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OKRは大手企業も注目する目標管理手法のひとつです。達成難度の高い目標を設定することで、チームや社員のパフォーマンスの向上や企業成長を促すのに役立ちます。
本記事では、OKRの要素や導入するメリット、OKRとほかの管理手法との違いを解説し、OKRが向いている組織と向いていない組織、OKR運用サイクルの流れを紹介します。
OKRとは
OKR(Objectives and Key Results)は、目標と主要な成果指標の略称で、企業と個人の目標を重ね合わせて達成に導く目標管理の手法です。
元々はインテルで生まれた手法でしたが、投資家のジョン・ドーアがインテルで働いていたときにOKRに出会い、それをGoogleに紹介したことが世に知られるきっかけでした。
OKRは、組織と従業員が同じ方向に向かい、企業と従業員両方の目標達成のために優先順位をつけて重点課題に取り組みます。従来の目標管理手法に比べて、目標の設定から実行、評価、再設定のスパンが短いのが特徴です。
また、組織全体の目標と部門ごとの目標、チームや個人の目標までつながりを持たせ、それを可視化して全社で共有します。OKRを導入して活用することで、優先的な課題に組織全体で取り組むことが可能です。
OKRの要素|Objectives(目標)とKey Results(成果指標)

OKRは1つのObjectives(目標)に複数のKey Results(成果指標)が連なる形(ツリー状)で可視化されます。ここでは、OKRの要素となるObjectivesとKey Resultsについて解説します。
O(Objectives:目標)
Objectivesは組織や個人が達成を目指す目標です。OKRの目標は、定性的かつメンバーのモチベーションが高まるような、チャレンジングな目標設定にすることが望ましいとされています。
OKRで掲げる目標は、数値化できる定量目標でなくても差し支えありません。
また、目標の達成度を60%~70%程度に設定することで、メンバーやチームの心に火をつけることが可能です。
適度な負荷をかけて達成できるようなストレッチ目標を掲げつつも、具体性が高く、シンプルな目標設定にすることがポイントです。
KR(Key Results:成果指標)
Key Resultsは目標がどれだけ達成できたかを判断するための成果指標です。
目標の達成度合いを測定するため、計測可能な定量指標であることが求められます。
成果指標を設定する際は、3つ程度の指標に分けて、それぞれ2~5つの指標を設定します。ただし、数が多ければよいわけではなく、チーム内の認識をあわせやすいよう適切な数を設けましょう。
Key ResultsもObjectivesと同様に、背伸びすれば到達できるようなストレッチした成果指標を掲げることが重要です。
明らかに達成不可能な成果指標は避けて、チームの成長を促すような内容を検討するとよいでしょう。
OKRを運用する際によく利用される指標
OKRを運用する際、Objectives(目標)は達成難度によって2つの指標が用いられます。ほかにも、Key Results(成果指標)を測る「自信度」「達成度」の指標が現場では活用されています。
ここでは、OKRを運用する際に欠かせない指標を解説します。
ムーンショットとルーフショット
OKRにおける目標は、達成の難度によってムーンショットとルーフショットの2種類に分けられます。
ムーンショット
ムーンは月です。すなわち「月に届くほどのショット」という意味で、達成難度が高くて挑戦心をあおられるような目標を指します。
ムーンショットの達成難度は高いため、60~70%の達成をもって成功とみなすのが基本です。達成困難なムーンショットを設定することで従業員の努力や工夫を引き出し、イノベーションや業績アップにつなげることが期待できます。
しかし、「完璧でなくてよい」という意識を持たせてしまった場合は、モチベーションやパフォーマンスを下げてしまう可能性もあるため注意が必要です。
ルーフショット
「ルーフ」は文字通り「屋根」を意味し、比喩的に「手が届くかどうかの限界点」や「現在の能力をわずかに超える高い目標」を指します。
「ルーフ」目標は、決して不可能ではなく、適切な戦略と努力で十分に達成可能です。「少し背伸びをすれば手が届く」という絶妙な難易度設定が、達成意欲を刺激し、成長やブレイクスルーを促します。
ルーフショットは達成度100%が求められるため、設定する際はクライアントワークのような確実に達成しなければならない仕事に適しています。
また、OKRを導入したばかりで組織全体が慣れていない場合や、新入社員などで目標を達成すること自体に慣れていない場合にも、ルーフショットから始めるのがおすすめです。
自信度
自信度は、成果指標を達成できるかどうかの主観的な見通しを表す指標です。
例えば自信度を10段階で設定したときは、「自分には絶対できない」ほど自信がないなら自信度1に、「簡単に達成できる」という自信があるなら自信度10とします。成果指標は自信度がちょうど真ん中(10段階なら5)になる難度が望ましいとされます。
自信は本来定性的なものですが、自信度として定量化することで可視化が可能です。
自信度が高すぎるようなら成果指標の設定レベルを引き上げたり、自信度が低すぎるなら原因を分析して働き方の見直しや調整をしたりするといった対応がしやすくなります。
達成度
OKRの設定期間が終了したら、成果指標の達成度を評価します。
評価方法はパーセンテージ(0~100%)または0.0~1.0でスコアリングするのが主流です。成果指標のKRの平均スコアが目標であるOのスコアです。
OKRの結果は社員の人事評価に直接つながるわけではなく、そのときの目標のスコアが低かった場合は次のOKRを設定するときに役立てます。
このように、短期間で設定、実行、評価、再設定のPDCAサイクルを行っていくのがOKRの特徴です。
また、達成度のスコアリングはしないほうがよいという意見もあり、必ずしも点数化すべきというものではありません。
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OKRの具体例
企業では、どのようなOKRが設定されているのでしょうか。組織全体や部門ごとのOKRの設定事例を解説します。
組織全体でのOKR設定事例
組織全体のOKRを設定する際は、達成難度の高いチャレンジングな目標を掲げることが一般的です。
部門や個人のOKRを設定する際に、組織全体のOKRがベースとなるため、社内のモチベーションを高めるような挑戦的目標を設定します。
OKRの設定例
- O:市場において圧倒的な顧客価値を提供できる組織をつくる。
- KR:
- 顧客満足度のスコアを昨対比15%向上
- 主要プロダクトの継続利用率を20%向上
- 新規顧客の獲得数を10%向上
部門・チームでのOKR設定事例
組織全体で掲げた目標にひもづくような内容で、部門・チームのOKRを設定します。
定性的なOに対して、具体的かつ定量的なKRを掲げて、組織全体のOKRを達成するために部門・チームは何をすべきかを明確にします。
部門・チームの納得度が高まるよう、組織全体や部門のOKRを定める際は、現場の意見をヒアリングしてボトムアップ形式にすることも望ましいとされています。
OKRの設定例
- O:顧客に第一想起される部門を目指す。
- KR:
- 顧客からの問い合わせの際に初回満足度を90%以上にする。
- 部門の改善提案を月3件以上創出させる。
- 部門横断プロジェクトの参加率を60%以上にする。
個人でのOKR設定事例
組織全体と部門・チームのOKRが定まったら、その内容を各メンバーに伝達し、個人OKRを設定します。
設定の際、個人が好き勝手にOKRを掲げるのではなく、組織全体や部門の目標とリンクするように、マネジメントがフォローを行います。
OKRの設定例:
- O:年間売上を1.5倍にする。
- KR:
- 毎月の顧客接触数を1.2倍にする。
- 受注率を30%から35%に引き上げる。
- 既存顧客への提案を月5件以上創出する。
タレントマネジメントでOKRトラッキング
OKRを運用する際、タレントマネジメントでOKRをトラッキングすることで、目標設定から進捗管理、振り返りまでを一貫して管理できます。
組織全体・部門やチーム・個人レベルのOKRをタレントマネジメント上で登録・管理すれば、それぞれの目標の整合性をリアルタイムに可視化でき、達成率やKPI、進捗状況も自動で集計されます。
チーム間の連携状況や貢献度が把握しやすくなり、組織全体としての優先順位も明確になるでしょう。
また、週次レビューや上長コメント機能を活用すれば、目標の見直しや軌道修正をスピーディーに行え、OKR運用が形骸化するのを防ぐことが可能です。
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OKRを導入するメリットとは
インテルに始まり、GoogleやMeta(旧Facebook)、日本ではメルカリや花王がOKRを活用して成果を上げています。相次いで著名企業に導入されているOKRのメリットについて解説します。
組織の方向性を統一できる
企業の規模が大きくなったり、企業を取り巻く社会状況が急変したりすると、組織の意思統一が難しくなります。OKRを導入することで、企業の目標とチーム・個人の目標をつなげて可視化でき、短いスパンで改善を繰り返しながら方向性を一致させることが可能です。
短期間のサイクルで調整や変更がしやすい
OKRの目標サイクルは通常3カ月(1四半期)です。ほかの目標管理手法よりも1回の設定期間が短く、状況の変化に応じて調整や変更がききやすいという利点があります。
会社全体でコミュニケーションをとって連携できる
企業全体が共通のフォーマットで目標と達成指標を共有しているため、部署やチームを超えたコミュニケーションが生まれます。目標達成のために部門にとらわれない最適な連携も期待できます。
目標設定の効率化が図れる
OKRの場合はシンプルな目標にするのが望ましいこともあり、設定にあまり時間をかけなくてすみます。下層の目標は上層と連動して派生的に設定していけるため、ゼロから考える必要がありません。
チャレンジングな目標を設定できる
OKRは人事評価と切り離して運用する目標管理手法です。失敗しても直接的には評価に結びつかないため、大胆でチャレンジングな目標設定が可能になります。
チームや個人のパフォーマンスを引き出したり、向上心のある優秀な人材が集まったりする可能性が高まります。
社員のエンゲージメントを向上させる
OKRの導入により、個々の目標達成が企業全体の目標達成につながることを従業員一人一人が理解できるようになります。自分の仕事の意義が確認でき、組織の一員であるという意識が芽生えるでしょう。その意識が、企業に対する「愛着」や「思い入れ」の醸成へとつながっていきます。
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OKRとほかの目標管理手法の違い
目標管理手法は、OKR以外にもMBOやKPIがあります。ここでは、それぞれの目標管理手法の特徴とあわせて、OKRとの違いを解説します。
OKRとMBOの違い
MBO(Management by Objective)は「目標管理制度」などと訳されます。
ピーター・ドラッカーが1954年に提唱し、半年または1年に1回の頻度で目標の達成度を測定・評価する目標管理手法です。OKRとMBOの間には、下記のような5つの違いがあります。
目標管理の目的
OKRは、企業やチーム、個人を成長させるのが主な目的です。そのため、簡単には達成できないような高い目標を設定します。目標が達成できなかったからといって人事評価に影響するわけではありません。
対してMBOは、目標の達成度合いを人事評価に活用するのが目的です。
MBOで設定された目標が達成できない場合は、その従業員の報酬や昇進に影響があります。
評価の頻度
OKRが四半期かそれ以下の短期スパンで評価するのに対し、MBOでは半年から1年に1回程度の頻度で評価を行います。
OKRはパフォーマンスを高めることが目的であるため、短期間で柔軟に軌道修正をすることが可能です。一方、MBOは人事評価の目的があるため、ある程度の期間を持たせるほうが適しています。
ただし、事業環境の変化が激しいような場合に、従業員やチームが途中で軌道修正できず、達成度が下がって減点評価になる懸念があります。
達成度の測定方法
OKRは定性的な目標を設定しつつも、成果指標の達成度は定量的に評価・スコアリングします。
目標に対する最終的な評価も、成果指標の平均スコアから算出された数値で定量的に判断可能です。
MBOの測定方法は企業によって異なり、定量的、定性的、または両方を用いた評価が行われています。
定性的な評価を採用している場合、上司の主観が評価に影響してしまうことが懸念されます。
目標達成度の期待水準
OKRは達成困難な目標を設定するため、60~70%の達成率があれば成功とされます。100%の達成率が可能な目標は、パフォーマンスを向上させることが目的のOKRにおいては適切といえません。
一方、MBOは人事評価と結びつくため、期待される達成率は100%です。
100%に到達できなければ評価が下がるため、従業員が達成しやすい目標を設定するケースもあります。
個人目標の共有範囲
OKRは、企業の上層部から従業員一人一人までの目標がツリー状につながり、全体で共有されます。
企業全体で目標達成に向かう仕組みになっているOKRでは、全員がそれぞれの達成状況を把握し、連携することが必要です。
一方、MBOは従業員ごとに目標が設定され、上司と人事担当者の間だけで共有されます。OKRの個人目標のように全体には開示されません。
OKRとMBOの併用
サービスや事業成長に役立つOKRに興味はあるものの、人事評価に活用できないことが理由で導入に踏み切れないケースもあるかもしれません。
その場合は、人事評価に加えないチャレンジングな目標をOKRで設定し、達成率100%が必要で人事評価につながる目標をMBOで設定するとよいでしょう。
2つの目標管理手法を運用するのは大変ですが、うまく機能させることができれば苦労に見合った効果が期待できます。
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OKRとKPIの違い
KPI(Key Performance Indicator)は「重要業績評価指標」という意味で、最終目標であるKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)を達成するための「中間目標」となる目標管理手法です。
企業の定量的な目標に対してKPI設定は有効で、次のような場合に活用されています。
- マーケティングキャンペーンの進捗測定
- ビジネス健全性のモニタリング
- 成長パターンの分析や研究
- プロジェクトの課題解決
- 目標達成までの過程を明確化
ここでは、MBOと同様にOKRとKPIの違いについて説明します。
目標管理の目的
OKRは組織と従業員のパフォーマンスを高めることを目的として、定性的な目標を掲げ達成指標を設定します。
KPIは数値目標を設定してプロジェクトなどの進捗度合いを測定すること、つまりプロセス管理が目的です。
KPIはOKRにおける達成指標、すなわち成果指標と同じく定量的であるという共通点があります。
評価の頻度
OKRは1四半期以下の1~3カ月に1度のペースで評価を行いますが、KPIの評価頻度はプロジェクトによって異なります。プロジェクトのゴールであるKGIに複数のKPIが設定されます。
達成度の測定方法
OKRもKPIも達成度は定量的に評価します。定性評価を排除しているため客観的な評価が可能です。
目標達成度の期待水準
チャレンジングな目標を設定するOKRが60~70%の達成度を成功とみなすのに対し、KPIはMBOと同じく100%の達成が要求されます。
KPIは最終目標の達成に向けた中間目標であるという性質上、100%を目指さなければなりません。
個人目標の共有範囲
OKRでは個人目標を全社で共有することで、社内コミュニケーションの活性化や部署を超えた連携が期待できます。
KPIの共有範囲はプロジェクトチーム内か関連部署までにとどまり、全社的なコミュニケーションの促進までには至りません。
OKRとKPIの併用
OKRとKPIは併用が可能です。
一般的に、OKRの成果指標を確認する際にKPIが用いられます。企業全体の目標を掲げる際はOKRで整理を行い、具体的なアクションや進捗管理の際はKPIを用いるなど、使い分けるとよいでしょう。
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人事評価制度を補完する手法
OKRは企業成長を主眼とする手法であり人事評価には活用しません。人事評価制度を補完するものとして、ノーレーティングやコンピテンシー評価、360度評価といった手法を紹介します。
ノーレーティング</h3>
ノーレーティングとは、従業員に対して点数付けやランク付けを行わないことが特徴の人事評価制度です。上司が部下の業務への取り組みを把握することを目的として運用します。
対話を重視しながら目標設定やフィードバックを行う点がOKRとの共通点です。
コンピテンシー評価
高い業績を上げている従業員に共通する行動をコンピテンシーモデル(行動特性)として評価基準を作成し、個人の能力を評価する方法です。人事評価だけでなく人材育成や採用にも活用されています。
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360度評価
360度評価は、上司や同僚、部下など、対象従業員の周囲にいる全方位の人から評価する手法です。
さまざまな立場にいる人から多面的な評価を受けるため、上司一人の評価よりも客観性が高く本人も納得しやすい人事評価制度といえます。
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OKRが向いている組織と向いていない組織
OKRはメリットが多く、大手企業にならって取り入れる会社も増えてきています。しかし「最初はほとんどの企業が失敗する」といわれるほど、OKRの運用は難しいものです。事業モデルや事業フェーズ、組織風土によっては、OKRがそもそも向いていない企業もあります。ここでは、OKRが向いている組織と向いていない組織を紹介します。
OKRが向いている組織
OKRは新進的で成長スピードの速い組織や野心的で革新性を求める組織に向いています。例えば、次のような特徴のある企業はOKRが向いているでしょう。
- スタート企業や挑戦的な風土を持つ組織
- 新しいサービスや製品を生み出すことを目指す組織
- 社員から活発な意見が出やすい組織
- チームや部署を超えた連携がとれる組織
- 短いサイクルで試行錯誤を繰り返すアジャイル型組織
OKRが向いていない組織
OKRの運用には組織の成長意欲や社員同士のコミュニケーションが必要です。経営陣が保守的な組織や中央集権的な経営を行っている組織にも向いていません。もしOKRに向いていない組織に導入を検討しているのなら、OKRを運用しやすい組織の土壌づくりをするのが先決です。
次のような組織は、OKRの導入が不向きといえるでしょう。
- 事業が成熟してチャレンジングな目標を必要としない組織
- 社内で情報を共有しようという意識が低い組織
- 心理的安全性が低いなどの理由で社員が自由に発言できない組織
- 業務過多でOKRの運用まで手が回らない小規模組織
OKR運用サイクルの流れ
OKRの運用を大まかに分けると、OKRの設定と共有、継続的パフォーマンス管理、評価の3ステップです。ここでは、四半期を1つの区切りとしたOKRの運用サイクルの流れを詳しく説明します。
1.OKRの設定と共有
OKRの設定は、上層から順に行う必要があります。次の四半期が始まる1カ月ほど前から、経営陣が最上位のOKRをブレインストーミングします。
第1四半期のOKR設定のときには年間の事業計画も考慮します。また、経営陣だけで決めるのではなく、最上位の目標案を全社員からアンケートで集めたり、各部門からアイデアを募ったりする方法も効果的です。
四半期が始まる2週間前までに、企業全体の最上位OKRを完成させて、全社に展開します。フィードバックをはさんで、OKRを修正・調整することもあります。
最初の共有時にOKRを設定した意図や理由を丁寧に説明することが重要です。企業全体の最上位OKRに対する共通認識をつくっておけるかどうかが、下層のOKR設定や達成度に関わってきます。四半期が始まる頃に最上位のOKRに基づいて各部門またはチームでOKRを作成し、ミーティングで共有します。
OKRの責任者や各成果指標におけるコントリビューター(推進担当者)を決定し、責任者をおいて当事者意識を持たせることがOKRの達成度を高めるために不可欠です。チームOKR同士、あるいは最上位OKRとの整合性をチェックし、必要があれば修正します。チームのOKRが伝達されたら個人のOKRを設定して共有します。
マネージャーやメンバーと相談しながら個人のOKRを設定していきますが、達成度が60〜70%で成功とするような難度にするのが理想です。チーム内で各メンバーのOKRをチェックし、整合性が保たれているか確認します。
2.継続的パフォーマンス管理
OKRを設定・共有したあとは、推進担当者が四半期を通して進捗の測定と測定結果の共有をします。マネージャーは「継続的パフォーマンス管理」により、推進担当者が目標を達成できるようサポートします。
継続的パフォーマンス管理では「CFR」が重要です。
CFRはConversation(対話)、Feedback(フィードバック)、Recognition(承認)の頭文字で、それぞれ次に挙げるような役割があります。
- Conversation:目標設定と振り返り、継続的な進捗報告、双方向のコーチング、キャリア開発などを行う。
- Feedback:他者の意見で改善点を見つけ、パフォーマンスの向上や成長を促す。
- Recognition:従業員の満足度を上げ、エンゲージメントの上昇や離職率の低下を図る。
継続的パフォーマンス管理においては、透明性や責任、権限付与、チームワークを念頭に置いたコミュニケーション設計が推奨されます。
結果より過程に注目し、個人の強みを重視するのがポイントです。OKRで活用されるコミュニケーション設計として以下のようなものがあります。
1on1ミーティング
1on1は効果的なフィードバック手法として一般的にもよく用いられていますが、難度が高い目標を設定するOKRでは特に重要性が増します。
1on1の目的は、上司が部下の考えを聞くことによる「状況の把握」「成長の促進」「エンゲージメントの向上」です。
OKRではメンバーにはマネージャーによる1on1、マネージャーには経営陣による1on1といった形で、三者間を連携するサポート体制が敷かれます。
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チェックイン
チェックインとは、週1ペースで行う進捗確認の短い会議のことです。週の初めにOKRの進捗や自信度の確認と更新、現状の課題、次にすべきことについて1時間以内のミーティングをします。
チェックインの目的は、精神的・物理的な障壁を減らして目標達成をサポートすることです。結果をよりよくするためにどうしたらよいかを話し合います。
ウィンセッション
ウィンセッションとは、従業員同士が互いの進捗を褒め合うための会です。「勝者のセッション」と訳され、基本的には週の終わりである金曜の夕方に実施します。
ウィンセッションを行う際は、企業が軽食や飲みものを用意することもあります。
ウィンセッションの目的は頑張りを「承認」することです。進捗の大小にかかわらず認めあい賞賛しあうことで、エンゲージメントの維持や向上を図ります。
中間レビュー
設定期間の中間となる時期に全体的なレビューを行います。四半期の場合は1.5~2カ月が経過した時点でレビューを実施しましょう。
進捗の遅れやリソース配分の問題などがあれば、改善点を議論して軌道修正したり目標を変更したりします。
3.評価
設定期間の四半期が終わったら、推進担当者は自分のOKRを自己評価します。
10段階評価やパーセンテージでのスコアリングを行い、達成度を測ります。
達成度が高すぎた、または低すぎた場合には、次の四半期でOKR設定の見直しを検討します。
OKRの導入事例
OKRを導入した企業の事例を紹介します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリでは、他社企業に先駆けて2015年にOKRを導入しました。当時、日本では情報が少ない中で、英語の文献をリサーチしながら独自のOKR運用を続けてきました。
同社では、OKRが機能する条件として「組織・マネジメントに求められること」と「メンバーに求められること」の両輪を重視しています。
組織にはバリューの追求やボトムアップ体制、学びの促進が求められ、メンバーにはバリューへの共感や逆算思考、学びを次の行動に生かす向上心が求められます。
また、OKRは四半期ごとに全体OKRから個人OKRへと落とし込み、達成度ではなく、チャレンジングな目標にどう向き合い、全体OKRにどう貢献しようとしたかというプロセスを評価します。
そのためOKRは、単なる目標管理制度ではなく、組織として優先度の高い目標を達成するためのコミュニケーションツールとして位置づけられています。
Google LLC
Google LLCでは、インテル出身のジョン・ドーアが2000年代初めに、OKRとは何か、そしてOKRに基づいて会社を経営するとはどういうことかを経営陣に講義したことをきっかけに運用が始まりました。
OKRは、1つのObjective(目標)と、それを測定する3つ程度のKey Results(主な結果)で構成される、組織が目標に向かって前進するためのシンプルなプロセスです。
Googleでは、達成確率50%程度のストレッチゴールを設定し、OKRの達成度を0.0〜1.0で数値化するスコアリングを行い、四半期ごとに全社員へ公開しています。
OKRを基本的な枠組みとして活用することで、会社として本当に重要な局面で、やるべきことに集中できる状態をつくり、「世界中の情報を整理する」という大きなミッションに挑み続けるための経営の基盤としています。
大日本印刷株式会社
大日本印刷株式会社(DNP)では、従来のMBO制度にOKRの要素を組み込み、2021年4月に「DNP価値目標制度:DVO(DNP Value Objectives)制度」を導入しました。
DVO制度は、成果・プロセスの見える化やチーム意識の醸成、自律的キャリア支援を実現する「DNPにマッチした新しい価値目標制度」の確立を目的に構築されています。
個人MBOに加えて、チームが一体となって課題解決に取り組むOKRの考え方を取り入れ、ボトムアップでチーム目標を設定し、ストレッチ目標を前提としながら、毎週のチームミーティングや1on1ミーティングを併せて運用しています。
この制度を通して、明確な優先順位の共有、チームマネジメントの強化、信頼関係の構築を図り、激しい経営環境の変化への対応と、個を生かす経営とチーム力の向上を目指しています。
OKR導入で従業員のパフォーマンスとエンゲージメントの向上を図ろう
OKRとは、組織全体や部門、個人が一丸となって掲げたストレッチ目標を目指すことで、成長や一体感をもたらすフレームワークです。
OKRを導入する際は、各OKRの進捗を可視化し、整合性をとることが欠かせません。
タレントマネジメントシステムを活用しながら、OKRの設定や進捗確認、1on1ミーティングとの連動をスムーズに実施していきましょう。
HRMOSタレントマネジメントでOKRを効率的に運用しよう
OKRは、組織全体や部門、メンバーそれぞれの目標や成果指標を関連付けて運用することが欠かせません。
目標に向かう途中で、本来行くべき方向性がずれてしまい、各OKRの内容に齟齬が生じてしまうこともあるでしょう。
HRMOSタレントマネジメントでOKRをトラッキングすれば、全社・部門・個人レベルの目標の整合性をリアルタイムに可視化でき、進捗や達成状況を踏まえた軌道修正が可能になります。
さらに、HRMOSタレントマネジメントの1on1機能と連動させることで、挑戦的な目標に対する対話やフィードバックが継続的に行われ、OKRを形骸化させることなく、組織の成長につなげることができます。
ぜひ、HRMOSタレントマネジメントの機能一覧をご確認ください。
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