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企業におけるオンボーディングとは、従業員の受け入れから定着をフォローし、いち早く戦力になることと早期の離職を防ぐ目的で行うものです。
人事にとって採用は非常に重要な仕事のひとつですが、人材採用をする本来の目的は、より良い人材に活躍してもらい会社の利益につなげることですよね。せっかく入社してもらっても、なかなか既存メンバーが期待していたパフォーマンスを発揮できなかったり、本人も馴染むことができずに不満を抱えて早期離職につながってしまっては意味がありません。
新しく入社した人材や異動したての人材の「活躍」を考えたとき、オンボーディングは大きな意味を持ちます。
1.オンボーディングとは
オンボーディングは、新卒・中途の新入社員や異動したメンバーに対して、新しい組織に早く馴染むと共に、早期の活躍を促すために行うもの。また同時に、早期の離職を防ぐ目的も含んでいます。
どのような施策を行うかは、企業によってさまざま。入社後スムーズに業務に入れるよう、貸与PCの設定やメールアドレスの用意を行っておくことを指したり、歓迎会の実施をオンボーディングに位置付ける企業もあります。
Visionalでは、新しいメンバーの本来のパフォーマンス引き出し、いち早く発揮してもらえるよう、育成や定着の仕組みを整え、オンボーディングに力を入れています。
ここからは、Visionalグループである、株式会社ビズリーチの事業部でビジネス職の方を採用する際に実際に行っている事例を参考にしながら、オンボーディングについてご説明していきます。
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2.オンボーディングのゴール
ビズリーチでは、オンボーディングの全体設計を行う以前に、まずはどのような状態であれば従業員が「当たり前に力を発揮」できるのかを、独自の調査とヒアリングに基づいて定義しました。
その結果、当たり前に力を発揮できる状態は、会社や周囲のメンバーに対する信頼が土台にあった上で、ビジョン・戦略・戦術など企業の根本的な部分と、業務遂行における仕組み、安全面やインフラ面の仕組みと、大きく3つのカテゴリに分けることができました。
つまりこの3つのカテゴリ全ての項目が満たされた状態に早く到達し、いち早く成果を発揮してもらうことを、オンボーディングの目的であり、ゴールとしています。
3.新メンバーに対するオンボーディング実施の流れ
オンボーディングの期間や実施内容は企業によってさまざまで正解はありませんが、例えばビズリーチでは先ほどの図の状態を満たすことを目指し、1年間かけて以下の4つのステップを踏んでオンボーディングを実施しています。
3-1.職場に適応する
・制度の理解
・マインドセットを整える
【例】
役員とコミュニケーションをとるためのウェルカムランチ
社内イントラでの新入社員紹介
3-2.社内の常識(インフラ)を知る
・社内ツールの理解
・適切な個人目標の設定
【例】
社内ツール/制度のインプットを実施
定期的な1on1
3-3.期待通りの仕事をするためのスキルを習得する
・商習慣を学ぶ
・職能スキルを得る
【例】
自主学習の支援ツール提供
充実した研修制度の整備
3-4.期待以上の仕事で周囲に良い影響を与える
・そのひとの持つ専門性を発揮して成果を出す
・社内外へのインパクトを与える
【例】
ランダムに選ばれたメンバー間でのランチ会実施
毎月の好事例を社内イントラで共有
このステップを踏まえた上で、新卒や中途、異動者に合わせて、それぞれをサポートするプログラムを組んでいます。(新卒採用では、別途新卒研修も実施しています。)
またこのステップを補強する目的と、さまざまな社員と多面的な接点を持ってもらうために、面談でのフォローにも力を入れています。
このように多方面の社員と接点を持つことで、同じチームのメンバーや上司には言いづらいことや、配属後のギャップ、不満などを溜め込まずに相談することができます。そのため不満を抱えて身動きが取れなくなったり、早期の退職を意識することなく、いち早く戦力になってもらうことができるのです。
また配属先のメンターやマネージャーだけが新しいメンバーに責任を負わず、多方面からサポートすることで、関わる全員と企業全体にとってのメリットにつながります。
パルスサーベイとは 毎月3〜10問程度の質問を行うことで、従業員の通常業務における仕事の取り組み具合や心の健康などを測定するのが、パルスサーベイ。同じ質問を短期間で繰り返すことでエンゲージメントの変化がわかりやすく、質問項目が少ないため回答率も高いのが特徴です。 従業員全員に実施するものですが、特に新メンバーにおいてはオンボーディングの成果や課題がわかりやすいため、実施することをおすすめします。
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4.オンボーディングは「適切な目標設定」から
いち早く成果をあげてもらうことがオンボーディングの目的とお伝えしました。では、そのためには何が必要でしょうか。
それは適切に設定された「目標」です。
どのような数値や状況を設定するかは各部署や職種によって異なりますが、新しいメンバーが入ってきたら、個人個人に合わせた「目標」を設定することと思います。
オンボーディングのゴールはどこか、途中経過は順調か、1年後にオンボーディングが「成功した」と言えるのか。これらの議論の起点になるのは、設定された目標なのです。
4-1.目標設定を正しく行う
適切な目標を設定する、というのはつまり、「成果が発揮できている状態」を正しく定義すること。
企業によっては目標とする数値と給与レンジを細かく設定し、入社時のスキルや経歴を鑑みて適切と思われるレンジに割り振っていることもあるでしょう。
そうでない限り、目標設定の基準は曖昧になりがちです。年齢や経歴だけでは判断できず、数値化のできないスキルであればなおさら難しくなります。
もし可能であれば、評価制度と目標設定が紐づけられ、社内で統一されたフォーマットを用意することをおすすめします。
もちろんいずれにしても、入社して初めに行う個人の目標設定は本人の今後を左右する重大なポイント。マネージャーと本人との面談や、時には事業部の責任者の意見も聞きながら、評価制度や本人のスキルと意向を加味して、適切な目標を設定しましょう。
目標設定と管理の手法のひとつであるMBOについて、以下の記事でも詳しく説明しています。
▼個人と組織、双方の目標達成が叶う。MBOとは?
4-2.目標達成に向けた伴走
新メンバーであるかどうかに関わらず、目標を達成するまでには周囲のサポートが必要です。
業務をしっかりと遂行し、目標を達成するために足りない情報や人脈、課題やトラブルがないかについて適宜フォローを続けましょう。
そのためにぜひ実施していただきたいのは、直属のマネージャーによる定期的な1on1です。
特に初めの数ヶ月間は、マネージャー側でも毎回の面談について目的を整理し、メンバー任せではなく自ら課題を聞き出すことを意識して、適切なフォローを行えるようにしてください。
▼1on1を成功させるポイント-実施方法や代表的な11のテーマをご紹介-
▼効果的な1on1を実現する20の質問事例
5. 新メンバーを「受け入れる側」がやるべきこと
オンボーディングは、新入社員・異動者にいち早く活躍してもらうために実施するもの。だからといって、「新しいメンバーに対して何かをする」だけで完結するものではありません。
実はオンボーディングをスムーズに実施し効果を発揮するには、「受け入れる側」の態勢も非常に重要な要素です。
採用人材の活躍についてVisionalが調査を行ったところ、「採用人材の活躍に最も/次に責任を持つべきなのは誰か?」という質問(選択式)に対し以下のような回答が得られました。
いずれも「現場の管理者」の回答が多数を占めており、採用人材の活躍に大きな責任を負っていると認識されています。
さらに求職者本人に対する質問でも、最も責任を持つべきは「現場の管理者」との回答が最多。つまり新しいメンバー本人を含めて、「新メンバーが活躍するには現場の管理者に大きな責任がある」ことは共通認識と言えます。
オンボーディングは、新しいメンバーがいち早く活躍するためのもの。したがってマネージャーを中心とした現場の受け入れ態勢も、重要だと言えるのです。
ではメンバーのオンボーディングにおいて、マネージャーにはどのようなフォローが必要でしょうか。
ビズリーチでは、入社や異動1年以内のメンバーについて定期的に状況を報告する「オンボード会議」を実施しています。
この会議には、新しいメンバーの直属の上司であるマネージャーはもちろん、採用チーム、事業部人事(HRBP)、部門長が参加します。
ここでメンバーがオンボーディングのどの段階にあるか、入社前後のギャップなどのトラブルがないかについて確認し、必要があれば各参加者からアドバイスやフォローが入ります。
また直属のマネージャー以外にも、3章でご紹介した面談で新メンバーに関わる社員には、各段階での目的に合わせて用意された質問項目に沿って面談を進めてもらうなどのフォローもしています。
このように新メンバー本人だけに何かを実施し努力してもらうのではなく、新メンバーと関わる周囲の社員にも適切なフォローをし、さらに情報の共有で連携することで、よりスムーズで効果的なオンボーディングを設計しているのです。
6.最後に
オンボーディングは、新たに入社したり異動したりした人材がいち早く「本来のパフォーマンス」を発揮できる状態になって活躍してもらうとともに、早期離職を防ぐ目的で行います。
大前提になるのは、「適切な目標設定」。本人が“成果が発揮できている状態”を正しく定義し、本人のスキルで達成が見込める目標を見極め、そこへ向かう道のりにおいて1on1などで細かく状況を把握しながら、オンボーディングを遂行することが重要です。
そこで大きな責任を負うのは、採用した人事ではなく現場の責任者であるマネージャー。マネージャーが中心となって、他のメンバーや事業部人事(HRBP)、部門なども巻き込みながら、新メンバーをサポートしていきましょう。
ことを意識してみてください。