失敗する人員配置からの脱却:データドリブンが実現する戦略的人材配置の最適化

失敗する人員配置からの脱却:データドリブンが実現する戦略的人材配置の最適化

人事の勘や経験に頼らず、データに基づいて人員配置の意思決定をすることで、戦略的な人材配置を実現できるようになります。

本記事では、人員配置のよくある課題と成功するためのポイントについて解説します。

友部 博教

プロフィール

友部 博教

株式会社ビズリーチ WorkTech研究所 所長

大学でコンピューター開発を研究後、2011年より民間企業にて勤務。2017年から人事領域におけるデータ活用の研究開発に携わり、2019年に株式会社ビズリーチに入社。現在、WorkTech研究所にて、WorkTechの活用と未来の人材活用の研究開発に従事。

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なぜ人員配置の失敗はなくならないのか?従来の限界と認識のズレ

人材を適材適所に配置することで、事業目標の達成や人の成長につながります。しかし、「異動ガチャ」という言葉にあるように、多くの企業が人員配置に課題を抱えている現状です。

はじめに、企業の人員配置がうまくいかない代表的な理由について解説します。

人事の勘と経験が招くミスマッチ

本来、異動は従業員のスキルやキャリア志向と、受け入れ先部署が求める人材要件を照らし合わせて、企業全体として合理的に判断するのが望ましいとされてきました。

しかし、いまだに「勘と経験」で配置を決める企業も多く、従業員の希望と配属先のニーズのミスマッチが起きることで、パフォーマンスの低下や早期離職を招いています。

従業員から「異動ガチャ」と呼ばれるような公平性や一貫性に欠ける異動は、組織全体の士気や信頼にも影響を及ぼしかねません。

戦略的な人員配置を目指す上で、データに基づく判断が不可欠といえます。

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企業視点の全体最適と従業員視点の個別最適の隔たり

企業は中長期的な事業戦略や組織課題に対応するため、全体最適の視点から人員配置を行わなければなりません。

一方、従業員は自身のキャリアプランやライフイベントなどを考慮した個別最適を重視しており、ここにギャップが生まれやすくなっています。

両者の隔たりを埋めないまま異動を進めると、「企業から一方的に異動を押しつけられた」と受け取られ、納得感を持てず、配属後にエンゲージメントが下がるリスクもあります。

この課題を解消するためには、企業・従業員双方の意向(期待)を可視化し、両者の折り合いがつく落としどころを見つけることが大切です。

社内公募制度が抱える課題

社内公募制度は、従業員が自ら希望して異動できる仕組みとして注目されていますが、実際の運用には課題も多く存在します。

社内公募制を導入しても、「公募が形骸化しており、実質的な指名異動にすぎない」「募集ポジションに偏りがある」といった課題も散見されます。

また、希望部署に応募しても不採用が続く場合、従業員のモチベーションが低下するリスクもあるでしょう。公募先の募集要項、選考基準やプロセスを可視化することが不可欠といえます。


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成功する人員配置:データドリブンな人材配置のアプローチ

人員配置を成功させるためには、客観的なデータに基づいて人員配置を行う「データドリブンの取り組み」が大切です。

データドリブンなアプローチにより、社内の人材やポジションを見える化して、人員配置のミスマッチを防ぎましょう。

人材の見える化:隠れた能力とキャリア志向の発見

属人的に把握しきれない従業員のスキルやキャリア志向をデータで見える化することで、人員配置の精度や納得感を高めることができます。

従業員のキャリア形成と企業の戦略的配置を両立させるために重要な、人材の見える化のポイントを解説します。

異動・職歴、評価、スキルデータなど多様な人事データの統合

人材の見える化において鍵を握るのが、各種人事データの統合です。

異動履歴や過去の職務経歴データは、従業員がこれまでどのような経験を積み、どのようなキャリアを歩んできたかを把握する上で不可欠です。

さらに、人事評価データやスキル・保有資格、研修受講歴なども一元管理することで、定量的に従業員の可能性を把握できます。

バラバラに管理されがちなこれらの情報を統合し、組織横断的に活用できる仕組みが、人材活用の質を大きく左右します。

隠れた人材の発掘と一人一人の可能性の可視化

人事データを活用していくと、隠れた人材の発掘も容易になります。

例えば、突出した成果や表彰歴などのない従業員でも、過去の職務経歴や本人のキャリア志向、社内のプロジェクト経験などのデータを総合的に分析すると、新たなポジションへの適性が見えてくるケースもあるでしょう。

多くのメンバーを抱える管理職が、一人一人の従業員のバックグラウンドを詳細に記憶するのは困難です。

また、従業員のモチベーションやキャリア志向は変化することが前提となるため、属人的に把握するには限界があります。

これらの情報をデータで可視化していけば、埋もれた人材を見落とさず、適切なタイミングでチャレンジの機会を提示することが可能になるでしょう。

従業員自身の「自分ごと」としてデータを活用する視点

人材の見える化を機能させるためには、従業員自身がキャリアデータを「自分ごと」として捉えることも重要です。

従業員の協力を得て、定期的にキャリア志向の申告やスキル登録を促さなければデータの精度は保てません。

従業員が自らデータを更新するためには、「なぜデータを集めるのか」「活用によって何が得られるのか」を丁寧に説明し、双方向のコミュニケーションを重ねる必要があります。

一方的に情報を収集するのではなく、従業員の意思を尊重することで、信頼関係に基づいたデータ活用が実現していくでしょう。

ポジションの見える化:企業ニーズとキャリア志向のマッチング

人員配置を成功させるには、従業員の情報だけでなく、企業内のポジション情報も可視化する必要があります。

「どの部署で、どのような人材が、どのような目的で必要とされているか」について明確にすることが重要です。

ここでは、ポジションの見える化の重要性について解説します。

部門が求めるスキル・経験の明確化と社内機会の可視化

ポジションの見える化において重要なステップとなるのが、各部門が求める人材のスキル・経験の明確化です。

ただポジションの募集を公開するだけでなく、部署ごとの人材要件とその理由、異動後に得られるスキル、評価の仕組み、働く環境といった情報をセットで提示することで、従業員が「そのポジションから得られる価値」を具体的にイメージできるようになります。

社内でのキャリアパスを具体的に描けるようになれば、離職防止やキャリア自立の促進につながるでしょう。

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AI活用による効率的かつ納得感の高い候補者選定

ポジションの見える化を進めたら、ぜひ活用を検討したいのがAIマッチングのツールです。

例えば、「社内版ビズリーチ」では、社内のポジションと従業員情報を見える化するだけでなく、AIが必要なデータを収集して社内レジュメを自動作成してくれます。

AIで作成した社内レジュメは、評価やコンディション、社内評価も記載された人材ポートフォリオとして活用できるため、人員配置だけでなく、人材マネジメント全体に活用可能です。

また、人事の属人的な勘に頼らず、AIの精度高いマッチング技術を用いることで、広範な人材から公平に選定できる点もメリットです。その結果、異動理由の納得感が高まることも期待できるでしょう。

社内版ビズリーチの詳細はこちらからご確認いただけます。

社内版ビズリーチ

丁寧なコミュニケーションとオンボーディングの強化

データドリブンなアプローチや制度設計だけでなく、丁寧なコミュニケーションを心掛けることも人員配置の成功に欠かせません。

例えば、異動後に従業員が力を発揮できるように支援するオンボーディングプログラムの整備、異動後の評価における納得度も重要となります。

人員配置を成功に導くための、コミュニケーション手法とオンボーディングについて解説します。

異動理由の透明化と従業員の期待値調整

従業員が異動に不満を感じる要因の多くは、企業と従業員のあいだにある「期待のズレ」にあります。

そのため、異動の意図を一方的に伝えるだけでなく、従業員がどのような環境と役割を求めているかを把握し、お互いの期待値に乖離が出ないように調整する必要があります。

従業員が異動目的や背景を納得できるよう、丁寧に伝えて期待値調整を行うコミュニケーションが大切です。

異動後の適応を支えるオンボーディング体制の整備

オンボーディングとは、新しい職場環境に早期に適応できるよう支援する仕組みのことです。

一般的に、新卒や中途採用の方が入社したタイミングで実施されますが、人員配置の際にもオンボーディングの考え方が有効です。

たとえ従業員が異動に納得していたとしても、受け入れ側の部署に十分なサポート体制がなければ、早期離職やパフォーマンス低下のリスクを伴います。

異動後の目標設定、業務習熟のサポート、定期的な1on1などを含むオンボーディング体制を整えて、スムーズな立ち上がりと定着を促していきましょう。

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戦略的人員配置が企業にもたらす価値

企業の成長を支えるのは「人材」であり、その配置が組織の成果を左右します。

ここでは、戦略的人材配置が企業にもたらす具体的なメリットについて解説します。

従業員エンゲージメントの向上と退職リスクの低減

戦略的人材配置を進める上で重要なのは、企業と従業員が「選び・選ばれる」関係であるという認識です。

従業員は、自身のキャリアや希望が組織内で実現できると感じたときに、エンゲージメントが高まり、離職のリスクも抑えられます。

そのためには、社内のポジションや成長機会を可視化し、「この会社で自分の未来を描ける」と思える環境をつくることが不可欠です。配置の納得感は、単なる定着にとどまらず、個人と組織双方の成長を促す力になります。

戦略的人材配置は、従業員の外部流出を防ぐだけでなく、モチベーション向上と企業の持続的成長につながる重要な取り組みといえるでしょう。

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採用コストの削減と組織の持続的な活性化

人材の外部採用が難化する中、既存の人的資本を有効活用することが企業の競争力に直結します。

社内で適任者を見つけ、欠員や新設ポジションを埋められれば、採用活動や初期教育・オンボーディングにかかるコストを大幅に削減できるためです。

また、社内の人材流動性が高まることで、組織内に新たな刺激や知見が生まれ、部門間の連携も強化されます。

このように、戦略的な人材配置に取り組むことで、組織全体が持続的に活性化できるのがメリットです。

人的資本の運用としての新たな人事の役割と企業価値向上

戦略的人材配置は、欠員補充や人手不足への対応ではなく、企業の成長に直結する「人的資本の運用」として捉えるべき取り組みです。

人的資本とは、企業にとっての最大の資源である「人と組織の力」のことです。これをどう配置し、育て、評価するかによって、組織全体の力が大きく変わります。

近年では、人的資本に関する情報開示が企業に求められるようになり、経営や投資家だけでなく、従業員や採用候補者といった社内外のステークホルダーとの対話にもつながっています。

例えば、女性管理職比率や研修の実施状況といったデータは、企業の姿勢や価値観を示す指標として、さまざまな対話に活用が可能です。

こうした人的資本の戦略的活用と発信を担う人事部門は、従来の「管理」から「経営に資する戦略部門」へと進化していくことが期待されるでしょう。

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データドリブン人事を阻む壁と解決策

人事データを活用し、戦略的な配置・育成を実現する「データドリブン人事」は、多くの企業にとって重要なテーマです。

しかし、データを整備し分析すればすぐに成果が出るわけではなく、運用にあたってはさまざまな壁に直面します。

ここでは、データドリブン人事を導入・定着させる上での主な課題と、その克服に向けた実践策について解説します。

マネージャーの囲い込み意識を払拭する評価設計

戦略的な人材配置を阻む要因の一つが、マネージャーの「囲い込み意識」です。

自身が手塩に掛けて育ててきた優秀な部下を手放したくないと思うのは自然なことですが、行き過ぎると組織全体の人材流動性を阻害する要因にもなります。

マネージャーの囲い込み意識を払拭するためには、例えば、部下のキャリア開発や社内異動を後押しする行動を、評価制度に組み込むことが有効です。

部下を戦略的に異動させることで、部下本人のキャリアアップとなり、さらには自身の評価につながることが分かれば、囲い込みを和らげることができるでしょう。

「抱え込む」から「育てて送り出す」への意識改革を促し、長期的な人材育成文化を醸成していきましょう。

従業員のデータ利用に対する不安の解消と信頼構築

人事データの活用には、従業員の協力が不可欠です。しかし、自分が回答した情報やスキルデータなど個人情報の使い道が不明瞭だと、不安やデータ提供への抵抗が生じやすくなります。

この不安を解消するためには、以下の3つの視点が重要です。

  • 透明性の確保:データ利用の目的や範囲、保存期間、閲覧権限などを明確に開示し、従業員の同意を得ることで、従業員の不安を払拭する。
  • 信頼の醸成:異動や配置の際には、その判断理由や期待される役割を丁寧に説明することで、従業員と人事の信頼関係を築く。
  • 従業員が活用できる仕組み:自身のサーベイ結果やキャリア情報を確認できる環境を整備し、データが「自分ごと」として活用できる状態にする。

さらに、従業員の「人事データリテラシー」を高める取り組みも有効です。従業員が自身の働き方やスキルのデータを振り返り、俯瞰的な視点で理解をしてキャリア選択に生かすことで、データ利用に前向きな姿勢を見せてくれるでしょう。

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データ活用を目的化しない、本質的な課題解決への意識

人事データの整備に取り組む企業でよく見られるのが、「データ収集が目的そのものとなってしまう」という課題です。

本来、データ活用の目的は「従業員のキャリア形成支援」や「組織の課題解決」であるはずですが、データを集めても結局使われないままでは意味がありません。

データ収集を目的化せず、実際のアクションにつなげるために、次のポイントを意識するとよいでしょう。

  • スキル定義の明確化:自社にとって必要なスキルをどの観点・粒度で定義するかを整理し、整備対象を明確にする。
  • 運用ルールの設計:定期的なデータの更新、アクセス権限の設定、プライバシー配慮など、運用を前提としたルールを整える。
  • 目的に基づくデータ選定:「どんな才能を発見し」「どこで生かすのか」など活用目的を明確にして、必要最小限のデータに絞る。

これらのポイントをおさえることで、データは「使われるための整備」に近づき、結果的に人材戦略の質を高めることができます。

スモールスタートで始める着実な一歩と試行錯誤

データドリブン人事を成功させるためには、特定のメンバーや部署から「スモールスタート」する方法も有効です。小さな成功体験を積み重ねて、社内の信頼を蓄積し、横展開するのが現実的でしょう。

また、成功例だけでなく、「うまくいかなかった事例」から学ぶ姿勢も重要です。失敗のパターンは再現性が高く、「これを避ければ失敗しない」というノウハウとして蓄積できます。

データ分析は、成功の条件だけでなく、失敗の要因も明らかにするものです。試行錯誤を重ねながら、自社に合った運用を模索していきましょう。

まとめ

人員配置の成否は、従業員のエンゲージメントや企業の競争力に大きく影響します。

人事の勘と経験に頼った属人的な人員配置を続けていると、企業都合の一方的な異動と受け取られ、従業員の信頼や納得感を損なう恐れがあります。

一方、データに基づく人材の「見える化」とポジションの「見える化」、そして従業員との丁寧なコミュニケーションを通じた相互理解により、配置の納得感を醸成できるようになるでしょう。

データドリブンなアプローチは、人材を資源として管理するのではなく、資本として運用する、新たな人事戦略の要となります。

これからの人事は、人的資本の運用という役割を意識して、データドリブン人事の実現を目指していくとよいでしょう。

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