5年先まで見据えて描く 組織図の目的と作成のポイント

組織図とは簡単に言うと、会社や組織の内部構造をわかりやすく図式化したものです。ただし、ただ部署や部門の名前を羅列すればいいというものではありませんばいいものではありません。

組織図は「なぜ作成するのか」という目的を意識することが大切です。そして、組織図をつくる過程で新たな課題が見つかることもあります。組織図をつくる上で押さえておくべきポイントを、この記事ではご紹介します。

1.組織図が必要な理由

組織図は、一見簡単につくれるものに見えるかもしれません。だからこそ、つくる目的や組織図の役割が十分に理解されていないのではないでしょうか。

たんなる部署名一覧ではなく「組織図」にする意味が、そこにはもちろんあります。

1-1.組織における「現在」を可視化するため

組織図をつくることは、いわば組織全体の「見える化」です。そもそもどういった部署や部門、チームがあるのか。それぞれの組織はどのように影響しあっているのか。組織ごとの責任者は誰なのか。明確にすることができます。

これは成長途中で、組織編成が頻繁に変わる企業ほど、重要視したいポイントです。

変更が頻繁にあるからと組織図を制作・公開しないままにしておくと、組織の全体像を把握することが困難になります。そういった場合、指揮命令系統が不明瞭になっていて日々の業務が非効率になることがあります。あるいは責任者がわからなくなり、特定のチームや人に負担が偏ってしまう原因となることもあるでしょう。

それぞれの組織がどういったミッションを持っていて、誰が責任者で、どのような動きが期待されているか、組織図を作成することを通して明確化することができます。これは従業員一人ひとりが自分の役割を把握することにもつながるため、従業員エンゲージメント向上や生産性向上にも寄与する可能性があると言えます。

1-2.組織の未来を描くため

組織図が組織の現在を可視化するものであるのはもちろんですが、実は組織の未来を考えることにもつながっています

中長期の経営計画と、現在の組織図を照らしてみましょう。そのとき、未来のあるべき組織の姿と現在の組織の姿にギャップが見つかることがあります。

たとえば、企業の成長スピードに比して次期マネージャー層の育成が足りていないといった課題に気づくかもしれません。これから伸ばしていく事業分野に鑑み、部署やポストの新設を検討しなければならなくなることがあるかもしれません。

組織図で描くのは、現在の組織だけではありません。未来を描くことで、次に取り組むべき課題を見つけるきっかけにもなります。

1-3.対外的な信用のため

組織の「見える化」は、主に組織の内部に向けて有効なアクションです。一方で、組織図は対外的な信用を得るために必要なものでもあります。

組織図は企業のコーポレートサイトに掲載されたり、上場時には過去を遡った数年分の組織図が必要となったり。どのような体制で組織を運営しているか、きちんと示せるようにしておくことは企業の信頼獲得にもつながります。

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組織図をつくる4つのステップ

組織図をつくるには、大きく分けて4つのステップがあります。

1.現状の把握と目的を整理する
2.組織図づくり
3.組織図の配布・周知
4.PDCAを回し、未来につなげる

この章では、それぞれのステップでやるべきことについて見ていきましょう。

2-1.現状の把握と目的の整理

組織図はいきなり書き出すのではなく、主に誰が何のために使う組織図なのかを定め、どういった組織があり、それぞれがどのように連携しているのか改めて洗い出す過程が重要です。

この過程が重要なのは、目的や組織の在り方によってどのような組織図をつくるべきかが異なるからです。具体的には、社内配布が主な使用目的であれば部署ごとの責任者の連絡先を記載したほうがいいとか、対外的に示すものであれば小さい単位の組織まで全てを記載する必要はないなど。作った組織図が最大限活用されるように、どのように使うものなのか、その目的を明確に定めて仕様を決定します。

同時に、運用ルールも定めます。公開範囲や更新タイミングなどについても考えておきましょう。

2-2.組織図をつくる

組織図を図式化することはあくまで手段なので、その作り方に決まりはありません。エクセルやパワーポイントを用いてつくることも可能ですし、Web上にデザインされたフォーマットやテンプレートが公開されていることもあります。組織管理に関する各社サービスの機能により簡単につくることもできるでしょう。

先に決めた目的と照らし合わせて、最適な組織図について考えてみてください。優先的に盛り込む情報が変われば、当然見た目は変わるものです。どの企業でも全てに使える絶対的なフォーマットやテンプレートはないという前提で、まずは目的から出発し考えることを推奨します。

2-3.組織図の配布・周知

組織図はつくったら終わりではなく、どのように周知するかも重要です。つくったはいいものの、結局誰にも見られることのないままだった、とはならないようにしましょう。

組織内外の人に向けて広くコーポレートサイトで公開する方法や、組織内だけに共有する場合は社内イントラに上げる方法などがあります。事業戦略と組織体制のつながりをとくに意識してもらうには、マネージャーから意図や背景を含めて説明しながら従業員一人ひとりへ公開するのも有効です。手段は様々ありますが、組織図を見てほしい人へその意図や経営からのメッセージも含めて伝える手段を検討します。

2-4.PDCAを回し、未来につなげる

組織図は一度つくってしまえばしばらくは変更しないもの、というイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、事業戦略の見直しや修正を都度行うのと同じように、組織図も都度見直して修正していくことをぜひ意識してみてください。

たとえば事業における組織目標が達成できなかったとしたら、なぜうまく行かなかったのか、組織の体制を見直す必要があります。部署間の連携に問題があったのか、必要な役割や適切なチームがなく新設が必要なのか、組織戦略を見直すに当たり組織図を活用することは非常に有効です。

同時に、ステップ1で現状把握をした際に発見できた課題には積極的に取り組みましょう。業務が偏っている部署や負担の大きすぎる役職、事業戦略上必要なはずなのに相当する部署がないなど、大小様々な課題が見つかるはず。それらの課題を解決することも、最適な組織と人材配置に必要なものになっていきます。

3.組織図を活用し、組織全体のパフォーマンス向上へ

事業戦略に合わせて、組織戦略があり、その戦略を実行できるように組織は形成されます。それを可視化したものが組織図であり、その組織の中のもっと小さなチーム、そして従業員一人ひとりまで可視化されていることが望ましいと言えます。

事業計画から組織目標、その組織戦略が個人の目標までつながり、そこで活かすべきスキルや成長へつながっていること。組織の中にいる従業員一人ひとりを可視化し、従業員それぞれの特性に合わせて組織内のどこに配置するべきかを考えることは、組織の向かう方向と個人の成長とを紐付けるうえで欠かせません。

それゆえ、組織の中にいるのがどのような従業員なのかまで可視化することも非常に重要であり、組織図を作るだけにとどまらず、従業員それぞれの特性に合わせて誰を組織内のどこに配置するべきかを考えることを推奨します。組織の向かう方向と個人の成長とを紐付けるためには、組織図と従業員名簿を紐付けることも忘れてはならないと言えるでしょう。

組織と個人の目標管理に関してはこちらの記事もご一読ください。
個人と組織、双方の目標達成が叶う。MBOとは?

4.まとめ

組織図をつくることは、単に組織を並べた図式をつくることではないという意識づけをしていただけたらと思います。

組織図は、つくる過程が重要です。現状を把握し、よりよい組織の未来を描くために使用するものです。人事・組織課題の発見や解決なども含め、組織の可視化、そして従業員一人ひとりの可視化につながるプロセスの一環として取り組むことを意識してみてください。


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