ウィンザー効果とは?職場や恋愛で活用するポイントをわかりやすく解説

買い物で、こんな経験はありませんか?店員さんに「これがおすすめです」と言われるより、友達に「これ、買ったほうがいいよ」と言われた方が、つい買いたくなってしまう。

この現象は「ウィンザー効果」という心理が関係しているかもしれません。

この記事では、ウィンザー効果について詳しく解説します。日常生活での具体的な例や、会社での人事評価にどのように影響するのか、そして、この効果を上手に活用するためのポイントなどをお伝えします。

ウィンザー効果とは?

ウィンザー効果とは、第三者の情報は直接的な情報よりも信頼されやすいという心理効果です。たとえば、当事者である企業が自社製品を宣伝しても、消費者から「どうせ宣伝でしょ」と信用されないことがあります。

しかし、第三者である利用者がその製品を使った使用感をレビューした場合には、消費者はその情報を信頼するため購入意欲が高まる傾向があります。日常生活では、レストランの口コミを確認してから予約したり、商品のレビューを読んでから購入を決めたりする行動がよく見られます。これがまさにウィンザー効果の例です。

ウィンザー効果は、作家アーリーン・ロマネスの小説『伯爵夫人はスパイ』に登場するウィンザー伯爵夫人のセリフ「第三者の褒め言葉が何よりも効果的なのよ」に由来しています。

ウィンザー効果の仕組み

ウィンザー効果は、発信者と受信者の利害関係に大きく依存しています。

当事者が自ら発信する場合、その情報には発信者の利益が絡むため、受信者はその情報の信憑性を疑われやすくなります。しかし、第三者が発信する情報は、発信者と受信者の間に直接的な利害関係がないため、その情報が中立的であると受け取られやすくなるのです。

営業担当者から商品を勧められるよりも、友人から勧められた方が購入したいと思えるのがよい例です。「営業担当者は売りたいと思っているから良いことばかり言っている」と疑ってしまいます。

しかし、友人がその商品を勧めたところで友人には何の利益もありません。そのため「信頼できる情報である」と思うのです。さらに、その第三者の信頼度が高いほど、ウィンザー効果が強まると考えられています。

このように、ウィンザー効果は、情報の発信源とその信頼性にもとづいて効果が現れる仕組みになっています。第三者からの情報が、直接的な利害関係のない中立的な立場から発信されていると認識されることで、その情報の信頼性が高まるのです。

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日常生活で見られるウィンザー効果の具体例

私たちの日常生活で見られるウィンザー効果の具体例を見ていきましょう。以下の3つを例として取り上げます。

  • 職場
  • 恋愛
  • 口コミ

職場

職場におけるウィンザー効果は評価にも現れます。上司が部下を褒める際に、直接褒めるよりも、「同僚のAさんも君の仕事ぶりを高く評価していたよ」と伝える方が、より言葉に信憑性が出ます。

また上司から直接褒められることも評価されていると感じられますが、「自分を頑張らせるためのお世辞だろう」と捉えられる可能性があります。しかし同僚から「上司が君のことを褒めていたよ」と伝えられるケースの場合には信じやすくなることがあります。これは、第三者となる同僚との間に利害関係がないためです。

恋愛

恋愛の場面でも、ウィンザー効果は大きな役割を果たします。

例えば、これまであまり気にしていなかった人物Aさんについて、共通の友人から「Aさんは優しくて素敵な人だよ」と聞いたとします。このような第三者からの情報により、Aさんに対する印象が良くなり、以前より意識するようになることがあります。これは、利害関係のない第三者からの評価の方が信憑性が高く、信頼しやすいためです。

このような現象から、恋愛において直接相手に好意を伝えるよりも、共通の友人を介して間接的に好意を伝える方が効果的な場合があります。つまり、ウィンザー効果は恋愛における人間関係の構築や印象形成に大きな影響を与えているのです。

口コミ

口コミではウィンザー効果が最も顕著に現れます。

商品やサービスの評価は公式情報よりも、利用者による口コミの方が信頼されやすい傾向があります。例えばレストランを選ぶ際、お店からの情報よりも実際に食べた人の口コミを見て決めた経験がある方もいるのではないでしょうか。

また、ネットショッピングや通販では、ウィンザー効果が購買の意思決定に大きな影響を与えます。商品ページに掲載されている口コミやレビューの数が多いほど、その商品の信頼性が高まり購入につながりやすくなるのです。

ウィンザー効果をマーケティングに活用する具体例

ウィンザー効果を活用することで、消費者の信頼を得やすくなる効果が期待できます。マーケティングにおける具体的な活用例を見ていきましょう。以下の5つの例を紹介します。

  • インフルエンサー
  • アンケート
  • PR活動
  • インタビュー
  • モニター

インフルエンサー

インフルエンサーマーケティングは、ウィンザー効果を活用する代表的な手法のひとつです。

インフルエンサーとは、SNSやブログなどで多くのフォロワーを持ち、その発信が大きな影響力を持つ人物を指します。企業がインフルエンサーに自社製品を紹介してもらうことで、消費者はその製品の購入意欲が高まる効果があります。

たとえば、化粧品を販売する企業が、人気のある美容系インフルエンサーに製品を試してもらい、そのレビューを発信してもらうなどです。レビューを見たフォロワーは、インフルエンサーを信頼し「この人が勧めるなら間違いない」と思い、購入する可能性が高まります。

インフルエンサーによる「実際に使用して効果を実感した」という情報は、消費者にとって企業の広告よりも信憑性が高いと感じられるためです。また、人物の選定も重要です。影響力が強いインフルエンサーを選ぶことで、ウィンザー効果を最大限に引き出すことができます。

アンケート

アンケート調査でもウィンザー効果を活用できます。利用者にアンケートを実施し、その結果を公表することで製品やサービスの信頼性を高める手法です。

たとえば、商品を使ってくれた人に、使用後の感想についてアンケートに回答してもらいます。その結果を企業のホームページやパンフレットに掲載することで、まだ使ったことのない人に対して製品の信頼性をアピールするなどです。

具体的な数値やコメントが含まれるアンケート結果は、より信頼性が高く感じられるでしょう。アンケート調査のメリットは、改善点が見つかりやすい点です。アンケートをもとに改良や改善を行うことで、企業の姿勢や誠実さをアピールすることもできます。

そうすることで、さらに信頼を深められるでしょう。

メディアによるPR

メディアによるPRもウィンザー効果を活用した効果的なマーケティング手法のひとつです。たとえば、商品がニュース番組で取り上げられることで、信頼性と影響力を持たせることができます。

ニュース番組の場合は、一般的に情報の発信元に利益が発生しません。利害関係がないため、ウィンザー効果が働き信憑性が高まりやすくなるのです。

インタビュー

インタビューでウィンザー効果を活用する方法もあります。

サービスの利用者や著名人などにインタビューを行い、内容を公開することで、第三者の視点から商品やサービスの価値を伝えることが可能です。インタビューは、回答の内容に応じて質問を変更できるため、伝えたい情報を深掘りできるメリットがあります。

また、インタビュー対象者を誰にするかも重要です。たとえば、製品を使って欲しいターゲット層へのインタビューと、専門家へのインタビューでは、内容は同じでも効果が変わります。

モニター

モニターは口コミに似ています。モニターは一般の消費者に商品やサービスを実際に体験してもらい、その感想や評価を公開する手法です。たとえば、新商品を一定期間使用してもらい、使用感についてのレポートを公開することで、潜在顧客に対して商品の価値を伝えることができます。

モニターに参加する人は、その商品に興味を持っている人が多いため、より積極的な意見を聞ける点がメリットです。また、参加者から確実にフィードバックが回収できるメリットもあります。

人事分野でのウィンザー効果の実践

ウィンザー効果は、人事分野においても効果を活用することで、採用や評価の質を向上させることが可能です。

以下に具体例を3つ紹介します。

  • 求人広告
  • フィードバック
  • 採用

求人広告

求人広告でもウィンザー効果を活用できます。転職エージェントなど第三者を通じた求人活動を行う手法です。自社の採用ページで求人を掲載する場合「会社の良いところしか掲載されていない」と感じる人もいるでしょう。

一方、転職エージェントを通じた求人の場合は、第三者の立場で詳細を伝えるため、より信頼性があります。転職エージェントは複数の企業と取引があるため、特定の企業に偏った情報を提供するリスクが低く、求人の作成では実際に採用担当者にヒアリングを行った上で作成されており、客観的に判断されているため信用されやすいのです。そのため求職者は、第三者からの情報をより信頼する傾向があります。

フィードバック

評価制度において、ウィンザー効果の活用は、従業員のモチベーション向上や公平な評価の実現に大きく影響します。たとえば、直属の上司による評価ではなく、同僚や他部門からの評価を含めることで、多角的な視点からのフィードバックを受けることとなり、改善点をより客観的に認識しやすくなり、モチベーションアップにつながりやすくなるでしょう。

360度評価のような多角的で客観的な評価システムは、第三者からの評価を含むため信憑性が高く、ウィンザー効果を生み出しやすいです。

採用

採用におけるウィンザー効果の実践例として、リファラル採用が挙げられます。リファラル採用とは、従業員が自身の友人や知人を企業に紹介する採用方法です。

この方法では、ウィンザー効果が顕著に現れます。候補者は、企業による直接的な求人広告よりも、第三者である従業員からの情報のほうが信頼性が高いと認識する傾向があります。これは、従業員が利害関係のない第三者として情報を提供するため、その情報がより客観的で信頼できると判断されるためです。

<関連記事>リファラル採用のすすめ方

タレントマネジメントシステムの活用

タレントマネジメントシステムは、組織の人材育成や評価を最適化するための強力なツールです。システムを導入することで、データに基づいた信頼性の高い人材評価、開発、配置を実現することができます。

タレントマネジメントシステムの活用方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

<関連記事>【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法

ウィンザー効果に類似した心理現象

ウィンザー効果はマーケティングや人事評価で多く活用されていますが、類似した他の心理現象も活用されています。次に、ウィンザー効果に類似した、以下の3つの心理現象について見ていきましょう。

  • ハロー効果
  • ピグマリオン効果
  • ホーソン効果

ハロー効果

ハロー効果とは、ある一部の特徴的な印象に引きずられて、全体の評価が影響を受けてしまう心理現象です。人事評価において、この効果は注意が必要です。たとえば、コミュニケーション能力が高い社員は、他の業務能力も高いと過大評価してしまうことがあります。

ウィンザー効果が第三者の評価を重視するのに対し、ハロー効果は評価者の主観的な印象にもとづくものです。違いを認識することで、より客観的な評価ができます。ハロー効果を防ぐには複数の評価項目を設け、それぞれを独立して評価することが効果的です。

<関連記事>ハロー効果とは?類似した現象との違いや例を含めてわかりやすく解説

ピグマリオン効果

ピグマリオン効果は、他者からの期待が個人の行動や成果に影響を与える現象です。たとえば、上司が部下に期待を寄せることで、部下が実際に成長し期待に応える結果を出すなどが挙げられます。

ウィンザー効果が第三者の客観的評価にもとづくのに対し、ピグマリオン効果は期待という主観的な要素が働きます。この効果を活用するには、定期的なフィードバックによって期待感を表すことです。

ただし、過度な期待をかけることはプレッシャーとなり、逆効果を招く可能性もあるため、バランスの取れた期待が重要となります。

<関連記事>ピグマリオン効果とは

ホーソン効果

ホーソン効果は、他者から注目されていると感じることで、パフォーマンスが向上する現象です。人事評価においては、従業員のモチベーション向上に活用できます。

たとえば、東京ディズニーリゾートでは「スピリット・アワード」という表彰制度を導入しています。

これはキャスト同士が互いに素晴らしいと思う人に、カードにメッセージを書いて送る取り組みです。その結果をもとに、受賞者は表彰されて栄誉を讃えられます。表彰されることで、キャストは周りから注目されているとの意識を持ち、さらに頑張ろうという気持ちになるのです。

ウィンザー効果が第三者の評価内容に焦点を当てるのに対し、ホーソン効果はピグマリオン効果と同様に、注目という主観的な要素が働きます。効果を活用するには、従業員の成果を適切に評価したフィードバックが不可欠です。

ウィンザー効果の注意点

ウィンザー効果を効果的に利用するためには、いくつかの注意すべき点があります。適切に運用しないと、効果を得られないばかりか逆効果になるでしょう。

以下に、具体的な注意点を3つ解説します。

  • ステルスマーケティング
  • 悪い評価も公表する
  • 過度なPRを避ける

ステルスマーケティング

ステルスマーケティングとは、消費者に広告だと気づかせずに宣伝する手法です。ステルスマーケティングには主に以下の2つのタイプがあります

  • なりすまし型:事業者が第三者を装って匿名で好意的な体験レビューを書くなど。
  • 利益提供秘匿型:インフルエンサーがSNSで商品を紹介する際に、広告であることを明示しないなど。

ウィンザー効果を適切に活用するためには、第三者の評価を利用する際に、その評価が広告の一環であることを明確に示す必要があります。

例えば、顧客の声を広告に使用する場合は、「広告」や「PR」といった表記を明確に行い、消費者に誤解を与えないようにすることが重要です。

ステルスマーケティングが発覚した場合、消費者からの信頼を失うだけでなく、景品表示法違反として課徴金の対象となる可能性があります。ウィンザー効果を活用する際は、常に透明性を保ち、消費者の信頼を維持することが重要です。

悪い評価も公表する

ウィンザー効果を利用する際は、良い評価だけでなく悪い評価も公表することが信頼性を高めます。全てが良い評価だと、消費者は「悪いことを隠している」と感じるでしょう。

むしろ、批判的な意見も含めた情報提供が信頼性を高めることにつながります。

ただし、悪い評価を公表する際には、改善策も併せて示すことが重要です。改善への姿勢を示すことで信頼を得られます。ステルスマーケティングに該当する事例は消費者庁の「景品表示法とステルスマーケティング~事例で分かるステルスマーケティング告示ガイドブック~」に詳しく掲載されていますので、読んでおくとよいでしょう。

過剰なPRを避ける

ウィンザー効果を利用した過剰なPRは、逆効果になる可能性があります。

本来、第三者の評価や口コミは、自然な形で広がるものです。過度にPRすると不自然に感じ、逆に警戒心を抱かせる可能性があります。たとえば、同じような内容の口コミが大量に投稿されていることや、明らかにサクラ評価が目立つ場合は信頼性に疑問を持つでしょう。

そのため、自然な形で情報が広がるような仕組みづくりが重要です。たとえば、自発的な口コミを促すような声かけやアンケートなど、自然な形でのPRを心がけましょう。

ウィンザー効果を最大限に活かすには

ビジネスでウィンザー効果を最大限に活用するには、計画的かつ戦略的なアプローチが必要です。

顧客や専門家など、第三者からの評価や口コミを効果的に集め、それらを適切に活用することが重要です。これにより、自社の商品やサービスの信頼性を高め、潜在顧客の興味を引き、最終的には購買意欲を促進することが可能です。

ここでは、ウィンザー効果を最大限に活かすための3つの重要なポイントについて詳しく解説します。

  • 信頼できる第三者の選定方法
  • 口コミの質と量のバランス
  • 倫理的配慮と法的注意

信頼できる第三者の選定方法

ウィンザー効果を効果的に活用するためには、信頼できる第三者の選定が重要となります。とくに、インフルエンサーを活用する場合は注意が必要です。ターゲット層とかけ離れた人が発信しても真実味がありません。

たとえば、50代向けの化粧品をPRするなら、50代に影響力があるインフルエンサーを選ぶ必要があります。20代のインフルエンサーがPRしても「20代の意見だろう」といった印象を持ち、本来のターゲット層に対して購入意欲を湧かせることはできないでしょう。

単に、フォロワー数や人気度だけでなく、PRしたい商品のターゲット層に近いかどうかが重要な要件です。

インフルエンサー以外にも、業界の専門家や一般消費者の声を活用することも効果的です。例えば、美容製品であれば皮膚科医の意見を取り入れたり、一般消費者のリアルな使用感を紹介したりすることで、より多角的な信頼性を構築できます。

口コミの質と量のバランス

ウィンザー効果を活用する上で、口コミの質と量のバランスを適度に保つことが重要です。単に口コミの数を増やすだけでは効果的ではありません。重要なのは口コミの質です。

具体的で詳しい内容の口コミほど、信頼性が高く説得力があります。

また、過度に多い口コミは不信感につながる恐れがあるため、適度な量にするべきです。

さらに、全て肯定的な口コミばかりだと不自然に感じられるため、ネガティブな意見も含めることで、より信頼性が高まります。

倫理的配慮と法的注意

 ウィンザー効果を活用する際は、ステルスマーケティングに該当しないよう注意が必要です。インフルエンサーや第三者の意見を利用する場合は、広告であることを明示し、透明性を保つことが重要です。また、過度に誇張された表現や虚偽の内容を含まないよう、慎重に管理する必要があります。 これらの改善を加えることで、より包括的で実践的な説明になるでしょう。

まとめ

ウィンザー効果は、第三者からの情報がより信頼されるという心理現象です。マーケティングや人事評価など、さまざまな場面で効果的に活用できます。そのためには、信頼できる第三者の選定が重要です。

口コミやアンケートを活用する場合は、量よりも質、さらには肯定的な意見だけでなく、ネガティブな意見とのバランスの取れた開示がポイントとなります。さらに、インフルエンサーを第三者として利用する場合は、ジャンルや発信内容も確認しておくことが不可欠です。

これらのポイントを押さえて、ウィンザー効果を最大限に活用しましょう。

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ウィンザー効果は数多くのビジネスの現場で有効に活用されていますが人事評価の際には歪みが生じかねません。

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