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1on1を導入している企業は増えていますが、従業員からは「やめてほしい」や「話すことがない」といったネガティブな声も聞かれます。
本記事ではそのような状況に陥らないための対策も含め、1on1の目的や効果、具体的な実施方法について詳しく解説します。1on1がうまくいかない方や、これから導入したい方はぜひ参考にしてみてください。
1on1とは
「1on1(ワンオンワン)」とは、上司と部下が1対1で行う定期的な対話の場です。通常、週1回から月1回の頻度で30分から1時間程度実施されます。この手法はアメリカのシリコンバレーが発祥とされ、日本でも約10年前から多くの企業で導入が進んでいます。
1on1は、単なる業務報告の場ではなく、部下の意見や悩みを聞き、信頼関係を構築するための時間です。さらに、部下にアドバイスすることで成長を促す場にもなります。
こうした1on1の実施によって、部下が目標やキャリアビジョンを明確にする機会にもなり、ひいては企業文化の醸成につながります。
・入社手続きの効率化
・1on1 の質の向上
・従業員情報の一元管理
・組織課題の可視化
人事面談との違い
1on1と人事面談は、一見似ているように思えますが、その目的や実施方法には大きな違いがあります。
一つは実施の目的です。人事面談が主に評価や目標設定を目的とするのに対し、1on1は部下の成長と信頼関係の構築を重視します。
もう一つは、実施頻度です。人事面談は通常、半期や四半期に1回程度ですが、1on1は週1回から月1回の頻度で行われます。頻度を高くすることで、小さな変化に気づきやすいのが特徴です。
1on1の目的
1on1を取り入れる目的は様々ですが、短期・中期・長期で整理してみると、大きく以下のような狙いがあります。
短期:上司とメンバーの信頼関係の構築
すぐに相談ができる関係性を築くことは、業務を円滑に進めたり、ミスを最小限にとどめたり、社内の重大な問題を早期発見したりする上で重要なポイントです。しかし、上司とメンバー間で信頼関係がない状態では、メンバーの抱えている本音を引き出すためには難しいものです。正しい1on1を行うことで、前提となる信頼関係を築くのは大きな目的の一つです。
中期:メンバーの成果(仕事の質と結果)の向上・育成
一人一人の業務の状況を細かく知ることができるのが1on1です。それぞれのメンバーの業務プロセスとそれに伴う結果を知ることで、プロセスに見合った結果が出ているのか、どうすればもっと質の良い仕事が可能になるのかを一緒に考えたり気づきを与えたり、アドバイスしたりすることができます。メンバーの成果をあげることは1on1の最も大きな目的であり、1on1を実践する際にはこの目的のためにほとんどの時間を使います。
長期:会社の文化づくり
1on1の実施にはいくつかの守るべきポイントがありますが、それ以外は企業ごとに自由なやり方で進めることが可能です。どのような企業でありたいのか、理念に基づいた行動とはどのようなものなのか。1on1を通してメンバーに伝え浸透させていくことで、企業の文化を醸成していくことができます。
1on1が注目される背景
この10年で急速に普及した1on1。企業が導入している背景には、いまの時代だからこその多くの課題がありました。
<業務マネジメント>
- 成果主義による目標の変化・複雑化
- 営業成績以外の成果も数値化し人事評価に反映する必要性
- 業務内容の多様化でリーダー/メンバー同士がそれぞれの業務を把握しきれない
- メンバーの成果を上げることによる生産性向上
<人材マネジメント>
- 個性に合わせたマネジメントの必要性・キャリアの多様化
- 心理的安全性の担保
- メンバーのエンゲージメント向上
- 離職を防ぐメンタルケアのニーズ
- リモートワークによるコミュニケーション不足
事業の多様化やIT化によって職種自体が増え、かつては「営業」だった業務が「インサイドセールス」「フィールドセールス」「マーケティング」「カスタマーサクセス」などに細かく分類されるようになった現在、個性に合わせたマネジメントの必要性が高まっています。
さらに年功序列での昇給システムは受け入れられなくなり、年齢に関わらず成果主義が求められるようになったことで、上司はメンバーの業務を把握すること、メンバーが持っているスキルや能力を正確に評価することも難しくなってきています。
契約件数のようなわかりやすい数字だけで成果を測ることができない一方、数値でわかりやすいパフォーマンスと数値では測れない会社への貢献、どちらも評価に含むことが必要です。複数のメンバーを抱えるチームリーダーにとっては、通常業務の中でこれらの評価を正しく行うことは不可能に近いのです。
また少子高齢化による人材不足、転職へのハードルが低くなってきたことなどにより、やりがいや成長環境を提供し従業員の離職を防ぐことも企業にとって大きな課題です。
このような課題に対応するためには、もちろん企業全体でのさまざまな取り組みも必要です。一方で、まずは目の前の一人ひとりに向き合う対策として1on1制度は有効な施策なのです。
1on1を実施する際の3大原則
1on1はただ上司とメンバーが、1対1で定期的なミーティングを実施すれば良いものではありません。むしろ場合によっては両者の溝が深まってしまうことも。あるいは1on1を繰り返すことにより当初の目的を見失い、ただ集まって喋るだけのミーティングになってしまう場合も実はよくあります。
1on1のやり方に答えがあるわけではありませんが、最低限そうならないために、まず守るべき3つの大原則があります。
ニーズにマッチ:メンバーのニーズを満たす時間にすること
企業としての目的はもちろんありますが、1on1は基本的に「メンバーのために」使われる時間です。上司側が必要な情報ばかり聞かれて、自らの課題や聞いてほしいことを話せなければ信頼は生まれません。メンバーが求めていること、解決したいことを聞き、ニーズを満たせる時間にするなどメンバーへのメリットを生み出せるようにしましょう。
成果につなげる:仕事の進捗をサポートし、経験学習サイクルを回し続けること
1on1は業務の全体的な状況を把握する目的はありますが、細かな案件について確認するものではありません。業務のプロセスと結果を把握し、成果目標に対するアプローチが適切かどうかを確認します。そこで出た課題に対して上司のサポートを受けながら改善策を模索し、1on1の終了時には、常に何らかの「学び」か「行動」がある状態・メンバーが「自律」できている状態を目指します。
テーラーメイド:メンバーごとに柔軟に個別対応すること
1on1の目的の一つは、個性に応じたマネジメントを行うことです。例えばメンバーが重視する価値観は、自らの成果なのかチームワークなのか、行動派なのか慎重派なのかなど。それぞれの個性を把握して尊重し、メンバーに合わせた対応をすることが重要です。
1on1で取り扱う11のテーマ例
1on1では、様々なテーマを扱うことが可能です。うまくテーマを選択してコミュニケーションをとることで、部下の成長を促せます。以下は1on1でよく取り扱われる11のテーマ例です。
1.業務に関する確認・質問・相談
このテーマでは、日々の業務に関する疑問や課題を解決します。例えば「今期の業務の進め方と計画について相談したい」といった内容です。上司は具体的なアドバイスを行い部下をサポートします。
(会話例)
部下:「今期の戦略方針を踏まえた目標達成のために、具体的にどのようなアクションを取るべきか悩んでいます。どのように進めていくべきでしょうか?」
上司:「まずは、今期の戦略方針と自分の目標の関連性を明確にしましょう。その上で、目標達成に必要なリソースと時間軸を整理し、優先順位をつけたアクションプランを作成するといいでしょう。例えば、四半期ごとのマイルストーンを設定し、それに向けた具体的な施策を考えてみてはどうですか?」
2.業務の進捗状況の報告
このテーマは、現在の業務の進捗を共有する例です。「業務の進捗を確認してもらいたい」「もし意見や懸念があれば伺いたい」といった内容が該当します。上司は進捗を把握し、必要に応じてアドバイスや支援を行うとよいでしょう。
(会話例)
部下:「Aプロジェクトは予定通り進んでいますが、Bプロジェクトで少し遅れが出ています」
上司:「Bプロジェクトの遅れの原因は何だと思いますか?一緒に解決策を考えましょう」
3.業務の棚卸し・振り返り・フィードバック
このテーマでは過去の業務を振り返り、改善点を見出します。例えば「次の期に向けて仕事の振り返りをしたい」「仕事の進め方をさらに改善するためのフィードバックが欲しい」といった内容です。
(会話例)
上司:「先月のプレゼンテーションを振り返ってみて、よかった点と改善点を教えてください」
部下:「はい、資料の構成は評価いただきましたが、質疑応答でもっと自信を持って答えられるようになりたいです」
4.目標の設定・確認・修正
このテーマは、個人やチームの目標を設定し、進捗を確認することが目的です。「状況が変わったため目標を修正したい」といった内容になるでしょう。上司は部下の目標達成に向けたアドバイスを行い、必要に応じて目標の修正を行います。
(会話例)
部下:「競合の出店により、当初の売上目標の達成が難しくなっています。そのため、目標の見直しが必要だと考えています」
上司:「わかりました。競合の動向を踏まえて、現実的な目標を一緒に設定しましょう」
5.不明点の確認・質問・相談
このテーマは、業務上の不明点や疑問を解消します。例えば「戦略発表資料の内容の詳細を確認したい」や「方針変更の理由と具体的に何をすべきか相談したい」といった相談などです。
(会話例)
部下:「新しい顧客管理システムの使い方がよくわかりません。どのように学習すればよいでしょうか?」
上司:「システムの研修資料を共有しますね。また、ITチームにサポートを依頼して、個別指導の機会を設けましょう」
6.能力開発・キャリアに関する相談
このテーマは、部下のキャリアについての話し合いです。「評価面談のフィードバックを受けて能力開発について相談したい」「1年後に目指す公募制度について質問したい」といった内容になるでしょう。
(会話例)
部下:「将来的にプロジェクトマネージャーになりたいのですが、どのようなスキルを身につけるべきでしょうか?」
上司:「まずはリーダーシップスキルと組織管理能力が重要ですね。次回のリーダーシップ研修に参加してみませんか。あと、近いうちに新しいプロジェクトの予定があるので、私と一緒に経験してみてください」
7.プライベート・体調に関する相談
ワークライフバランスや健康状態について話し合うことも大事です。「子どもの送り迎えのための働き方を少し変えたい」「健康面で気になっていることがある」といった相談を受けることもあります。
(会話例)
部下:「子供の送迎と親の介護のため、現在の勤務形態では両立が難しくなってきています。在宅勤務を含めた柔軟な働き方について相談させていただきたいのですが。」
上司:「ワークライフバランスは重要ですね。まずは、あなたの状況を詳しく教えてください。それを踏まえて、在宅勤務や時差出勤など、可能な働き方の選択肢を一緒に検討しましょう。また、人事部門に相談して、会社の制度や支援策についても確認してみましょう。チームの業務に支障が出ないよう配慮しつつ、あなたが仕事と家庭を両立できる方法を見つけていきましょう。」
8.上司自身に関する質問
このテーマは、部下が上司に質問することで学びを得る機会にするのが目的です。「上司の今期の目標や、特に力を入れたいことを聞きたい」といった質問が想定されます。
(会話例)
部下:「部長はどのようにしてキャリアを築いてこられたのでしょうか?」
上司:「私の場合は、常に新しいことに挑戦してきました。失敗も多かったですが、経験からの学びのほうが大きかったです。あなたも恐れずに新しいことに挑戦してみてください」
9.上司への提案・要望
部下が組織や業務の改善案を提案する機会にもなります。例えば「チームのコミュニケーションの改善について提案したい」といった改善案を提案されることも少なくありません。
(会話例)
部下:「ミーティングに時間がかかっているので、事前に議題をシェアするようにしてはどうでしょうか?」
上司:「それは素晴らしいアイデアですね。具体的にどう考えているのか、もう少し詳しく聞かせてください」
10.上司へのフィードバック
部下が上司のマネジメントスタイルや行動についてフィードバックを行うケースもあります。例えば「1on1の進め方について改善点をフィードバックしたい」などです。
(会話例)
部下:「1on1では、もう少し具体的な行動計画を立てる時間があると助かります」
上司:「ありがとうございます。確かにそうですね。では次回から、面談の最後に計画を立てる時間を設けましょう」
11.その他
その他、上記に当てはまらないようなテーマや相談でも構いません。例えば「最近、意欲が下がっているので、自分の今の気持ちを聞いてほしい」「相互理解を深めたい」といったメンタル面での相談の場としても効果的です。
(会話例)
部下:「最近、モチベーションが下がっていて悩んでいます」
上司:「そうですか。具体的にどんなことがモチベーション低下の原因だと感じていますか?一緒に解決策を考えていきましょう」
上司は部下の状況や需要に応じて、いろんなテーマを選択し、フランクにポジティブな対話を心掛けることが重要です。
この他にも、効果的な質問の例を以下の記事で紹介していますので、参考にしてみてください。
<関連記事>効果的な1on1を実現する20の質問事例」
1on1の進め方
1on1の大きな目標は成果につなげることです。毎週ただ漫然とミーティングを行うのではなく、1年・半期・四半期などで期間を区切って、目標設定から振り返りまでを計画的に実施しましょう。
ここでは1ターム全体での1on1の進め方と、最も中心となる定例1on1の細かな進め方をご説明します。
1タームでの全体構造
1タームにおける1on1の全体構造は、4つのステップに分かれています。
(1)目標設定1on1
1on1は成果目標と連動していることが共通認識であることを確認した上で、上司側が主導となって目標設定を行います。
(2)導入1on1
1on1の目的や原則、基本的なルールなどを、上司側が主導して確認します。メンバーに対しては、この1on1をどのように活用したいかのニーズを聞きましょう。
(3)定例1on1
目標に向けた定例の1on1は、メンバー主導で行います。11のテーマを参考にしながら、自らの状況や課題の共有をし、上司と共に解決に向けたアクションを話し合いましょう。
(4)振り返り 1on1
1タームの最終回で、全体の振り返りを上司側が主導で行いましょう。目標に対する振り返りだけではなく、1on1そのものを振り返ることも欠かせません。まずはメンバーの自己評価を聞き、次に上司の見立てをフィードバックしてください。
定例1on1の進め方
定例1on1は大きく3つのパートに分けて、それぞれの時間配分をしっかりと決めて行います。例えば30分の場合、以下のような時間配分にすると進めやすいでしょう。
(1)傾聴ステージ
主に関係構築やテーマの把握のための時間です。上司はとにかくメンバーの話を聞き、ニーズを漏らさないように気をつけます。体調への気遣いや最近のトピックスなど雑談から始め、前回のおさらいなどをした上で、今回のテーマを設定しましょう。
(2)会話ステージ
初めに聞いた今回のテーマについて話し、必要なサポートについて確認します。一方的な意見やアドバイスではなく、双方が発言し合う対話をすることを意識してください。
(3)まとめステージ
定例1on1のゴールである、「学び」や「行動」について考える時間です。今回の内容をまとめて、次回のアクションプランの設定や相手への鼓舞も行いましょう。このパートが効果的な1on1につながります。
タレントマネジメントシステムの活用
1on1の効果を高めるためには、タレントマネジメントシステムの活用が効果的です。社員情報を一元管理でき、過去の1on1で話した内容や次回話したいトピックを記録できるため、より具体的で建設的な1on1が可能になります。
タレントマネジメントシステムの活用方法は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
<関連記事>【事例付き】タレントマネジメントとは?目的、システム導入や比較・活用方法
1on1を成功させるポイント
1on1は気軽に始められますが、注意しなければ成果が出ず、逆効果になることがあります。以下の4つのポイントを押さえて実施しましょう。
メンバーに任せず、上司主導で行う
1on1は、部下の成果を最大化するために上司が主導すべき場です。上司が「時間をつくってあげている」という態度ではなく、メンバーに「時間をもらっている」という意識を持つことが大切です。
そのため、事前に議題や目標を明確に設定し、上司がリードする形で進行しましょう。特に、話の進行がスムーズにいかない場合や、部下から具体的な話題がないときは、上司から質問を投げかけ、方向性を導くとよいでしょう。
目標設定と1on1を連動させる
最初に設定した目標を常に意識しながら、1on1を実施しましょう。関係のない課題ばかりに集中し、成果目標が意味をなさない状態になっては、本来の目的を達成できません。
目標と1on1を連動させるためには、ミーティングの冒頭で目標を確認するとよいでしょう。こうすることで、部下と上司の双方が、現在の進捗状況や課題を共有できます。また、目標の達成度合いに応じて、目標の修正や再設定を行うとよいでしょう。
「傾聴」する
1on1においては「傾聴」することが重要です。部下から共有された事柄に対しては、決して否定せず、まずは話を聞きましょう。相手の気持ちに共感し受け入れる姿勢を示すことで、信頼関係の構築につながります。
また、部下が抱えている課題や悩みを正確に理解するためには、上司が積極的に深掘り質問をすることが重要です。部下が言いにくそうな表情をしているなど、うまく言葉に表さない部分も見逃さないようにしましょう。
仕事はプロセスとアウトプットの両面を合わせて成果と定義する
仕事は結果が全てという意見もありますが、どのようなプロセスでアウトプットに辿り着いたかはやはり重要です。プロセスの改善によって生産性が上がれば企業の利益につながりますし、独自のプロセスが他のメンバーの学びになることもあります。成果は数値上のアウトプットだけではなく、プロセスも含めたものと定義しましょう。
1on1で注意したいNGなこと
1on1は上司と部下の信頼関係を構築し、成長を促す重要な機会です。しかし、上司の態度が結果に影響を及ぼすため、慎重に対応しなければなりません。
以下に、1on1においてやるべきではないことを紹介します。
高圧的な態度
1on1では、上司が部下に対して高圧的な態度をとることは厳禁です。高圧的な態度をとると部下は萎縮してしまい、本音で話すことができません。
1on1は、部下が安心して自分の考えや悩みを話せる場にする必要があります。そのため、上司は穏やかな態度を心掛け、部下が自由に話せる雰囲気にすることが必要です。
プライバシーの侵害
1on1では、個人的な悩みが話題になることがあります。しかし、あまり深く聞きすぎるとプライバシーを侵害するため注意が必要です。
仕事に直接関係のない私生活の詳細を聞き出そうとしたり、過剰に個人的な話題に踏み込んだりすることは、不快感を与えるかもしれません。プライバシーを尊重しつつ、個人的な相談に乗るバランスを保つことが大切です。
一方的な指示や批判
1on1は、上司からの一方的な指示や批判の場ではありません。部下の話を無視したり、自分の考えを押し付けたりすると逆効果です。
例えば、部下が提案したアイデアを一方的に否定するなどの姿勢は、一気にモチベーションを下げてしまうことになりかねません。部下の意見に真剣に耳を傾け、適切なアドバイスを行うことで、信頼関係が生まれるのです。
1on1で行き詰まったら
1on1を継続的に実施していると、時として行き詰まりを感じることがあります。次に、このような状況に陥った際の効果的な対処法を3つ紹介します。
話す内容を準備しておく
1on1での行き詰まりを防ぐためには、事前に話す内容をしっかりと準備しておくのがおすすめです。例えば、部下が抱える課題や疑問点を予測し、あらかじめ解決策やアドバイスを考えておくとよいでしょう。
また、予期せぬ問題が出た場合にも対応できるよう、複数の話題を用意しておくこともポイントです。部下の目標の進捗や最近の実績などを事前に確認すると話題を見つけやすくなります。
このように準備を徹底することで、行き詰まりを回避することが可能です。
コーチングスキルを身につける
1on1を効果的に進めるためには、コーチングスキルを身につけるとよいでしょう。
コーチングスキルとは、部下の潜在能力を引き出し、自発的な行動を促す技術です。具体的には、以下の3つのスキルがあります。
- 傾聴:部下の話を聞き、理解しようとする能力
- 質問:部下の思考を深める問いかけをする能力
- フィードバック:部下の行動や成果に対して、具体的かつ前向きな評価をする能力
コーチングスキルを磨けば、より深い議論ができるようになり、行き詰まりを防げます。
逆1on1を取り入れる
1on1で行き詰まりを感じたら、部下が上司に質問や相談をする「逆1on1」を取り入れることもおすすめです。あらかじめ上司に聞きたいことや相談したいことを考えてもらっておくとスムーズでしょう。
この方法を取り入れることで、部下が積極的に自分の意見や考えを伝える機会が増え、より活発な双方向のコミュニケーションが可能です。また、部下が感じている課題や悩みを把握しやすいメリットもあります。
1on1導入企業の事例
1on1は、多くの企業で導入され、その効果が実証されています。ここでは、実際に1on1を導入し、成果を上げている企業の事例を紹介します。
株式会社ユニークワン
株式会社ユニークワンは、1on1を「組織目標を達成するための場」と位置づけ、効果的に活用しています。
同社ではHRMOSタレントマネジメントを導入し、1on1レポートやアジェンダ作成機能を活用することで、1on1の質の向上を実現しました。
システムの導入により、上司が部下の目標を簡単に確認できるようになり、1on1を通じた目標達成への意識が全社的に高まりました。
また、アジェンダ作成機能を活用することで議論の質が向上し、上司と部下双方の業務負荷も軽減されています。
株式会社ユニークワンの導入事例は、こちらの記事をご覧ください。
<関連記事>1on1は「組織目標を達成するための場」。1on1レポートやアジェンダ作成機能の活用が、1on1の質の向上につながった
oVice株式会社
oVice株式会社は、1on1を通じて、社員の成長を促しています。同社では、1on1を社員の成長を支援する場と捉え、2週に1度実施しています。
特徴的なのは、1on1の内容を記録し、振り返りに活用している点です。部下の成長過程を可視化できることで、適切なフィードバックを行うことが可能になりました。また、1on1の実施状況も可視化することで、マネージャーの育成にも役立てています。
oVice社の事例は、1on1を単なる対話の場ではなく、組織全体の成長につなげる戦略的なツールとして活用している例です。
oVice株式会社の導入事例は、こちらの記事をご覧ください。
<関連記事>1on1の目的を明確にして成果を上げる-oViceの事例から学ぶ1on1-
LINEヤフー株式会社
LINEヤフー株式会社は、日本における1on1導入の先駆者です。同社では、2012年から1on1を導入し、約6,000人の社員を巻き込む大規模な取り組みを続けています。
LINEヤフーの1on1の特徴は、「社員の才能と情熱を解き放つ」ことを目的としている点です。1on1によって、失敗や成功体験から学んだことを普段の業務に落とし込むことで、社員の成長につなげています。
具体的には週1回30分程度のミーティングを行い、業務の進捗確認だけでなく、社員の成長や課題、キャリアについても話し合います。また、上司向けのコーチングスキル研修を実施し、1on1の質の向上に努めています。
1on1が業務効率化につながった事例
とある会社で1on1で部下から次のような提案を受けた事例があります。Aさんは経理部門で働く若手社員で、給料日の度に、給与明細を封筒に入れる作業に半日を費やしていました。
Aさんは、この作業が非効率的と感じており、業務を改善したいと1on1で相談し、リサーチしていたデジタルツールをいくつか上司に提案しました。
1on1で明らかになった課題を社内で共有し、役員会で承認を得てツールを導入することが決まりました。このツールの導入により、Aさんは負担がなくなり、新たな業務に集中できるようになったのです。Aさんが提案した業務改善は、作業効率化に大きく貢献し、部署全体の生産性が向上しました。
まとめ
1on1は、業務の課題改善や社員の成長を促す効果があります。ただし指針がないまま運用を始めると、1on1実施の重要性が軽視され、意味がないと感じてしまう可能性があります。
そのためには、単なる雑談や業務報告ではなく「対話を通じて成長してもらう場」としての位置づけが重要です。効果的な1on1の実施には、明確な目的設定や適切な実施方法などを共通認識として持っておく必要があります。
したがって、人事の方は1on1の重要性をマネジメント層に十分に説明し、共通認識を持たせることが不可欠です。適切な1on1の実施は、社員の成長と企業の利益につながります。本記事を参考に正しく運用していただければ幸いです。
1on1の質の向上に
1on1は、上司と部下の信頼関係構築や部下の成長促進に効果的な手法です。しかし、効果的に実施するには、上司のコーチングスキルやコミュニケーション能力が求められます。また、1on1の内容を記録し、結果を検証することも重要です。
こうしたデータの蓄積にはタレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。タレントマネジメントシステムは、部下の成長過程や目標達成状況を可視化できるため、データに基づいたフィードバックが可能です。システムを活用することで、上司の負担を軽減しつつ、1on1の質を向上させられます。