目次
経営戦略には、企業ごとの理念や慣習などが色濃く反映されます。しかし、時代に合ったものでなければ、経営に悪影響を及ぼしかねません。社会情勢や価値観の変化に伴い注目を集める「健康経営」は、まさに現代に即した経営戦略といえるでしょう。
本記事では健康経営の基礎的な知識から政府の取り組み、健康経営に取り組むメリット、効果的な施策例や企業の取り組み事例について解説します。
※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
健康経営とは
健康経営とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する取り組みです。企業として従業員の心身の健康状態の維持・改善、さらには増進を目指します。

引用:これからの健康経営について|2025年4月経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
健康経営は、経営戦略の一種であり、人事・採用や業績などにさまざまなメリットをもたらします。
また、変化の激しい時代を生き抜くうえで、企業にとって欠かせない戦略のひとつともいえるでしょう。
なぜ今、健康経営が注目されているのか
「健康経営」は、2006年にNPO法人健康経営研究会が提唱した概念です。
政府や自治体が健康経営を推進し、多くの企業に広がってきた背景について解説します。
労働力人口減少による人材確保の課題
日本では人口構造が大きく変化しています。総人口は2020年の1.26億人から2050年には1.02億人へと約20%減少し、生産年齢人口は同期間で30%以上減ることが見込まれています。
高齢化率は約40%に達し、要介護高齢者の増加も見込まれるなど、労働力不足は長期的に続くと予測されています。
一方で平均寿命は延びているため、健康な状態で働ける期間(健康寿命)をどう延ばすかが我が国の重要なテーマになっています。
採用難が続く中では、従業員の離職や休職は企業にとって大きな損失になりやすく、既存の人材が能力を発揮し続けられる環境づくりがこれまで以上に重要です。
こうした背景から、従業員の健康を経営課題として位置づけ、生産性や働き続けられる力を高める健康経営に注目が集まっています。

引用:これからの健康経営について|2025年4月経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課
メンタルヘルス問題の深刻化
経済や産業構造の変化により、働く人のストレスは年々高まっています。
実際、労働者の半数以上が仕事や職業生活に強い不安やストレスを感じているとされ、業務上の心理的負荷が原因となる精神疾患の労災請求件数も増え続けています。
メンタルヘルス不調は、本人の生産性低下にとどまらず、長期にわたり欠勤や休業につながることもあります。その結果、業務負荷の偏りやチーム全体のパフォーマンス低下など、組織への影響も避けられません。
こうした状況を踏まえ、企業におけるメンタルヘルス対策の重要性は高まっています。また、健康経営は身体の健康だけでなく心の健康も対象としており、両者は密接に結びついています。
実際、経済産業省の健康経営度調査でも「従業員の心と身体の健康づくり」に関する取り組みが評価項目として含まれています。
このように、従業員が心身ともに健康で働ける状態を維持することは、企業の持続的な成長に欠かせないテーマとなっているのです。
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テレワーク普及による新たな健康課題
テレワークのような新しい働き方が普及するにつれ、新たな健康課題も生じています。
例えば、テレワーク中に意思疎通がうまくいかず、コミュニケーション不足となるケースが散見されます。
また、在宅勤務では仕事と私生活の境界が曖昧になり、長時間労働につながりやすい点も課題です。育児中の従業員では、中断(中抜け)への対応など、企業側の労務管理にも難しさがあります。
さらに、テレワーク時の生産性が低下したと感じる人も一定数おり、運動不足や孤立感といった心身への影響を訴える声も見られます。テレワークのニーズは高いものの、制度やマネジメント面での課題が残る状況です。
こうした背景から、働く場所を問わず従業員の健康を守るために、健康経営の取り組みがますます重要になっています。
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健康経営のメリット:企業と従業員の双方にもたらす効果
従業員の健康維持・増進に向けた取り組みを、企業成長に不可欠な投資と捉えることで、多くのメリットが期待できます。
ここでは、企業と従業員それぞれの目線で、健康経営に取り組むメリットを解説します。
企業側のメリット
健康経営は一朝一夕で明確な成果が出る取り組みではないものの、中長期的に継続することで、生産性向上や外部から見た企業イメージアップにつながるなど、多数の利点があります。
まず、企業側の健康経営に取り組むメリットを解説します。
生産性向上
従業員の健康状態が安定していれば、業務パフォーマンスの低下を防ぎ、生産性や業務効率の向上につながります。
十分に休息が取れ、心身の状態が整っていることで、集中力や判断力が高まり、ミスの減少や品質向上にも寄与します。これは、教育やマネジメントだけではカバーしきれない個々の力の発揮を後押しする効果があります。
また、健康経営は欠勤や休職、離職の抑制にもつながります。心身の不調を抱えたまま働き続けることは難しく、たとえ意欲があっても健康が損なわれれば休職や退職に至るケースは少なくありません。
従業員が安心して働ける環境が整うことで、不調による離脱を防ぎやすくなり、結果として離職率・休職率の低下に寄与します。
さらに、健康に配慮された職場は「働き続けたい」と思える環境をつくり、エンゲージメントの向上にもつながります。
従業員が長期的に定着することで、人材育成の計画も立てやすくなり、組織全体のパフォーマンス向上にも好影響をもたらすでしょう。
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医療費の削減
従業員の健康状態が安定すれば、医療機関の受診頻度が下がり、結果として医療費の抑制につながります。
これは個人だけでなく、健康保険組合や企業の保険料負担の軽減にも直結するため、経営面でのメリットは大きいものです。
少子高齢化が進む日本では、社会保障費が今後も増え続けると見込まれ、企業が負担する保険料も上昇傾向にあります。
従業員の健康悪化による医療費増加は、企業にとって長期的なコスト増要因となり得ます。そのため、日常的な健康管理や予防施策を通じて医療費を抑えることは、経営リスクの低減にもつながります。
健康状態が安定していれば、欠勤・休職の抑制や離職防止にもつながり、採用・育成にかかる間接コストの削減効果も期待できます。健康経営は、医療費だけでなく、広い意味での経営コスト削減につながる取り組みといえるでしょう。
企業イメージの向上
健康経営に取り組むことは、従業員を大切にする企業であるという姿勢を社外へ伝える大きなアピールになります。
健康への投資は企業価値向上にもつながり、顧客や取引先からの信頼獲得、企業ブランドの強化といった効果が期待できます。
特に採用活動においては、健康経営の具体的な取り組みを示すことで、求職者に安心感や魅力を感じてもらいやすくなります。
労働力人口が減少する中で、応募者から選ばれる企業になるには、働きやすさや健康への配慮をいかに可視化できるかが重要です。
また、企業イメージの向上は社内にもよい影響をもたらします。「この企業で働き続けたい」という気持ちが高まり、エンゲージメントやモチベーションの向上につながれば、定着率にもよい影響を与えるでしょう。
このように、健康経営への取り組みは、企業ブランドの向上と採用力強化、さらに従業員の意欲向上という好循環を生み出す施策といえます。
投資家からの評価向上
近年は、従業員を「コスト」ではなく「価値を生み出す資本」と捉える人的資本経営が広がっています。企業が持続的に成長するためには、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できる環境づくりが欠かせず、その前提として健康の維持・増進は重要なテーマです。
同時に、投資家の間ではESG投資が一般化し、企業がどのように人材へ投資し、働く環境を整えているかが評価対象となっています。
実際、人的資本に関する開示の充実や、健康経営への取り組みは「人的資本への投資姿勢」としてポジティブに受け取られる場面が増えています。
従業員の健康を重視した経営は、人的資本の価値を高めるだけでなく、ESGの(Social)社会領域の評価向上にも寄与します。その結果として、投資家からの信頼や長期的な企業価値向上にもつながります。
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従業員側のメリット
健康経営は企業の生産性向上やコスト削減に寄与する取り組みですが、その恩恵を最も直接的に受けるのは、従業員です。
ここでは、従業員の視点から見た具体的なメリットを紹介します。
ワークエンゲージメントの向上
健康経営は、従業員の「働きやすさ」と「働きがい」を同時に高めます。
経済産業省の資料でも、身体的・精神的な不調の予防や、職場のコミュニケーション環境の改善が、ワークエンゲージメントの向上に結びつくことが示されています。
ワークエンゲージメントとは、仕事に前向きに取り組める心理状態を指し、近年は業務パフォーマンスの重要指標として扱われています。心身の健康が保たれ、安心して働ける環境が整うことで、集中力や活力が維持され、生産性の高い働き方が可能になります。
従業員の状態がよければ、プレゼンティーズム(不調による生産性低下)やアブセンティーズム(欠勤)の抑制にもつながるため、個人・企業の双方にメリットの大きい取り組みといえます。
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ワークライフバランスの実現
ワークライフバランスとは、仕事と私生活の双方が無理なく調和し、働く人が日々の充実感や納得感を得られる状態を指します。
健康経営に取り組むことで、従業員の心身の負担が軽減され、仕事のストレスによって生活が圧迫される状況を防ぎやすくなります。
適切な働き方の整備や休息の確保、相談しやすい職場づくりが進めば、家庭・育児・趣味・地域活動など、仕事以外の時間も大切にできるようになります。
その結果、仕事への前向きさやエネルギーが保たれやすくなり、長く働き続けられる環境づくりにもつながるでしょう。
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ワーク・ライフ・バランスとは? 使い方や例文、企業の取り組み事例を簡単に解説
キャリア継続性の確保
健康経営は、従業員が長期的にキャリアを築くための大きな支えになります。
心身の健康が保たれなければ、どれほど能力があっても業務を継続することが難しくなります。
企業が健康診断の事後フォローやメンタルヘルス支援、働き方の柔軟化などを整えることで、体調不良によるキャリア中断のリスクを減らせます。
安心して働ける環境が整うほど、新たなスキル習得や職務挑戦への意欲も保たれ、従業員自身が望むキャリアを長期的に描きやすくなります。
健康が維持されることは、キャリアの選択肢を広げ、働き続けられる力そのものを支える基盤といえるでしょう。
医療費負担の軽減
健康経営には、従業員自身の医療費負担を軽減する側面もあります。
定期健診やストレスチェック、生活習慣改善の支援などを通じて病気の早期発見・予防が進むことで、重症化による医療費増加を防ぎやすくなります。
企業の健康施策によって生活習慣病や慢性的な不調が抑えられれば、長期的には個人の医療費だけでなく、国全体や企業が負担する医療費の抑制にもつながります。
事前に予防することで、従業員は病気になってから治療するよりも、少ない負担で健康を維持でき、安心して働き続けられる環境が実現するでしょう。
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健康経営優良法人認定制度とは
健康経営を推進するため、国ではさまざまな認定制度を整備しています。
ここでは、健康経営優良法人認定制度の概要、および大企業部門と中小法人部門の違い、認定基準などについて解説します。
健康経営優良法人制度の概要
経済産業省では、2016年に「健康経営優良法人認定制度」を創設し、大企業と中小企業それぞれの企業群の中で、従業員の健康のための施策を積極的に実施した企業を「見える」化しました。
そのうち、上位500の企業を、大規模法人部門では「ホワイト500」として選定し、中小規模法人部門では「ブライト500」として選定・発表しています。
認定制度を設けて競争原理も働かせることにより、健康経営へと取り組む企業の増加に加え、各企業における積極的な取り組みの促進を狙いとしています。
大規模法人部門と中小規模法人部門の違い
健康経営優良法人制度は、企業規模に応じて「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」に区分されています。
企業ごとの体制や経営資源の違いを踏まえ、それぞれに適した評価基準を設けている点が特徴です。
大規模法人部門では、制度や体制が整備されている前提で、グループ企業や地域企業へ健康経営を広げるトップランナーとしての役割が求められます。
一方、中小規模法人部門では、限られたリソースの中で自社の健康課題に応じた実効的な取り組みを評価します。地域における健康経営の普及に貢献することも期待されています。
いずれの部門も、「従業員の健康を経営課題として捉える姿勢」が共通の評価軸となっており、企業規模にあわせて無理なく取り組める仕組みとなっています。
認定基準と評価項目
健康経営優良法人制度では、大規模法人部門と中小規模法人部門の双方に共通する枠組みで評価項目が設けられています。
中でも、大規模法人部門の基準は制度全体のベースとなるため、ここでは大規模法人における主な評価項目を中心に概要を紹介します。
評価項目は、企業がどれだけ戦略的かつ継続的に健康経営へ取り組んでいるかを多角的に確認するため、次のような構成となります。
【主な大項目の例】
- 経営理念・方針への健康位置づけ(健康宣言の発信など)
- 組織体制の整備(経営層の参画、担当部署の設置など)
- 健康課題の把握と改善方針の設定
- 制度・施策の実行(ヘルスリテラシー向上施策、労働環境改善施策など)
- 取組状況の評価と改善(PDCAサイクルの実施)
- 外部への情報開示や社会への発信
企業はこれらの観点から、計画性や実効性、継続性といった点を踏まえて総合的に評価されます。単に施策を用意するだけではなく、「自社の健康課題に向き合った取り組みであるか」が特に重視される点が特徴です。
「ホワイト500」「ブライト500」について
健康経営優良法人制度では、「ホワイト500」「ブライト500」「ネクストブライト1000」といった上位法人の選定も行っています。
ホワイト500(大規模法人部門)
大規模法人部門の中でも、特に優れた健康経営を実践している上位500社に付与される称号です。
ブライト500(中小規模法人部門)
中小企業の中から、健康施策の質・実効性が高い法人に対して贈られる上位500社の称号です。
ネクストブライト1000
ブライト500に次ぐ、優良な取り組みを行う1,000社を選定し、次世代の中小企業のモデルとして位置づけています。
これらに認定されれば、「健康に投資する企業」として外部への大きなアピールにつながり、採用力・企業ブランド・投資家からの評価向上に寄与します。
また、従業員にとっても安心して働ける職場であることの証明となり、企業・個人双方にメリットが大きいでしょう。
健康経営優良法人に認定されるメリット
健康経営優良法人に申請し、認定されるメリットを解説します。
従業員のモチベーション・生産性向上
健康経営の取組が進むと、働きやすい環境整備やメンタルヘルス支援が充実し、従業員の安心感やエンゲージメントが高まります。
その結果、集中力・業務品質の向上、プレゼンティーズムの抑制などにつながり、生産性向上の効果が期待できます。
認定取得は「従業員を大切にする企業」というメッセージにもなり、社内のモチベーション向上にも寄与します。
企業ブランド価値の向上
健康経営優良法人に認定されることで、従業員の健康に投資する企業として社会的評価を得られる点もメリットです。
認定ロゴマークを活用した広報・採用活動により、求職者からの信頼や魅力度が向上し、応募数の増加も期待できるでしょう。
さらに、取引先・顧客からの評価にもつながり、企業ブランドの強化に貢献します。
補助金・インセンティブ
健康経営優良法人に認定されると、国・自治体・金融機関などから各種優遇措置を受けられる場合があります。
代表的なものとして、補助金申請時の加点、金融機関による優遇金利、自治体の入札での評価などが挙げられます。
中小企業では、「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「事業承継・M&A補助金」など主要補助金で加点項目が設けられているケースがあり、日本政策金融公庫では、認定法人(特にホワイト500・ブライト500)に対し、通常より低い金利で利用できる特別利率が用意されています。
その他にも、外国人材の在留資格審査での書類簡素化、ハローワーク求人票でのロゴ使用など、採用活動や企業運営にもプラスに働く仕組みがあります。
これらの優遇策は、健康投資に取り組む企業の後押しとなり、認定取得のメリットといえるでしょう。
健康経営の具体的な取り組み事例
この章では、健康経営の具体的な取り組み事例を「メンタルヘルス対策」「身体的健康の促進」「働き方改革との連動」「職場環境の改善」「タレントマネジメントを活用した健康経営の推進」の5つのテーマに分けて解説します。
メンタルヘルス対策
メンタルヘルスは健康経営の中心的なテーマです。ここでは、ストレスの早期把握から相談体制の整備まで、代表的な施策をご紹介します。
ストレスチェック制度の活用
ストレスチェック制度は、従業員の心理的負荷を把握し、メンタル不調の早期発見につなげるための重要な取り組みです。
定期的なチェック結果をもとに、個別フォローや職場環境の改善に役立てることで、プレゼンティーズムの予防にもつながります。
また、集団分析を活用すると、部署ごとの傾向や課題を可視化でき、組織全体の働きやすさ向上に取り組みやすくなります。
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1on1ミーティングの導入
1on1ミーティングとは、上司と部下が定期的に行う対話の場です。
単なる業務報告ではなく、キャリア・心身の状態・働き方の悩みなど、本人のコンディションを把握することを目的としています。
心理的安全性を高める効果があり、早期の不調把握やコミュニケーションの質向上に寄与します。
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産業医・カウンセラーとの連携
メンタルヘルス不調を未然に防ぐには、専門家との連携が不可欠です。
産業医・産業保健師・臨床心理士などの外部専門職と協力し、相談体制を整えることで、従業員は安心して働ける心理的サポートを受けられます。
メンタルヘルス対策には「3つの予防(一次・二次・三次予防)」と「4つのケア(セルフケア・ラインケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケア)」があり、産業医やカウンセラーとの連携は「事業場外資源によるケア」に該当します。
専門家の力を活用することで、早期発見・早期対応が可能になり、休職や離職の防止にもつながります。
身体的健康の促進
健康経営の施策として、身体的な健康を維持・促進するために、法令で義務付けられた健康診断や保健指導などに取り組むとよいでしょう。
健康診断の受診率向上施策
企業は、法令により従業員に一般健康診断を受けさせる義務を負っています。職種によっては、特殊健康診断も受けさせなければいけません。
加えて、企業独自の福利厚生として健康診断の受診を促進させる施策もあります。人間ドックなどを含め、健康診断にかかる費用の補助制度の導入も一つの施策です。
特定健診を受けた従業員には賞与を上乗せするなどのインセンティブを設ける制度も検討する価値があります。
このような制度は、健康への啓発活動や事前の制度の周知などを徹底したうえで行えば大きな効果がみられるでしょう。
保健指導の強化施策
健康への意識を高めるためには、適切な保健指導が欠かせません。専門のプロジェクトチームなどを発足させ、保健指導の強化に努める施策もあるでしょう。
専門家による定期的な講習や指導の実施も効果的です。また、従業員の健康に関する悩みや相談を受けるための機関の設置や人員の配置なども施策の一つとなり得ます。
AIなどを活用し、個々人の健康データから適切な指導やアドバイスが行えるシステムの導入も検討価値の高い施策です。
運動機会の提供
体を動かすことも健康には欠かせません。社内に運動できる施設を設置したり、定期的に全員で運動する時間を設けたりする施策が求められます。
スポーツジムと法人契約を結び、従業員やその家族が割安で利用できる「フィットネス補助」や「社内ジム」といった福利厚生も効果的です。レクリエーションなどを実施し、その中で運動やスポーツに触れる機会を増やす施策もよいでしょう。
健康的な食事環境の整備
福利厚生として、健康的な食事の提供を積極的に行う企業も増えてきました。健康の資本となる体を作り上げる食事に着目した施策は非常に重要です。
栄養バランスが整えられた食事を提供する社員食堂の設置や、同じく健康に配慮された食事のデリバリー制度を福利厚生として導入する施策もあります。
健康的な食事を手頃な価格で提供することで、従業員の健康促進だけでなく、健康意識の向上も期待できます。
働き方改革との連動
働き方改革は、従業員の健康維持・負担軽減に直結する取り組みです。長時間労働の是正や柔軟な働き方の整備は、心身の疲労を抑え、ワークライフバランスの向上につながります。ここでは、健康経営と連動した代表的な施策を紹介します。
長時間労働の是正
長時間労働は、メンタル不調や慢性的な疲労の大きな要因です。働き方改革とあわせて、残業実態の可視化や業務量の見直し、長時間労働者へのフォロー面談を行う企業が増えてきました。
日々の負荷を適切に管理し、過重労働を未然に防ぐことで、従業員が安心して働ける環境づくりが進められています。
柔軟な勤務制度
フレックス制度やリモートワークなど、働き方を選択できる仕組みも健康経営と相性のよい取り組みです。
通勤負担の軽減や、家庭・育児との両立もしやすくなり、心身の余裕を保ちながら働くことができます。
無理のない働き方が実現されることで、業務への集中力や意欲の維持にもつながるでしょう。
有給休暇取得促進の仕組み
適切な休暇は、心身のリフレッシュには欠かせません。企業独自の休暇制度を設けたり、取得状況を見える化したりすることで、計画的に休める環境を整える動きが広がっています。
例えば、リフレッシュ休暇やボランティア休暇、アニバーサリー休暇などを導入する企業も増えてきました。
休暇を利用し、心身ともに癒されたりポジティブに過ごしたりすることで、より企業への貢献度の向上が期待できます。
職場環境の改善
従業員が心身ともに健康で働き続けるためには、日々の業務を行う空間そのものが快適であることが欠かせません。
オフィスの空気環境、動線、設備、休憩スペースなど、物理的な職場環境を整えることは、健康経営の基盤となる取り組みです。ここでは、代表的な施策を紹介します。
分煙の徹底や禁煙の促進
タバコを吸わない人のみ採用する企業や、社内の喫煙所を廃止する企業も出てきています。そうした思い切った施策が難しいようであれば、社内の分煙化の徹底が重要です。
喫煙者で、もしタバコをやめることを望む従業員がいれば、禁煙外来の受診を補助する制度を設けてもよいでしょう。
受動喫煙だけではなく喫煙者を減らすことにより、さらに健康経営の効果を高められます。
人間工学に基づいたオフィス設計
座りすぎによる腰痛や肩こり、モニターの高さが合わないことによる眼精疲労など、日常的な不調は業務パフォーマンスに直結します。
身体的な負荷を軽減するため、エルゴノミクス(人間工学)の視点を取り入れたオフィス設計施策もよいでしょう。
例えば、昇降式デスクやエルゴノミクスチェアの導入、適切な高さのモニターアーム、手首への負担を抑えるキーボードやマウスの採用などが挙げられます。
働きやすい姿勢が維持できる環境を整えることで、慢性的な不調を予防し、集中力の維持や生産性向上につながります。
リフレッシュスペースの設置
適度な休息は、心身の疲労回復だけでなく、業務効率や創造性の向上にも効果があります。健康経営の一貫として、カフェスペースやリラックスルームなど、気分転換ができるリフレッシュスペースを設ける方法もあります。
落ち着いた照明やソファ、軽いストレッチができる空間を整えることで、従業員は短時間でも心を切り替えやすくなり、結果として集中力の回復や生産性の向上につながるでしょう。
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グリーンオフィスの取り組み
植物を配置した「グリーンオフィス」は、視覚的な癒し効果だけでなく、ストレス軽減・空気環境の改善・離席時間の質向上など、健康経営の観点でも注目されています。
観葉植物をオフィス全体に配置したり、植物の種類を変えて季節感を演出したりすることで、職場に自然の要素を取り入れられます。
研究では、植物があるオフィスではストレス指標が低下する傾向が示されており、心理的な働きやすさの向上に寄与する施策といえます。
タレントマネジメントを活用した健康経営の推進
健康経営は単なる「健康診断の管理」ではなく、働き方そのものを見直す取り組みでもあります。
タレントマネジメントの仕組みに勤怠データや残業時間、リモートワークの利用状況などを組み合わせると、従業員の働き方と健康状態の関連性を可視化できます。
例えば、特定の部署で長時間労働が続いている、特定の業務で心身の負荷が偏っている、といった兆候を早期に把握し、配置転換や業務配分の見直しに生かすことが可能です。
また、スキル・適性情報と健康データを照らし合わせることで、無理のない役割配置やキャリア支援にもつながります。
タレントマネジメントを健康経営に取り入れることで、従業員のパフォーマンス向上だけでなく、離職防止やエンゲージメント向上といった効果も期待できるでしょう。
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先進企業の取り組み事例
最後に、健康経営に積極的に取り組んでいる先進的な企業の事例を3つご紹介します。
旭化成株式会社
旭化成グループは、2025年度に「健康経営優良法人(大規模法人部門)ホワイト500」に認定され、3年連続で上位500法人として評価されています。
同社は「人財がすべてである」という考えを基盤に、2020年に「旭化成グループ健康経営宣言」を制定し、グループ全体で健康経営を戦略的に推進してきました。
取り組みの柱として掲げているのは、以下の3つです。
- 従業員の活躍・成長機会の創出(メンタルヘルス・生活習慣病・喫煙対策など)
- 個人・組織の活性化(ワークエンゲージメントの向上)
- 睡眠の質と量の改善
特にメンタルヘルスや生活習慣病の重症化予防、エンゲージメント向上施策、喫煙率や休業率の改善など、具体的な健康課題に即した取り組みを継続している点が評価されました。
これらの施策を通じて、従業員の心身の健康保持と組織の活力向上を図りながら、「持続可能な社会への貢献」と「企業価値の向上」というサステナビリティの好循環を目指している点が同社の特徴です。
株式会社ニチレイ
ニチレイグループは、2025年に「健康経営銘柄2025」に選定され、あわせて「健康経営優良法人(大規模法人部門ホワイト500)」にも9年連続で認定されています。
従業員の健康を重要な経営課題と位置づけ、「ウェルビーイング経営推進室」を中心にグループ全体で取り組みを進めている点が高く評価されました。
同社の特徴的な施策として、社内セミナー「ニチレイ健康塾」が挙げられます。保健師が各事業所の課題を事前に把握し、それをテーマにセミナーを企画することで、従業員のヘルスリテラシーを効果的に向上させています。
また、深夜勤務やシフト勤務が多い業務特性に応じ、専門職による個別面談を行うなど、現場に寄り添った健康支援も実施しています。
これらの継続的な取り組みにより、メンタル・フィジカルの各種指標が改善し、健康経営の推進企業として高い評価を得ています。
株式会社エルパティオ
エルパティオは「健康経営優良法人(中小規模法人部門ブライト500)」に認定された企業で、保育事業やママサポート事業など女性の活躍と健康課題に向き合う事業を展開しており、従業員自身の健康課題にも向き合う仕組みづくりを進めています。
特徴的な施策が「健康管理ノート」です。従業員が健康診断の指摘事項や日常の体調変化を記録し、月次の健康相談や社長面談で共有することで、早期気づきと個別フォローにつなげています。
その結果、ヘルスリテラシーの向上や、精密検査・要医療率の改善など、具体的な健康指標にも効果が表れています。
また、ブライト500認定を自社広報にも活用し、企業の信頼性や発信力が強化された点も大きな成果です。
取り組み紹介を通じてメディア取材の機会が増え、企業イメージ向上や新規事業展開のきっかけにもつながっています。
まとめ
従業員の健康を重視する「健康経営」は、労働力人口減少や人的資本経営移行の流れの中で、非常に重要な経営戦略となります。
導入により、生産性や効率性の向上、離職率の低下、コストの削減などのメリットをもたらし、採用力の強化にもつながります。
結果的に、企業に業績の改善・向上効果をもたらすでしょう。
各企業の健康経営戦略を参考にしながら、自社に合った施策や制度の導入が重要なポイントです。
HRMOSタレントマネジメントで「働き方データ」を可視化し健康リスクの早期発見を
HRMOSタレントマネジメントを活用すれば、残業時間や有休取得状況などの日々の勤怠データを一元管理することで、長時間労働やコンディション悪化の兆候を早期に把握できます。
従業員一人一人の状態を適切に見守ることで、健康起点の人材マネジメントが可能になります。
働きやすい環境づくりと生産性向上を両立したい企業こそ、タレントマネジメントを取り入れた健康経営を進めていきましょう。
資料請求やご相談も受け付けていますので、まずはお気軽にお問い合わせください。



