目次
こんにちは。「HRMOS(ハーモス)タレントマネジメント」のHRMOS TREND編集部です。
こちらからお役立ち資料「タレントマネジメント成功への条件」を無料でダウンロードできます!
業績改善や人材育成の観点で、「エンパワーメント」を重視する経営者が増えています。組織の力を底上げするアプローチとして注目されるようになりました。しかし、まだ導入していない企業やうまく実践できていない企業も珍しくありません。そこで本記事ではエンパワーメントの意味やビジネスでの使い方、組織力を高めるための方法、メリットや注意点なども幅広く紹介していきます。
エンパワーメントの意味とは?
エンパワーメントの語源は「empowerment」であり、個人や集団が本来持っている潜在能力を引き出すことを意味します。この言葉がよく使われるようになったのは、公民権運動などの社会変革が活性化していた時期です。その頃は、自分の能力を自由に発揮できる世の中が理想とされていました。他人の束縛や制限を受けることなく、自分の権限で行動できる状態が望まれていのたです。
ビジネスでのエンパワーメントの使い方
ビジネスシーンにおけるエンパワーメントも根本的な概念は共通しています。ビジネスでは「権限委譲」「能力開花」「自立性促進」という意味で使われます。経営陣がすべてを決定するのではなく、現場の従業員に権限を持たせることが基本です。従来のマネジメントのように、業務の進め方を上司が決めて部下に従わせるスタンスではありません。一から十まで教えるような過保護な指導もなく、従業員の自主性や発想を尊重します。
部下に業務を委ねることで、一時的に組織のパフォーマンスが低下するケースも多いです。しかし、安直に上司が手を貸すことは避ける必要があります。成長の芽を摘むことになり、その繰り返しが企業の将来性をダウンさせるリスクもあるからです。業務の環境を整備し、答えではなく考え方を示唆するなど、あくまでも部下を主体とするマネジメントが求められます。そのマネジメントこそがエンパワーメントで、能力を開花させる方法として人材育成にも活かされるようになりました。
・入社手続きの効率化
・1on1 の質の向上
・従業員情報の一元管理
・組織課題の可視化
エンパワーメントが重視されている背景
ビジネスシーンでエンパワーメントが重視されることには、現代ならではの事情があります。それらを3つに分けて以下に紹介するので把握しておきましょう。
1.加速するビジネスシーン
流行の変化が激しい現代において、ビジネスシーンの移り変わりも加速しています。ヒット商品を生み出しても、すぐに売上がダウンするようなケースも多いです。企業は世の中のトレンドを常に把握し、その変化をいち早く察知しながら、戦略を修正しなければなりません。その判断を上層部だけが担当している状況では、どうしても展開のスピードが遅くなってしまいます。強固なトップダウン形式を維持していると、従業員が行動するまでに長いタイムラグが発生するのです。そのような状況では、フットワークの軽い競合他社にリードされるリスクがあります。対抗策として有効なのは、現場の判断で迅速に行動できる状況を作り上げることです。
グローバル化が進む現代において、海外企業も脅威となりうる存在といえます。日本企業よりも早く、世界のトレンドを日本市場に流入させるケースが増えました。日本企業が売上を伸ばすには、ますますスピードを上げていく必要があります。上からの指示や承認を待つような組織では太刀打ちできません。現場の活動を速める手段として、エンパワーメントを選択する企業が多くなりました。
2.消費者の多様化と忙しい生活
現代は多様化の時代といわれており、画一的なビジネスを実施していたのでは、企業の存続は立ち行かなくなります。もう大量生産と大量消費の時代は終わっており、これからは個別にフォローしていく姿勢が求められます。困っている顧客がいるなら、個々の状態に合う最適なソリューションを提供しなければなりません。そこでポイントになるのが、顧客への対応を現場の判断に任せることです。わざわざ上司に確認していると対応が遅くなってしまいます。その間に顧客は他の企業や商品を選択してしまうリスクもあるのです。このようなビジネスチャンスの消失を防ぐために、エンパワーメントを導入する企業も多く見受けられます。
共働きの世帯が増え、仕事や家事で毎日を忙しく過ごしている人は少なくありません。特にそのような人たちは、サービスの価格面やクオリティだけでなく、スピードにも価値を見出しています。そのニーズに応えられる体制を構築すると、継続的に売上が伸びていくことも期待できるでしょう。よって、企業の発展という観点においても、現場に権限を持たせて行動させる意義は大きいです。
3.競合他社との激しい競争
商品やサービスが飽和している現代において、企業が生き残るためには他社との差別化が不可欠です。とはいえ、差別化を実現するアイデアの捻出は簡単ではありません。経営陣が自分たちだけで考えるのではなく、現場のアイデアを吸い上げることもポイントになります。しかし、上層部に言われるがままに動く現場では、そちらと同じアイデアしか生まれない可能性が高いです。日ごろから独自の判断で主体的に動くことが、現場ならではの自由な発想につながります。エンパワーメントの導入によって、そのような仕組みが定着していくというわけです。
また、現場での配慮によって、他社との違いを消費者に印象づけるケースもあります。単純に商品やサービスを宣伝するだけでなく、従業員の判断で特典の付与などを行えるからです。周辺のライバル企業の動向を見ながら、現場レベルでの調整が可能となっています。こういった臨機応変な処置の権限を与えるために、エンパワーメントを取り入れている企業もあるのです。
エンパワーメントを導入するメリット
ここでは企業がエンパワーメントを導入する具体的なメリットを解説していきます。企業は多くの恩恵を受けられますが、それらの中で特に重要なのは以下に挙げる5点です。
メリット1:決裁の手間を削減できる
権限を部下に与えることで、現場での意思決定が可能になります。依然として、日本では厳格な縦系統を主軸とする企業が多いです。その中で迅速な業務を阻害している要因として、決裁が挙げられます。決裁とは、部下が申請した内容を上司が審査して、許可や却下といった判断を行うことです。企業としての判断を誤りにくいという利点がありますが、結果が出るまでに時間がかかるという問題があります。組織が大きいと、この問題は深刻なものになりかねません。承認を求められた人が、自分の上司にさらに決裁を仰ぐといった二重構造や三重構造になるからです。その過程で1人でも対応が遅れると、その分だけ現場にしわ寄せが出てしまいます。
このようなリスクを払拭できるのがエンパワーメントのメリットです。エンパワーメントを徹底していれば、上記のフローの大部分を省略できます。たとえば、現場の責任者に完全な決裁権を与えておくと、そこからの上のフローは存在しなくなります。さらに、各従業員に権限を付与している場合、決裁自体が不要になるのです。
メリット2:主体的な成長を促進する
権限を与えられた従業員は、自分で考えて行動しなければなりません。そして、その行動には責任が伴うことも意識しておく必要があります。責任の所在が明白であり、失敗したときに他人のせいにするのは不可能です。そのため、成功に向けて論理的に検討する習慣が身につきます。把握している情報をもとにシミュレーションするなど、先の展開を予想しながら立ち回れるようになるのです。ハードルが高いと分かったら、それを克服するために創意工夫するような主体性も育まれます。
とはいえ、自分の見積もりが甘く、成功しないケースもあります。そこに他人の判断は入っておらず、自分の意志で遂行した結果に他なりません。上司の命令にしたがって失敗するケースとは根本的に異なります。結果について納得しやすく、次に向けて改善する点を素直に考えられるでしょう。裁量を持って行動していると、上司のような視点で自分を客観的に見やすくなります。そのため、何が不足しているのか分かり、成長に役立つテーマを掲げやすることも難しくありません。
メリット3:従業員の可能性を広げる
エンパワーメントに基づく体制では、従業員が手掛ける業務の幅が広がります。もちろん権限といっても限定的なものですが、それでも上司に与えられた仕事をこなす立場とは大違いです。積極的に働いていれば、多くの経験を積める状態になっています。その過程で、潜在的な才能に気付くこともあるでしょう。たとえば、営業職の従業員に対して、技術的な質問に答える権限を与えない企業もあります。誤った回答をしてクレームを受けるリスクがあるからです。質問を受けた従業員は、技術部門に回答を仰ぐなどの手続きをしなければなりません。
一方、エンパワーメントでこの権限を営業職に与えた場合、自分で技術的な調査をして回答することも可能になります。営業職であるにもかかわらず、技術的な才能が開花する可能性もあるでしょう。その結果、セールスエンジニアになることも、今後のキャリアとして検討できるかもしれません。このように、従業員の可能性を広げられることもメリットといえます。
メリット4:効果的な施策で生産性を上げる
組織の生産性がアップすることも、エンパワーメントの大きなメリットです。権限を持つ従業員が増えると、それまでより現場が活性化していきます。たとえば、トラブルの解決や顧客の新規開拓などを、現場レベルの判断で次々と遂行することも可能です。たいていの場合、そこで対応しきれない事柄だけを上層部に相談するという方向にシフトします。これが社風や文化として根付くと、現場からの提案が増えていき、体制がトップダウンからボトムアップに切り替わることもあるのです。
どの企業にもボトムアップが適しているとは限りませんが、少なくともエンパワーメントとの相性は悪くありません。なぜなら、現場の意見を反映させやすく、実情に合ったイノベーションを生み出せる可能性が高いからです。また、上層部が的外れな施策を実施するリスクも小さくなるでしょう。魅力的なプロジェクトを立ち上げたり、社内の各種制度を見直したりするなど、生産性の向上につながる取り組みを行いやすくなります。
メリット5:労働力を確保しやすくなる
権限を与えられた従業員は、やりがいを感じながら働くケースが多いです。信頼されていることを実感し、組織に貢献したいという気持ちが高まります。いわゆる愛社精神が育まれ、企業全体の成功に重点を置くようになるのです。その影響によって、離職率が下がることを期待できます。このメリットは今後ますます大きくなるでしょう。高齢化は進む一方で、労働力人口の減少が経済に打撃を与えているからです。このような現状において、人材の流出を避けたいと考えている経営者は少なくありません。
エンパワーメントの体制では、自分たちが組織を支えているという意識を持ちやすいです。組織の歯車ではなく、収益を生み出す原動力であるという自覚が促されます。また、従業員がポジティブに取り組んでいる雰囲気は、採用活動の会社説明会などで外部に伝わりやすいです。その影響によって、就職の希望者が増えることも見込めます。
エンパワーメントを導入するデメリット
メリットが多いエンパワーメントにもデメリットはあります。主なデメリットは以下に挙げる3点なので、導入を予定しているなら把握しておきましょう。
デメリット1:統制をとるのが難しい
権限を付与すると、同時に物事の判断も委ねることになります。そのため、さまざまな点で基準がぶれやすいというデメリットもあるのです。たとえば、接客を任されている従業員が2人いる場合、両者の間でサービスの程度が異なるのは良くありません。サービスが少ないほうの顧客に不満を抱かせることになるからです。これが積み重なると、企業全体への不信感が増長するようなリスクも生まれます。よって、たとえ従業員に裁量があったとしても、現場レベルではルールを設けておくのが望ましいです。
また、組織のビジョンが浸透しにくいケースもあるでしょう。上層部から指示が降りてくると、自分より上にいる人たちの考え方をうかがい知れます。一方、エンパワーメントが導入されると指示が減り、上層部を意識することも少なくなりがちです。現場に集中しすぎると、そこだけが自分の世界となって、企業全体の戦略や方針にまで気が回りづらくなります。したがって、組織のビジョンをこまめに周知するような取り組みも必要です。具体的な手段としては、朝礼や昼礼での唱和などが挙げられます。
デメリット2:適していない従業員もいる
エンパワーメントは、主体的に行動できる従業員を想定したマネジメントです。ところが、実際は自分で考えることが不得意な人も珍しくありません。また、主体的な人でもエンパワーメントが不適切な場合もあります。たとえば、スキルや知識が不足している若手は、権限を与えられても持て余してしまいがちです。このような従業員に無理やり裁量を持たせると、過剰なプレッシャーや緊張を生み出す原因になってしまいます。その結果、業務の効率が著しくダウンしたり、体調を崩したりするリスクもあるのです。
よって、権限を与える前に従業員の情報を十分にチェックしなければなりません。上記のようなタイプだと分かったら、裁量を最小限に絞ることも一つの手です。その後の活躍を確認しながら、少しずつ権限を増やしていくと良いでしょう。本人の意向も重要なので、ヒアリングのために人事面談を実施するという方法もあります。自分の判断や行動に自信を持てない状況なら、ポジティブシンキングやスキル関連の教育などを施すことが効果的です。
デメリット3:責任を果たせない場合がある
権限を持っている従業員に、責任も与えることがエンパワーメントの原則です。責任があるからこそ、実直に仕事に向き合えるという考えに基づいています。とはいえ、これはあくまでも理想的なケースであり、自分の力では対処できないミスをする可能性もあるのです。その場合、いくら自己責任だからといって、他の従業員が放置しておくのは良くありません。小さなミスが引き金となって、組織全体に及ぶ損失を生み出してしまう可能性もあるからです。そうなると、1人の従業員だけの問題では済まなくなります。よって、少なくとも直属の上司は、フォローする意識を持ち続けることが大事です。
また、過剰な権限を与えたことがミスにつながる場合もあるでしょう。エンパワーメントの体制だと、上司の確認を要する事柄でも、本人任せにしてしまうケースが起こりやすいです。これが原因なら、ミスは必ずしも従業員だけの責任とはいえません。そういう意味では上司にも非があるので、協力しながらリカバーする方針で臨むほうが妥当です。
エンパワーメントを導入する際に注意するポイント
ここではエンパワーメントをスムーズに導入するためのポイントを紹介します。
1.段階的に導入する
エンパワーメントの体制を一斉に構築する必要はありません。現場の判断が重要だと思われるところをピックアップし、それらに試験的に導入していくと良いでしょう。決裁に時間がかかることに不満が出ている部門など、事前に得られている情報を参考にすると候補を挙げやすいです。また、候補となっている現場の責任者に話を聞くことも必要になります。なぜなら、従業員に権限を与えるタイミングとして、不適切な可能性もあるからです。たとえば、新入社員が多く配属された直後で、上司の入念な指示が欠かせない時期もあります。
また、導入する部門を決定した場合、いきなり全従業員を対象にしなくても構いません。上記の例だと、まずベテランの従業員だけに権限を与え、新入社員に関しては先送りするという手もあります。このように柔軟なスタンスで取り入れていくことが重要です。マネジメントの方式を変えることは、企業の骨組みの改変に他なりません。強引に進めると反対意見も出やすいので、反応を見ながら慎重に導入しましょう。
2.従業員に説明する
上司の指示で動くことに慣れている状態で、いきなり権限を与えられると戸惑ってしまいます。また、裁量を持つことに関して、自分勝手に振る舞えると勘違いする人もいるのです。そのような事態を防ぐには、導入の趣旨について十分な紹介が必要になります。エンパワーメントは部下に責任を丸投げするような制度ではありません。誤解されやすいポイントなので、事前に説明しておくことが大切です。企業と従業員の間に対立構造が生まれないように気を付けましょう。
また、エンパワーメントの体制に移行することで、就業規則や給与体系にも変化が生じやすいです。大きな権限を与えられ、その役割を見事にこなせば、早く昇進できる可能性もあります。持っている権限によって、社内で行える手続きの種類などが異なるケースも多いです。いずれにせよ、エンパワーメントによる影響を明らかにしておかないと、広範囲にわたって混乱が起こりかねません。そのため、人事部門が中心となって、どのような影響が生じるのか検証しておきましょう。
3.情報を公開する
エンパワーメントを導入するにあたり、非公開だった情報の多くがオープンになります。なぜなら、権限を与えられた従業員は、以前よりも参照できる資料が増えるからです。手持ちの情報が従来どおりだと、せっかくの権限を活かしづらくなってしまいます。そのため、できるだけ積極的に公開することが理想的です。とはいえ、上層部しか閲覧できなかった資料には、経営に関わる重要な情報などが含まれている場合もあるでしょう。そのため、資料を事前にチェックして、公開するものを選別していく作業が必要です。
一般的に、この作業には時間がかかるので気を付けましょう。選別しただけでは完了しないケースも多いです。内容の一部を修正して現場に不可欠な情報だけ残すなど、地道な取り組みが求められます。資料ごとに、閲覧を許可する権限の範囲も設定しなければなりません。エンパワーメントの導入計画を立てる際、長めにスケジュールを確保しておくことが望ましいです。
エンパワーメント導入後に実施する取り組み
エンパワーメントの体制を構築できたからといって安心してはいけません。いきなりベストな状態に仕上げるのは難しく、実際は運用しながらブラッシュアップしていくことになります。以下に紹介する2点は、その際に意識したほうが良い事柄です。
信頼関係を育む
最大限にエンパワーメントを活かすには、企業内の信頼関係が必須です。組織に不信感を持っていると、自分の業務だけにこだわったり、他人の権限を妬んだりする状態になりかねません。良好な信頼関係を築けていれば、他人のために自分の権限を使うような余裕も生まれます。このように助け合う精神が育つと、組織の連携も強固なものになりやすいです。フォローの仕組みづくりや情報の適切な開示など、従業員が働きやすいと思える環境を提供することが、組織への信頼感を大きくしてくれます。権限や責任だけに着目するのではなく、従業員の満足度もチェックしなければなりません。定期的にアンケート調査などを実施していくのが得策です。
PDCAサイクルを回す
せっかくエンパワーメントを導入しても、企業の業績がアップしなければ意味がありません。もし収益が良くないなら、体制の詳細についても見直す必要があります。そこで欠かせないのがPDCAサイクルを常に回していくことです。現場からのフィードバックをもとに現状の分析をしましょう。たとえば、与えている権限とノルマの達成率の相関関係をチェックします。そして、権限が足りない従業員がいると分かったら、実情に合わせて付与するといった具合です。業務の内容や重要度は変化していくので、そのたびに権限を再検討することも必要になります。このように、体制の調整や改良を続けるのが一般的です。長期的な視点で取り組むようにしましょう。
企業にエンパワーメントの導入を検討しよう
エンパワーメントによって、業績が好転する企業は少なくありません。メリットを活かせば、従業員を効率よく育成しながら、組織の生産性を高められるからです。統制がとりにくいなど、いくつかのデメリットもありますが、事前に把握していると効果的な対策が可能になります。運用をスタートした後の展開も視野に入れ、導入を前向きに検討してみましょう。