バンドワゴン効果とは?アンダードッグ効果など関連した効果も含めてわかりやすく解説

バンドワゴン効果とは、勝負事で有利な側を選び、勝利に便乗することを意味する言葉です。いわゆる「勝ち馬に乗る」という現象で、選挙の際に優勢と言われている候補者・政党に表が集まるのもバンドワゴン効果の影響と言われています。

本記事では、バンドワゴン効果の意味や原因を解説した後、バンドワゴン効果と関連した心理効果や日常で起きるバンドワゴン効果の具体例をご紹介します。バンドワゴン効果を企業のマーケティング活動に取り入れた例もあわせて解説するので、ぜひ最後までご一読ください。

バンドワゴン効果とは?

バンドワゴン効果は、大勢の人が支持している行動や意見に影響され、多数派に同調する現象を指します。バンドワゴン効果は意思決定に関する認知バイアスの一種で、政治や人々の消費行動、ファッション、投資など、さまざまな分野で見られます。

バンドワゴン効果は、選挙の際にバンド(楽隊)を乗せたキャンペーンカーに票が多く集まったことが語源とされています。ある商品が人気を集めると、その人気に引きずられてさらに多くの人がその商品を欲しがるように、バンドワゴン効果は身近なところにあるものです。

この効果は、「流行に乗り遅れたくない」「勝ち馬に乗りたい」といった人間心理をついたもので、ときには合理的な判断を鈍らせるなど、個人の意思決定に大きな影響を与えます。

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バンドワゴン効果を実証した実験

バンドワゴン効果を実証した代表的な実験に、ソロモン・アッシュ(Solomon Asch [1907-1996] )の同調実験が挙げられます。ポーランド出身でアメリカの社会学者であったアッシュは、1950年代に次のような実験を行いました。

【ソロモン・アッシュの同調実験】

アッシュは1本の基準線を示し、その基準線と同じ長さの線を3本の選択肢から選ばせるという単純な課題を参加者に与えた。実験協力者には、意図的に間違った答えを言うように指示を出していた。

【結果】

何も知らない被験者のうち約3割の回答に同調が起こった。多数派の人数を変えて数回試したところ、3人以上の多数派なら少数派の同調行動が起こることが確認された。また、多数派のうち一人でも違う意見を言うと、同調が起こりにくくなることが確認され、この現象は「斉一性の原理」と呼ばれるようになった。

この実験では、被験者の中に「サクラ」を数名混ぜることで行われ、社会的影響が個人の判断に大きな影響を与えることを示しました。

バンドワゴン効果が起きる原因

バンドワゴン効果が起きる背景には、人間の社会的な欲求があると考えられています。人間は社会的な存在として、集団に所属し、受け入れられたいという欲求を持っており、この欲求は多数派に同調することで満たされます。多数派と異なる意見を持つことで感じる不快感を避けるため、無意識のうちに多数派と同調してしまうのです。

また、多数の他者の考えや行動を参考にして自分の意思を決めることで、情報収集のコストを減らしたいという考えも原因の一つとなるでしょう。

なお、被験者が集団の圧力下に置かれると、大脳の前頭前皮質前部 (a-PFC)、特に左側の前頭極付近の活動が高まるという実験結果があり、これは前頭前野内側部が社会性判断に関与するという先行研究結果と一致するそうです。


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バンドワゴン効果に関連した効果

バンドワゴン効果に関連する心理効果を理解すると、日々の意思決定を見直せるだけでなく、ビジネスシーンでの認知のゆがみを軽減できます。ここでは、逆バンドワゴン効果、アンダードッグ効果、ヴェブレン効果の3つを取り上げて解説します。

逆バンドワゴン効果(スノッブ効果)

逆バンドワゴン効果(スノッブ効果)とは、「他の人が持っている物はほしくない」という心理で、バンドワゴン効果とは正反対の現象を指します。逆バンドワゴン効果が働くと、人々は多数派の選択を意図的に避け、少数派の意見や独自の選択を指示する傾向があります。

例えば、ある商品が人気になればなるほど、一部の消費者はその商品を避け、もっとユニークで希少性の高い商品を求めるようになります。「みんなが買っているから私も買おう」というバンドワゴン効果は、人々の「周囲と同調・同質化」という性質が表れたものですが、逆バンドワゴン効果は「周囲の人とは差別化したい」という相反する性質が影響しています。

このように、人間は同調と差別化という相反する2つの思考をもとに、さまざまな意思決定をくだしていると言えます。ただ、この2つの志向がどのように表れるかを追求した研究は少ないそうです。

アンダードッグ効果

アンダードッグ効果は、立場が弱いまたは劣勢にある者に同情し、支持する傾向を指します。選挙の際に、劣勢と予測された候補者や政党に票が集まるような状況を指し、「負け犬効果」とも呼ばれます。日本人にとっては「判官贔屓(ほうがんびいき)」という言葉がなじみ深いかもしれません。

選挙だけでなく、スポーツの試合で明らかに実力が劣っているチームや選手に対して、多くの応援が集まる場面があるでしょう。これには、人々の公平性や正義を重視する心理が影響していると考えられます。また、立場が弱い者と自分自身を重ねることで、劣勢の者の成功に期待をする心理も関係しています。

なお、ビジネスシーンではアンダードッグ効果を活用して、「街中の小さな企業が大手企業に挑戦する」といったストーリーを描き、マーケティングに役立てるケースも見られます。

ヴェブレン効果

ヴェブレン効果は、経済学者ソースタイン・ヴェブレン(Thorstein Bunde Veblen [1857-1929] )の名に由来し、商品の価格が高くなるほど購買意欲が高まる現象を指します。経済学の常識で見ると、価格が高くなると需要は減少するのが一般的ですが、ヴェブレン効果がはたらくと需要曲線とは全く逆の関係を示すことになります。

ヴェブレン効果が起きる背景には、「高価格な商品=希少性が高い」と認識されることや、消費者が自身の社会的地位や富を誇示したいという欲求があります。高い商品を購入することで、自身の社会的ステータスを表現できると考えられています。

ヴェブレン効果は、特に貴金属やラグジュアリーブランドのマーケティング戦略で用いられています。

日常生活におけるバンドワゴン効果の具体例

バンドワゴン効果は、政治、スポーツ、ビジネスシーンなどさまざまな日常シーンで見られます。日常生活におけるバンドワゴン効果の理解を深めて、自身の行動をより客観的に分析し、ご自身の意思決定に活かしてみてください。

行列のできる飲食店

行列のできる飲食店に並びたくなる心理は、バンドワゴン効果の代表例です。街中を歩いている際、似たような飲食店が複数あったとしても、つい人気な店を選んでしまうことがあるでしょう。

外まで行列ができるほど賑わっていて混雑していても、バンドワゴン効果によって「みんなが選んでいるから美味しいはず」という推論が働きます。たまたま同じタイミングで数組のお客さんが集まっただけでも、その後の客入りに大きな影響をもたらすかもしれません。

必ずしも多数が選ぶお店が美味しい、安い、居心地が良いといった根拠はないものの、バンドワゴン効果によって客入りが左右されるのはよくあることです。

SNS・インフルエンサー

ファッショントレンドにおけるバンドワゴン効果は、SNS活用が盛んな若者の間で顕著に見られます。例えば、ある有名タレントやインフルエンサーが着用した服やコスメなどがまたたく間に人気になり、多くの人が真似る現象がよく起こります。

これは、まさに他者との同調を求めるバンドワゴン効果によるもので、「流行に遅れたくない」という心理から生じます。

SNSの普及によりリアルタイムで情報が共有されるため、流行が伝播しやすく、多くの企業がSNSやインフルエンサーを用いたマーケティング戦略を取り入れています。

政治・選挙

政治・選挙への影響は、バンドワゴン効果の代表例です。選挙の際は、マスメディアやSNSの情報、世論調査の結果などを見て、多数派の政党を支持する傾向がみられます。

これはまさに「勝ち馬に乗りたい」という心理が働いており、「多数派の意見は正しいはず」という同調行動です。

街中の選挙カーの演説で群衆ができていると「人が集まっている政治家なら良いだろう」と、無意識のうちにバンドワゴン効果によって評価をくだしてしまうものです。また、SNSの普及により、著名人が投稿した情報や意見に便乗するケースも見られ、バンドワゴン効果の影響を排除することは難しいと言えるでしょう。


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マーケティングで活用されるバンドワゴン効果の具体例

マーケティングの分野では、多くの企業がバンドワゴン効果を活用して、消費者の購買行動を促進しています。ここでは、マーケティング戦略におけるバンドワゴン効果の活用例を2つご紹介します。

インフルエンサーマーケティング

ソーシャルメディアを活用したインフルエンサーマーケティングは、バンドワゴン効果を最大限に利用した戦略の一例です。芸能人やタレント、モデルなどの著名人やインフルエンサーが特定の商品・サービスを使用し、その様子をSNSで発信することで、多くのフォロワーが商品・サービスに興味を持って購買につながります。

著名人やインフルエンサーに憧れをもち、「あの人のようになりたい」という同調心理を活かした戦略と言えます。バンドワゴン効果を活用したインフルエンサーマーケティングの効果を高めるためには、複数のインフルエンサーを同時に起用し、SNSやメディアで複数回とりあげてもらうなど、「流行している」という印象を演出します。

InstagramやXなどのSNS機能を活用して、ハッシュタグキャンペーン・リポストキャンペーンなどを交えて「バズり」を起こすことで、大きなバンドワゴン効果を生み出すことができるでしょう。

限定商品・先行予約

期間限定の商品や、一部の人にだけ先行予約ができるマーケティング施策もバンドワゴン効果を活用したものです。例えば、スマートフォンの新機種や限定品の販売などで見られる長蛇の列は、商品の人気を可視化して購買意欲を高めます。長蛇の列に並ぶ人々の姿をメディアで放映することで、さらなる需要を喚起し、バンドワゴン効果が生じます。

また、ECサイトでの「残り〇個」「〇人がこの商品を検討中」といった表示も、商品の人気と希少性をアピールして、バンドワゴン効果を高めます。これらのマーケティング戦略は、人々の同調性バイアスを刺激し、「人気がある」「みんなが欲しがっている」という印象を与えて、バンドワゴン効果を最大限に活用しているのです。

バンドワゴン効果を活用する3つのポイント

バンドワゴン効果を効果的に活用するためには、人々の心理を深く理解し、適切な戦略を立てることが重要です。ここでは、バンドワゴン効果をビジネスシーンで活用するポイントを解説します。

1.客観的数値・データを活用する

バンドワゴン効果を活用する際は、客観的な数値やデータを示し、社会的に人気があることのエビデンスを提示することが大切です。単に「人気がある」と主張するだけでなく、具体的な数字やデータ、第三者からの評価を示すことで効果が高まります。

例えば、「毎日長蛇の列ができる人気なお店」ではなく「1日〇〇〇食限定!1か月〇千人が食べる大ヒットのラーメン屋」「〇〇タレントのイチオシ!リピート率〇%のコスメ」など、第3者情報や具体的な数値を示すことで、客観性・信憑性が高まります。

なお、数値やデータを水増ししたり、虚偽の情報を使ったりすると、法的なトラブルへの発展や社会的信用を失うリスクがあるでしょう。正しいデータを用いて、バンドワゴン効果を生み出すことが大切です。

2.タイミングとスピード

バンドワゴン効果を活用する二つ目のポイントは、タイミングとスピード感の意識です。ソーシャルメディアが台頭する昨今では、トレンドの移り変わりが非常に早くなっています。適切なタイミングを狙ってまとめてキャンペーンを仕掛けたり、短期間でスピーディーに同調させる仕組みをつくらなければ、バンドワゴン効果を十分に得ることは難しいでしょう。

適切なタイミングを選ぶなら、季節イベントや社会イベントに合わせてスケジューリングするのもおすすめです。また、スピードを早めるためには、「先着〇名様限定」「期間限定」といった時間的制約を設ける方法も有効でしょう。

3.顧客参加型

バンドワゴン効果を活用する三つ目のポイントは、顧客を巻き込んだマーケティング施策を展開することもポイントです。

多くの消費者は、インフルエンサーのPR戦略に慣れているため、ただ単純に著名人をキャスティングするだけでは効果が得られにくいでしょう。そこで、インフルエンサーを起点にしつつも、一般消費者が参加できるような施策を行い、投稿や口コミを集めて安心感を醸成することが大切です。

例えば、アイドルのオーディションからチーム結成までの過程で、一般消費者の人気投票を設けるのもバンドワゴン効果を活かしたマーケティング手法と言えるでしょう。「あの人が応援しているから私も応援したい」という同調心理を使いながらも、投票という能動的なアクションを引き出し、デビュー前にロイヤル顧客を生み出すことが可能になります。

人事担当者がバンドワゴン効果で意識したいポイント

バンドワゴン効果は、企業のマーケティング活動に活かせる魅力がある一方で、人事担当者の仕事に悪影響を及ぼす可能性があります。採用や人事評価のシーンで、バンドワゴン効果に惑わされないようするための注意点を解説します。

客観的な評価基準を設定する

採用プロセスにおいて、著名な企業出身の候補者や、他の面接官評価が高かった人材ばかりに着目しないよう注意が必要です。「あの有名企業出身者は、他の企業でも多数活躍しているはずだ」「他の面接官みんなが良いというなら間違いないだろう」と、バンドワゴン効果によって、正しい判断ができない可能性があるでしょう。

バンドワゴン効果に流されないために、事前に客観的な評価基準を設定することが重要です。

多様性を重視した組織文化をつくる

組織文化の形成において、多数派の意見ばかりを重視しないよう注意が必要です。例えば、人数の多いプロパー社員の意見にばかり注目して少数派の中途入社者の意見を重要視していない、社内で人数の多い営業職の意見を聞くのに人数の少ないバックオフィスの意見は聞かないなど、無意識のうちに多数派に偏る場合があります。バンドワゴン効果に気付かないと、社内で価値観・文化の偏りが生じてしまうリスクがあるでしょう。多様性を引き出せるような人事制度・仕組みをつくり、バンドワゴン効果の影響を最小限にすることが重要です。

独立した意思決定プロセスを確立する

採用や評価など、重要な意思決定の際には、多数派の意見や業界のトレンドに惑わされないように注意が必要です。バンドワゴン効果に影響されないよう、周囲の意見が見えないような意思決定プロセスを取り入れたり、独立した意思決定機関を設けたりすると有効です。匿名での意見収集や、反対意見の収集などを行い、適切な判断ができる仕組みをつくりましょう。

タレントマネジメントシステムの活用

タレントマネジメントシステムは、バンドワゴン効果による影響を軽減し、人事担当者の合理的な意思決定をサポートします。「社員の多くが評価しているから」など、同調心理による不合理な判断を防ぐには、タレマネシステムによるデータドリブンな経営が必須です。

<関連記事>【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法

まとめ

人間の同調心理に基づいたバンドワゴン効果は、政治・消費活動・ビジネスシーンなどで身近に見られる現象です。ビジネスシーンでは、特にマーケティング活動においてバンドワゴン効果を活用することが多く、SNSを用いたインフルエンサーマーケティングなどが代表例です。

マーケティングに活かせる一方で、バンドワゴン効果により、人事担当者がゆがんだ意思決定をくだしてしまうリスクもあります。バンドワゴン効果を適切に活用、抑制していくには、客観的かつ事実に基づくデータ活用が欠かせません。

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