中小企業こそタレントマネジメントを導入するべき理由、メリットを解説

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従業員の能力やスキルを重視し、それらを適切に活用することで経営目標達成の実現を目指す「タレントマネジメント」。人事戦略の一つですが、「大企業が取り入れるべき戦略であり、中小企業には無関係だ」と考える人も少なくありません。しかし、実は事業規模の小さな企業こそ取り入れるべきマネジメント手法なのです。本記事では、中小企業こそタレントマネジメントを導入するべき理由やメリット、導入の際の注意点などを解説します。

タレントマネジメントとは?

まずは、タレントマネジメントについて整理・把握しておきましょう。ここでは、タレントマネジメントの意味や目的について解説します。

タレントマネジメントの意味

従業員には、それぞれ異なる能力やスキル、知識やキャリアがあります。それらを経営資源として活用し、企業の業績や利益の向上を目指す人材マネジメント手法や人事戦略が「タレントマネジメント」です。従業員のパフォーマンスを最大化し、それを企業経営目標の達成へとつなげようとする考え方といえます。細かな手法や戦略は、企業の特性ごとに異なります。企業の規模にかかわらず導入可能なマネジメント手法であるとの認識は広がりつつありますが、あくまでも企業ごとの特性や環境にマッチした戦略を取り入れることが肝要です。

タレントマネジメントの目的

タレントマネジメントの目的は多岐にわたります。最終目的は経営目標の達成ですが、評価制度の確立やモチベーション管理、優秀かつ適切な人材育成なども、タレントマネジメントの重要な目的です。従来の組織の考え方や凝り固まった意識、あるいは古くからある慣習の変化に期待しタレントマネジメントを取り入れる企業も少なくありません。中小企業の中には、特にこのような意識や慣習を持つ企業が多く残っているといわれています。それらを打破し、時代や社会の変化に乗り遅れないことを目的として取り入れる企業も多いでしょう。

中小企業へのタレントマネジメント導入が注目されている背景

大企業が積極的に取り入れることの多いタレントマネジメントですが、中小企業にこそ導入が求められます。ここでは、中小企業へのタレントマネジメント導入が注目されている背景に何があるのかについて解説します。

1.労働人口減少による影響

人口減少が叫ばれてから久しい日本社会ですが、コロナウイルス流行の影響でさらに出生数が減り、少子高齢化が加速しています。当然ながら、労働人口の減少にも歯止めがかからない状況です。移民の受け入れに強い抵抗感を抱く日本人も多いため、即座に労働人口の不足が解消することはないでしょう。その影響を非常に強く受けるのが、中小企業です。先行きが不透明な日本社会において、とりわけ若く優秀な人材は、経営が安定し高い給与が受け取れる可能性の高い大企業を選びがちです。

中小企業が優秀な人材を確保し、あるいは既存の従業員の能力を活かして業績向上を図るには、人事戦略の見直しが欠かせません。その一つとして注目されているのがタレントマネジメントなのです。従業員のタレント性に着目し、それを適切かつ効果的に活かせれば、事業規模のあまり大きくはない企業でも成長の期待できる組織を作り上げられます。

2.働き方や価値観の多様化

労働者の価値観の変化は、企業の人事戦略にも大きな影響を与えます。長時間働き多くの給与を受け取るといった従来の考え方から、効率よく稼いだり、あるいは家庭や趣味の時間をより大切にしたいと考えたりする人が増えているといわれています。また、働き方そのものにも変化がみられます。コロナウイルス流行の影響で急速に広まったリモートワークもその一つでしょう。フレックスタイム制の導入や休暇制度の積極的な利用も、価値観の変化や多様化によるものです。

働き方や労働者の価値観の変化に企業が対応するには、生産性の高い環境づくりが欠かせません。従業員の能力が真に活かせる環境を構築し、適材適所の配置を行い、採用や育成にも力を入れることは、働き方や価値観の多様化への適応に不可欠です。これらをもたらすのが、まさにタレントマネジメントです。大企業が積極的に取り入れ、改革を実行する傾向はみられますが、中小企業ではまだまだといえるでしょう。だからこそ、比較的規模の小さな企業もタレントマネジメントを取り入れ、働き方や価値観の多様化に対応する必要があります。

また、中小企業といえども、徐々に終身雇用や年功序列といった慣習を守り抜くことが難しくなってきました。やはり、働き方や労働者の価値観の変化・多様化による影響があります。タレントマネジメントが適切に行われる組織となっていれば、従業員の退職など予期せぬ事態にも対応しやすくなるでしょう。そうした事態をカバーするための採用活動の変革も、企業の成長に欠かせない重要な戦略となります。今後も変化するであろう働き方や価値観から、むしろよい影響を受けることも可能となる点がタレントマネジメントが注目されている背景の一つです。

3.グローバル競争の激化

グローバル化により日本でも欧米の価値観を持つ人が増えてきている一方で、企業も、グローバル競争にさらされる時代となっています。日本の人口が減少するのであれば、事業対象を海外へと向ける必要が出てくるのは当然の流れです。日本の中小企業でも世界で戦える製品やアイデアを生み出している企業は少なくありません。しかし、それらを実現し継続するためには、従業員の能力を最大化し、スキルを高めることが不可欠です。育成のみならず、優秀な人材の確保も必要でしょう。そのために取り入れたい戦略の一つがタレントマネジメントとなります。世界へと視野を広げない企業、特に中小企業は淘汰されかねません。それを避けるための戦略としてタレントマネジメントが注目され、中小企業でも積極的な導入が求められています。

4.働き方改革の影響

説明したように、長時間働くことを避ける人が増えるなど労働者の価値観には変化がみられます。それに加え、そもそも日本政府が長時間労働に対し厳しい措置をとっていることも、タレントマネジメントが注目されている背景の一つです。中小企業は大企業のように効率化を図る施策をうまく取り入れられないケースが少なくありません。従業員の勤務時間を単に削減しただけでは、これまで通りの成果を上げられない中小企業も多いでしょう。生産性や効率性の向上が急務であり、そのためには従業員の能力を可能なかぎり発揮できる環境づくりが求められます。配置転換による適材適所の実現や能力開発のための育成環境の整備などは、タレントマネジメントの核となる取り組みです。こうした取り組みにより、働き方改革の影響をプラスにすることができるようになることが、規模のあまり大きくはない企業にとって非常に重要な課題となります。

5.テクノロジーの進化

そもそも、タレントマネジメントの導入がしやすくなってきている点も、注目度が向上している背景の一つです。タレントマネジメントは専用の組織や体制を社内に構築するのみで行えるものではありません。タレントマネジメント用のシステムの導入も不可欠です。テクノロジーの進化によりそのようなシステムの種類も増え、また、導入コストも低下してきたために中小企業でも導入や運用が容易となりました。人事戦略に必要な情報の収集や共有、データ化や可視化なども高度な専門知識を持った人以外でも可能となっています。人事戦略のための人材を採用・設置する必要もなく、既存の人事担当者でもシステムの活用により、適切なタレントマネジメントが運用できるでしょう。
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中小企業がタレントマネジメントを導入すべき理由

タレントマネジメント導入により、中小企業だからこそ得られるメリットがあります。ここでは、中小企業こそタレントマネジメントを導入するべき理由を解説します。

1.意思決定が早く導入のハードルが低い

中小企業には、意思決定が素早いといった特徴があります。大企業でも横断的な組織体制が構築され、即座に経営陣や人事部の意思決定が反映される企業はあるでしょう。しかし、規模の大きさはフットワークの重さへとつながる傾向があることは否めません。タレントマネジメントは計画の立案や体制の構築も重要であり、早い段階で導入し、時間をかけて育成や採用を継続する必要があります。規模が小さいからこその意思決定の早さは、タレントマネジメント導入のハードルを下げることに役立つでしょう。特に、経営陣と人事部、現場の管理者の距離が近い企業ほど、導入のハードルが下げられます。

2.評価や分析がしやすい

中小企業は大企業と比較して従業員数が少なく、人材管理がしやすいといったメリットがあります。タレントマネジメントにおいても、この特性を活かすことが可能です。タレントマネジメントは、単に導入しても意味はありません。導入により、即座に従業員のポテンシャルが発揮され、経営目標の達成を実現するのは困難なためです。短期間で成果が出るケースはむしろ少なく、多くの企業ではその間の評価と分析が不可欠です。人材管理のしやすさ、つまり、評価と分析のしやすさは、まさに、中小企業の特性が活かしやすいといえるでしょう。

評価や分析を詳細にできるメリットもあります。事業規模が大きくなるほど、個々の評価や分析が大まかになりがちです。人事戦略を実行して思うような効果が出なかった場合も、その原因の追究が大企業ほど難しくなります。多くの場合、マネジメント戦略の規模も大きくなってしまうためです。中小企業では、タレントマネジメントもコンパクトなものとなる傾向があり、その結果、より個人にフォーカスし評価や分析ができます。それが組織全体にどのような影響を及ぼしたのかなど原因もみえやすいため、評価と分析そのものの精度を高められるメリットもあるでしょう。
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3.見直しが柔軟に行える

中小企業の特徴の一つとして、柔軟性が高い点が挙げられます。規模が小さいということは従業員数が少ないだけではなく、従業員同士や部署同士の連携も取りやすい状態である可能性が高いでしょう。もちろん、企業によって体質や体制は異なるものの、大企業と比較すれば情報共有や意思疎通が図りやすいといえます。その利点を生かすことで、タレントマネジメント実行後の改善や見直しがスピーディーに行えます。導入のハードルが低い点もメリットですが、上述のように、タレントマネジメントは即座に成果が出るものでもありません。評価や分析のしやすさとともに、それを戦略や計画の見直しへと反映させやすい点が中小企業の強みです。

4.従業員への負担が比較的少ない

横断的な体制が構築され、日頃から部署や役職の垣根を超えた情報共有や意思疎通が図られている企業であれば、タレントマネジメント導入における負担は小さく済むでしょう。そのような特徴を持つのは、中小企業の方がより多い傾向があります。タレントマネジメントは、必要に応じて配置転換や役職の入れ替えなどが必要です。同じ企業内でも他の部署についての知識が一切なく交流も乏しいような大企業では、配置転換等に大きなストレスを感じる従業員も出かねません。中小企業でも従業員の負担を完全になくすことは難しいものの、体制や風土によっては抵抗感を抑えながらタレントマネジメントが行えます。

5.業績や利益の向上へと直結しやすい

大企業は売上や利益などが大きいため、改革や戦略の効果が見えづらいケースが少なくありません。あるいは、売上や利益が上がったとしても、それが人事戦略によるものと判断するのも容易ではないでしょう。中小企業も規模や事業内容はさまざまであるため、そのようなケースに当てはまることもあります。しかし、大企業と比べると一つの改革や戦略が、業績や利益の向上へと直結する可能性は大きいといえます。タレントマネジメントが適切に運用されれば、生産性や効率性が改善され、イノベーションも起こり、業績や利益が目に見えて向上するケースも出てくるでしょう。中小企業のなかには、長年、同じ事業を継続して行っているところも多くあります。そのような企業こそタレントマネジメントの効果が得やすく、また、業績や利益へとつながりやすいといえます。

6.全従業員をタレントターゲットとしやすい

従業員の特性を最大限に活かし、それを企業の成長や業績の向上へとつなげようとする考え方は、日本企業にも広まりつつあります。こうした考え方や戦略、マネジメント手法が広まるにつれて、その対象となる従業員の幅も広がっているようです。従来はワンマン経営でも経営者が優秀であれば成長でき、業績も向上させられました。それが少しずつ各部署のリーダーなど管理職へと広がり、さらにそれ以下の役職の従業員にまで広がってきています。タレントマネジメントを導入する企業でも、特定の従業員の能力や経験のみにフォーカスするのではなく、全従業員を対象とする企業が増えてきているのです。

この、全従業員をタレントターゲットとする考え方を「包含的アプローチ」などと呼びます。新入社員や、ときに非正規社員にまで対象を広げることで、企業全体の人事改革を実現しようとする考え方です。中小企業は、大企業よりもこの戦略をとりやすく、タレントマネジメントの効果をより享受できる可能性があります。単に従業員数が少ないことだけではなく、従業員の情報共有がしやすい点や管理者の目が行き届きやすい点、個々の育成や採用に時間や労力を集中しやすい点なども大きな理由です。大企業が、主にリーダーや幹部候補の育成や発掘にタレントマネジメントを利用するなか、中小企業は従業員全体のグレードアップを図りやすいといえるでしょう。その結果、急激な業績や利益の向上へとつながる可能性が高まります。

7.モチベーションの向上と人材の定着

労働人口減少の影響により、多くの中小企業にとって人材の獲得は非常に困難となってきています。また、優秀な人材はさらなるやりがいや高給を目指し、大企業への転職を検討する可能性もあります。1人でも人材が欠けると大きな影響を受けかねない中小企業にとって、人材の定着は重要な課題の一つです。タレントマネジメントには、その課題を解決したり、その課題から生じるリスクを最小化したりできる可能性があります。

適切なタレントマネジメントは、従業員のモチベーションを向上させます。必要とされていることを認識でき、スキルや能力にマッチした業務を任せられるためです。役職も与えられ、それに見合った報酬も得られれば、さらにモチベーションは向上するでしょう。モチベーションやエンゲージメントの向上した人材は企業に定着し、企業にとっては優秀な人材の流出を防止できます。タレントマネジメントにより業績や利益が上がれば企業価値も向上するため、新規採用により新たな人材の確保もしやすくなります。1人の従業員の価値がより高い中小企業ほどタレントマネジメントを積極的に導入するべきなのです。
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中小企業がタレントマネジメントを導入する際の注意点

中小企業はタレントマネジメントの導入を積極的に検討するべきですが、やみくもに導入しても想定通りに機能しない可能性があります。逆に、リスクが顕在化し逆効果となるケースもあるでしょう。ここでは、中小企業がタレントマネジメントを導入する際の注意点やポイントを解説します。

1.大きな導入コストがかかる場合がある

タレントマネジメントを本格的に導入するには、ある程度のコストが必要です。従業員の特性をデータ化するには、専用のシステムも導入しなければなりません。必要な組織を設置すれば、そのための人件費等のコストもかかります。また、研修や採用活動などのコストが増加する可能性もあるでしょう。タレントマネジメントは従業員の能力を開発・育成したり、外部から優秀な人材を採用したりする取り組みを伴います。従来の方法を変えるとなれば、導入の際には大きなコストがかかることも必然です。

また、リーダーや幹部候補の育成や発掘に伴い、待遇の向上が求められるケースもあります。待遇がよくならないにもかかわらず、より重い責任を背負わされることを受け入れる従業員は多くはないでしょう。タレントマネジメントには従業員の評価も含まれるため、その評価に見合った待遇を用意する必要があります。部署の異動や担当業務の入れ替えに関しても同様です。給与や手当を含めた待遇の見直しは、多くの場合コストがかかります。特に、タレントマネジメントのような経営目標達成のための人事戦略や改革であれば、それにかかるコストの増加は避けられないでしょう。そうしたコストの増加に耐えられない中小企業もあります。導入の程度や計画内容は、コストとのバランスをみながらの構築が重要です。

2.ジョブ型雇用へと変化させる必要がある

従来の日本の企業では、主にメンバーシップ型雇用が採用されてきました。ある程度の数の従業員を定期的に採用し、勤続年数や年齢を重視したうえで、それらが上がれば特定の業務やポジションを与える雇用方法です。年功序列が、まさにメンバーシップ型雇用の特徴の一つです。人に対して業務を与えるメンバーシップ型雇用を採用している企業は、タレントマネジメントには適さないと言われています。タレントマネジメントが普及している欧米では、ジョブ型雇用が中心であるためです。採用は欠員補充や新規ポジションの設置に伴い行われ、勤続年数や年齢よりも実績や能力を重視し、業務に適した人材を充てる手法がジョブ型雇用です。

タレントマネジメントは個々の従業員の能力やスキル、知識といったものを最大限活かそうとする人事戦略です。そのため、導入の際にはジョブ型雇用か、それに近い体制へと変化させる必要があります。中小企業ごとに歴史や風土は異なります。もし、それなりの歴史がありメンバーシップ型雇用が定着しているのであれば、タレントマネジメントを導入しても、その効果は限定的となりかねません。効果の最大化には企業の雇用体系そのものの変化が必要となる可能性があり、その点への認識と対策は非常に重要なポイントとなるでしょう。

3.従業員の不満や一体感の欠如につながるリスクがある

タレントマネジメントは、従業員のモチベーションを上げる効果が期待できる一方で、不満を抱く従業員が生まれるリスクもあります。従業員ごとに意識の高さや携わりたい業務、希望する勤務体制などが異なるためです。タレントマネジメント導入の結果、自分の希望とは異なる業務や役職を任されることで不満を覚える従業員が出ないとも限りません。異動や重い責任等を避けるために大企業ではなく中小企業への就職・転職を希望した人であればなおさらです。

また、全従業員ではなく一部の従業員のみの役職や業務内容、待遇が変わることに対し不満を覚え、それが一体感の欠如へとつながるリスクも生じかねません。そもそも、大きな変化に抵抗感を抱く人は少なからずいます。中小企業のように、慣習や風土、社内の雰囲気や環境などがある程度固定化された組織であれば、そこに勤める人は、より変化を避けようとするでしょう。タレントマネジメントの程度や詳細な方法にもよりますが、そのような従業員の多い企業であれば、リスクも考慮しながらの慎重な導入と運用が求められます。

4.管理職の意識と手腕に大きく左右される

多くの大企業には、管理職以外にも優秀な人材や高い意識を持つ人、さらに自立性もあり能動的に活動できる従業員が多く在籍しています。そのような人たちもマネジメント戦略へと積極的に携わり、企業へと貢献しようとするケースも多々みられます。管理職の手腕も重要ですが、より組織全体の力でタレントマネジメントを遂行しようとする傾向がある点が大企業の特徴です。中小企業は、管理職がより大きな力を持っているケースが多い点は否めません。だからこそ、トップダウンでマネジメントを実行しようとすれば、前述のような従業員の不満や一体感の欠如につながる可能性が出てきてしまいます。受動的な従業員が多い企業であれば、なおさらでしょう。

一方で、中小企業は、経営層や管理職、そして従業員同士の距離が近いケースも多くみられます。距離が近いからこそ経営層や管理職の影響力が強く、それは、人事を含めたマネジメントに対しても例外ではありません。経営層や管理職が間違ったタレントマネジメントを導入すれば、それがそのまま組織の損失へとつながります。トップダウン型よりも従業員の不満の噴出は抑えられるものの、それはタレントマネジメントの成功とは無関係です。トップダウン型の組織であれ、経営層や管理職と従業員との距離の近い組織であれ、中小企業は良くも悪くもトップ層の意識や手腕にマネジメント結果が大きく左右されるでしょう。この点を意識しながら、タレントマネジメントの計画の立案と実際の運用を行う必要があります。

中小企業がタレントマネジメントを成功させるためのポイント

タレントマネジメントの成功のポイントはいくつかありますが、そのなかでも、特に中小企業が意識すべき点を2つ紹介します。

1.全従業員で共通の認識や情報を持つ

人事担当者のみが戦略を理解し情報を持っていれば、タレントマネジメントが成功するわけではありません。むしろ、一部の層のみが認識していたり情報を持っていたりするだけでは難しいでしょう。大企業でも共通認識や情報の共有は重要です。しかし、中小企業はタレントターゲットが全従業員か、それに近くなる可能性が高く、全社的な改革や戦略が求められます。そのため、全従業員が共通の認識を持ち、必要な情報を共有する必要性が高くなります。コミュニケーションの活性化を図ることで、情報共有がしやすくなるでしょう。必要な情報はデータ化し、評価制度などにも公平性がある点を従業員に認識してもらう必要があります。そのためには、専用のシステムの導入も欠かせません。

2.PDCAサイクルを含めた継続的な運用が不可欠

タレントマネジメントの成功には、定期的なモニタリングと分析、評価と見直しが不可欠です。これらを繰り返す、いわゆるPDCAサイクルはタレントマネジメントの精度を上げ、最終的な経営目標の達成のためには必要な取り組みとなります。そのうえで、長期的な視点での運用も成功には欠かせません。中小企業は、一つの戦略や施策の失敗により、組織に大きな損害が生じるリスクがあります。PDCAサイクルを含めた継続的な運用は、的外れなタレントマネジメントで大きな損害を被らないためにも、非常に重要な取り組みとなると理解しておきましょう。

中小企業こそタレントマネジメントの導入がおすすめ

従業員の採用や育成を強化し、個々の能力に見合った業務を与えるための人事戦略であるタレントマネジメントは、中小企業こそ導入するべきです。導入のハードルが低く、戦略の見直しがしやすい点もその理由です。労働人口の減少や価値観の多様化の影響を強く受けるのは、むしろ中小企業でしょう。人材定着や業績アップへとつながりやすいタレントマネジメントは、中小企業だからこそ、そのメリットが大きいといえます。