多くの企業が採用したいと口を揃える「ハイパフォーマー」。人材不足により大量採用によって労働力が補えず、かつ従業員一人一人の生産性の向上が求められる現在において、社内の人材や新たに採用する人材に「ハイパフォーマー」として活躍してもらうことが、企業の人材戦略として重要視されています。
ではハイパフォーマーとは一体どのような人材で、どのようにすれば増やせるのでしょうか。本記事ではハイパフォーマーの定義や、採用・育成のポイントをご説明します。
1.ハイパフォーマーとは
ハイパフォーマーとは、一言でいうと「高い成果を上げる人材」のこと。優れたパフォーマンスを発揮し、求められた成果を出せる人材です。
ハイパフォーマーが多く在籍することは、単に一人あたりの成果が上がり、業績に寄与するだけではありません。高い成果を上げる人材が身近にいることで周囲の意識改革にもなり、組織全体の成果の底上げやチームワークの向上にもつながります。
「ELTV(Employee Life Time Value)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは日本語で言うと「従業員生涯価値」。ひとりの従業員が、入社してから退職するまでに生み出したアウトプットの総量を測る指標です。
縦軸がアウトプット(成果)、横軸が在籍期間を表しており、在籍期間中定期的に計測したアウトプットの点と点をつなげた部分の面積を、ELTVとして計算します。
ELTVの最大化を目指すための要素は2つあり、従業員のアウトプット(成果)を増やして縦軸の数値を伸ばすか、従業員に長く働いてもらうことで横軸の数値を伸ばすかです。
▼ELTV(従業員生涯価値)についてはこちらの記事もぜひご一読ください。
長く働いてもらうために必要なのは従業員満足度などエンゲージメントを向上させること、アウトプットを増やすためにはパフォーマンスを向上させることが必要です。
今回のテーマである「ハイパフォーマー」は、このアウトプットの数値が高い人材を指します。在籍期間に関わらず、より多くの成果を出せる人材についてこちらの記事では取り上げます。
2.ハイパフォーマーに共通点はあるか
高い成果を上げられる人材、ハイパフォーマー。ではハイパフォーマーと呼ばれる人材は、どのような特徴を持っているのでしょうか。
一般的にハイパフォーマーの特徴として挙げられるのは、以下のような点です。
・成果への意識が高い
・行動力がある
・コミュニケーション能力が高い
・ポジティブ
・周囲のメンバーからの信頼が厚い
・積極的に自己研鑽をしている
しかしこの特徴に当てはまっている人材が、必ずしも「全ての企業において」、あるいは「企業の全組織において」のハイパフォーマーとなり得るでしょうか。
ひとつの企業にはもちろん営業やマーケティング、経理や人事など、さまざまな部門があり、それぞれの部門でも複数の組織があります。それらのどこにいても必ず成果を発揮できる人材などいないことは、誰もが経験上認識していることでしょう。
また「高い成果を上げている」という前提条件も、営業であれば受注件数などイメージがつきやすいですが、バックオフィスやエンジニアの成果はどう測定するかも難しいポイントです。
つまり、ハイパフォーマーを採用したい、増やしたいと思ったとき、まず初めに必要なのは「自社(組織)にとってのハイパフォーマーを定義する」こと。自社が求めるものや、社風や文化によって、ハイパフォーマーの定義は変わってくるのです。
3.自社におけるハイパフォーマーの定義
自社にとってのハイパフォーマーを定義するには、まず自社内・各組織ごとなどのハイパフォーマーを分析することから始めます。
現在自社でハイパフォーマーとして活躍している人材には、どのような特徴があるのか。複数のハイパフォーマーにはどのような共通点があるのかを、要素分解して明らかにします。
このとき見るべきポイントは、「価値観」「スキル」「行動特性」などです。
またそもそも現在の自社におけるハイパフォーマーを見つけるには、現在と未来という軸で見る、以下のような基準も参考にしてみてください。
<実績での定義>
・直近のアウトプットの絶対値が大きい人
・入社してからこれまでのアウトプットの総量が大きい人
・期待されている役割に対して、出しているアウトプットが大きい人
<将来性での定義>
・現時点で期待されている役割が高い人
・成長速度が速い人
・ポテンシャルがある、将来大物になりそうな人
ハイパフォーマー分析についてはこちらの記事もご一読ください。
4.ハイパフォーマーを増やすには
自社にとってのハイパフォーマーを増やすには、適性のある人材の採用、あるいはすでにいる従業員の育成が必要。これは、初めにご説明したELTVの縦軸、アウトプットの数値を伸ばすことです。
ハイパフォーマーを正しく定義した後は、採用と育成で多少異なりますが、以下のようなステップで進めていきます。
【採用】
STEP 1:ハイパフォーマーの定義を人材要件へ反映する
自社におけるハイパフォーマーを正しく定義できたら、次はその定義を人材要件へ反映します。職種や組織ごとにハイパフォーマーの定義も異なりますから、それぞれについて人材要件を設定することが必要です。
STEP 2:採用活動
採用活動では、通常の採用活動・リファラル採用などに関わらず、ハイパフォーマーの定義から落とし込んだ人材要件を用いることで、採用したい人材像が明確になります。その人材像に基づいて選考時の見極めを行うことで、面接担当者による判断のブレも軽減させることができます。
【育成】
STEP 1:適切な目標管理と評価
ハイパフォーマーの前提となる「成果」は、適切に計測してこそ比較できます。そのためにはまず個人やチームに課される「目標」を適切に設定して管理し、また適切に評価を行うことが必要です。
STEP 2:パフォーマンスを上げるための研修実施
ハイパフォーマーの定義によって明らかになった要素を、研修などによって既存の従業員に習得してもらうことで、パフォーマンスを上げることができます。
5.最後に
ハイパフォーマーを増やしたい!と考えたとき、まずやってしまいがちなのは「他社で活躍している人材を採用する」ことですよね。
しかし大切なのは一歩立ち止まって、まず「自社にとってのハイパフォーマーとは?」を考えること。自社で活躍するELTVの高いハイパフォーマーを分析し、活躍につながる要素を洗い出して定義することで、採用すべき人材や、いまいる従業員の伸ばすべきスキルが明確になります。
ハイパフォーマーを定義する際には、自社内にいるハイパフォーマーや周囲のメンバーにインタビューを実施したり、データを参照しながらELTVを上げている要素を洗い出してみましょう。必ず客観的な目線で、多角的に議論することが重要です。