目次
人手不足が続く中で、「アウトソーシング」の活用を検討する企業もいるでしょう。アウトソーシングは業務効率化やコスト削減の手段として注目されています。
本記事では、アウトソーシングの基本知識や導入のメリット・デメリット、活用事例などをわかりやすく解説します。自社に合ったアウトソーシングの活用方法を見つけるヒントになれば幸いです。
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アウトソーシングとは
アウトソーシングとは、企業が自社で行う業務を外部の専門企業(アウトソーサー)に委託する経営手法です。これにより、自社で設備や人材を抱えずに外部リソースを活用し、コスト削減や業務効率化を図ることができます。
従来は製造業における外注や物流、人材派遣などが主流でしたが、近年ではIT業務(ITO)や総務・経理など、バックオフィスのアウトソーシングも主流になってきました。
アウトソーシングの対義語として「インソーシング」があり、これは自社内で業務を完結させる方法です。アウトソーシングは経営資源の最適化が図れる一方、インソーシングは業務ノウハウの内製化や品質管理のメリットがあります。
アウトソーシングの分類
アウトソーシングは、外部企業活用型と分社化型に大別されます。外部企業活用型は、専門知識が必要な業務やルーチンワークを外部の専門企業に委託し、効率化を図る方法です。
一方、分社化型は、情報通信や物流、教育などの部門を独立させ、分社化した企業に業務を委託する形態です。分社化された企業は、親会社業務の受託だけでなく、他社からも業務を受ける場合があります。
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アウトソーシングの種類
アウトソーシングには、業務内容や目的に応じてさまざまな種類があります。企業が自社業務を外部に委託する際、パートナーシップの深さや業務範囲により形態が異なるため、それぞれの概要を確認しましょう。
<アウトソーシングの種類>
用語 | 委託先 | 目的 | 特徴 |
コソーシング | 特定の外部企業(共同作業) | 協働による最適化 | パートナーと一体運営 |
マルチソーシング | 複数の外部企業 | 分業・リスク分散 | 業務ごとに最適な委託先 |
BPO | 専門の外部企業 | コスト削減・効率化 | 特定業務のプロセスごと外注 |
クラウドソーシング | 不特定多数の個人 | 安価・柔軟な労働力活用 | ネット経由の依頼 |
オフショアリング | 海外の企業 | コスト削減 | 国際的な外注 |
コソーシング
コソーシング(co-sourcing)は、委託先企業と自社が共同で業務を遂行する形態です。(co-)は英語で「共に」という意味を持つ言葉で、外部の専門家をプロジェクトの一員として迎え入れ、自社も積極的に関与しながら一緒に業務を進めることが特徴です。
コソーシングとアウトソーシングはどちらも「外部リソースの活用」の手法ですが、アウトソーシングは特定業務をそのまま外部委託するのに対し、コソーシングは自社が主体となりつつ外部の専門家が協力するスタイルです。
外部に丸投げするのではなく、共同体制でプロジェクトを推進できます。
マルチソーシング
マルチソーシングは、複数の外部委託先に業務を分散させる形態です。専門性やコスト面で異なる複数のベンダーを活用し、それぞれの強みを生かして効率化を図ります。
リスク分散ができる点や、分野ごとに適切な委託先を選べること、特定のベンダーへの依存を回避できるメリットがあります。
BPO(Business Process Outsourcing)
BPOは、業務プロセス全体を外部にアウトソーシングする方法です。総務、人事、経理などバックオフィス業務を中心に、定型業務などのノンコア業務を外部パートナーに任せることで、企業のコア業務に集中できるようにします。
個別の業務・タスクを外部委託するアウトソーシングとは異なり、プロセスそのものを任せることでコスト削減や業務効率化がメリットとなります。
クラウドソーシング
クラウドソーシングは、インターネットを通じて不特定多数の個人や企業に業務を委託する形態です。プログラミング、デザイン、ライティングなど専門性の高い業務から、データ入力のような単純作業、コールセンターや営業など幅広い業務が対象となります。
一般的に、クラウドソーシング専用のサイト上でワーカーを探し、契約締結や支払いを行うため利便性が高い一方で、サイト利用の際に手数料が発生することが一般的です。
オフショアリング
オフショアリングは、コスト削減を目的に、海外の低コスト地域に業務を委託する形態です。主にIT開発や製造業の分野で利用され、現地の労働力を活用することで運営コストを大幅に抑えられます。
アウトソーシングを実施拠点で分類すると、オンショア(国内委託)、ニアショア(近隣国への委託)、オフショア(遠隔地や海外への委託)の3種類があります。オフショアは、ニアショアよりも物理的距離があり、時差や文化の違いが大きい反面、労働コストの低さが魅力です。
ただし、文化や言語の違いによるリスクが伴うため、コミュニケーションや品質管理が課題となりやすい点には注意が必要です。適切な管理体制を整えることで、コスト削減効果を最大限に生かせます。
アウトソーシングと人材派遣の違い
外部人材のリソースを活用する手法には、アウトソーシングのほかに人材派遣もあります。ここでは人材派遣とアウトソーシングの違いについて解説します。
契約形態の違い
アウトソーシングは、企業や個人と請負契約・委任契約・準委任契約などを結ぶことが一般的です。一方、人材派遣は、厚労省の許認可を受けた派遣事業者と派遣契約を締結する点で異なります。
派遣契約は、労働者派遣法(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律)のもとで行われ、派遣労働者の保護を目的とした契約形態です。
業務指示系統の違い
アウトソーシングでは、発注元企業とアウトソーシング先企業は対等な関係となります。発注元企業からアウトソーシング先に業務指示を行い、その指示に従ってアウトソーシング先のスタッフが業務を遂行します。
一方、人材派遣では、派遣労働者を受け入れる派遣先企業の「指揮命令者」が業務内容や手順などを指示します。派遣先企業には「派遣責任者」を設置することが一般的で、派遣労働者の労務管理や賃金支払いは派遣元企業が行います。
このように、アウトソーシングと人材派遣では、契約形態や業務指示系統が異なり、それぞれに適した利用方法が存在します。
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アウトソーシングのメリット
アウトソーシングの活用は、コア業務に集中できる環境の構築や、生産性向上に寄与します。アウトソーシングの導入メリットを複数の視点から解説します。
コスト削減と経営資源の最適化
アウトソーシングは、人件費や設備投資のコスト削減に効果的です。例えば、バックオフィス業務を外部委託することで、従業員をコア業務に集中させられ、業務効率を向上させることができます。
特に、製造業におけるオフショアリングが代表的な事例です。生産拠点をコストの低い海外に移すことで、人件費だけでなく、工場設備や機械導入などの設備投資も抑えられ、固定費を変動費化できます。これにより、景気変動の影響を受けにくくし、経営リスクを低減できます。
さらに、専門のアウトソーサーに依頼することで、社内の教育・研修コストが不要となり、専門人材の採用費も削減可能です。ITやバックオフィスなど専門性の高い分野では、最新技術を備えた外部パートナーを活用することで、高品質なサービスを低コストで受けることができるメリットがあります。
業務効率化と生産性向上
アウトソーシングを活用すると、専門性の高い業務をプロフェッショナルに任せられるため、業務効率や品質が向上します。特に、最新技術の導入や高度なノウハウが不足している場合でも、外部の専門家を活用することで、効率化や品質向上が期待できます。
例えば、給与計算や経理業務など、手間のかかるバックオフィス業務を専門企業に委託することで、業務スピードが上がり、ミスの減少も期待できます。
また、24時間体制のカスタマーサポートを提供する外部パートナーを利用すれば、サービス提供のスピードと質が向上するでしょう。
これにより、社員は自社の主要業務に専念でき、全体としての生産性が高まります。
組織のスリム化
アウトソーシングにより、非コア業務を外部に委託することで、組織規模を縮小し、スリム化を実現できます。これにより、管理コストが削減され、迅速な意思決定が可能になります。
また、業務を外部パートナーに分散することで、リスク分散が図れ、万が一のトラブル時にも影響を最小限に抑えられます。
特に、成長過程にある企業では、事業の柔軟性を高められるため、新規プロジェクトや市場変化に迅速に対応できます。アウトソーシングを活用することで、人員や設備を固定化せず、状況に応じてリソースを最適化できる点が強みです。
固定費を変動費化することで、景気変動や業績悪化に対応しやすくなる点も大きなメリットとなります。
専門知識・技術の活用
専門分野に強い外部パートナーを活用することで、自社では難しい高度な技術やノウハウを取り入れられます。
例えば、法律の知識が必要となる給与計算業務や、スタッフ育成が難しいコールセンター業務などをアウトソーシングすることで、アウトソーサーが保有する専門的な知識。技術を活用可能です。
高度な知識の保有者を採用、育成するコストや労力が不要となり、競争力の向上につながるでしょう。
コアコンピタンスの強化
自社の中核業務にリソースを集中させ、付随業務をアウトソーシングすることで、コアコンピタンスを高められるメリットがあります。
コアコンピタンスとは、他社に模倣できない自社独自の価値、強みを指します。
例えば、マーケティング戦略や商品開発に特化し、物流やカスタマーサポートは外部委託することで、リソースを最適に配分できます。その結果、革新的なプロジェクトへの注力が可能になり、競争力を維持・向上できるでしょう。
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アウトソーシングのデメリット
アウトソーシングには、コスト削減や業務効率化のメリットがある一方で、情報セキュリティリスクや品質管理の難しさなどのデメリットも存在します。アウトソーシングを検討する際の注意点を見ていきましょう。
情報セキュリティリスク
アウトソーシングを利用すると、外部業者に機密情報や顧客データを提供する必要があり、これにより情報漏洩やデータの不正利用のリスクが高まります。
例えば、セキュリティ管理が甘いベンダーを選定すると、不正アクセスやデータ改ざんが発生する危険性があるため注意が必要です。
一方で、万全の情報セキュリティ体制を長年築き上げているアウトソーサーを選ぶことで、内製するよりも、情報セキュリティを強化できる場合もあります。いずれにせよ、アウトソース先のセキュリティ対策を事前に確認し、リスクを最小限に抑えましょう。
品質管理の難しさ
外部委託先に業務を任せると、品質の一貫性を保つことが難しくなる場合があります。委託先の業務プロセスや品質基準が自社と異なる場合、期待通りの成果を得られないリスクがあるでしょう。
しかし、専門知識や豊富な実績を有するアウトソーサーを選べば、内製するよりも品質や業務管理がしやすくなるケースも考えられます。
納品物の品質を担保するためには、契約時に品質基準や評価方法を細かく取り決めて、適切な進捗管理や品質チェック体制を整えることが重要といえます。
コミュニケーションの問題
アウトソーシングを利用すると、委託先とのコミュニケーション不足が発生しがちです。外部とのやり取りが主体となるため、情報共有や意図の伝達に齟齬が生じやすく、業務の進行に支障をきたすリスクがあります。
業務フローや指示が複雑な場合、担当者間で認識のズレが起こりやすいため、正確な指示出しを行いましょう。
中でも、オフショアリングでは、文化や言語の違いが問題を複雑化させるケースもあります。海外の委託先では、意思疎通の難しさや時差による連絡遅延が原因で、業務品質や納期管理に支障が出ることがあるでしょう。
これを防ぐためには、定期的な報告体制やコミュニケーションルールを確立し、情報共有の場を積極的に設けることが重要です。
社内ノウハウの喪失
アウトソーシングをすることで、社内にノウハウが蓄積されにくくなり、長期的には競争力が低下するリスクがあります。外部業者への依存度が高まると、将来的な内製化が難しくなり、社内の能力開発が停滞する可能性もあります。
特に、戦略的業務を外部に依存する場合は注意が必要です。自社独自の強みが薄れないよう、アウトソーシングすべき業務と内製化する業務を明確に分け、社内でのスキルアップを並行して進めることが重要でしょう。
予想外のコスト
アウトソーシングに伴うコストが、当初の見積もりを超えることがあります。契約更新時の料金改定や追加業務によるコスト増加が主な要因です。また、委託先や業務量によって見積もりが変動するため、適正料金を見極めづらい傾向があるでしょう。
他にも、委託先の事業撤退や倒産リスクもデメリットになり得ます。アウトソーシングに頼りきりで、自社にノウハウを蓄積していない状態で委託先が事業撤退した場合、業務遂行が難しくなる可能性もあります。
業務別のアウトソーシング活用事例
アウトソーシングは業務内容に応じてさまざまな形態があり、企業のニーズに合わせた活用が可能です。ここでは、代表的な業務別のアウトソーシング事例を紹介します。
ITO(Information Technology Outsourcing/ITアウトソーシング)
ITOは、企業のIT関連業務を外部に委託する方法です。システム開発、インフラ管理、クラウド運用などが代表例であり、専門知識を持つベンダーに依頼することで、最新技術を活用した効率化が図れます。
ITアウトソーシングのメリットは、コスト削減と技術力の向上にあり、自社で専門エンジニアを雇う負担を軽減できます。また、システムの保守や運用管理を専門企業に任せることで、ダウンタイムのリスクも低減できるでしょう。
特に、クラウドインフラの構築やセキュリティ管理を得意とする企業に委託するケースが増えています。
営業アウトソーシング
営業アウトソーシングは、「営業代行」や「SPO(セールスプロセスアウトソーシング)」とも呼ばれ、営業活動を外部の専門企業に委託する手法です。
営業アウトソーシングでは、新規顧客の開拓、テレアポ、商談代行など、営業プロセス全般を任せることができ、営業リソースを効率化できます。
そのため自社の営業ノウハウが不足している場合や、人材確保が難しい際に有効です。
また、業界特化型の営業代行企業を活用することで、専門知識を持った営業パーソンが活動を代行し、成果を高めやすい点が特徴です。成果報酬型の契約が一般的であり、コスト面でも柔軟性があります。
経理・給与計算アウトソーシング
経理・給与計算アウトソーシングは、人事労務管理を専門企業に委託し、煩雑なバックオフィス業務を効率化する方法です。
給与計算、経費精算、社会保険手続き、年末調整などの業務を一括管理するケースが多く、法改正への対応も含めて専門知識を生かして処理します。
特に、給与計算のミスは正確性が求められる業務で、従業員の信頼に直結する重要なものです。人事労務のプロフェッショナルに任せることで、労働時間を削減しながら正確性を担保し、コア業務にリソースを集中させられるメリットがあります。
物流アウトソーシング
物流アウトソーシングは、商品の保管、ピッキング、配送業務を専門業者に委託する、物流業界に特化したアウトソーシング方法です。
倉庫運営から配送ネットワークまでを包括的にカバーすることで、在庫管理や輸送コストを効率化できます。
ECサイト運営企業が外部の物流センターを利用するケースが多く、急な注文増加にも対応できる点が強みです。
季節変動が大きい業種では、物流量に応じた柔軟な対応が可能になります。物流管理システムを導入しているパートナーを選ぶことで、リアルタイムの在庫把握が可能となり、顧客満足度の向上にも寄与します。
コールセンターのアウトソーシング
コールセンターのアウトソーシングは、顧客対応業務を外部の専門企業に委託する形態です。カスタマーサポートやテクニカルサポート、問い合わせ対応を代行し、24時間・365日体制のアウトソーシングも可能な業者も少なくありません。
アウトソーシング先で専門オペレーターを確保・育成するため、サービス品質が安定し、クレーム処理や顧客満足度の向上につながります。運営コストを抑えつつ、迅速な対応力を確保できるため、規模の大きい企業ほど導入効果が高いとされています。
製造業のアウトソーシング
製造業におけるアウトソーシングは、部品生産や組み立て工程を外部企業に委託する形態です。「EMS(Electronics Manufacturing Service)」「ODM(Original Design Manufacturing)」「OEM(Original Equipment Manufacturing)」が代表例です。
製造業のアウトソーシングでは、自社は設計や販売に注力し、生産工程を外部に任せることで、コスト削減と生産性向上が実現します。
コアコンピタンスに集中するファブレス経営では、自社で製造設備を持たず、全てを外部生産に依存することで、固定費を変動費化しやすいメリットがあります。
KPO(Knowledge Process Outsourcing)
KPOは、知的業務処理を外部に委託する形態で、コンサルティング、データ分析、研究開発などを含みます。
高度な専門知識や技術が必要な業務を外部パートナーに委託することで、リサーチ力やデータ分析力を強化できる点が特徴です。
ビジネスインテリジェンス(BI)や市場調査を専門とする企業を活用することで、意思決定の質が向上します。BPOと異なり、より高度な専門性が求められるため、委託先の実績やスキルを十分に評価することが重要です。
パートナー選定のポイント
自社にあったアウトソーシング先を選ぶときのポイントを解説します。
専門性と実績
アウトソーシング先を選ぶ際、最も重要なのが専門性と実績です。委託する業務内容に関して高い専門知識や技術を持ち、同様のプロジェクトで成果を上げた経験があるかを確認しましょう。
業務や業界の経験が豊富であれば、スムーズな業務遂行が期待できます。
具体的には、導入事例や取引実績などを確認すると信頼性を判断しやすくなります。既存クライアントからの評価や口コミも、選定時の重要な参考情報です。
業務に必要な設備が整っているかどうかも確認しましょう。特に、ITや人事業務など専門性が求められる分野では、技術力だけでなく業界知識や実践経験も重視することが大切です。
さらに、トラブル発生時の対応力やリカバリー実績も見逃せないポイントです。迅速な対応が可能な体制や、過去のリカバリー事例があると、安心して任せられます。専門性の高いパートナーを選ぶことで、業務品質の確保とリスク低減が期待できるでしょう。
コミュニケーションと文化的相性
アウトソーシング先と良好なパートナーシップを築くためには、コミュニケーションの円滑さが不可欠です。レスポンスの早さはもちろん、企業対企業の文化的な相性もチェックできると安心です。
また、オフショアの際に海外企業を選ぶ際には、言語の違いやビジネスマナーのギャップが障壁となりやすいため、担当者の対応力を必ず確認しましょう。
定期ミーティングの実施頻度や連絡手段を事前に取り決め、迅速な情報共有ができる体制を整えることも欠かせません。また、企業文化が異なる場合は、業務方針や価値観のすり合わせを行いましょう。
コスト構造
アウトソーシングのコスト構造を理解することは、コスト削減効果を最大化するために重要です。初期費用、運用コスト、追加対応費用などを明確に把握し、見積もりが曖昧な場合には詳細を確認しましょう。
単純に「低価格」をうたう業者を選べばいいわけではなく、価格と品質のバランスが重要です。また、長期契約を結ぶ場合、更新時の価格変動やインフレリスクも考慮すべきです。
コスト削減効果が期待できる一方、トータルコストが膨らむリスクを見越し、契約内容を慎重にチェックしましょう。
セキュリティ対策
アウトソーシング先が情報セキュリティにどれだけ配慮しているかも重要な評価ポイントです。機密情報や個人データを取り扱う業務では、セキュリティ認証(ISO/IEC 27001など)の取得状況を確認しましょう。
さらに、データ保護方針やアクセス管理体制をヒアリングし、インシデント発生時の対応手順も含めて評価します。
契約時には秘密保持契約(NDA)を締結し、情報漏洩リスクを軽減する仕組みを構築することが求められます。セキュリティ対策が不十分なパートナーを選ぶと、法令違反やブランドイメージの低下につながる恐れがあるため、念入りに確認を行いましょう。
契約条件の明確さ
アウトソーシング契約を結ぶ際には、業務範囲や納期、品質基準を明確に記載することが重要です。契約書に含めるべき項目としては、成果物の定義、納期遵守のペナルティ、品質基準の評価方法などがあります。
不明確な契約では、トラブル発生時の責任範囲が曖昧になり、コストや工期に影響を及ぼします。特に長期契約の場合、契約更新の条件や解約時の取り決めも重要になります。
企業のスケーラビリティに応じて業務範囲を広げる余地があるかどうかも確認しておきましょう。
運用時の成功のカギ
相性のよいアウトソーシング先を選ぶだけでなく、正しい運用方法を理解しておくことも重要です。アウトソーシングの成果を高めるカギについて解説します。
明確な目標と期待値の設定
アウトソーシングを成功させるためには、達成すべき目標や期待値をあらかじめ明確に定義することが不可欠です。具体的なKPI(重要業績評価指標)を設定し、業務進捗を客観的に評価できる仕組みを整えましょう。
目標が曖昧なままだと、成果物の品質が評価できず、パートナーとの認識のズレが生じやすくなります。プロジェクト開始前に、業務ゴールや期待される成果を双方で共有し、共通認識を持つことが肝要です。
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SLA(サービスレベルアグリーメント)の重要性
SLA(サービスレベルアグリーメント)とは、サービス提供レベルを数値で定めた契約書であり、品質や対応速度の基準を具体的に示すものです。SLAを明確に設定することで、パートナーに求めるパフォーマンスを客観的に評価できます。
例えば、コールセンターのアウトソーシングでは、「応答率90%以上」や「1分以内の初回応答」など、顧客対応に関する基準を具体的に記載します。また、「クレーム発生時の対応開始時間」や「解決までの平均時間」なども明確に定めておくことで、トラブル発生時の混乱を防げます。合意したサービスレベルを守らせるためには、契約書に詳細を記載し、定期的に評価し改善を図ることが不可欠です。
知識移転のプロセス構築
アウトソーシングをスムーズに進めるには、業務の引き継ぎを円滑に行うための知識移転が重要です。マニュアルや業務フローの整備、技術研修の実施を計画し、担当者間での情報共有を徹底することで、業務が滞りなく進行します。
専門性が高い業務をアウトソーシングする際にノウハウの共有が不足すると、パートナー側でのトラブル対応が遅れるリスクがあります。適切なドキュメント管理と教育体制を構築し、継続的なスキル向上をサポートすることが求められます。
円滑なコミュニケーション手段の構築
パートナー企業との連携を強化するためには、効果的なコミュニケーション手段を整備することが欠かせません。チャットツールやプロジェクト管理システムを活用し、リアルタイムで情報共有できる体制を構築しましょう。
報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を徹底し、定期的なミーティングを実施することで、業務進捗や問題点を素早く共有できます。言語や文化の違いがある場合には、通訳や調整役を配置し、スムーズな情報伝達を確保することが重要です。
アウトソーシングと人事戦略の関連性
企業が持続的に成長していくためには、人事戦略でアウトソーシングの活用方法を明確にすることが重要です。適切に外部リソースを活用することで、社内人材の強みを最大限に引き出し、競争力を強化できます。ここでは、人事戦略とアウトソーシングがどのように関連しているのかを解説します。
人材リソースの最適化
アウトソーシングに適した業務を選び、外部委託をすることで、人的リソースの最適化が図られます。一般的に、定型業務などのノンコア業務をアウトソーシングする企業が多く、自社の従業員には戦略的業務に集中を促します。
例えば、バックオフィス業務やITインフラの管理など、専門知識が求められる作業をアウトソーシングすれば、コア業務への集中ができるでしょう。
人材リソースを適正配分できれば、組織全体の生産性が向上し、競争力が高まります。人手不足の中で限られたリソースを効果的に活用することは非常に重要といえるでしょう。
社内人材の育成と配置
アウトソーシングは、単なる業務外注だけでなく、社内人材の育成や配置にも貢献します。専門家と協業することで、社内人材が新しい知識や技術を学ぶ機会が増え、スキルアップにつながります。
例えば、ITシステムの運用を外部企業に委託しながら、社内担当者が運用プロセスを学ぶことで、将来的な内製化の準備が進められます。
また、定型業務や専門性の高い作業を外部に委託することで、社内人材をより付加価値の高い業務に集中させることができます。こうした取り組みにより、従業員一人一人のモチベーションが向上し、企業としての成長力が高まるでしょう。
タレントマネジメントとの連携
アウトソーシングを効果的に活用するためには、タレントマネジメントとの連携が不可欠です。外部リソースを適切に活用することで、社内人材のスキルギャップを埋め、成長機会を創出できます。
例えば、ITや営業分野で専門企業と協業することで、最新技術やノウハウを学ぶ機会が増え、従業員のスキルアップを促すことが可能です。
さらに、アウトソーシングによって定型業務を外部委託すれば、戦略的な人材配置を実現でき、組織全体のパフォーマンス向上が期待できます。
また、外部パートナーの活用と社内人材の育成を両立させることで、競争力を高め、持続的な成長が期待できます。
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まとめ
アウトソーシングは、人材リソースの最適化や業務効率化に効果的な手法ですが、適切に活用するためには戦略的な人事管理が欠かせません。
社内業務の整理やスキルギャップの把握を行い、アウトソーシングすべき業務を見極めることで、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。タレントマネジメントとアウトソーシングを連携させて、より効果的な人材活用を実現していきましょう。
HRMOSタレントマネジメントでアウトソーシングを最適化
HRMOSタレントマネジメントを活用すれば、従業員一人一人の保有スキルや経験、人材配置状況を可視化できるため、アウトソーシングが必要な業務を洗い出ししやすくなります。
データドリブンで適切な業務を洗い出し、アウトソーシングすることで、リソース配分に役立ちます。
自社の従業員が取り組むべき戦略的業務と、専門業者にアウトソーシングして効率化を図ることのメリハリをつけて、企業の競争力を高めていきましょう。