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ふとした瞬間によく耳にするCMソングを口ずさむ、こんな経験を持つ人は多いのではないでしょうか。これはザイオンス効果が関係しているかもしれません。ザイオンス効果は単純な方法で人の興味・関心を得られるといった利点から、さまざまなビジネスシーンで活用されています。
今回は、ザイオンス効果とは何なのか、広告や恋愛などにおけるザイオンス効果の活用例、逆効果となるケースなどを解説します。
ザイオンス効果とは?
ザイオンス効果とは、何度も繰り返して接触することで、その人物や物事に対して興味・関心を抱きやすくなるという心理効果のことです。ザイオンス効果は1968年にスタンフォード大学名誉教授である心理学者ロバート・ザイオンスによって発表され、「単純接触効果」とも呼ばれます。
ザイオンス効果は恋愛やコミュニケーションといった対人関係や、営業やマーケティングなどビジネスシーンでも幅広く活用できる心理効果です。
たとえば、「CMでよく聞く音楽を自然と覚えている」「よく行くお店の店員に親しみを覚える」といったことは多くの人が経験しているのではないでしょうか。まさにこれらは、繰り返し接する人や物に対して興味・関心を持つ、ザイオンス効果の代表的な例といえます。
ザイオンス効果を実証した実験
ザイオンスは、以下のような実験を行いました。
実験内容 | 被験者に、単語や写真を繰り返し見せる。 |
実験結果 | 被験者は、より多く見せられた単語・写真に対して好感を抱く傾向があった。 |
結果の補足 | 被験者が知らない単語や写真であっても、上記と同様の傾向が見られた。 |
この実験から、既知・未知にかかわらず、人は繰り返し接したものに対して好感や興味・関心を抱く傾向にあることがわかりました。
ザイオンス効果が発生する理由
ザイオンス効果が発生する理由には諸説あります。その中でも有力なのは、「知覚的流暢性の誤帰属」説です。
脳は、特定の刺激に繰り返し接すると、徐々に見慣れていって流暢性(知覚しやすさ)が高まります。流暢性が高まることは処理効率のアップにつながり、脳にとっては心地がよいことです。そのため特定の刺激について流暢性が高まると、「それは自分にとってポジティブである」と誤って解釈されやすくなります。これが「知覚的流暢性の誤帰属」であり、ザイオンス効果が発生する仕組みと考えられています。
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ザイオンス効果に類似した現象
ザイオンス効果と似た心理現象に「確証バイアス」と「サブリミナル効果」があります。それぞれについて解説します。
確証バイアス
確証バイアスとは、自分の先入観や価値観を肯定する情報のみを収集し、それ以外からは目を背ける・軽視する傾向のことです。出かけるときに晴れの日と雨の日が同程度だったとしても、先入観によって雨の日にばかり注目しやすく、「やっぱり雨が降った」「自分は雨男かもしれない」と思い込みやすくなります。
このように、確証バイアスとは先入観を肯定する情報を収集し、それ以外を軽視するものです。物事を多角的に見られなくなり、公平な判断を妨げる原因になることがあります。
サブリミナル効果
サブリミナル効果とは、人が認識できないレベルの刺激を繰り返し送ることにより、潜在意識に影響を与えるとされているものです。
サブリミナル効果が有名になったのは1957年に上映された「ピクニック」という映画です。視認できないほど短い時間で「コーラを飲め」などと書かれた文字メッセージのコマを連続して流したところ、売り上げが伸びたとされています。ただし後に行われた実証実験ではサブリミナル効果は再現されず、この実験は虚構であり効果は疑わしいとされています。そのため、心理学においてサブリミナル効果は学説として認められていません。
日常生活で見られるザイオンス効果の具体例
ザイオンス効果は日常でもさまざまな場面で見られます。ここでは、その具体例をいくつか紹介します。
恋愛
恋愛は、ザイオンス効果が表れやすいものです。
たとえば、ランダムに複数の人の写真を見せたとします。すべての写真を平均的に見せられた場合は、対象者の好みが優先されます。しかし、写真によって意図的に見せる回数を変えた場合、より多く見せられた写真の人に好意を持つようになります。より多く写真を見たことで、その人に対して興味・関心がわくためです。
このことから、恋愛を成就させる秘訣として、接触の機会を増やすことが有効であると考えられます。
広告
広告はザイオンス効果の身近な具体例です。
たとえば、スマホで動画を視聴すると何度も同じ商品の広告を目にすることがあります。当初はその商品にあまり興味がなくても、何度も広告を見ることで興味が高まることは少なくありません。その後、店舗でその商品を目にした際に、「知っている商品だ」として購入されやすくなります。
このように、繰り返し広告を視聴することで、ザイオンス効果が発生して商品購入までのハードルが下がりやすくなる効果があります。
学習
ザイオンス効果は学習にも応用できます。
たとえば、嫌いな数学を少しでも好きになりたいと思っているとします。苦手なので週に1日だけ7時間勉強したとしても好きになることはほぼありません。では、毎日1時間ずつ、継続して問題を解いていくとどうでしょうか。継続して繰り返し数学に触れることで、脳が処理しやすくなっていきます。その結果、数学が大好きとはいかないまでも、嫌い・苦手というイメージを克服しやすくなるのです。
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ザイオンス効果のメリット
ザイオンス効果には以下のようなメリットがあります。
シンプルですぐに活用できる
ザイオンス効果を得る方法はとてもシンプルです。
ザイオンス効果を発生させるには、接触回数が最も重要です。接触時間や接触させる情報の中身はそれほど重要とはされません。単純に、接触させる頻度が多ければ多いほど、その効果が高まります。
このようにシンプルな条件で効果があることから、たとえば経験が浅かったり、苦手だったりすることに対してもすぐに活用できるのがメリットです。
効果が得やすく持続する
ザイオンス効果は、その効果を得やすく持続しやすいのがメリットです。
前述の通り、ザイオンス効果はシンプルですぐに活用できる心理現象です。また、短期間の集中的なアプローチにより抱かれた好意や興味・関心は、すぐに失われることはないとされています。たとえば、同じ広告を毎日数分視聴して興味を抱くようになれば、その後に多少期間を空けたとしても好意が持続します。
このようなことから、ザイオンス効果は継続的な認知を得るのに有効とされています。
マーケティング・営業との相性がよい
上述のような特徴があることから、ザイオンス効果はマーケティングや営業との相性がよいとされています。
たとえば、リマーケティング広告でユーザーに繰り返しアプローチすれば、認知拡大や獲得につながりやすくなります。さらに、既存ユーザーに対して継続的にアプローチすれば、リピーターやファンを獲得することも可能です。
このように、ザイオンス効果はマーケティングや営業と相性がよく、効果的に活用すれば売り上げの拡大につなげられます。
逆効果にならないようにする注意点
ザイオンス効果を活用すれば、シンプルな手法で相手からの好感を得られます。しかし、使い方を誤ると逆効果になることもあります。ここでは、ザイオンス効果が逆効果にならないために覚えておきたい注意点を解説します。
「好きでも嫌いでもない」状況で有効
ザイオンス効果は、ターゲットが接触する人や物に対してフラットな感情を持っているときに効果が発揮されます。
たとえば、「押しの強い人が苦手」な人がいたとします。この条件に合致する営業担当者が毎日自宅に訪問してきたら、きっとイライラしてしまうことでしょう。苦手な人と何度も会うことで、マイナスの感情がどんどん積み重なってしまうためです。
ザイオンス効果を得にくいと感じたら、顧客の目線に立って考えてみましょう。もし顧客が現在の担当者を苦手にしている可能性があるならば、担当者を変更するなどの対策を考えるべきです。
初期に悪印象を与えてはいけない
ザイオンス効果を得るためには、接触の途中で悪印象を与えてはいけません。特に、初期段階に悪印象を持たれると、接触するたびに相手はマイナスの感情を増幅させてしまいます。
たとえば、不快に思われやすい画像やキャッチコピーを使用したり、しつこくメルマガを配信したりしたとします。接触初期にこのようなことがあると、ユーザーは次の接触からマイナス面にばかり目がいくようになります。そのため、ザイオンス効果が逆に働いてしまいやすいのです。
接触初期は、悪印象を持たれない接触であるかどうかを十分に検討することが大切です。
接触が過度になると効果が減少する
接触回数があまりに多すぎると、ザイオンス効果の働きが著しく弱まるとされています。
ザイオンスによれば、「接触回数が一定量を超えた場合、好感度の上昇カーブは緩やかになる」とされています。たとえ配信した広告の効果が高かったとしても、長期間配信し続ければ効果は薄れてしまうのです。
ザイオンス効果が有効なタイミング
ザイオンス効果の働きを高めるにはタイミングが重要です。ここでは、ザイオンス効果をより高めるために覚えておきたいタイミングについて解説します。
フラットな状態
ザイオンス効果を得るためには、相手がフラットな状態から接触をスタートすることが大切です。
たとえば、相手が商品やサービスに対してすでにマイナスの感情を持っていたとします。その場合、接触回数が増えるたびにその感情が増幅される可能性が高まるかもしれません。
ザイオンス効果を活用するには、相手の感情がフラットな状態かプラスに傾いている状態からスタートすると良いでしょう。この状態であれば、接触回数を増やすことで、徐々に好感度が高まっていきます。
さりげない接触を意識する
接触するタイミングは、さりげなさを意識すると良いでしょう。
たとえば、営業担当者が何の口実もなく何度も訪れ、商品を売り込んできたとします。多くの人は「しつこい」「急に来て迷惑」と思うのではないでしょうか。こうしたマイナス感情が芽生えれば、ザイオンス効果は得られません。
ザイオンス効果を得るためには、さりげない口実を作ってから接触を試みることが大切です。口実があって相手が受け入れの準備を整えられるタイミングであれば、無用なマイナス感情を抱かれにくくなります。
ザイオンス効果をマーケティングに活用する具体例
ザイオンス効果は、マーケティングでも活用されています。その具体例をいくつか紹介します。
SNSでの情報発信
SNSでの情報発信は、ザイオンス効果を活用した効果的な企業の認知度アップ手法の一つです。
SNSは手軽に情報発信でき、多くのユーザーに対して接触頻度を増やせるツールです。たとえば、X(旧Twitter)の公式アカウント運用は、基本的に無料で行えます。短期間で何度も投稿できるので、ザイオンス効果との親和性も高いです。
また、情報が拡散した場合はより多くの人の目に留まるのもSNSの特徴です。そのタイミングで集中的にSNS内の広告配信を活用すれば、ザイオンス効果を得られることでしょう。
リターゲティング広告
リターゲティング広告もザイオンス効果と相性がよいです。
リターゲティング広告は、サイトに訪れたことのあるユーザーに対して配信される広告配信方法です。訪問経験のあるユーザーは、自社の商品やサービスに多少でも興味があると考えられます。そのようなユーザーに対して、リターゲティング広告により接触を繰り返すことで、ザイオンス効果により好感度を高め、ユーザーの獲得につなげやすくすることができます。
映像広告
テレビCMやYouTubeなどの動画広告も、ザイオンス効果を活用しやすいです。
テレビやYouTubeなどの動画サービスは、数多くの人が長時間視聴するコンテンツです。その中で何度も広告を配信できるため、ザイオンス効果も得やすくなります。
たとえば、動画広告の曲やキャッチコピーが頭に残り、それをつい口に出すという経験をした人は多いのではないでしょうか。最初は興味がなかったとしても、何となくその商品やサービスを試しに買ってみたという人もいるかもしれません。
このように、ザイオンス効果と映像広告は親和性が高いといえます。
タレントマネジメントシステムの活用
従来、人事業務は担当者の経験や勘に頼ることがほとんどでした。数値化できない部分を見抜ける可能性はあるものの、不公平感ある評価を生み出す原因にもなっていました。
タレントマネジメントシステムを活用すれば、従業員のデータが可視化されます。数値を用いた客観的に見極められるため、納得感ある人事評価を実現可能です。ザイオンス効果でもわかるように、親しい部下はよく見えるものです。しかし、その思い込みは不公平な人事評価や不適切な人材配置・育成につながりかねません。タレントマネジメントを活用し、従業員データという客観的エビデンスに基づいたより適切で戦略的な人材配置・育成も行っていきましょう。
関連リンク:【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法
ザイオンス効果を高めるためのコツ
ザイオンス効果を高めるために、覚えておきたいコツやポイントを紹介します。
関係性の構築を意識する
ザイオンス効果を高めるためには、相手との関係性の構築を意識することが大切です。
たとえば、初対面の顧客に対していきなり商品を勧め、その後も何度もしつこく勧めれば、どんどん悪い印象を持たれます。それではザイオンス効果は逆効果となるでしょう。
仮に営業活動においてザイオンス効果を高めるなら、まずは営業担当者としての自分に好印象を持ってもらうことが大切です。接触を繰り返して雑談を交わし、顧客と親しくなってある程度の関係性を構築します。好感度が高まった営業担当者に紹介された商品・サービスならば、顧客も好印象を持って受け入れやすくなります。相手の感情がプラスの状態から商品訴求をスタートできるので、ザイオンス効果も得られやすいでしょう。
価値ある情報を届ける
価値のある情報を継続的に届けることも、ザイオンス効果を高めるために有効です。
価値の低い情報では、ユーザーはすぐにその本質を見抜いてしまいます。そのため、ザイオンス効果の影響は、想定していたよりも低くなりやすいでしょう。
しかし、ユーザーにとって価値がある情報であればどうでしょうか。たとえば、割引情報はユーザーにとって利益・価値がある情報です。何度も繰り返しその情報に触れれば、「これはお得だ」と好印象を持ち、ファン化し購入につながる可能性が高まります。
アプローチ手法を工夫する
ザイオンス効果を高めるなら、アプローチ手法も工夫しましょう。
営業を例に取ると、
対面式の営業は、面と向かってコミュニケーションができるため、関係性を築きやすい傾向にあります。しかし、営業担当者が直接対応できる人数には限界があるものです。より多くの人にアプローチしたいという場合は、SNSやウェビナーなどのオンライン手法を活用するのがおすすめです。
ザイオンス効果を高めるには、接触回数を増やすことが必要です。オフライン・オンラインといった、アプローチ手法は関係ありません。そのため、より多くの人に対して訴求したいならば、オンラインを活用するなどの柔軟性を持つことが大切です。
まとめ
今回は、ザイオンス効果について解説しました。
ザイオンス効果は、接触回数が多い人や物に対して好意や興味・関心を抱きやすいという心理現象です。単純接触効果とも呼ばれ、短期間で繰り返し触れることで効果を発揮します。シンプルでわかりやすいため、マーケティングでも活用されています。本記事を参考に、ザイオンス効果をコミュニケーションやビジネスシーンで生かしていきましょう。
先入観をなくし公平で納得感のある人事業務を
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これまで人事評価は、経験や勘といった担当者の主観が大きく影響していました。しかし、ザイオンス効果でも明らかなように「親しい部下はよく見える」ものです。そのため、従来のような主観的な人事評価は、公平さや適切さに欠けるケースもあったといえます。
「HRMOSタレントマネジメントシステム」を活用し、エビデンスに基づいた、公平で納得感のある人事評価を実現しましょう。
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