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時代の移り変わりや社会の変化に取り残されないためには、企業にも新たな制度や仕組みの導入が求められます。
特に人事や人材管理に関する制度は重要です。近年では「アセスメント」が注目を集め、導入する企業も増加しています。さまざまな種類が存在していますが、本記事では人事や採用に関わる「人材アセスメント」に焦点を当てながら、導入のメリットや具体的手法などについて解説します。
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アセスメントとは
「アセスメント」は、英語で「assessment」と表記され、評価・査定・判断などの意味を表す単語です。ビジネスにおけるアセスメントとは、適切な手法を用いながら人材に対して客観的な評価をし、採用や特定の役職への抜擢、異動などの配置転換に活かすことをいいます。また、評価するための情報収集も、アセスメントに含まれることがあります。
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人事や採用に関わる、人材アセスメントとは
アセスメントの中でも、人事や採用に深く関わるのが「人材アセスメント」です。人材を評価・分析する手法の一つであり、新たな人材の採用はもちろん、社内での異動や昇格・昇進等の判断にも活用されます。
手法はさまざまですが、自社内で制度や環境を整えて実施するほかに、外部機関へアセスメントを依頼して、客観的な視点で評価・分析してもらう企業もあります。企業の規模や導入目的、結果の用途などにより適切なアセスメント手法の選定が求められます。
組織アセスメントとの関係
人事や採用に関わるアセスメントの一つに「組織アセスメント」があります。人材アセスメントが社員個人へ焦点を当て評価・分析するのに対し、組織アセスメントの対象となるのは組織です。
社員個人の能力や資質を把握できたとしても、それを活かすための組織の実態についての把握が不十分であれば意味がないため、組織アセスメントは不可欠です。
組織アセスメントが対象とする組織は、部署やチームなどさまざまです。人材アセスメントと同様に、適切な運用が求められます。また、単に組織の改善のために導入されるケースも少なくありません。
従来の評価制度との違い
評価制度では、評価者が直属の上司のように特定の役職に就く者に限られていました。
一方、アセスメントは外部の組織やツールにより評価が行われます。より客観的な視点が反映される点が、従来の評価制度との大きな違いです。
評価制度とアセスメントでは評価内容にも違いがあります。従来の評価制度では、成果や結果が昇進・昇給に直結したり、年功序列によって決まったりすることが多く、成果に応じて一時的なインセンティブを与える企業も多いでしょう。
一方、アセスメントでは、まだ成果や結果に表れていない潜在的な能力も評価・分析します。つまり、アセスメントはより内面に焦点を当て、人材活用につなげる手法と言えます。
両者は、そもそも目的が異なります。人材アセスメントを導入する企業が、従来の制度を撤廃するわけではありません。成果も社員の待遇等の決定には不可欠なためです。多くの企業では従来の制度のみに頼らず、アセスメントも導入したうえで、より多角的な視点で社員の評価を行っています。
どちらかを選択するのではなく、どちらも活用したうえで、より正当・公正で企業と社員の双方にとってメリットのある制度の構築が求められます。
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アセッサーの重要性
アセッサーとは、人材アセスメントにおいて、受検者の言動や特性を観察し、客観的に評価・査定する専門家を指します。
心理学や人材評価に関する知識を持ち、客観的かつ専門的な視点で評価を行う役割を担います。評価の信頼性や妥当性を高めるうえで欠かせない存在であり、適切な人材配置や育成方針の判断を支える存在です。
人材アセスメントの主な指標
導入目的や用途により、用いられる指標は異なります。ただ、人材アセスメントにおいては、主に3つの指標が重要視されるケースが多いでしょう。それぞれの概要を紹介します。
業務スキルや遂行力
人材アセスメントでは、業務に関するスキルや、業務遂行力などの能力を示す指標を設定します。また、業務内容や求められるスキルを企業や職種ごとに定めた基準をもとに、評価を行います。
業務をこなせるレベルには個人差があり、また、他者への指導が可能か否かなどにも違いがあります。そのため、どの業務にも求められる問題特定力や分析力、解決に導いていく力などの汎用的なスキル指標を設けることも重要でしょう。
問題解決力は、不確実性の高い現代において、将来を担うリーダー育成の観点でも重要なスキルの一つといえます。
資質や特性
人材アセスメントでは、業務スキルだけでなく、その人が本来持っている資質や性格的特性も重視されます。例えば、集中力・持続力・慎重さ・協調性・責任感といった要素は、職務への適応や成果の出し方に大きく影響します。数値化しにくい部分ではありますが、職場でのパフォーマンスを左右するため、丁寧な評価が求められます。
ポテンシャル
ポテンシャルとは、将来の成長可能性や潜在的な能力を指します。現時点での成果ではなく、将来どこまで成長できるか、どのような役割を担えるかなど、ポテンシャルを見極めるための指標です。スキルの高さに加え、性格や姿勢が業務にどう影響するかを多角的に捉える必要があります。早期の段階で適性を把握し、育成方針や配置計画に反映するうえでも重要です。
人材アセスメントの必要性
アセスメントを取り入れる企業が増えている背景には、日本社会が抱えるさまざまな課題があります。企業も社会の変化に対応する必要があり、その手段の一つとしてアセスメントが導入されています。人材アセスメントが必要である理由を探ってみましょう。
年功序列や終身雇用からの転換
従来の年功序列制度では、限界を感じる企業が増えているようです。勤続年数や年齢のみで昇格・昇給が決まる場合、能力や成果との間にギャップが生じ、企業にとってもコストと業績のバランスが悪くなるためです。
また、価値観や選択肢の広がりにより雇用の流動性も進みつつあります。労働者がこうした意識を強く持ち始めると、企業としては雇用を守ることや新たな人材の確保が、より困難となるでしょう。
そうした課題の解決のためには画一的な採用や育成ではなく、より個人に注目し、個々の経験や能力にあわせた採用や活用が重要となります。多くの企業はアセスメントの導入により社員個人に焦点を当てることで、年功序列や終身雇用からの転換を含めた時代への対応を求められています。
マネジメントの重要性の向上
企業が闇雲にリソースを割き、社員の成長を促そうとする時代はすでに終わっています。多くの業界や企業では、適切なマネジメントによる効率化を図る時代となりました。しかし、雇用の流動化が進みつつある中で、優秀なマネジメントが行える人材の確保が困難になっています。
優秀なマネジメントができる人材を確保するには、採用・人事戦略において正当かつ公正な評価が不可欠です。組織アセスメントとあわせて行うことで、より組織のマネジメントの仕組みや体制が強化できます。組織運営の結果として得られる効果の最適化には、より洗練されたマネジメントが必要であり、そのための方法の一つがアセスメントです。
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働き方の変化
働き方の変化は転職への意識を高める人の増加傾向を強め、雇用形態や勤務体制を変化させています。非正規雇用で働く社員の能力が必ずしも低いとは限りません。
雇用形態や働き方で判断せず、社員を適正に評価し、新たなポジションへ抜擢したり、配置転換を行ったりする必要性も生じています。
社会全体の価値観の変化や時代の流れに対応するうえで、企業にとって人材アセスメントの導入は必要不可欠だといえるでしょう。
また、リモートワークの普及の影響も少なくありません。社員同士が顔を合わせる機会が減った企業も多く、評価の在り方そのものを変えざるをえない状況も生まれています。
従来の制度が適用しづらくなれば、新たな制度の導入が求められるのは必然でしょう。
多様性の拡大
多様化は企業の制度や働き方だけではなく、個人の価値観にまで及びます。人種や国籍、経歴や学歴、性別や生活スタイルなども同様です。多様性のある人材を受け入れ、活かしていくために人材アセスメントが求められています。
社会の多様性は広がりつつあるにもかかわらず、それを受容できない企業があれば成長は見込めないでしょう。外部組織や第三者を介したアセスメントにより、個人の能力や特性に焦点を当てることで、企業における多様性の理解と受容の促進が求められています。
人材アセスメントの代表的なツール
社員や入社希望者に対して実施される人材アセスメントには、さまざまな手法が存在します。代表的な手法を紹介しながら、それぞれの特徴を解説します。
インタビュー
インタビューは、アセスメントの専門職であるアセッサーが社員との面談を通して評価・分析を行う手法です。管理職が実施することも可能ですが、アセスメントの効果を最大化するには、やはりアセッサーの関与が欠かせません。
上司や人事担当者による実施では、どうしても主観が入りやすくなります。また、社員側も評価が昇格や昇進に直結すると誤解する可能性があります。結果的に、アセスメントに必要な性格や素質が十分に把握できないことへとつながる恐れがあります。
適性検査
適性検査は、一般的にマークシートや記述式の設問に回答してもらう形で実施されます。性格や特性を測定するために、一定の心理学的根拠に基づいて設計された検査であり、必要な情報の収集に効果的です。
結果を数値化しやすい点もメリットです。また、検査を用意・実施するのみのため、比較的コストのかからない手法でもあります。テスト形式であるため、既存の社員に実施する際は、先入観を与えないよう十分な事前説明が必要です。
また、適性検査は採用面接とともに用いることも可能で、幅広く活用できるアセスメント手法といえるでしょう。
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360度評価
360度評価は、多面評価とも呼ばれる手法です。直属の上司だけではなく、同僚や部下など対象社員と関わりのある複数の人物から、幅広く情報を収集する手法です。
各評価者はそれぞれ主観が入る可能性はあるものの、さまざまな立場にある人物から情報を得ることでバイアスが排除・軽減できます。ただ、評価者の主観を完全に排除することは難しく、その点がリスクとして指摘されます。
この手法のみでアセスメントを実施することは難しく、他の手法とあわせながらの活用が求められます。あるいは、対象社員の自己評価と周囲からの評価のギャップを埋める目的や、新たなチャレンジを促進する目的など、用途を限定して実施する必要があるでしょう。
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エニアグラム
エニアグラムはアセスメントツールの一つで、主に性格に焦点を当て実施される手法です。性格が成果や業績に直結するとは限りません。
しかし、業務の遂行力や成長度合いなどに性格がまったく関わっていないともいえないでしょう。在籍する社員や入社希望者など幅広い対象の、数値化が難しい性格の傾向を把握する手段として活用されます。
一方で、360度評価同様に、エニアグラムのみで人事や採用の決定ができない点には注意が必要です。あくまでも他の手法の補完的な意味合いが強くなります。
アセスメント研修
アセスメント研修は、実際の業務と同じ、またはそれに近い状況を再現し、社員などの情報を収集する手法です。通常の研修と異なり、あくまでも評価・分析が目的です。
そのため、アセッサーなど専門家のチェックが欠かせません。また、事前に評価項目を詳細に決定しておく必要もあります。外部のアセッサーの判断と企業の思惑に相違点が生じないよう、あるいは、結果を適切に人事などに反映させられるようにするためです。
実施には一定の手間やコストがかかるため、導入には計画的な検討が必要です。そのため、一定以上の規模を持つ企業や、アセスメントの対象者が多い場合に行われます。
アセスメント・センター方式
アセスメント・センター方式は、管理職候補者などのマネジメント力を総合的に評価するアセスメント手法です。
実際の業務を想定した演習に取り組ませ、その行動や判断のプロセスを、専門の評価者(アセッサー)が複数の視点から観察・評価します。
客観性や再現性が高く、昇進試験や人材育成の場で活用されており、近年では中堅社員や次世代リーダーの選抜にも広く導入する企業が増えています。
インバスケット演習
インバスケット演習は、架空の管理職になりきり、制限時間内に優先順位をつけながら、未処理の案件を処理するアセスメント型の研修です。
緊急性・重要性を見極めながら、判断・対応・指示などのスキルを評価します。問題解決力や対人調整力といった実務的能力が問われるため、管理職登用時の適性把握や、思考行動の癖を可視化する目的で多くの企業に導入されています。
コンピテンシー診断
思考や行動特性、特にハイパフォーマンスへとつながるそれらの要素の診断に用いられる手法です。
エニアグラムのような性格診断と重なる要素はあるものの、コンピテンシー診断はハイパフォーマンス人材の行動特性と比較しながら分析を行う点が特徴です。
細分化した指標と照らし合わせて、モデルと同様の思考や行動特性を有しているか判定します。部署やプロジェクト、業務内容によりハイパフォーマンスの定義は異なるため、自社に合わせた指標を設定して実施することが有効度を上げるためのポイントです。
納得感のある評価を効率的に行うための仕組みを整備し、従業員の育成や定着率の向上に効果的な機能を多数搭載
・360°フィードバック
・1on1レポート/支援
・目標・評価管理
・従業員データベース など
人材アセスメント導入のメリット
アセスメントの導入によって得られるメリットについて解説します。
個人の成長や満足度の向上は、結果として企業全体の利益にもつながるため、その視点を持った導入が重要です。
先入観の排除
客観的な評価・分析により、先入観や固定観念の排除が可能となる点が最大のメリットです。この点が、アセスメント導入による他のメリットを生み出す根幹となります。
先入観を徹底的に排除するには、外部の第三者機関によるアセスメントの活用が効果的です。評価者や手法により客観性やその度合いは変化すると認識しておきましょう。
ミスマッチの防止
採用時にアセスメントを実施すると、ミスマッチの防止につながります。ミスマッチが生じると生産性の低下やコストの増加、早期退職などのリスクが高まります。
採用時に入社希望者に対して客観的な視点で評価・分析を行えば、能力だけでなく、性格や価値観に起因するミスマッチの防止にもつながります。
適切な人材配置
適切なマネジメントで組織するには、適材適所が不可欠です。
同じ企業内でも、部署やプロジェクトなどの組織が求める人材と、実際にアサインされる社員の能力や性格に大きなギャップがあれば、理想のマネジメントはできません。
アセスメントの導入により、適切な人材配置ができます。配属先によっては、人間関係にも大きな影響を与えます。持ち合わせている知識やスキルのみならず、人間関係の構築を配慮した配置が可能になる点も、アセスメント導入の大きな利点です。
生産性や効率性の向上
ミスマッチを防ぎ、社員一人一人に適切な業務を与えることで、生産性や効率性は向上します。
これは組織全体の生産性や効率性の向上にもつながります。システムによる業務の効率化も重要ですが、人が関わる以上、システムのみでは限界があります。
各社員のポテンシャルをアセスメントにより引き出すことで、生産性や効率性の最大化が可能です。
管理職やリーダーの育成
アセスメントは、管理職やリーダーなどマネジメントに関わるポジションの育成にも役立ちます。
実務能力に長けている人物が、必ずしも管理職に適しているとは限りません。成果や業績のみで昇格や昇進を決定してしまえば、実務能力は高くても、マネジメントに不向きな人材が管理職となるリスクがあります。
アセスメントの実施により、真にマネジメント能力の高い人材を早い段階で見極められ、計画的かつ長期的な視点による管理職やリーダーの育成が可能です。その過程で、後継者にふさわしい人材を発掘してサクセッションプランの作成に寄与する場面もあるでしょう。
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モチベーションの向上
自らの能力や性格にマッチした業務・部署への配属や、管理職やリーダーの育成枠への抜擢により、モチベーションが向上する社員が増えると期待されます。
実際に配属先で成果が残せれば評価にも直結するため、さらにモチベーションの向上に寄与するでしょう。やりがいの実感や、キャリアプラン・目標の明確化にもつながります。
定着率の向上
これまでに挙げたメリットは、社員の定着率の向上をもたらします。
自らに適した業務や役職を与えられれば、積極的に退職や転職を検討する人は減るでしょう。既存の社員のみならず、新たに採用した人も同様です。
退職を検討している社員に対する、引き留めにも活用できる可能性があります。複雑で大規模なアセスメントを個人向けに実施するのは難しいですが、簡易的な手法であれば十分に対応可能です。
必要な人材であれば、その結果をもとに適切な業務を与えたり、会社にとっての必要性を説いたりすることができます。
採用や育成コストの削減
適材適所の配置の実現は社員のモチベーションの向上に寄与し、自ら成長を望む人を増加させるでしょう。
自発的に知識やスキルの習得に取り組む社員の増加も期待されます。これにより育成コストの削減が可能です。
また、定着率が向上することで採用する必要がなくなり、結果的に採用コストの削減にもつながります。採用工数の削減にもなるため、管理者はより必要なマネジメントに集中できる効果ももたらします。
組織診断と変革
人材アセスメントは個人の評価にとどまらず、組織全体の診断や変革にも活用できます。
社員一人一人の特性やスキルを把握することで、組織としてどのような強み・弱みがあるのかを可視化でき、構造的な課題の発見につながるためです。
また、個人と組織の特性のギャップを見極めることで、より効果的な組織改革や人材戦略の見直しが可能になるでしょう。組織全体の最適化を目指すうえでも、アセスメントは有効な手段といえるでしょう。
人材アセスメント実施のステップ
社員に対して人材アセスメントを実施する際の流れを、5つのステップに分けて解説します。
1.導入目的や用途の明確化
解決したい課題や組織の状況により、アセスメントの導入目的は変わります。「時代の流れだから必要」と一方的に導入するだけでは、大きな効果は期待できません。
また、この後のステップも適切に行えないでしょう。
導入前に、目的や分析結果の用途を明確にする必要があります。そのために十分な情報を収集したり仮説を立てたりすることも重要です。
本当にアセスメントの導入が最適な手段なのかも含めて、丁寧に検討することが求められます。
2.評価領域や項目の設定
アセスメントの導入が必要と判断された場合は、評価領域や具体的な項目の設定を行います。評価領域などを設定する際は、求める人物像とスキル、それらの人物に必要なコンピテンシーもセットで言語化を行いましょう。
また、単に社員の知識や技術の把握が目的なのか、それとも性格やポテンシャルなど内面にフォーカスしたいのかによって、設定すべき領域や項目は異なります。この点を間違えると、目的から外れた結果しか得られません。
評価の項目数にも注意が必要です。多すぎると情報過多となり、目的に沿った評価判断がしづらくなります。項目が多くなりそうな場合は、目的を細分化し適したものに振り分け、複数回に分けてのアセスメントの実施も有効です。
3.アセスメントツールの選択と実施
評価領域や項目に沿って、適切な手法を選択します。手法の選択は、分析結果に大きく影響します。
特に、外部の専門機関へ依頼する場合や専用ツールを活用する場合は要注意です。
同じ評価項目でも、依頼先の機関やツールによって結果が異なる場合があるため、慎重な選定が必要です。
4.結果の分析とフィードバック
アセスメントにより得られた情報をもとに評価と分析を行います。
項目ごとのウエイトに基づいて分析を行い、あらかじめ設定した目的の達成に活用します。
同時に、アセスメントを受けた社員へのフィードバックも実施します。本人による課題の認識や改善へとつなげ、そこからさらなる成長に役立てることが重要です。
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5.サポート
有能な社員であれば、フィードバックを受けた時点で自身の課題を認識し、自ら改善のための行動に出られるでしょう。
しかし、すべての社員がそうできるわけではありません。結果の伝達だけで終わらせず、その後の業務・配置に反映させるまでの支援が重要です。
中には困惑する社員が出てくる可能性もあります。サポートやフォローまでは外部の機関が行えないケースが多いため、社内の責任者の徹底したサポートが不可欠です。
人材アセスメントのポイントや注意点
人材アセスメントを導入する際に注意すべき点や、効果を最大化するためのポイントを解説します。
結果と能力は比例しない
アセスメントは評価制度ではありますが、結果と能力が比例するとは限りません。
アセスメントは主に適性を把握するためのものであり、点数が低いからといって能力が低いとは限らない点に注意が必要です。そのため、結果を評価へとダイレクトに反映させないような配慮も求められます。
アセスメントの結果で優劣を判断すると、社員のモチベーションを下げる要因となりかねません。成果を一切無視した評価は、結果的に企業にも不利益をもたらすため要注意です。
リソースが必要不可欠
アセスメントを導入するには、一定のコストがかかります。
特に、外部の専門機関や専用ツールの利用には多くの経済的コストがかかるでしょう。
また、導入初期には、管理職など関係者への業務負担も想定されます。
適切に行えば効果は大きいものの、費用対効果を踏まえたうえで、導入を慎重に検討することが重要です。
モニタリングと継続的な実施
アセスメントや、その結果をもとにした人材配置、昇格や昇進の検討・決定、管理職やリーダーの育成は、単発的・短期的な対応では効果が限定的になってしまいます。
企業が継続して成長するためには、アセスメント後のモニタリングと、それを踏まえたうえでの継続的な実施が求められます。
同じ社員でも、数年後にはまったく異なる評価となる人もいるでしょう。実施とあわせて、分析と検証を継続的に行うことで、自社に最適な人材アセスメントの構築と運用が可能になります。
人材分野以外のアセスメントの種類
アセスメントは、医療、教育、ITなど、さまざまな分野で活用されています。各分野のアセスメントについて解説します。
看護分野のアセスメント
看護分野のアセスメントとは、患者の情報を収集して状態を把握し、適切な看護計画を立てて、看護評価を行う一連の流れを指します。
バイタルサインや検査結果などの客観的なデータと、身体症状、生活背景、精神的状態など多角的な視点から情報を収集し、看護の優先順位やケアの方向性を明確にします。
患者一人一人の状況に応じた個別対応を行うために不可欠であり、看護実践の質や安全性を高める基礎となります。
教育分野のアセスメント
教育分野におけるアセスメントは、児童・生徒の学力や学習状況、発達段階、非認知能力などを把握し、教育方針や個別支援計画に生かすための評価手法です。
単に定期テストの成績をつけるだけでなく、学習への意欲を高めたり、学習者の能力を多面的に引き出したりする取り組みを指します。
なお、保育現場では「発達アセスメント」として、子どもの成長の様子や課題を継続的に観察・記録し、保護者との共有や指導内容の調整に役立てます。近年はICTを活用した学習ログの分析なども注目されています。
介護福祉におけるアセスメント
介護・福祉分野におけるアセスメントとは、利用者の心身の状態、生活環境、希望などを多面的に把握し、個別性のあるケアプランを作成するための評価プロセスです。
アセスメント結果はケアマネジャーを中心に、現場の介護士や医療スタッフと共有され、チームで連携した支援に生かされます。
初回アセスメントだけでなく、定期的な見直しや再評価を行うことで、利用者のQOL(生活の質)を継続的に高めていくことが可能です。
環境アセスメント
アセスメントは企業の人事や採用に限らず、環境保全の分野でも重要な役割を果たしています。
例えば、社会活動や特定の事業が環境や自然へと与える影響を評価する「環境アセスメント」があります。
道路や河川、発電所など大規模な開発事業を実施する際に、自然破壊や公害を起こさないように気を付ける必要があります。
リスクアセスメント
ビジネス関連では、職場でのトラブルの可能性を評価し、事故の発生を防止・軽減するために行われる「リスクアセスメント」も、企業にとって重要な取り組みの一つです。
職場における事故やトラブルなどの危険リスクを事前に検知し、除去または低減させるためのものです。
ライフサイクルアセスメント
商品の環境負荷を評価するのは、「ライフサイクルアセスメント」です。
LCA(Life Cycle Assessment)とも呼ばれ、商品やサービスの原料調達から廃棄・リサイクルまで、ライフサイクル全体における環境負荷を評価します。
総合的な環境負荷を可視化し、環境に配慮した商品開発や改善に役立てられます。
フィジカルアセスメント
フィジカルアセスメントは、身体的な状態を観察・評価する、医療・看護分野の手法です。
問診・視診・触診・打診・聴診といった基本的な身体診察を通じて、患者の健康状態や異常の兆候を早期に発見することが目的です。
特に高齢者や慢性疾患患者のケアにおいては、日々の小さな変化を見逃さず把握する力が求められ、看護師や医師、介護職など多職種間の連携においても、重要な役割を担います。
心理アセスメント
心理アセスメントとは、個人(クライアント)の性格特性、心理状態、認知機能、発達段階などを評価して、支援方法や見通しを立てる取り組みを意味する言葉です。
主に心理職の現場で行われるもので、心理検査や面接、行動観察などを用いて、支援の必要性や治療方針を見極めます。
教育現場では児童の発達や学習障害の把握に、医療現場ではうつ病、不安障害、認知症などの評価に活用されることがあり、的確な支援方針を立てるための基盤となります。
ITアセスメント
ITアセスメントは、企業や組織におけるIT資産や情報システムの現状を評価し、課題の発見や改善策の立案につなげるプロセスです。
主にシステムのセキュリティ、運用の効率性、業務プロセスとの整合性などを評価します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む現代においては、ITアセスメントにより自社のIT基盤の成熟度を把握し、経営戦略とIT戦略を結びつけるための重要な手段となります。
政策アセスメント
政策アセスメントとは、新たに策定・実行される政策や制度が社会に与える影響を、事前に評価する手法です。
対象となる分野は多岐にわたり、経済、福祉、教育、環境などさまざまです。政策決定前にその妥当性や実効性、リスクを予測することで、透明性の高い行政運営や、国民への説明責任の遂行に寄与します。
エビデンスにもとづいた政策形成(EBPM)の基礎としても注目されています。
人材アセスメントによる評価で時代に対応した人事戦略や採用活動を目指そう
アセスメントは、単なる人材評価のツールではなく、組織の持続的な成長を支える基盤となる手法です。
先入観を排除し、ミスマッチを防ぐことで、社員一人一人が能力を発揮しやすい環境を整備する一歩となります。
人と組織の双方に納得感をもたらすマネジメントの実現において、アセスメントは非常に有効な手段です。まずは、自社の目的や課題に合った手法を選定し、スモールスタートで取り組むことをおすすめします。
HRMOSタレントマネジメントでアセスメントに取り組もう
HRMOSタレントマネジメントの「360°フィードバック」「組織シミュレーション」は、アセスメントを実践的に活用するための有効な機能です。
社員のスキルや性格、評価情報など多面的なデータをもとに人材配置のシミュレーションを行うことで、感覚や先入観に頼らず、納得感のある人材配置や抜擢が実現できます。
機能の詳細や具体的な活用方法については、以下のリンクよりご確認ください。