従業員の過去の犯罪歴をどう捉える?子ども関連業務従事者に対する性犯罪歴確認が義務化へ

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目次

  1. 子ども関連業務従事者への性犯罪歴照会とは?義務化の背景と概要
  2. 企業は、従業員の犯罪歴をどう捉えるべき?

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2021年12月に閣議決定された「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」に盛り込まれた、いわゆる日本版DBSの導入に向けた検討が着々と進められています。日本版DBSの導入とは、子どもと関わる業務に従事しようとする人に、性犯罪歴等についての証明を求める仕組みのことです。すでにイギリスで導入されているDBS制度との兼ね合いで、「日本版DBS」と称されます。これにより、2024年度にも、教育・保育施設等を運営する事業者に対する罰則付きの義務が課せられることになりそうです。

子ども関連業務従事者への性犯罪歴照会とは?義務化の背景と概要

教育業界における大人から子どもへの性加害は後を絶たず、報道等で見聞きする事件は氷山の一角とも言われています。学校や保育施設等においては「先生」と「園児」「児童」「生徒」という上下の関係性が前提となるため、たとえ子どもが被害に遭ってもその事件は表面化しにくい上、仮に判明したとしても学校としての対応の不十分さが浮き彫りとなるケースは少なくありません。このような背景から、事業者が主体となって、そもそも子ども関連業務従事者による性犯罪が生じない環境作りに取り組んでいく必要性が叫ばれています。

法整備が進む、教職員や保育士等に対する性犯罪への対応

日本版DBSの導入に先立ち、すでに教員免許を有する教職員に対しては、2021年の第204回通常国会において成立した「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」において、性犯罪に関わる厳格化が進んでいます。同法は、教育職員等による児童生徒性暴力等の禁止、児童生徒性暴力等の防止・早期発見・対処に関する学校やその設置者等が講ずる措置、児童生徒性暴力等を行ったことにより教員免許状が失効又は取上げ処分となった特定免許状失効者等に関するデータベースの整備、特定免許状失効者等に対する免許状の再授与の審査等について規定するものです。
さらに、2023年に改正された児童福祉法では、子どもにわいせつ行為をした保育士は刑事罰の有無にかかわらず保育士登録を取り消され、禁錮刑以上の場合は登録禁止が無期限となっています。

今後はより幅広く、子ども関連業務従事者に対しする性犯罪歴照会制度の適用を

前述の「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」の附帯決議においては、教育職員等以外の職員、部活動の外部コーチ、ベビーシッター、塾講師、高等専門学校の教育職員、放課後児童クラブの職員等の免許等を要しない職種についても、児童生徒等に性的な被害を与えた者に係る照会制度が必要であるとされました。その検討にあたっては、イギリスで採用されているDBS制度も参考にして、教育職員等のみならず児童生徒等と日常的に接する職種や役割に就く場合には、採用等をする者が、公的機関に照会することにより、性犯罪の前科等がないことの証明を求める制度創設が主軸となっています。

子ども関連業務従事者への性犯罪歴照会の概要

日本版DBSの導入は未だ検討段階にありますが、事業者が採用に際し労働者に対して「無犯罪証明書」の提出を求めるという流れになりそうです。証明書を受けるための請求自体は、事業者が行うのか、それとも労働者が直接行えるのかは定かではありませんが、プライバシーの観点から、証明書の受取は必ず労働者本人に限定され、労働者が自身の意思で事業者に提出するという仕組みとなる見込みです。

企業は、従業員の犯罪歴をどう捉えるべき?

日本版DBSの導入により、労働者の性犯罪歴が判明した場合、企業はどのように対応すべきでしょうか?採用以前であれば「採用の自由」に則った対応が可能ですが、すでに雇用している労働者を即時に懲戒解雇にできるかというと、なかなか悩ましい問題かもしれません。

判例では、「前科が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるをえないといった特段の事情」の有無を重視

マルヤタクシー事件(仙台地判昭60・9・19)では、「犯罪者の更生にとって労働の機会の確保が何をおいてもの課題である」とした上で、「既に刑の消滅した前科といえどもその存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるをえないといった特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し既に刑の消滅をきたしている前科まで告知すべき信義則上の義務を負担するものではないと解するのが相当であり、使用者もこのような場合において、消滅した前科の不告知自体を理由に労働者を解雇することはできない」としています。本判例は、強盗・窃盗の前科を隠して採用されたタクシー運転手の懲戒解雇を巡るもので、強盗・窃盗と運転業務との関連性に鑑み、懲戒解雇を無効とするものです。

既存の労働者に対しては、ただちに解雇としない選択肢も

それでは、日本版DBSの導入により判明した労働者の性犯罪歴について、企業はどのように考えるべきでしょうか?
子ども関連業務に従事する者が採用時にその性犯罪歴を尋ねられたのにこれを隠して採用されていたような場合、一般的には、重大な経歴詐称として解雇のための客観的合理的な理由と社会通念上の相当性が認められるため、その者を解雇することができると考えられます
ただし、すでに子ども関連業務に従事している労働者について、事業者が採用時に性犯罪歴の有無を尋ねていない場合で、当該労働者が長年問題なく勤務してきたようなケースでは、ただちに解雇というのは問題があるかもしれません。この場合、まずは子どもと関わらない業務に配置転換することや、一人でこどもと関わらないようにすること等の措置を検討する必要があるでしょう。判断に迷われる場合は、労務管理の専門家である社会保険労務士にご相談いただければと思います。

参考:こども家庭庁「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議(第5回)

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HM人事労務コンサルティング 丸山博美

編集者

HM人事労務コンサルティング 丸山博美

起業したての小さな会社支援を得意とする社労士事務所、HM人事労務コンサルティング代表・丸山と申します。 創業当初の事業主様に不足しがちな「経験」「人脈」「知識」を、 社会保険労務士という立場からサポートいたします。
労務関連の手続きやご相談、就業規則作成、助成金申請・・・等々、どんなことでもお気軽にご相談ください!東京はもちろん、日本全国からのご依頼に対応させていただきます。

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