タレントマーケットプレイスとは?社内人材活用と導入メリット

労働市場が激化する中で、社内の人材を有効活用して企業競争力を高める方法として、タレントマーケットプレイスが注目されています。本記事ではタレントマーケットプレイスの定義や活用のメリット、導入時に留意したいポイントなどを解説します。

タレントマーケットプレイスとは

はじめに、タレントマーケットプレイスの定義や人材管理との違いを解説します。

タレントマーケットプレイスの定義

タレントマーケットプレイスとは、組織内の人材のスキル、経験、興味を可視化し、プロジェクトや職務とマッチングさせるデジタルプラットフォームです。タレントマーケットプレイスは、社外の市場から有能な人材を発掘するのではなく、社内の従業員が持つ才能の市場を活用するという考え方が特徴です。

社内の人材を有効に活用できれば、社外からの採用コストを抑えながら競争力を維持することができ、企業は急激に変化するビジネス環境に対応しやすくなります。

タレントマーケットプレイスの主要な形態はSNSの求人掲示板のようなタイプと、プラットフォームのアルゴリズムにより人材とポジションの条件が自動でマッチングされるタイプの2つに大別されます。

前者のタイプはビジネス系SNSの社内版のようなイメージで、従業員が自身のプロフィールや保有スキルなどを登録しておき、上司がそれを閲覧して条件が合致すれば面談などに進みます。

一方、タレントマーケットプレイスのアルゴリズムによりマッチングされるタイプでは、従業員は自身のプロフィールを登録したうえで、気になる社内ポジションにランク付けや興味度合いの登録を行います。その情報をAIが分析し、独自のアルゴリズムで双方のマッチングを図る仕組みとなっています。

従来の人材管理との違い

従来の人材管理は、従業員のデータを表計算ソフトやシステムなどのツールで管理して、採用や労務管理、人事評価などの人事業務を効率化することに重きが置かれていました。一方、タレントマーケットプレイスでは、内部モビリティの促進やスキルギャップの解消など社内の人的資産を最大限に活用して企業競争力を強化することが目的となる点で異なります。

単なる管理を脱却し、管理して積み上げた情報を活用していくのがタレントマーケットプレイスの特徴といえます。

タレントマーケットプレイスを支える技術

タレントマーケットプレイスの実現には、高度なテクノロジーが不可欠です。AIと機械学習のアルゴリズムを活用したスキルマッチングや、ビッグデータ分析による人材インサイトの抽出、クラウド型のプラットフォームによる情報の一元管理などがタレントマーケットプレイスの中核となります。これらの技術により、リアルタイムで正確な人材配置と、データに基づく戦略的な意思決定が可能となります。

例えば、株式会社ビズリーチが提供する「社内版ビズリーチ」には、採用時のレジュメや入社後の人事情報をもとに従業員個別の「社内レジュメ」をAIが作成支援する機能が備わっています。従業員の負担を減らしつつ、効率的なタレントマーケットプレイスの利用を後押ししています。

<関連サイト>即戦力を見つけよう。社内から。社内版ビズリーチ

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タレントマネジメントとタレントマーケットプレイスの違い

タレントマネジメントとは、従業員のスキルや経験、ポテンシャルなどを把握したうえで人材育成や人事配置を行い、企業競争力を高める人材マネジメントのことです。労働力人口が減少する中で、「既存の従業員の力を最大化させて多くの成果を生み出す」という考え方に注目が集まるようになりました。

<関連記事>タレントマネジメントとは?導入の目的やメリット、活用方法を紹介

一方、タレントマーケットプレイスはAIやビッグデータなどテクノロジーを活用しながら、企業内のポジションと人材を結びつけて社内市場を形成する仕組みを指します。社内の人材を活かすという観点は共通していますが、前者は人材マネジメントの概念を意味する言葉で、後者は人材活用をマッチングする仕組みやシステム、プラットフォームそのものを意味する点で異なります。

タレントマーケットプレイスが注目されている理由

タレントマーケットプレイスが注目される背景には、変化の激しいVUCA時代への対応やテクノロジーの急速な進化などが挙げられます。1つずつ理由を掘り下げて説明します。

VUCA時代への適応

現代のビジネス環境は、VUCAと呼ばれる不安定で変化の激しい状況にあります。テクノロジーの急速な進化やグローバル化の進展により、企業は常に新しいスキルと人材を必要としています。さらに、労働者世代の変化と多様な働き方への要求も高まっています。

このような状況下で従来の固定的な人材管理手法では、変化する人材ニーズに迅速に対応することが困難でしょう。タレントマーケットプレイスは、これらの課題に対する効果的なソリューションとして注目を集めているのです。

採用競争の激化と人材の流動化

労働人口減少が続き、採用競争力が日々激化していることや、政府が人材(雇用)の流動化を推進していることも、タレントマーケットプレイスが注目された理由の一つです。

日本商工会議所と東京商工会議所が1月に実施した「中小企業の人手不足、賃金・最低賃金に関する調査」によると、人手不足を感じている企業割合は65.6%となり、人手不足への対応として約8割が採用活動を強化する意向を示しました。しかし、採用活動を強化しても日本の労働人口は減少し続けており、いずれ頭打ちになることも想定されます。そこで、現在雇用している従業員にスポットを当てて、社内の人的資源の必要性を問う企業が増えてきたと考えられます。

2023年には上場企業を対象に人的資本経営に関する情報開示が義務化されました。中長期的に企業競争力を強化する手段として、人的資本の活用に期待が高まったことも、タレントマーケットプレイスの普及を後押ししているといえるでしょう。

テクノロジーの急速な進化とグローバル化

テクノロジーの急速な進化により、ビジネスモデルや必要とされるスキルセットが絶えず変化しています。AIやビッグデータ、IoTなどの新技術が次々と登場し、企業はこれらに対応できる人材を迅速に確保する必要に迫られています。同時に、グローバル化の進展により、多様な文化や言語に対応できる柔軟な人材配置も求められています。

テクノロジーによる市場変化やグローバル化への適応を行う方法として、タレントマーケットプレイスの活用が注目されたといえるでしょう。

タレントマーケットプレイス導入のメリットと期待される効果

タレントマーケットプレイスの導入は、企業と従業員にどのようなメリットや効果が期待できるのでしょうか。ここではそれぞれの視点で解説しながら、4つのメリットを取り上げて紹介します。

企業にとってのメリット

タレントマーケットプレイスの導入は、企業の採用コストを削減したり、柔軟かつスピーディーな事業展開をしたりできるメリットが期待できます。

迅速な人材配置と組織力向上

タレントマーケットプレイスを導入することで、企業は必要なスキルを持つ人材を迅速に見つけ、適材適所に配置することができます。これにより、プロジェクトの立ち上げや新規事業の展開がスムーズになり、組織全体の生産性と効率性の向上が期待できます。

スキルギャップの解消と人材育成の加速化

タレントマーケットプレイスで、従業員の新たな機会だけでなく、先々の仕事で必要なスキルとの間にあるスキルギャップを発見し、能力向上に役立てることが可能です。タレントマーケットプレイスを構築するプラットフォームの中には、AI学習により従業員の個別学習プログラムを提供するものもあります。

従業員ごとに不足しているスキルだけでなく、需要があるスキルや追加投資が必要な事業領域をデータに基づいて分析して、人材育成と事業拡大を並行して進めることもできるでしょう。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

タレントマーケットプレイスに蓄積されたデータにより、根拠を持ってマッチングが計られるため、バイアスを排除しながら多様な人材の活用を推進できるのも魅力です。社歴の長さや社内のコネクション、昔ながらの年功序列にとらわれず、従業員の能力に基づいて公平に評価と機会提供を行うため、組織のダイバーシティ&インクルージョンが促進されるでしょう。

従業員エンゲージメントと定着率の向上

従業員が自身のキャリアに主体的に関わることができるため、エンゲージメントが高まり、優秀な人材の定着率向上に寄与できるのもメリットです。さまざまな転職理由に関する調査結果を見てみると、労働条件への不満のほかに「ほかにやりたい仕事がある」「仕事が面白くない」「会社の人事評価に不満があった」という理由も目立ちます。

拠点数が多く、多様な事業を手掛けている企業であれば、社内に何かしら興味のある仕事を見つけてもらうことは不可能ではないはずです。タレントマーケットプレイスを導入すれば、自身の存在価値を実感できる仕事にアサインでき、適切な評価を受けることができるようになるため、従業員エンゲージメントの向上や定着率アップにつながるはずです。

従業員にとってのメリット

従業員目線でも、タレントマーケットプレイスの導入には多数のメリットがあります。

キャリア開発機会の拡大

タレントマーケットプレイスを通じて、従業員は自身のスキルや興味に合った新しいプロジェクトや役割に挑戦する機会を得ることができます。これにより、キャリア開発の幅が大きく広がる点は大きなメリットといえるでしょう。

スキル向上と自己実現の促進

従業員が定期的に新しい役割を与えられ、課題に取り組むことで、継続的にスキルの向上を図ることができます。転職や副業をせずに自己成長と自己実現に取り組めるため、満足度が高まるでしょう。

人的ネットワークの拡大

部門を越えたプロジェクトへの参加により、社内の人的ネットワークが広がるのもメリットです。所属部署内によいメンターが見つからなくても、タレントマーケットプレイスを活用すれば社内に信頼できるメンターを探すことが可能です。従業員同士の出会いを促し、社内協業やイノベーションの機会も増加するでしょう。

自律的なキャリア形成と働きがいの向上

自身のスキルや経験をタレントマーケットプレイスで可視化し、主体的にキャリアを選択することで、より自律的なキャリア形成が可能になります。自身の強みを活かせる機会が増えれば仕事への満足度が高まり、結果として働きがいの向上に寄与するでしょう。

タレントマーケットプレイス導入の課題と対策

タレントマーケットプレイスの導入を促進させるには、使いこなすためのスキルや概念の理解が欠かせません。本章では、タレントマーケットプレイスの導入時に想定される課題と対策について解説します。

スキルデータの構築と活用

タレントマーケットプレイスのプラットフォームを構築するには、従業員のスキルデータを一元管理する場所を決め、タレントマーケットプレイスを後押しする専用のシステムを導入します。従業員数が多く、中途採用や社内異動、事業変化が多い企業であれば、土台となる従業員のスキルデータを収集して維持することが困難になるでしょう。

従業員が現場の業務で忙しい場合、人事システムやプラットフォームへの情報入力が滞ってしまい、最新のスキルデータを保てなくなりがちです。

対策としては、AIを活用してスキルデータの収集や登録を促進させたり、定期的なスキル更新をした者へのインセンティブ設計を行ったりする方法が挙げられます。

プラットフォームの選択と既存システムとの連携性

タレントマーケットプレイスに特化したシステムを導入する際は、既存システムとの連携性に注意が必要です。昨今では、採用管理システム(ATS)、勤怠管理システム、タレントマネジメントシステムなど、人事領域ではさまざまなツールが登場しています。それぞれを単一で導入してしまうと、各システムに何度も情報入力をする手間が発生したり、人事データの一元管理が困難になったりして、かえって業務効率を悪化させる可能性が高いです。

例えば、株式会社ビズリーチが提供するHRMOSシリーズでは、採用管理、勤怠管理、タレントマネジメントをはじめ、タレントマーケットプレイスの「社内版ビズリーチ」も提供しています。プラットフォームを選択する際は、既存システムとの連携性を考慮し、シリーズで展開するサービスの導入を検討するとよいでしょう。

従業員の理解促進

タレントマーケットプレイスの導入にあたり、従業員の理解促進に努めることも重要です。タレントマーケットプレイスの必要性を感じていない上司であれば、自分が手塩に掛けて育ててきた部下を、いきなり他部署のマネージャーに引き抜かれることに抵抗する可能性もあるでしょう。また、個人が望むポジションが必ずしも企業競争力の強化につながるわけではないため、希望通りにマッチングが実現しないことで従業員の不満を醸成するリスクも考えられます。

対策としては、従業員への教育期間を十分に設けて、タレントマーケットプレイスの理解を促すことが不可欠です。また特定のポジションに「推奨」ボタンをつけるなど工夫を凝らし、従業員自身に適性があり、企業にとっても意味のあるマッチングにつながるよう仕組み化する方法があるでしょう。

データプライバシーとセキュリティの確保

タレントマーケットプレイスは、従業員の経歴やスキル、キャリアの志向性など、あらゆる個人情報を登録・管理していくものです。個人のスキルデータの取り扱いは厳重に行い、セキュリティリスクも鑑みて取り組むことが求められます。対策としては、スキルデータの保護ポリシーを厳格に定めて、従業員に必要な説明を行いながら透明性高く施策を進めていくとよいでしょう。

タレントマーケットプレイスが切り拓く人材戦略の新時代

タレントマーケットプレイスが広がっていくと、社外からの採用を考える前に、まずは自社の人的資本を活用する企業スタンスへと変化するでしょう。今後の人材戦略にとってどのような意味をもたらすのか、2つの視点で解説します。

ジャングルジム型キャリアパスの実現

タレントマーケットプレイスの導入が進めば、従来の垂直的なキャリアパスから、多方面に成長できるジャングルジム型のキャリア開発が可能になります。これにより、会社や上司が個人のキャリアを「管理する」仕組みから、個人のキャリアを導く方法へ移行していくことが考えられます。また、個人の適性と組織のニーズが柔軟にマッチングすれば、イノベーションが促進されるでしょう。

データドリブンな人材戦略

タレントマーケットプレイスの導入が広がるにつれ、人事データの蓄積と分析により、データドリブンな人材戦略へと変化するでしょう。評価者に頼った属人的な評価や、玉突き人事などの行き当たりばったりな取り組みは、もはや戦略とは呼べません。蓄積された人事データという根拠に基づいて仕事と人がマッチングされ、中長期的な視点での人材育成と配置が実現することで、組織の持続的な競争力強化につながるでしょう。

まとめ

タレントマーケットプレイスは、急速に変化するビジネス環境に適応するための革新的なソリューションです。企業と従業員の双方にメリットをもたらし、組織の柔軟性と競争力を高める一方で、個人のキャリア開発と成長を促します。

タレントマーケットプレイスの導入時には、従業員の理解促進や適切なプラットフォームの構築が不可欠ですが、積極的な導入により企業競争力の強化へとつながるでしょう。

初めてのタレントマーケットプレイスの実現は「社内版ビズリーチ」

タレントマーケットプレイスの導入は、組織文化と人材戦略の根本的な変革を促します。タレントマネジメントでは企業視点の「情報の一元管理・活用」のみに目が向けられがちですが、タレントマーケットプレイスの「社内版ビズリーチ」を導入すれば、従業員と社内ポジションを見える化しながら企業全体の最適配置を実現します。

ただ人材の情報を管理する時代から、社内の人材を発掘する時代へ第一歩を踏み出したい企業様は、ぜひ「社内版ビズリーチ」をご活用ください。

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