人材ポートフォリオとは? 作り方や企業事例、活用する際の注意点を解説

人材ポートフォリオとは?

「人材ポートフォリオ」という言葉を耳にする機会が増えているものの、作成方法や導入メリットの具体的なイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では人材ポートフォリオの概念や注目されている背景、人材ポートフォリオの作り方や作成のメリット、活用時の注意点を解説します。

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人材ポートフォリオとは

人材ポートフォリオとは、経営戦略や事業戦略の実現に向けて活用される人材分析の手法です。

どのような能力・知識・経験を持つ人材が、どのタイミングで、どの程度必要になるのかを把握し、計画します。

さらに、現在活躍している人材の状況を可視化する手段としても有効です。

具体的には、次の項目を含めて人材ポートフォリオを作成し、社内の人材状況(人的資本)を可視化します。可視化された情報は、採用や配置、人材開発・研修、タレントマネジメントなどの基本情報として活用されます。

  • 場所:人材が配置されている部署、地域、プロジェクトなど
  • 種類:職種、専門スキル、保有資格、性格特性、役割などの属性
  • 水準:人数、経験・在籍年数、スキル・知識の深さ

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なぜ今、人材ポートフォリオが注目されているのか

労働力人口の減少や働き方の多様化により、人材採用および定着がますます困難になっています。先行きの見通しが不透明な現代においても、企業には持続的な成長の維持が求められています。

企業を取り巻く状況が変わるなかで、適切な人材配置や人材開発、人材マネジメントが求められています。

ここでは、人材ポートフォリオが注目されている背景について解説します。

ISO30414への対応

ISO30414とは、2018年12月に国際標準化機構(ISO)によって制定された人的資本に関するマネジメントシステム規格です。

社内外に向けて人的資本の情報をどのように開示すべきかを示す国際的なガイドラインであり、11項目58指標から構成されています。

近年ではESG(環境・社会・ガバナンス)投資への関心が世界的に注目を集めています。そのなかでも「社会」の領域では、人的資本の情報開示がより一層重視されています。

こうした流れを背景に、企業は投資家の関心に応えるため、人材ポートフォリオを見直す必要性に迫られています。

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人材版伊藤レポート2.0と動的な人材ポートフォリオ

人材版伊藤レポートとは、2020年9月に経済産業省が発表した「持続的な企業価値向上と人的資本に関する研究会」の報告書です。

人材版伊藤レポートでは人的資本経営のあり方を提唱しています。座長である一橋大学名誉教授の伊藤邦夫の名前が由来となり、2022年5月に内容をアップデートした人材版伊藤レポート2.0が作成されました。

人材版伊藤レポートのなかで、人的資本経営を成功させる要素として「動的人材ポートフォリオ」が挙げられています。

経営戦略や事業戦略の実現には、人材要件の明確化と、理想の状態に向けて採用・配置・育成が重要と説かれており、人材ポートフォリオへの注目が高まりました。

人的資本の情報開示の義務化

日本では2023年3月期決算から、上場企業に対して有価証券報告書などでの人的資本の情報開示が義務化されました。

人的資本の取り組みは経営戦略や事業戦略と深く関わるため、具体的にどの項目を開示するかは企業ごとの判断に委ねられています。

その一方で、企業は人的資本を可視化し、自社の人材ポートフォリオを整理して言語化することが強く求められるようになっています。

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人材ポートフォリオ作成のメリットと効果

人材ポートフォリオを作成することで、社内の人的資本が可視化され、人材マネジメントに活用することが可能です。

ここでは人材ポートフォリオを作成することによる具体的なメリットと効果を3つ紹介します。

人事戦略の最適化への貢献

人材ポートフォリオを作成すると、社内にどのような従業員が在籍しているか、どの人材が不足しているかを明確に把握できます。

この情報をもとに、効率的な採用活動や計画的な人材育成を行うことで、人事戦略の最適化が可能となります。

さらに、必要な人材や研修内容が具体化されることで、人件費・採用費・育成費などのコスト削減にもつながります。

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適材適所の実現による組織パフォーマンスの向上

人材ポートフォリオによって、従業員の経験やスキル、知識、強みや弱みが可視化され、適材適所の配置が可能になります。

従業員の持つ能力を発揮できる配置をすれば、モチベーションが高まり、生産性の向上が期待できるでしょう。

また、新規事業や社内プロジェクトを立ち上げる際に、人材ポートフォリオを活用することで、社内から適任者を迅速に見つけやすくなります。

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従業員のキャリア開発支援と満足度向上

働き方の多様化に伴い、管理職を目指すだけでなく、専門性を磨いたり、ワークライフバランスを重視したりするなどキャリアの志向は人それぞれで異なります。

そのため、画一的なキャリア支援では従業員の満足度が低下し、モチベーションの低下や離職につながるリスクがあります。

人材ポートフォリオを作成することで、従業員の志向や考えを把握でき、個々の希望に沿ったキャリア支援が可能になります。

従業員満足度が向上するだけでなく、個々のキャリアステップを予測できるため、事業戦略の立案にも有効です。

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人材ポートフォリオの作り方

人材ポートフォリオの作成手順を、4つのステップに分けて紹介します。

実際に人材ポートフォリオを導入・運用する際は専門のコンサルタントに依頼するケースもありますが、まずは全体の流れを把握し、自社に適した人材ポートフォリオ作成に役立てましょう。

事業戦略に基づいた活用目的の明確化

最初のステップは、人材ポートフォリオの活用目的を明確にすることです。

人材ポートフォリオは「経営戦略や事業戦略を実現するために、どのような経験・スキル・知識を持った人材が必要か」を把握するための仕組みです。

例えば「デジタル化に適応できる組織をつくる」という目的を掲げる場合、従業員の現状を可視化することで、外部から新たに人材を採用すべきか、それとも既存社員への教育・研修を強化すべきかといった判断材料になります。

目的を明確にしておくことで、その後の人員配置・採用計画・人材育成を効果的に進めることができます。

人材タイプの分類と4象限マトリックスの作成

次に、経営戦略や事業戦略の実現に必要な人材をタイプ別に分類します。

既存の従業員に合わせた分類ではなく、目的達成のために必要なタイプに分類することがポイントとなります。

分類方法にはさまざまなパターンがありますが、汎用的な手法としては「組織・個人」と「運用・創造」の2軸による4象限マトリックスが挙げられます。

組織で行う仕事か、個人で行う仕事かを縦軸に、新しい商品やサービスを創造する仕事(クリエイティブ)か既にある仕組みを維持・運用する仕事(ルーティン)かを横軸に設定します。

  • 組織×創造:経営戦略や事業戦略をつくる「マネジメント人材」
  • 組織×運用:定型業務を管理する「オペレーション人材」
  • 個人×創造:新しい商品やサービスを生み出す「クリエイティブ人材」
  • 個人×運用:専門性の高い業務を遂行する「エキスパート人材」

他にも「若年層・中高年層」や「正規従業員・非正規従業員」などの分類も考えられます。人材ポートフォリオ作成の目的を実現できる分類にすることがポイントです。

従業員の分類

4象限マトリックスを作成したら、次に従業員をタイプごとに分類します。

ここでのポイントは、客観的で信頼のおけるデータに基づいて分類することです。主観的な判断で分類を行うと、配置ミスや評価の誤りにつながる可能性があるため注意が必要です。

適切な従業員の分類には、タレントマネジメントシステムの活用がおすすめです。日頃から従業員の評価やアンケートといったデータを蓄積することで、客観性と納得感のある分類が可能になります。

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理想の人材ポートフォリオとのギャップを把握

従業員の分類を終えたら、理想の人材ポートフォリオに対して、多すぎる人材のタイプと少なすぎる人材のタイプがないか確認します。

理想の状態とのギャップが大きいと、計画した経営戦略や事業戦略の実現が困難になる可能性があります。

把握したギャップを基に、採用・育成・配置の方針を見直し、理想の人材ポートフォリオに近づけるための施策を検討・実行します。

人材ポートフォリオ活用のポイントと注意点

人材ポートフォリオを効果的に活用するには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。

誤った活用をすると、導入目的が達成できないだけでなく、従業員のモチベーション低下などを招く可能性があります。

人材ポートフォリオ活用のポイントと注意点を確認していきましょう。

全従業員を対象とした包括的な分析

人材ポートフォリオは、雇用形態や評価、部署に関係なく、全従業員を対象に実施する必要があります。

すべての人材タイプには固有の役割があり、企業にとって不可欠な存在です。また人材ポートフォリオは、全従業員を対象としなければ、十分な効果を発揮できません。

しかし全従業員を対象とするため、導入時は時間と労力がかかってしまいます。また導入の際には従業員の理解と協力が欠かせません。

導入時には従業員向けの説明会を実施して導入目的を説明し、理解を深める取り組みも必要です。

定期的な見直しと動的な運用

ビジネス環境や企業の状況は常に変化しています。人材ポートフォリオも、変化に対応できるよう定期的な見直しが求められます。

策定した人材ポートフォリオは固定化せず、必要に応じて迅速に見直しや更新を行う姿勢が求められます。

例えば、既存事業を縮小して新規事業を拡大する場合、必要なスキルや知識は大きく変化します。これらの変化に合わせて人材ポートフォリオを再構築し、企業の適応力を高めていく必要があります。

客観的データに基づく公平な評価

従業員一人一人の客観的なデータに基づいた人材ポートフォリオであることが重要です。

主観的な判断は、不適切な人材配置や育成施策を招き、組織全体のパフォーマンス低下につながる恐れがあります。

また人材ポートフォリオは従業員に優劣をつけるものではなく、経験やスキル、知識などを正確に把握することが目的となります。

そして、経験やスキル、知識だけでなく、従業員一人一人の志向や希望を把握することも大切です。1on1や従業員サーベイを活用し、幅広く人材の情報収集を行いましょう。

人材ポートフォリオの運用時は、膨大なデータを取り扱うため、タレントマネジメントシステムなどの活用が効果的です。

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先進企業に学ぶ人材ポートフォリオの事例

既に人材ポートフォリオを導入・活用している事例を紹介します。先進企業の取り組みを参考に、自社での活用に役立ててください。

旭化成株式会社

大手総合化学メーカーである旭化成株式会社では、経営戦略の実現に必要な人材ポートフォリオを毎年策定しています。

経営戦略実現に必要な人材を「量」と「質」の両面から洗い出し、採用・育成に加えて、M&Aや外部投資など多様な手法で人材を確保しています。

また高度専門職やデジタルプロフェッショナル人材など、高い専門性を持つ人材の要件を定義し、人数目標に基づいて、進捗をモニタリングするなど、人材ポートフォリオを活用して戦略的な人材獲得・育成を行っています。

日揮ホールディングス株式会社

総合エンジニアリング事業を展開する日揮ホールディングス株式会社では、経営戦略と連動した人事戦略を最重要課題と位置づけています。

人事戦略に基づく人的資本の課題を解決するため、特に重点的に取り組むべき8つのプロジェクトを坂本龍馬の新国家体制構想になぞらえて「船中八策」として定めています。

「船中八策」の中核には人材ポートフォリオの充実があり、特に重点的に取り組まれています。

同社の人材ポートフォリオは「変革・創造が向いているか、着実な運用が向いているか」「組織を管理する技術があるか、個人・固有の技術により活躍することが向いているか」を軸とし、経営・マネジメント人材、イノベーション人材、高度専門人材、遂行人材の4種類の人材タイプに分類しています。

その上で、中長期的に求める人材タイプごとの人員数と現状を比較し、企業全体での人材の採用・育成方針を検討しています。

富士通株式会社

デジタルサービスとソリューションを提供する富士通株式会社では、事業変革に向けた人材ポートフォリオを策定しています。職種、必要人員、対策、KPI(Key Performance Indicator)、投資額を定め、施策の進捗状況を把握できる体制を整えています。

また人材ポートフォリオに基づいて事業の核となるDX人材の充足に向けたリスキリングプランを設け、営業職8,000名のスキルアップ・スキルチェンジ研修や保有スキルの見える化に取り組んでいます。

まとめ

人材版伊藤レポートやISO30414、人的資本情報の開示義務化などを背景に、人材ポートフォリオへの注目が高まっています。

人材ポートフォリオを作成するメリットは大きい一方で、効果的に活用するためには押さえるべきポイントがあります。

人材ポートフォリオを導入・運用する際の基本的なステップを把握して、経営戦略や事業戦略の実現に活かしていきましょう。

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