ツァイガルニク効果とは? 恋愛や営業だけじゃない! 人事領域への具体的な活用法

私たちの日常生活やビジネスシーンにおいて、ツァイガルニク効果は無意識のうちに活用されています。

本記事では、ツァイガルニク効果の基本的な概念から、ビジネスや人事領域での実践的な活用方法まで解説していきます。特に注目したいのが、人材育成や採用活動における効果的な応用例です。心理学の知見を実務に落とし込む具体的なヒントが得られることでしょう。

ツァイガルニク効果とは

ツァイガルニク効果とは、日常生活やビジネスシーンのさまざまな場面で影響している心理現象です。ツァイガルニク効果の意味や言葉の由来を解説します。

ツァイガルニク効果の意味

人は未完了の課題や中断された作業を、完了したものよりも強く記憶にとどめる傾向があります。この現象をツァイガルニク効果と呼びます。

例えば、仕事で企画書が途中までしか完了せず気になって夜も眠れなかったり、ドラマの続きが気になって仕事に集中できなかったりする場面が一例です。これらの経験は、ツァイガルニク効果によるものと考えられます。

この効果は、マーケティングや教育など様々な分野で応用されており、人々の記憶や行動に影響を与える重要な心理学的概念として認識されています。

ツァイガルニク効果の由来

ツァイガルニク効果の由来は、ソビエト連邦の心理学者ブルーマ・ツァイガルニクといわれています。1920年代、ツァイガルニクは、レストランのウェイターたちが注文を受けてから配膳するまでの間、複雑な注文内容を正確に覚えているのに対し、配膳後にはすぐに忘れてしまう現象に着目しました。

この観察をきっかけに、彼女は一連の実験を実施。被験者に複数の課題を与え、一部を途中で中断させることで、未完了の作業は記憶に残りやすいという説を唱えました。この研究成果が、現在のツァイガルニク効果の理論的基盤となっています。

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ツァイガルニク効果はなぜ起きるのか

人間には本来、始めたことを完遂したいという基本的な欲求があります。この完遂への欲求が阻害されると、心理的リアクタンスと呼ばれる反発心が生じます。

つまり、制限や制約を受けると、かえってその対象への関心や執着が強まる心理が働くのです。

心理的リアクタンスとは、自分の行動を脅かされたり自由を奪われたりしたときに、自由を回復するように強く動機づけされた状態を指します。作業が途中で終わってしまうと「この作業が完了しなければ自分は自由になれない」と感じるため、心理的リアクタンスが高まるほどツァイガルニク効果に影響するといわれています。

日常生活におけるツァイガルニク効果の具体例

ツァイガルニク効果は、普段の生活の中で働いていることが多いです。恋愛、勉強、テレビなど日常生活におけるツァイガルニク効果の具体例について確認してみましょう。

恋愛

恋愛における未完了の状態は、相手への関心を高める効果があります。

例えば、SNSのやり取りが急に止まったり、既読がつかない状態が続いたりすると、何度もSNSを開いてしまうことがあるでしょう。返信を気にするうちに、相手への気持ちを高める要因となる場合は多いです。

勉強

勉強にツァイガルニク効果をうまく取り入れることで、知識の定着につながります。

例えば、難しい問題を解く途中で意図的に休憩を取ることで、脳が無意識のうちに解決策を模索し続けます。また、教材を章ごとに区切って学習することで、次の内容への期待感が生まれ、学習意欲の維持にもつながるでしょう。ツァイガルニク効果を意識的に活用することで、より効率的な学習サイクルを確立することができます。

テレビ番組

テレビ番組を見ていると、ドラマのラストシーンの一歩手前でCMになってしまい、早く続きを見たくて待ち切れない場面でもツァイガルニク効果が生かされています。

連続ドラマでは章立てをする際に、適度に「続きが気になる」要素を組み込むことで、視聴者の興味を持続させます。ミステリーや謎解き番組で、事件などの伏線を散りばめることで視聴者の関心を続かせることもツァイガルニク効果の応用例といえるでしょう。


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ビジネスシーンでのツァイガルニク効果の活用例

日常生活だけでなく、ビジネスシーンでもツァイガルニク効果は多数活用されています。ツァイガルニク効果を戦略的に活用することで、より効果的な成果を上げることが可能です。さまざまな場面での具体的な活用方法を見ていきましょう。

営業

営業活動において、商談をあえて複数回に分けることで、顧客の関心を持続させることができます。電話でアポイントを取ったときは概要のみを伝え、商談の1回目ではじっくり顧客の悩みをヒアリングしながら、解決の糸口だけ伝えます。次の商談で具体的な製品説明や提案を行い、クロージングに進むといった流れです。

1回ですべての情報を開示するよりも、ストーリーテリングを意識しながら、じっくりと信頼関係を構築することで「続きの提案が気になる」と期待感を高めることができるでしょう。

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広告

広告キャンペーンにおいて「続きはWebで」という手法や、ストーリー性のあるシリーズ広告は、ツァイガルニク効果を活用した典型的な例です。

具体的には、テレビCMで情報の一部を伝えて興味を喚起し、続きを動画チャンネルや公式サイトに誘導する方法が挙げられます。続きを知りたくてモヤモヤする気持ちを活用した手法といえるでしょう。

商品開発

商品開発の場面でも、ツァイガルニク効果を取り入れることが可能です。例えば、ITシステムの正式リリースの前に、ベータ版を期間限定で提供している場面を見たことがある方もいるでしょう。

ベータ版やお試し版を提供することで「この先もっとよい製品が開発されるのだろう」とユーザーの期待感を高め、製品への関心を強める効果があります。

あえて最初から完全版を提供しないことで、この製品が完成したらすごいに違いないと期待を抱かせ、製品のアップデートを心待ちにするユーザーを増やすことが可能です。

人事領域におけるツァイガルニク効果の応用例

人事領域では、従業員の成長支援や組織活性化においてツァイガルニク効果を応用できます。従業員の意欲向上と組織の生産性向上を両立させる、具体的なアプローチを見ていきましょう。

人材育成における段階的アプローチ

研修やセミナーのプログラムを適切な長さに分割し、各セッションの終わりに次回への期待感を持たせる工夫は効果的です。

1日かけて長時間の研修を行う場合は、あえて研修を複数回に区切って段階的にアプローチしましょう。一気に情報を伝えるよりも「午前に学習した内容をもとに、午後は実践形式で研修を行います」などと伝えれば、午前中の研修内容を記憶にとどめやすく、午後へのモチベーションを維持できると考えられます。

目標設定と評価サイクル

年間目標を四半期ごとの小目標に分割し、定期的な進捗確認と評価を行うことも、ツァイガルニク効果の応用となります。

小目標を設定することで「早く全部をやり遂げて自由になりたい」という気持ちが生まれ、従業員の意識を持続させることができるでしょう。

また、評価面談では完了した課題の振り返りと共に、次期に向けた新たな課題設定を行うことで、継続的な成長意欲を促進できます。

採用活動での情報開示戦略

採用プロセスにおいて、企業情報の開示を段階的に行うことで、応募者の動機づけを行うことも可能です。

カジュアル面談では、企業概要と自己紹介にとどめて、2回目は会食やイベントに招待して会社の魅力を伝えます。その後「あなたには期待をしているので後日、選考の詳細を改めて伝えたい」と、特別感を持たせつつ先の予定を調整することで、候補者の動機づけが可能になるでしょう。

ツァイガルニク効果のメリット

ツァイガルニク効果を適切に活用することで、組織と個人の両面でさまざまなメリットを得ることができます。ここでは、ツァイガルニク効果のメリットを解説します。

生産性向上

ツァイガルニク効果を用いると、タスクを適切に分割して進捗管理ができるため、従業員の集中力と作業効率が向上するメリットがあります。

未完了の作業が従業員の意識に残ることで、タスク完了への意欲が高まり、結果として生産性の向上につながります。また、中断のタイミングを戦略的に設定することで、休憩後の作業再開がスムーズになるでしょう。

モチベーション向上

適度な未完了感は、次の行動への原動力となります。

プロジェクトのマイルストーンを示し、目標達成までの道筋を段階的に描くことで「早く最後までプロジェクトを完成させたい」というモチベーションを導き出すことが可能です。

中長期的なプロジェクトにおいて、中間目標の設定と達成感の積み重ねが、モチベーション管理に効果的といえるでしょう。

記憶力と集中力の強化

ツァイガルニク効果を意識的に運用すれば、記憶力や集中力を高める効果も期待できます。

業務上の知識やスキルの習得過程において、適切な間隔で学習を中断することで、情報の定着率向上が期待できます。

また、あえて間隔をあけて知識習得や研修を行うことで、再開したときの集中力を高める効果もあります。

ツァイガルニク効果の注意点と対策

ツァイガルニク効果を多用しすぎることで、かえってストレスを感じてしまう可能性もあります。ツァイガルニク効果を取り入れる際の注意点と対策について説明します。

ストレス増加のリスク

未完了タスクが多すぎると、やり残したことが気になりすぎて、かえってストレスを感じる可能性もあります。

心理的な負担が蓄積すると、メンタルヘルスに悪影響を及ぼす場合もあるので注意が必要です。特に複数のプロジェクトが同時進行する場合や、締切が重なる状況では、適切なタスク管理が重要です。また、過度なプレッシャーはパフォーマンスの低下を招くことがあります。

モチベーション低下のリスク

未完了のタスクが蓄積していくと、ストレスがかかるだけでなく、モチベーションが下がってしまうリスクもあります。

いくら取り組んでも達成感を得られなかったり、調べても調べても終わりが見えなかったりすると、継続するモチベーションが低下してしまいます。適切な目標設定と進捗管理を行い、ゴールが見える状態を作るとよいでしょう。

ツァイガルニク効果を生かすためのテクニック

ツァイガルニク効果をより生かすために、具体的なテクニックと実践方法を紹介します。

タスク管理の最適化

ツァイガルニク効果を発揮させるためには、タスク管理が重要です。

特に大規模なプロジェクトでは、明確なマイルストーンを設定し、各段階での達成感と次のステップへの期待感のバランスを取ることが重要でしょう。

タスク管理の際は、デジタルツールを活用することで進捗状況の可視化と共有が容易になります。チーム全体での進捗共有は相互の刺激となり、「ここまでやれば達成できる」と先々のゴールを可視化できるため、モチベーション向上にもつながります。

フィードバックと継続的改善

効果的なフィードバックは、単なる評価にとどまらず、次のアクションへの明確な方向性を示すものでなければなりません。定期的なフィードバック面談では、達成した項目を明確に評価すると同時に、今後の成長に向けた具体的な課題を提示します。

特に重要なのは、フィードバックのタイミングと頻度です。

過度な頻繁のフィードバックは心理的負担となる一方、間隔があきすぎると効果が薄れてしまいます。

また、ポジティブフィードバックと改善点の指摘のバランスを取ることで、持続的な成長意欲を引き出すことができます。

適切な休憩時間の設定

ツァイガルニク効果を生かすためには、適度な休憩時間の設計も重要です。休憩時間が長すぎると、作業の連続性が失われ、ツァイガルニク効果が薄れてしまう可能性があります。一方で、「そろそろ休憩を取りたいな」という気持ちを抱いたときに、取り組んでいる課題が途中であれば、その時点で休憩を取ることでツァイガルニク効果を促すことができます。

このように、作業と休憩のバランスを適切に調整することで、ツァイガルニク効果を最大限に活用し、生産性を向上させることができるでしょう。

ツァイガルニク効果に類似する心理効果

ツァイガルニク効果以外にも、人の行動や記憶に影響を与える心理効果は多数存在します。ツァイガルニク効果と類似した心理効果を3つ、ご紹介します。

認知的不協和

認知的不協和とは、自分の考えと行動の間に矛盾が生じたときに生じる不安やストレスを指す言葉です。

例えば、タバコは身体に悪いと知りながら吸ってしまう状況は、タバコに害があると知っていることとタバコを吸っている事実の間に矛盾が生じるため、認知的不協和が発生します。

認知的不調和を解消するために「タバコはストレス解消になる」など認知を変化させたり、別の認知を加えたりします。認知的不調和は、ツァイガルニク効果と同様に、この不快感の解消に向けた動機づけが行動変容を促すことが特徴です。

<関連記事>認知的不協和とは?具体例や解消法と、マーケティングや人事施策への活用術を解説

カリギュラ効果

カリギュラ効果とは「やるな」「見るな」などと行動を禁止・制限されたときに、かえって見たくなってしまう心理効果のことです。

自分自身の行動を自由に決めたいという欲求を制限されることで、ストレスを感じるのです。カリギュラ効果では行動を禁止、制限されるのに対して、ツァイガルニク効果は未完了という点で微妙に異なります。

<関連記事>カリギュラ効果とは? 意味や具体例、注意点を解説

新近性効果(新近効果)

新近性効果(新近効果)とは、最近提示された情報をよく覚えている傾向のことです。

買い物に行った際に買い物リストを自宅に忘れたとしましょう。最後に書き留めた品目は覚えているかもしれませんが途中の品目は忘れがちです。あるいは今朝の朝食に何を食べたかを思い出すのにそれほど苦労しないかもしれませんが、一週間前に何を食べたかを思い出すのは困難です。

課題やタスクの未完了に対する記憶が残りやすいツァイガルニク効果とあわせて利用することで、より効果的な関係構築が可能になるでしょう。

まとめ

ツァイガルニク効果は、適切に活用することで組織の成長と個人の発展を促進する強力なツールとなります。ただし、その効果を最大限に引き出すためには、過度なストレスを与えないことや、細かなタスク管理が不可欠です。ツァイガルニク効果の特徴をおさえて、従業員の育成や採用活動に応用していきましょう。

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