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食べ放題のレストランで、お腹がいっぱいになっているのに、支払った料金の元を取ろうと無理をして食べてしまった経験はないでしょうか。
これは単なる『食い意地』の問題ではなく、『支払った分を回収しなければ損だ』という強烈な心理的拘束によるものです。
このような心理バイアスを「サンクコスト効果」と呼びます。サンクコスト効果は、合理的な意思決定を妨げる要因になり得る心理状態です。
本記事では、サンクコスト効果の基本概念や心理的メカニズムとともに、コンコルド効果との関係、日常生活やビジネスにおける事例、サンクコスト効果を避けるための対策を解説します。
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サンクコスト効果とは、すでに支払ってしまい取り戻せない金銭や時間、労力に縛られて、合理的な判断ができなくなる心理現象です。
例えば、映画館でつまらない映画を観続けてしまう行動が挙げられます。
ビジネスでは、撤退すべき状況にもかかわらず、過去の投資を惜しんで追加投資を続けてしまう経営判断などが該当します。
サンクコスト効果は、過去の投資額にとらわれ、将来の損失を拡大させてしまう非合理的な心理状態といえます。
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サンクコスト効果の心理的メカニズム
サンクコスト効果が起こる背景には、特有の心理的メカニズムが関係しています。しかし、人が非合理的な判断を下してしまう理由は1つではありません。
ここでは、サンクコスト効果が起こる心理的メカニズムについて解説します。
損失回避バイアス
投資済みの費用を損失として確定したくない心理が、サンクコスト効果を引き起こす要因です。
人は、利益を得る満足感よりも、損失を被る痛みを強く感じやすいとされています。そのため、失敗や損失を避けたい心理が働きやすくなります。
この心理により、撤退すれば過去の投資がすべて無駄になると感じ、損失を確定させる判断を先送りしてしまうことがあります。損失を避けたい気持ちが強くなるほど、合理的な撤退判断が難しくなるのです。
自己正当化と一貫性の原理
自分の決断が正しかったと証明したいと考える心理的防衛反応も、サンクコスト効果を生み出す原因です。
人には、自分の判断や行動に一貫性を持とうとする心理が働きます。自分が選んだ道は間違っていないと思いたいため、途中で中止する選択肢を無意識に排除してしまうのです。
特に、周囲に目標を公言していた場合、失敗を認めることへの心理的な抵抗が強まる傾向にあります。
過去の自分を否定したくない自己正当化の心理が、サンクコスト効果を強める要因になります。
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・認知的不協和とは?具体例や解消法と、マーケティングや人事施策への活用術を解説
非現実的な楽観主義
現状のまま計画を継続していれば、いつか状況が好転するだろうという根拠のない期待も、プロジェクトをやめられない状態を作りだします。
この背景には、人が自分の期待に沿う都合のよい情報のみを集めてしまう「確証バイアス」も関係しています。
失敗の兆候が見えていながらも「将来的にはうまくいくだろう」と現実から目を背けてしまいます。
わずかな希望や偶然の成功例ばかりに注目した結果、損失が拡大し、事業の失敗につながるケースもあります。
将来に対する根拠のない楽観的な見通しは、適切な損切りを困難にするのです。
サンクコスト効果とコンコルド効果の関係
サンクコスト効果を学ぶ上で、同じ文脈で語られるコンコルド効果についても知っておく必要があります。ここでは、2つの言葉の関係性について解説します。
コンコルド効果とは
「コンコルド効果」とは、投資を続けると損失が出るとわかっていながら、過去の投資を惜しんで中止できなくなる心理現象です。
英仏が共同開発した超音速旅客機「コンコルド」の開発プロジェクトに由来しています。
開発・運航に多額の費用が投じられたものの、採算面で課題を抱え、最終的に大きな損失を招いた事例として知られています。
この事例に由来し、過去の投資を惜しんで撤退できず、損失を拡大させてしまう心理状態を「コンコルド効果」と呼ぶようになりました。
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サンクコスト効果とコンコルド効果の違い
コンコルド効果とサンクコスト効果は、ほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。
サンクコスト効果は、すでに支払ってしまい、事業を中止しても手元に戻ってこない金銭や時間、労力への執着から生じる心理的なメカニズムや原因に焦点を当てた言葉です。
一方でコンコルド効果は、サンクコスト効果によって引き起こされた具体的な結果や状態を表す際に使われます。
実務上は同じ心理現象を指して使われることが多いため、文脈に応じて使い分けるとよいでしょう。
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サンクコスト効果の日常生活の例
サンクコスト効果は、ビジネスだけでなく日常生活のあらゆる場面で発生します。
ここでは、日常生活におけるサンクコスト効果の事例と、心理的バイアスが働く場面について解説します。
つまらない本でも最後まで読んでしまう
せっかく買った本がつまらなかったとき、読むのをやめるべきか迷った経験を持つ人は少なくないでしょう。
家族が買ってきた本であれば、内容がつまらないと感じた時点で読むのをやめやすいかもしれません。
しかし、自分で購入した本の場合、『せっかくお金を出したのだから』という心理や、読み進めるのに費やした時間を無駄にしたくないという思いから、つまらない本でも最後まで読もうとしてしまいます。
この事例には、支払ったお金や読み進めた時間を無駄にしたくない心理が働いていると考えられます。
株式投資で損切りができない
株式投資において、含み損を抱えたまま売却できない塩漬けの状態も、サンクコスト効果の典型的な例です。
過去の購入価格にとらわれず、現在の価値で冷静に判断する姿勢が株式投資には不可欠です。
しかし、株価が購入時よりも下落しているとき、いつかまた上がるかもしれないと期待して損切りをためらってしまいます。
この事例には、確定損失を受け入れたくない心理が潜んでいます。
恋愛の努力を無駄にしたくない
恋愛で、お互いの気持ちが離れているのに、関係を終わらせられずに悩むケースもサンクコスト効果の1つです。
例えば、遠距離恋愛などで気持ちが離れてしまっても「ここまで頑張ってきたのだから」と考え、関係を続けてしまうケースが該当します。
過去に費やした時間や愛情に執着した結果、現状維持を選んでしまい、今後の自分にとって望ましい選択をしにくくなる心理状態といえます。
サンクコスト効果のビジネスの例
企業経営やマーケティングなどのビジネスシーンにおいても、サンクコスト効果は見られることがあります。
ここでは、実際のビジネス現場で見られる具体的な事例について解説します。
採算が取れない事業への追加投資
赤字が続いている新規事業に対し、撤退の判断を下せないケースは、経営におけるサンクコスト効果の典型的な事例です。
事業を新たに立ち上げる際には、設備投資や人材採用に多額の資金や時間を投入します。
思うような収益が上がらない場合でも「過去に多額の資金を投じたのだから」と、さらに投資を続けてしまうと、企業全体の資金繰りを悪化させるおそれがあります。
また、事業担当者や経営陣が過去の判断を否定しにくい心理も、撤退判断を遅らせる要因になります。
定期購入・サブスクリプションの特典
サンクコスト効果は、マーケティング施策の中でも見られる心理です。
会員ランク制度や継続特典を導入しているサービスは、制度のないサービスに比べて解約率が低くなる傾向があるとされています。過去の継続期間や獲得したポイントを無駄にしたくない心理が、継続利用につながることがあります。
あと少しで特別な特典と交換できる状態になれば、獲得したポイントを無駄にしないために同じ店舗で買い物を続けます。年間の利用額に応じて優待内容が変わる会員ランク制度も同様の仕組みです。
会員ランク制度や継続特典は、サブスクリプション型のビジネスモデルと相性がよい施策といえます。
転職に踏み切れない
現在の職場に不満を抱えながらも、他社への転職に踏み切れずに悩むケースもサンクコスト効果の事例です。
転職では、現在の会社で働き続けるリスクを把握した上で、新しい環境で得られるリターンを比較検討する必要があります。
過去の実績にとらわれず、自身のスキルが市場でどのように評価されるか客観的に見直すことが大切です。
しかし、過去に積み上げてきた社内の評価や人間関係、これまで費やしてきた時間や努力を手放したくないという思いから、転職をためらう心理状態もサンクコスト効果の一例といえます。
サンクコスト効果を回避するための戦略
過去の投資に引きずられることなく、合理的な意思決定を行うためには工夫が必要です。ここでは、サンクコスト効果を回避するための戦略について解説します。
認知バイアスを理解し、客観的に判断する
人間の心理的な傾向を理解すれば、冷静で客観的な判断ができるようになります。
人間は無意識のうちに、過去に支払った金銭を基準にして今後の行動を決定してしまうものです。自分が認知バイアスに陥りやすい傾向を自覚するだけでも、誤った意思決定をする可能性を下げられます。
過去に費やしたコストは二度と戻ってこないと割り切り、未来の利益だけに焦点を当てて考えましょう。損失の確定を恐れずに認知を転換することが大切です。
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・バイアスとは?意味と使い方、種類を一覧でわかりやすく解説
データに基づく意思決定を行う
客観的なデータに基づいて判断を下せば、感情に流されるリスクを減らせます。
根拠のない見通しによる経営は、企業の資金繰りに悪影響を及ぼしかねません。データや客観的な数値に基づく意思決定の習慣化が必要です。
データドリブンな意思決定を徹底している企業は、属人的な判断に頼る企業よりも成果につながりやすいとされています。
個人の思い込みや過去の努力といった主観的な要素に偏りすぎず、客観的な事実も踏まえて判断しましょう。社外のコンサルタントや直接利害関係のない他部署の意見を積極的に求めるのも1つの方法です。
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・データドリブンとは? 経営やマーケティング、人事への生かし方を徹底解説
撤退ラインをあらかじめ設定する
プロジェクトや投資を始める際に、撤退の条件を明確に決めておくことも、サンクコスト効果を防ぐ有効な手段です。
事前に基準を定めておかなかった結果、いざ問題が発生したときにサンクコスト効果が働き、漫然と投資を続けて赤字を拡大させてしまうケースは少なくありません。
事業を立ち上げる前に分析を行い、予算超過や赤字のラインなどの明確な損切りの条件を設定することが大切です。
売上推移や顧客獲得コストなどの重要指標を定期的に確認し、あらかじめ設定した基準値にしたがって合理的に対応しましょう。
サンクコスト効果に関するよくある質問
サンクコスト効果について、多くの人が疑問に感じやすいポイントをQ&A形式で解説します。
サンクコスト効果を完全になくすことはできるか
サンクコスト効果を完全にゼロにすることは困難です。人間が持つ損失回避の心理は本能に根ざしているため、誰もが影響を受けてしまいます。
しかし、その影響を減らすことは可能です。認知バイアスの存在を意識し、論理的に考える習慣をつけることで、感情に流された判断を抑えやすくなります。
仕組みやルールを整備して、客観的な判断を下せる対策を実施しましょう。
サンクコスト効果とプロスペクト理論の関係は
サンクコスト効果の背景は、プロスペクト理論によって説明できます。
プロスペクト理論は、サンクコスト効果が発生する心理的な土台となる行動経済学の理論です。
プロスペクト理論では、人は利益を得る場面では確実性を好み、損失を抱える場面ではリスクを取ってでも損失を回避しようとする行動が示されています。
すでに発生した損失を確定させたくない心理が、リスクを冒して投資を続ける行動につながります。サンクコスト効果の根本的な原因を説明する上で、プロスペクト理論は欠かせない考え方です。
もったいないと感じることをどうすればよいか
買ったものを捨てるときに、もったいないと罪悪感を覚える人は少なくありません。
資源を大切にする価値観は重要ですが、もったいない感情に縛られて行動が制限された場合、本来得られるはずの時間や機会を失う結果になります。
機会損失を回避するためにも、もったいない感情と、将来の自分に与える影響は切り離して考える習慣をつけましょう。
もったいないという感情そのものは大切にしつつ、合理的な判断とのバランスを取ることが重要です。
まとめ
サンクコスト効果とは、過去に費やしたコストにとらわれ、合理的な判断ができなくなる心理現象です。同じ現象を指す言葉として「コンコルド効果」も知られています。
損失を回避したい心理や、自己正当化の心理が原因で発生します。日常生活での非合理的な選択やビジネスにおける撤退の遅れなど、さまざまな場面で判断に影響をもたらします。
サンクコスト効果を回避するためには、認知バイアスを理解した上で、客観的なデータの活用や撤退ラインの事前設定をすることが重要です。過去のコストと将来の自分に与える影響は切り離し、適切な意思決定をする習慣をつけましょう。
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サンクコスト効果をはじめとする心理的なバイアスは、勘や経験に頼った判断の中で生じやすい傾向があります。人事評価の場面でも、過去の実績や印象にとらわれて公平な判断ができなくなるケースは少なくありません。
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