のシステムを導入することで、従業員情報の一元管理や更新が容易になります。たとえば、本部に問い合わせなくても複数の拠点からリアルタイムで情報を確認したり、更新したりすることが可能です。

タレントマネジメントシステムでは、労働者名簿機能が搭載されており、スキルやフィードバック履歴の管理もできます。このような機能は、労働者名簿管理の効率化だけでなく、人事戦略の立案や実現にも役立ちます。

管理負担の軽減

労働者名簿の管理にシステムを活用する最大のメリットは管理負担の軽減です。手動での更新作業や複数のファイルでの管理は、人事担当者にとって大きな負担になっていることがあります。システムを導入することでこれらの作業が効率化され、他の業務に注力することが可能です。

システムと労働者名簿を連動させることで、更新漏れや情報の転記ミスも防げます。さらに、セキュリティ面でも、紙や表計算ソフトと比べ、情報漏洩のリスクを抑えることが可能です。法定帳簿としての役割を持つ労働者名簿は、正確な情報の記載や厳重な管理が求められるため、システム導入のメリットは大きいでしょう。

データ活用による人材配置や育成への応用

労働者名簿のデータを戦略的に活用することで、より効果的な人材配置や育成が可能となります。たとえば、従業員のスキルや資格、過去の業績などの詳しい情報を分析し、新しいプロジェクトでの最適な人材を抜擢する際のデータとして活用するなどです。

従業員の経歴やフィードバックの履歴を追跡するなど、成長過程を可視化できるため、効果的な育成計画を立てることができます。このように、データを戦略的に活用することで、組織全体の生産性向上につながるでしょう。

タレントマネジメントシステムでできること

タレントマネジメントシステムは、人事情報の管理を効率化し、戦略的な人材活用を可能にします。

HRMOSタレントマネジメントはデータベース機能が充実しており、従業員のデータを一元化し、必要な情報に迅速にアクセスできるのが特徴です。たとえば、従業員の氏名や生年月日、履歴などの基本情報だけでなく、スキルや資格、過去の評価結果など、より詳細なデータを一元管理できます。これにより、人材配置や育成計画など、必要な人材戦略を策定することが可能です。

必要に応じてカスタム項目を設定できるため、より自社のニーズに合わせた人材情報の管理がしやすくなります。これらの機能を活用することで、労働者名簿管理ツールとしてだけでなく、人事戦略ツールとしても利用できるのが特徴です。

詳細な機能については、こちらの記事でも紹介しています

【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法

風営法における労働者名簿

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)が適用される企業では、労働者名簿の作成と店舗での保管が必要です。風営法の対象となる業種には以下のものがあります。

  • 深夜酒類提供飲食店営業
  • 接待飲食等営業
  • 遊技場営業
  • 性風俗関連特殊営業
  • 無店舗型性風俗特殊営業
  • 映像送信型性風俗特殊営業
  • 店舗型電話異性紹介営業
  • 無店舗型電話異性紹介営業
  • 特定遊興飲食店営業

これらの事業所では、従業員の住所を確認できる書類も一緒に保管しておく必要があります。外国人を雇用する際はパスポートや在留カード、永住者証明書のコピーも必要です。このように、風営法では働ける人に規制があるため、一般の職種よりも入念に確認する必要があります。身元を証明できるものを労働者名簿と一緒に保管しておけば、警察の立ち入り時に質問されてもすぐに対応できるでしょう。

参考資料:警視庁|保安課風俗営業係

労働者名簿を作成するにあたっての7つの注意点

労働者名簿の作成にあたっては、注意すべきポイントがあります。ここでは、特に重要な7つの注意点について見ていきましょう。

1.個人情報のため取り扱いに注意

労働者名簿には従業員の氏名や生年月日といったプライバシーに関わる情報が記載されており、個人情報保護法の対象になります。そのため、記載されている内容は、個人情報保護法のルールに基づき厳重に取り扱わなければなりません。たとえば、労働者名簿を作成するために個人情報を取得する際は、一方的に提出を求めるのではなく、該当従業員の同意を得る必要があります。また、取得した個人情報の使用範囲や目的についても十分に説明する必要があります。

2.マイナンバーは記載しない

「労働者名簿にマイナンバーも併記しておけば、必要なときにすぐに確認できて便利だ」と考える担当者もいるでしょう。しかし、マイナンバーは具体的な使用目的を伝え、収集する必要があるものです。労働者名簿はマイナンバーの用途外でも閲覧することがあります。そのため、マイナンバーを記載する場所として適切と言えません。従業員のマイナンバーは、面倒でも労働者名簿とは別に保管するようにしましょう。

3.事業拠点ごとに作成する

企業によっては、本社以外に数多くの支社や支店、工場などを運営しているところもあるでしょう。複数の拠点がある場合は、拠点ごとに労働者名簿を管理する必要があります。

本社でまとめて作成し、各事業場に配布する形をとっても問題はありませんが、管理は別です。各拠点の担当者には、労働者名簿の取り扱いには十分に注意するよう、繰り返し指導するようにしましょう。個人情報の漏洩が起こった場合、企業全体の問題になります。

4.電子データで作成する場合は出力環境を整えておく

労働者名簿は、従業員の情報に変更があった場合は都度対応する必要があり、5年間の保存期間も守らなければなりません。紙では更新の手間がかかり、保管するスペースも取るため、電子データで保存したほうが管理しやすいです。ただし、電子データで作成・管理する場合は、法律によって以下のように定められているため、注意が必要です。

  • 労働者名簿に必須事項が漏れなく記載され、各事業場で画面表示・印刷できる装置が備えられていること
  • 労働基準管理官の立ち入り調査で閲覧や提出が必要なときは、ただちに必要事項が明らかになり、写しを提出できる環境であること

つまり、労働者名簿を電子データで作成する場合は、すみやかに表示や印刷ができる環境を整えておく必要があります。労働基準監督署が調査に入ったときにプリントアウトするよう求められることもあるため、印刷機を準備して必要に応じてすぐに出力できるようにしておきましょう。なお、労働者名簿は事業場ごとに管理する必要があるので、表示・印刷できる機器も各事業所で用意しなければなりません。

5.労働基準監督署の調査が入ることがある

労働基準監督署やハローワーク、年金事務所などの調査が入ると、労働者名簿の原本提示や写しの提出を求められることが多いです。労働者名簿を作成していなかったり、空欄だらけで必要な項目が埋まっていなかったりすると、是正勧告を受けます。是正勧告後も改善が見られなければ、労働基準法に違反するとして30万円の罰金が科されるため、注意しましょう。

6.セキュリティ対策

労働者名簿には個人情報が含まれるため、セキュリティ対策が不可欠です。まず、労働者名簿を閲覧できる人を限定しましょう。たとえば、人事部門や管理職、各店舗の責任者など、業務上必要な人が該当します。電子データの場合は、パスワード保護やデータの暗号化など、適切なセキュリティ措置を講じることも必要です。

労働者名簿を保管する場所も重要となります。紙の場合は、施錠できるキャビネットに保管し、電子データの場合はセキュリティの高いサーバーやクラウドサービスを利用するとよいでしょう。

7.廃棄方法のルールを策定しておく

労働者名簿の廃棄方法についても、明確なルールを策定しておく必要があります。紙媒体の場合はシュレッダーでの裁断よりも、専門業者に依頼して溶解してもらうと確実です。労働者名簿は、個人情報かつ機密文書に該当するため、一般的な書類と一緒に廃棄するのは避けましょう。

そのため、電子データの場合は、データを削除するだけでは不十分です。専用のソフトウェアを使用して完全に消去することをおすすめします。また、廃棄の際は台帳を作成し、廃棄した記録を残しておきましょう。こうすることで、前回、何年まで廃棄したかを把握でき、誤って保存期間より早めに廃棄しないようにできます。

労働者名簿管理のシステム活用事例

労働者名簿の管理にHRMOSタレントマネジメントを導入し、実際に業務を効率化した企業の事例を3つ紹介します。

ギリア株式会社

ギリア株式会社は、AI技術を活用したシステムを開発する企業です。同社では、従業員管理システムの課題を解決するため、HRMOSタレントマネジメントを導入しています。以前は、情報を複数の「Google スプレッドシート」で管理し、過去の履歴を追うのが困難でした。

「Google スプレッドシート」では、履歴を残すために月ごとに個別にシートを保管して管理しており、過去の履歴を見るために毎回シートを確認していたのです。

しかし、システム導入後は一元管理が可能となり、過去の特定の日付時点での従業員の等級や所属を簡単に確認できるようになりました。この機能によって、人事異動や昇進のペースもすぐに把握できるようになり人事戦略に役立てています。

また、採用管理システムとの連携により、採用者情報の移行が自動化され、入力漏れや更新忘れのリスクが軽減されました。

<参考資料>

企業成長を促進するタレントマネジメント環境を整備し、新・人事評価制度を導入。さらなる事業躍進と組織拡大の実現へ|ギリア株式会社

弁護士法人 法律事務所オーセンス

弁護士法人 法律事務所オーセンスでも、労働者名簿管理にHRMOSタレントマネジメントを活用し、効率化を図っています。同事務所では、以前は「Excel」で従業員情報を管理していましたが、データの更新や検索に時間がかかるという課題を抱えていました。

システム導入後は、従業員自身が自分の情報を確認・更新できる機能により、人事部門の負担が軽減されています。また、従業員情報の一元管理が可能となり、必要な情報を人事部門を介さずにすぐに検索できるようになり、業務効率が向上しました。

特に、カスタム項目機能を活用し、タスクを一つずつクリアすることで漏れをなくしています。他のメンバーと進捗を共有できるため、作業の漏れが少なくなっています。

<参考資料>

「Excel」での管理から脱却。一つの入力画面を複数の部門メンバーと共有でき、情報の正確性、透明性が向上した|弁護士法人 法律事務所オーセンス

WILLER EXPRESS株式会社

WILLER EXPRESS株式会社は、高速バス事業を中心に展開する企業です。同社では、以前は紙や「Excel」で営業所ごとにバラバラに従業員情報を管理していました。そのため、人材配置を行う際も、営業所の責任者に聞かないと情報が把握できず、人材活用が進まなかったためHRMOSタレントマネジメントを導入しています。

導入により、従業員情報のフォームの統一化と一元管理が実現し、スキルが見える化されたことで全従業員の特性が把握できました。これにより、適材適所の人材配置や効果的な教育計画の立案が可能になっています。また、社員の健康状態も一元管理できるようカスタマイズすることで健康面の管理もできるようになりました。

<参考資料>

これまでは複数の営業所がおのおのの社員情報を紙で管理。検索が困難だった状態から、人材活用につなげるデータベースの整理を進めた|WILLER EXPRESS株式会社

労働者名簿に関するよくある質問

労働者名簿の作成に関して、よくある質問をまとめました。

従業員が結婚した場合

従業員が結婚して苗字が変わった場合は、すぐに労働者名簿を更新しましょう。ただし、結婚して苗字が変わっても、業務上の不都合を考えて旧姓のままで通すケースもあります。そのようなときは、労働者名簿の氏名欄を訂正したうえで、どこかに旧姓を使う旨を記載しておくなど、労務管理上の問題が起こらないよう工夫しましょう。

労働者名簿に空欄がある場合

労働基準法第107条と労働基準法施行規則第53条によって定められている記載項目がすべて埋まっていれば、それ以外の場所で空欄があっても問題はありません。

たとえば、扶養家族欄を設けている場合、独身の従業員であれば基本的に空欄になるでしょう。なお、記載する必要がある項目については、空白にしていると労働基準監督署から立ち入り調査があった際に是正勧告を受ける可能性があります。すべての項目が埋まるよう、従業員に情報の提供をお願いし了承を得るようにしましょう。なお、新卒者を採用し、研修期間が終わるまで配属先が分からず業務欄が書けないといった場合は、配属決定日などの加筆する予定の日時を記しておくといった対処をしておくとよいでしょう。

労働者名簿を紛失した場合どうするか

労働者名簿を紛失した場合、迅速に社内での対応策を講じる必要があります。以下のことを行いましょう。

  • 上司や人事部門に報告
  • 事実関係の調査
  • 原因の究明
  • 外部への情報漏洩があった場合の対応策を検討
  • 再発防止対策および実施

大事なのは隠ぺいしようとしないことです。

万が一、個人情報の流出が確認された場合には弁護士に相談し、判断を仰ぎ今後の対応について会社として協議する必要があります。 また、今後、同じことが起こらないために、管理方法を見直し、電子データの暗号化や取り扱いルールを見直さなければなりません。

労働者名簿を業務効率化につなげる

ある企業の事例をご紹介します。各店舗が個別に労働者名簿を管理していたことでトラブルとなり、システムの導入に踏み切った企業がありました。問題が顕在化したのは、ある従業員の退職時でした。後任を決める必要がありましたが、本部では他店舗の従業員の保有資格を正確に把握できていなかったのです。

各営業所に必ず有資格者が1名以上必要な業界のため、退職した有資格者の代わりを見つけることが急務となりました。本部が他店舗の責任者に有資格者の在籍状況を確認したところ、多くの営業所で労働者名簿に個人の資格を記入する欄がなく、資格保有者の管理ができていないことが判明。その結果、社員一人一人にヒアリングを行い有資格者を探す事態に陥りました。この経験を機に、この企業ではシステムを導入し、労働者名簿の一元管理に乗り出した結果、以下のような効果が得られました。

  1. 営業所での個別の労働者名簿管理が不要になった
  2. 店舗責任者は名簿管理の負担から解放され、本来の営業所運営に専念できた
  3. 全社的な人材情報の把握が容易になり、業務効率の大幅な向上した

このように、労働者名簿の一元管理は、単なる管理業務の効率化だけでなく、企業全体の業務効率向上につながる重要な取り組みとして高く評価されています。

まとめ

労働者名簿は、従業員を1人でも雇っている企業が作成・保存を義務付けられている帳簿です。労働基準法で必須項目が定められているため、必要な情報を漏れなく記すようにしましょう。変更があった場合、すみやかな対応が必要です。作成していなかったり、不備があったりすると、労働基準監督署の是正勧告や罰金の対象となるため、注意しましょう。

労働者名簿をタレントマネジメントシステムに組み込むことで、有効活用することができます。今回、導入事例で紹介したように、実際にシステムを活用して成果を上げている企業は多いです。

このように、労働者名簿は単なる台帳ではなく、人事戦略を実現するための重要なツールとなり得ます。適切に人事情報を管理し、戦略的に活用することで、企業の成長につながる可能性があります。

従業員情報の一元管理には

HRMOSタレントマネジメントは、紙や表計算ソフトによる管理から脱却し、従業員情報を効率的に一元管理することができます。カスタマイズ性が高いため、基本的な個人情報にの加えて必要な項目を好きに作成・追加することができます。そのため、戦略的な人材管理が可能です。

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