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従来、フェローとはアカデミックな世界で用いられることが多かった言葉です。しかし近年はビジネスシーンにおいても、高度な専門性を持つ人材を活用する新たな仕組みとしてフェロー制度を導入する企業が増えています。では、企業のフェロー制度とはどのような制度を指すのでしょうか。
今回は、フェロー制度の概要や企業での導入が進んでいる背景、導入事例などについてご説明します。
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フェローの語源と本来の意味
フェロー(fellow)とは「仲間」「友達」「同僚」などの意味を持つ英単語です。また、イギリスでは、研究費を得ている大学の特別研究員や大学の評議員、学術団体の特別会員などを表す言葉としても使われています。
fellowの語源は、古ノルド語の「felagi」にあるといわれています。felagiは「お金」を表す「fe」と、ゲルマン祖語で「横たえる」「置く」といった意味を持つ「lagam」を組み合わせた言葉です。
そのため、fellowは本来、共同出資者の意味合いであったと考えられ、共同出資者が仲間や友達、同僚という意味に発展していったのだと推測されています。
企業におけるフェローの位置づけと期待される役割
学術分野では、特定の分野で高い専門性を持ち、その分野の研究の発展に大きく貢献した人材、専門的知見から意見を述べる評議員などをフェローと呼びます。
一方、ビジネスシーンにおいては、フェローは専門性の高い技術やスキルを持つ人材が就任する役職を表す言葉として用いられています。
学術分野とビジネスシーンにおけるフェローの意味には若干の差異があります。しかし、フェローには特定分野の高度な専門性が求められるという点では、企業のフェローも学術分野におけるフェローとそれほど離れているわけではありません。
企業のフェロー職は、高度な専門性を生かし、新たな技術の開発やイノベーションを創出するチームの柱としての役割が期待されているのです。
また、企業が特定の分野において極めて高度な知識や技術を持つ人材を、執行役員などと同等に処遇する制度のことを「フェロー制度」と呼びます。
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フェロー制度導入の背景と目的
近年、フェロー制度を導入する企業が増加しています。
なぜ、企業はフェロー制度を導入しているのでしょうか。その背景と目的についてご説明します。
高度専門人材確保の必要性
経済のグローバル化が進み、テクノロジーが急速に発展している中、企業として成長を続けるためには、高度な専門知識や技術を持つ人材の確保が欠かせない状況となっています。
技術開発を進めるためには、学術分野における研究知識も必要です。
しかし、従来の企業の人事制度では、専門的な知識や技術を持つ人材に提案できる適切な役職が用意されておらず、傑出した専門性を持つ人材を招くことが非常に難しいという課題がありました。
そこで誕生したのが、執行役員と同等の処遇を約束するフェロー制度です。
フェロー制度の活用により、企業の成長に欠かせない高度な専門性を持つ人材を確保しようという動きが高まっているのです。
イノベーション創出への期待
現在は、テクノロジーの急速な発展に伴い、社会やビジネスも急速に変化しています。こうした状況下で、既存のビジネスモデルや商品、サービスを提供しているだけでは、市場の変化に追いつけず、取り残されるリスクがあります。
多くの企業は、時代の流れに追いつくためにイノベーションを創出し、市場競争の優位性を獲得しようとしているのです。
しかしながら、イノベーションの創出には高い専門的知識や技術が欠かせません。
そのためフェロー制度を創設し、持続的発展に欠かせないイノベーションを生み出せる期待値の高い、高度専門人材の確保を目指す企業が増えているのです。
企業でのフェロー制度導入事例
現在、フェロー制度を導入している企業の事例をいくつかご紹介します。
三菱ケミカル株式会社
三菱ケミカル株式会社では、2019年4月1日から、世界に通じる卓越した専門性と実績を持つ人材を「フェロー」「エグゼクティブフェロー」に任命する制度を開始しました。初のフェロー・エグゼクティブフェローには、研究所の所長や室長、研究員などが任命されています。
フェローとエグゼクティブフェローは、専門分野における活躍とともに技術の錬成、後進の指導・育成の役割を担うほか、経営層とも定期的なディスカッションを開催することで、経営にも専門的な知見からの提言を行うことが期待されています。
また、フェローは理事役相当、エグゼクティブフェローには執行役員相当として処遇することにより、高度な専門性を持つスペシャリストを育成する社内風土の醸成に力を入れています。
明治安田生命保険相互会社
明治安田生命保険相互会社では、経営基盤を支える11の専門分野を定め、各分野におけるプロモーションルートの明確化や、フェロー制度創設による処遇魅力度の向上、社内ステータスの明確化などに取り組んでいます。
同社では2020年にフェロー制度を構築し、同年10月1日付で法務部とエコノミストから2名のフェローを登用しています。
また、2024年4月には、卓越した専門性と実績を有する人材として2名のシニア・フェローを登用し、グループ経営を支える経営人材と、専門人材の双方の育成に計画的に取り組んでいます。
東京応化工業
東京応化工業株式会社は、持続可能な成長のために、人事施策の強化に優先的に取り組んでいる企業です。
同社では、開発担当者の自由な発想を促進させる「自由な風土」を大切にするだけでなく、ロングランの研究開発を支えるインセンティブの仕組みなどを構築しています。
また、2019年には、卓越した能力と実績を持つ人材を役員級として処遇する、エグゼクティブフェロー制度を導入しました。
同制度により、研究者は管理職を経験せずに役員並みの処遇を受けられ、開発者として存分に開発業務に従事し続けられるようになっています。
フェロー制度のメリット
企業がフェロー制度を導入することで得られる主なメリットを3つご紹介します。
専門知識の事業活用
フェロー制度の導入により、高い専門知識やスキルを持つ人材を確保できると、その知識や技術を事業に生かすことができます。
特に、高度な技術や専門性が求められる分野においてフェローが担う役割は大きく、フェローの持つ知識や技術の活用は、技術開発を一気に進められる可能性があります。
新たな技術の開発によって、より優れた製品やサービスの提供ができるようになると、企業の競争力向上につながるだけでなく、企業ブランドの効用も期待できます。
新規事業領域の開拓
フェロー制度の導入により、新たに高度専門人材を確保できると、新規事業領域の開拓も目指せるようになります。
次世代を見据えた製品やサービスを開発するにあたっては、自社の専門領域だけでなく、新たな領域への挑戦が必要になるケースもあるでしょう。
しかし、新規事業に挑戦する際、社内には該当事業に関するノウハウが蓄積されておらず、一から技術開発を行うとなると、大きな手間とコストや時間がかかります。
そのため、外部から新規事業領域に詳しく、革新的なアイディアを提案できる能力を持つ専門性の高い人材を招聘した方が、よりスピーディーに新規事業に向けた準備を進められるでしょう。
この際にフェロー制度を活用すると、高度専門人材へより魅力的な条件の提示ができるため、人材の確保がスムーズに進む可能性が高くなるのです。
従業員のモチベーション向上
従来の人事制度では、利益を直接生み出す部署の人材が評価されやすい傾向にあり、企業によってはマネジメント経験がなければ昇進できないケースもありました。
そのため、専門職の人材が研究・開発業務を続けるだけでは、十分な昇進や昇給を期待できない場合があり、仕事に対するモチベーションの維持が難しいケースも少なくありませんでした。
しかし、フェロー制度が導入されると研究・開発による貢献も高く評価されるため、専門職の従業員のモチベーションが高まり、高度な専門性を最大限に発揮しながら、意欲的に業務に取り組むことが期待できます。
フェロー制度導入における課題
フェロー制度の導入にはさまざまなメリットがありますが、導入時にクリアにしておかなければならない課題もあります。
評価基準の透明性確保
フェロー制度の導入にあたっては、どのような基準でフェローを選定するのかを明確に示さなければなりません。フェローの評価基準が曖昧な場合、従業員の間で不平や不満を招く恐れがあるでしょう。
また、フェローの選定基準の設計にも注意が必要です。
基準が緩すぎれば多くのフェローが誕生し、フェローの特別感が薄まります。反対に基準が厳しいと、なかなかフェローに該当する人材を選定できません。
フェロー制度を導入する際には、さまざまな角度から適切な選定基準を定めると同時に、社内にも広く周知することが重要です。
組織内での調和
フェローへの就任は、高度な専門性を持ち、会社が大きな期待を寄せる優秀な人材であることの証明となります。
そのため、フェローとその他の従業員との間に軋轢が生まれ、チーム内の雰囲気が悪化する恐れがある点にも注意しなければなりません。
フェローには、プロジェクトを率いるリーダー的な役割が求められますが、チーム内にギャップが生じるとチーム内の連携が難航する可能性があります。
フェロー制度の導入時には、フェローとその他の従業員が調和しながら、協力して業務を遂行できる環境を作れるような配慮も忘れないようにしましょう。
タレントマネジメントでフェロー制度を効果的に
フェロー制度を導入し、企業の持続的な成長を図るのであれば、外部から高度な専門性を持つ人材を招聘するだけでなく、社内でも専門的な知識を持つ人材の育成をしなければなりません。
タレントマネジメントシステムは、従業員のスキルを含めたあらゆる情報を一元的に管理できるシステムです。
スキルやこれまでの成果、評価をデータ化できるため、フェローの候補者となる高いポテンシャルを持つ人材の抽出も可能です。また、スキルの可視化により、的確な育成プランを策定することもできます。
そのほか、フェローのエンゲージメントやリテンション、組織の課題などを測定できるサーベイ機能が付加されているシステムも多くあります。タレントマネジメントシステムを活用すると、フェロー制度をより効果的に活用できるようになるでしょう。
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フェローが担う新たなリーダーシップ像
日本企業においては、長い間、管理職としてチームを牽引するリーダーシップが重視されてきました。
しかし、フェローには従来とは異なる新しい形でのリーダーシップが求められます。
専門性と経営参画の両立
フェロー制度導入済みの多くの企業は、フェロー制度の導入にあたって、フェローが持つ高度な専門性を経営に取り入れようとしています。
専門的な知見からの意見を経営層に提言することで、企業価値の向上をさらに実現させたいと考える企業が多いのです。
そのため、フェロー制度を導入している多くの企業では、フェローに執行役員や上席執行役員などと同等の処遇を用意しています。
これまで、特定分野において高い専門性を持つ人材が経営に参画するケースはほとんどありませんでした。この点においても、フェローには専門性と経営への関与を両立させる、重要な役割が期待されているのです。
知識共有とイノベーション推進の要
フェローにもリーダーシップは必要ですが、他の役職のようにマネジメント的な役割が求められるわけではありません。
フェローの高い専門知識や技術力は、企業の競争力を高めるために必要不可欠な要素です。フェローと従業員がプロジェクトを共に進めると、フェローの持つ専門的な知識やノウハウは他の従業員にも自然と伝わるようになり、フェローを中心とした高度専門性を持つ集団が形成されます。
高い知識を持つ組織が構築されれば、互いの知識や意見が刺激となり、イノベーションも生み出しやすくなるでしょう。
つまり、フェローには社内の知識やノウハウの共有と、イノベーション推進の要となる、新たなリーダーとしての役割が求められるのです。
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フェロー制度の今後の展望と課題
フェロー制度は、今後ますます活用が拡大すると期待されています。
多様な分野への拡大可能性
これまでフェロー制度は、イノベーションの創出を目指し、研究開発や技術開発などの分野における専門人材を対象とするものが中心となっていました。
しかし、専門的な知識が必要となるのは、研究や技術開発の分野だけではありません。
そのため、フェロー制度の浸透に伴い、さまざまな業界の企業や部署にもフェロー制度が導入されるようになっています。
現在では法務やヘルスケア、人事、マーケティング、品質管理など、多岐にわたる分野においてフェローの登用が進んでいますが、この動きは今後、ますます広がっていくと期待されています。
グローバル人材としてのフェロー育成
今後、社会も経済もますますグローバル化していくと考えられます。
また、フェロー制度の導入によって新たな事業領域への進出を検討している場合、グローバル展開を視野に入れているケースも多いでしょう。
事業をグローバルに展開するうえでは、異文化を受け入れる柔軟な姿勢や語学力、コミュニケーション能力が重要になります。
今後のフェローの育成にあたっては、専門的な知識や技術だけではなく、グローバルに活躍可能な要素を磨ける環境を準備することも重要になるでしょう。
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まとめ
企業におけるフェローとは、高度な専門性を持つ人材に対して与えられる役職名です。
フェロー制度を導入すると、専門的な知識や技術を持つ人材を高く評価できることとなります。
そのため、フェロー制度の導入は、高度専門人材の確保や市場競争力の向上、イノベーションの創出など、企業にさまざまなメリットをもたらすでしょう。また、フェローの知識や技術が社内に共有されることで、社内の専門人材の育成も進み、企業の持続的な成長を促進させる可能性もあります。
フェロー制度を導入する際には、フェローの選定基準を明確に示すなどし、制度の活用メリットを最大限に発揮できるような仕組み作りを目指しましょう。
フェロー制度の導入時は、タレントマネジメントの活用を
フェロー制度を導入すると、企業はさまざまなメリットを得られます。
しかし、フェロー選定の評価基準が明確でない場合、従業員の間に軋轢が生じる恐れもあります。フェロー制度を導入する際には、従業員のスキルを見える化し、納得感のある公平な評価を可能にするタレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。
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フェロー制度の導入を検討される際にはぜひ、HRMOSタレントマネジメントの導入もご検討ください。