本記事では、「人事データ活用最前線」のシリーズとして、実際に人事データを活用している企業の活用事例をご紹介します。今回ご紹介するのは、名古屋市を中心に介護付き・住宅型有料老人ホームなどの運営をされている「株式会社メグラス」の人事データ活用事例です。実際に人事システム導入から課題解決を手がけた担当者様に、人事データを活用しようと思ったきっかけや効果、そして今後のビジョンについて伺いました。
企業紹介
株式会社メグラス
- 業界:介護業界
- 事業概要:介護付き・住宅型有料老人ホームの経営、運営受託
- 従業員数:160名(2020年7月時点)
お話を伺った方
株式会社メグラスHD 代表 飛田様
労務業務リーダー 森様
採用・人事計画担当 井谷様
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労務作業の効率化とデータの正確性を向上させたかった
ー今の人事データ管理体制を構築するにいたった背景を教えてください。
以前は、従業員の情報を紙で管理していました。そのため、ファイリング作業に多くの時間がかかったり、未提出書類の催促が非常に煩雑な方法で行われたりしていました。労務の作業量も多く、負担も大きかったです。また、ファイリングされた個人情報が閲覧できる形でキャビネットに置いてある状態にも、セキュリティ観点での課題を感じていました。また、労務作業効率だけでなく、データの正確性の低さも課題でした。月に一度の経営会議のなかで、従業員情報を持ち込み、それをもとに人員計画の議論を行っていました。しかし、従業員情報に記載されたデータでは、出席者の感覚と一致せず「これは本当に正しいデータなんだっけ?」という声があがっていました。更新頻度などを含めた管理が不十分で、集めたデータが正しいのか確信が持てず、データとして活用ができない状況でした。データをもとに人員計画などを立てるためには、まずは正しい人事データを取得し、継続的にデータを更新し続ける仕組みをつくらなければならないと思い、そのデータベースづくりに取り組みはじめました。
正確なデータをもとにした採用計画の議論が実現
ー人事データベースを構築することで、具体的にどのような成果が出たのでしょうか?
人事データベースをつくることによって、作業が効率化されて「今まで何だったんだろう」と思うくらい業務に変化がありました。作業の効率化はもちろん、大きな成果としては、正しいデータをもとに採用計画の策定が実現できたことです。有料媒体の求人広告を出す際に、従業員の住んでいる地域を参考にしているのですが、人事データから住所そのものではなく市区町村単位で抽出できるようになりました。また、労務の作業効率が向上し、複数拠点とのやりとりもスムーズになりました。労務担当者は出社しなければ業務が立ち行かないと考えていたのですが、在宅勤務でも支障がなく、確実に必要な情報の収集ができている感覚があります。在宅勤務に切り替えた後に採用した社員がいますが、入社まで一度も会わずに入社書類の回収を完結できました。
人事データベースの効果を実感しているのは、労務担当者だけではありません。会社として人事データの公開と共有を行うことで、従業員同士が学びあっている状態が形成されはじめています。自分自身の成果や他のメンバーの成功事例などを共有することで、従業員の成長にもつながっていると実感しています。従業員の間でも自分の持っている資格情報に更新があった時などは、「労務から求められてから提出する」のではなく、「情報を自分自身で然るべき状態に更新していく」という意識に変わってきていると感じています。
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人事考課の透明性をさらに高めていきたい
ー今後、収集した人事データをどのように活用していきたいと考えでしょうか?
メグラスの人事考課は他の会社と異なり、社員自身が査定を行うという特徴があります。自らが行った査定をコミッティにプレゼンして承認を得るという運用を行っており、その経緯や結果はすべて全社の従業員に公開されます。自分で自分を評価するということは従業員にとってなかなかハードな側面もありますが、自分自身で考課を行うことで納得感が生まれ、より高い自己管理の意識が芽生えるという効果があります。今後は、人事考課の透明性を高めるために人事データを活用したいと考えています。現在は、「Googleスプレッドシート」で人事考課の管理を行っており、特定の期の全社員の評価を横並びで見ることはできるのですが、従業員ごとの評価の履歴を追うことができていない状態です。今後は、考課の履歴を全社員が検索できるようにして、自身のロールモデルとなるような社員の考課を参考にしてもらうといった動きを想定しています。従業員が自由に手間なく人事データを取りだせる環境を促進していたいと考えています。
介護業界の中では、私の目指すイメージから考えるとまだまだデジタル化が進んでいないのが現状です。むしろ危機感を持っています。人事データを活用し普段から情報の流動性を確保し、従業員が自分でできることは自分でできる状態にしておくことが重要。そうなれば突然の退職や休職に対する組織としての耐性を高められます。人事データ活用も含め属人性を下げることで、変化に耐えうる組織をつくることを目指しています。
※企業情報などはインタビュー時点のものです